2013.06.23
こんにちは,M2の吉川遼です.
山内研の必読書籍シリーズ,第3回目はこちら,
Norman, D. A.[著], 伊賀聡一郎, 岡本明, 安村通晃[訳](2011)
複雑さと共に暮らす : デザインの挑戦. 新曜社.
--
この本は日常の様々なデザインとそこに潜んでいる問題について知覚し,考えるきっかけを与えてくれます.
例えばこのゴミ箱.
缶を捨てる時は丸い穴に,また紙や新聞といった薄いものは長細い穴に,とそれぞれ形状の近い穴に捨てればよい,ということが伝わってきます.
このようなデザインにはシグニファイア,すなわち適切な行動の知覚的なサインがあるといえます.
このシグニファイア,アフォーダンスと混同されがちなのですが,異なる概念です.
シグニファイアは物理的,社会的世界で我々が意味ある物として解釈できるシグナルであり,それは意図的に配置されたものであったり,活動や出来事から偶然生まれるものであったり,他者の行動の結果から生じる社会的なものであったりします.
その一方,知覚心理学者のギブソンが提唱しているアフォーダンスとは「生体の持つ可能性とモノの持つ可能性との間の関係性」であり,あるモノに対して人がとりうる行動を語りかけるものです.
ノーマンはこのアフォーダンスの概念をデザインの世界に応用したのですが,結果的にデザインの領域において「アフォーダンス=何か知覚されるもの」という認識が広がりました.
しかしながらギブソンの定義に基づくと,アフォーダンスは誰かが気づくかどうかにかかわらずそこに存在するものであるため,デザイナーは「アフォーダンスを加えた」というよりは「アフォーダンスを可視化している」のだ,とノーマンは指摘しています.
社会的シグニファイアの例としてノーマンは,人々が近道をすることで禿げてしまった公園の芝生を挙げています.芝生に限らず,本の耳折れや論文の参考文献など,私達の活動の痕跡から社会的シグニファイアは形成されます.この残された痕跡は人間一般の振る舞いに対し,とても貴重な情報となります.
このことについてノーマンは
"人は,人に,物理的な場所に,あるいはシステムや組織にたえず結びついている.こういった痕跡は我々の生活を簡単にしたりも複雑にしたりもする"(pp.146-7)
と述べています.
開発研究を進めるにあたって,自身が開発したシステムをどのように使ってもらうのか,コンテンツをどのタイミングで提示するのか,そして既存の学習形態と学習の問題点に溶け込ませるにはどのようなシステムフローが望ましいのか,...といったようにトータルエクスペリエンスを常に考えつつコンテンツやユーザインタフェースなどを設計していくことはとても重要です.
開発に限らず,学習環境デザインを進めるにあたり,日常に潜んでいる様々な問題に敏感になること,そして,それが誰のどのような場面において問題となっているか,その問題を解決するためにどのような解決法が望ましいのかを考える上で,この本はきっと自身の感覚を研ぎ澄ませてくれることと思います.
【吉川遼】
2013.06.16
こんにちは。先週から始まりました山内研の必読書籍シリーズ。
2回目はM2の吉川久美子が担当させていただきます。
今回は「授業を変えるー認知心理学のさらなる挑戦」北大路書房, 2002年
をご紹介させていただきます。
これまで「認知心理学」、「発達心理学」、「神経科学」、「社会心理学」、「文化人類学」、「教育工学」などのあらゆる学問領域から「学習に対する科学的研究」(学習科学)が進められてきました。
ここ30~40年の間に、教師と研究者の共同研究の動き(基礎研究の知見が現場で検証される動き)も活発となり、学習科学は、急速な発展を迎えたとこの書籍では指摘されています。
社会も「現代社会を生き抜くため」の教育目標として、「科学・技術・社会現象・数学・芸術についての創造的思考に必要な知識」の必要性が重要視され、従来のように「単に知識を教える」だけでなく、「考え方の枠組みをみずから創り出すことができ、有意義な問題を自分で見つけ出すことができ、様々な教科の内容を深く理解することを通して生涯にわたって学び続けることのできる自立した学習者の育成」が求められるようになりました。
こうした動向の中で、「認知技能や学習方略の習得を支援すること」は1つの大きな課題となっています。
学習科学は「理解を伴う学習」と「知るという過程」、「能動的学習」をポイントにしながら、この大きな課題に取り組んでいます。
本書では、特に以下の3つの問題に焦点を絞り、4部構成で関連する学習科学の知見が紹介されています。
①人間が学習するということはどういうことか
②「学校教育」のカリキュラムや教授法の開発
③学習者の「潜在的な『学習可能性』をいかに引き出し育む」にはどうすれば良いのか
<本書の構成>
第1部「導入」・・・学習科学の発展の歴史
第2部「学習者と学習」・・・熟達・転移・認知発達・神経科学
第3部「教師と授業」・・・学習環境・教授法・教師の学習・情報教育
第4部「結び」・・・学習科学の現状と課題
学習科学の基礎研究、またその研究の歴史、そしてそれを用いた教育実践の研究が解りやすく紹介されているので、この領域においてこれまでどんな研究が行われ、何が課題となっているのかを掴みたい方にオススメかと思います。
2013.06.07
こんにちは!M2の梶浦美咲です。
今週から新テーマ「山内研の必読書籍」が始まります!
山内研究室には、研究室メンバーが読むべき必読書籍が存在し、その必読書籍から毎週一冊ずつ本を紹介していこうと思います。
山内研必読書籍は以下の通り。
※しかし借りられている本もあるので、こちらで全てではないことをご了承下さい。
先日入試説明会がありましたが、そろそろ学際情報学府の受験も迫ってきている、ということで、入試対策としてもこれらの本が参考になるのではないでしょうか。
では早速1冊目、
山内祐平(編著)(2010)「デジタル教材の教育学」東京大学出版会
を紹介したいと思います。
デジタル教材に関する「歴史と思想」「活用と展開」「デザイン論」について体系的に書かれた本で、まさにデジタル教材の教育学、タイトル通りの内容です。
特に教育系のシステム開発をする方にとっては役立ちそうな知見が満載なので、読んでみてはいかがでしょうか。
また、教育システム開発に興味がない方でも、全体的に教育工学で知っておくべき重要そうなキーワードが散りばめられているため、教育工学について学びたい方にもおすすめです。
目次は以下の通り。
【目次】
序章 デジタル教材と教育学
第Ⅰ部 デジタル教材の歴史と思想
第1章 個人差に対応する Computer Assisted Instruction
第2章 学びの文脈を作る マルチメディア教材
第3章 議論の中で学ぶ Computer Supported Collaborative Learning
第Ⅱ部 デジタル教材の活用と展開
第4章 第2言語習得での活用 Computer-Assisted Language Learning
第5章 企業内教育での活用 eラーニング
第6章 学びと遊びの融合 シリアスゲーム
第Ⅲ部 デジタル教材のデザイン論
第7章 デジタル教材を設計する
第8章 デジタル教材を評価する
第9章 デジタル教材の開発1 「親子deサイエンス」
第10章 デジタル教材の開発2 「なりきりEnglish!」
終章 デジタル教材と学びの未来
序章・第Ⅰ部では教育工学における思想の変遷について、第Ⅱ部では活用例、第Ⅲ部では具体的な設計や評価方法などが述べられています。
この本が優れているのは、ただデジタル教材を作るHowTo本に終始しているのではなく、デジタル教材に関する研究的知見が述べられている点です。
近年、ICTを活用した教育が注目され、デジタル教材がますます増える中、あまり研究で得られている成果が参照されず、実社会に活かされていない現状にありました。その結果、過去の研究上で指摘されてきた問題を再度繰り返してしまうことがあるそうです。
その課題を解決するために出された本です。
特にデジタル教材を設計する上で重要な、教育システム開発に広く用いられるインストラクショナルデザインの考え方(ADDIEモデル)、学習意欲を高める教材を作るために参照できる動機づけ理論としてのKellerのARCSモデル、CSCW(Computer Supported Collaborative Work)・CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)で活かせるWengerの実践共同体の概念なども説明されています。
デジタル教材を開発する方はもちろん、教育工学における理論などを学びたい方におすすめです!
【梶浦美咲】
2013.06.06
梅雨の季節に入りましたが、夏日のような日が続いていますね。
「今年の研究計画」シリーズ、最終回は伏木田稚子が担当いたします。
今年はついにD3ということで、身の引き締まる思いで日々を過ごしています。
基本的には、これまでの研究の集大成として、博士論文の執筆に集中したいと思っています。
博士論文の主な内容については、以下のようなことを考えています。
博士論文の目標
・ ゼミナールという複雑に構成された事象を、それを構成する要素に分解することで全体像の理解を試みる
博士論文の方向性
・ ゼミナールは、「●●ゼミ」という固有名詞で表現されるように、2つとして同じものはない
e.g) 山内研で行われている毎週1回の山内ゼミと、わたしが参加させていただいている副ゼミはまったく別のゼミで、同一視することはできない
・ けれども、学習活動や指導、学生間で共有される共同体意識といったゼミナールの構成要素単位では、共通点も相違点も比較して見つけることができる
e.g) 山内ゼミでも副ゼミでも、個人の研究の進捗状況を発表する機会がある
・ ただし、それぞれの構成要素を具体的に描写し、よりミクロなレベルで複数のゼミナールを比較することには限界があることを念頭に置き、課題と今後の展望に譲る
e.g) 山内ゼミと副ゼミとでは、研究発表や質疑応答の時間、レジュメの雰囲気などが異なる
博士論文への想い
これまでの私の研究では、単位の出る授業として成立しているゼミナールに焦点を当てており、自主ゼミや院ゼミを研究の対象としていません。
また、授業内または授業内からの延長として授業外で行われている学習活動、つまりフォーマルなゼミ活動に主眼を置いているため、ゼミ合宿、ゼミコンパ、それ以外のレクリエーションといったインフォーマルな活動のすべてを包含できていません。
そこで、ゼミナールを構成要素に分解する過程でこぼれ落ちてしまう、そうした"ゼミナールらしさ"については、これからも引き続き研究していきたいと考えています。
そうした今後の展望も含めて、これまでの研究から導出された知見をしっかりと描き切っていきたいと思っています。
すでに6月ということで、2013年度も1/4が過ぎようとしていますが、悔いのないように今できることに取り組んでいきたいと思います。
※ 諸事情によりblogの更新が遅くなりましたことを、この場をお借りしてお詫びいたします。
【伏木田稚子】
2013.05.28
教育学部「学習環境のデザイン」の参考資料リストを作成しました。履修学生以外にも関心をお持ちの方がいらっしゃると思いますので、公開します。
【山内 祐平】
▼シラバス
http://catalog.he.u-tokyo.ac.jp/ug-detail?code=0952409&year=2013&x=44&y=10
▼教科書「デジタル教材の教育学」
http://www.amazon.co.jp/dp/4130520792
▼初等中等教育での展開--Khan Adademy
サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」
http://www.ted.com/talks/lang/ja/salman_khan_let_s_use_video_to_reinvent_education.html
書籍「The One World School House」
http://www.amazon.co.jp/The-World-Schoolhouse-Salman-Khan/dp/1455508381
講義が宿題になる――「反転授業」 カーンアカデミーが変えた講義と宿題の関係
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120518/1049903/
▼高等教育での展開--MIT TEAL
書籍「学びの空間が大学を変える」
http://www.amazon.co.jp/学びの空間が大学を変える-山内-祐平/dp/4938789272
教壇がない教室――「ラーニングスタジオ」 オンラインで学べる時代には、教室は不要になるのか?
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120618/1052782/
物理の基礎を協調学習で教える--MIT TEALプロジェクトの挑戦
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/seminar/008-2.html
▼幼児教育での展開--親子de物語
幼児のNarrative Skill習得を促す親の語りの引き出し方の向上を支援するシステムの開発
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007520570
幼児の物語行為を支援するソフトウェアの開発
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006792153
子どもとデジタル絵本
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/seminar/049.html
▼ オープンエデュケーション--Coursera
世界最良の授業はWebから来る――「オープン教育」 オンライン教育が"破壊的イノベーション"を起こす
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120604/1051244/
変革期を迎えた学習プラットフォーム:講演ダフニー・コーラー氏
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/seminar/052-2.html
▼ ソーシャルラーニング--Socla
Soclaプロジェクト学習「ソーシャルメディアを利用したキャリア学習環境」
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/seminar/048.html
学習者と社会がつながる―「ソーシャルラーニング」 善意の人々が学習を支援する時代
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120730/1057842/
書籍「ソーシャルラーニング」入門 ソーシャルメディアがもたらす人と組織の知識革命
http://www.amazon.co.jp/dp/4822248755/ref=cm_sw_r_tw_dp_nLbPrb1FK4GYB
▼シリアスゲーム--FoodForce
FoodForce公式サイト
http://www.foodforce.konami.jp
書籍「シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム 」
http://www.amazon.co.jp/dp/4501542705/ref=cm_sw_r_tw_dp_fObPrb0RVMH3T
▼ 構築主義的学習環境--LOGO/LEGO
書籍「マインドストーム―子供、コンピューター、そして強力なアイデア 」
http://www.amazon.co.jp/dp/4624400437/ref=cm_sw_r_tw_dp_5PbPrb10ZDAN0
LEGO Mindstorms
http://mindstorms.lego.com/en-us/default.aspx
▼ワークショップ--CAMP
書籍「ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ」
http://www.amazon.co.jp/dp/4766420381/ref=cm_sw_r_tw_dp_xSbPrb0N257RY
▼カフェでの対話と学び--UTalk
UTalk
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/utalk/
書籍「未来の学びをデザインする―空間・活動・共同体」
http://www.amazon.co.jp/dp/413053078X/ref=cm_sw_r_tw_dp_WUbPrb10D9K8Q
2013.05.23
D3の安斎勇樹です。早いもので、もうD3になってしまいました。おかげさまで書籍『ワークショップデザイン論ー創ることで学ぶ』の出版も決まり、いよいよ今年は博士論文の執筆に向けて準備を進めていきます。
博士論文の目的は、一言で言えば「ワークショップにおいて"創発的コラボレーション"を促すためのプログラムデザインの原則を提案すること」です。
近年、「新しい学びと創造のスタイル」として、ワークショップが注目されています。ワークショップとは「創ることで学ぶ活動」のことであり、授業や研修とは違うノンフォーマルな場で行われるものです。ワークショップ実践が行われる領域は多岐にわたりますが、大学生の「創造性」の育成の手段としても注目を集めており、グループでアイデアを考えたり、アート作品をつくったりするタイプのワークショップが多く実践されてきています。
創造性については、これまで数多くの研究がなされてきました。かつては、創造性は「個人」が発揮するものだと考えられてきましたが、近年では「コラボレーション」の重要性への認識が高まり、創造性を育成する上でもコラボレーション体験が重視され始めています。たとえば心理学者のキース・ソーヤーは、創造性を育成するためには学習者同士が即興的にアイデアを連鎖させながら新しいアイデアを生み出すような、いわば「創発的コラボレーション」の体験が必要であることを指摘しています。
自由で創造的なスタイルであるワークショップは、こうした「創発的コラボレーション」の体験の場として有効であると考えられます。しかしながら、その方法論に関する実証的な研究はいまだ少なく、具体的に「どのようにワークショップのプログラムをデザインすれば、創発的コラボレーションが起こせるのか」については明らかになっていません。
そこで、本研究では、創発的コラボレーションを促すためのワークショップのプログラムデザインの原則を提案することを目的とします。修士過程では、ワークショップのプログラムデザインの中でもメインアクティビティの「課題の設定」に焦点を当てて実証研究を行いました。具体的には、創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し、ワークショップの課題設定に矛盾のある条件を設定することが、創発的コラボレーションを促すことを実践と質的分析によって明らかにしました。
ところが、ワークショップのプログラムデザインはメインアクティビティの課題設定だけでなく、そこに至るまでの各アクティビティをどのように構成するか、という点も重要です。そこで、昨年は「活動の構成」に焦点を当て、「ジグソーメソッド」と「類推」の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定し、実証研究に取り組んできました。
博士論文では、文献のレビューを重ねて論文全体の構成を洗練させながらも、これら2つの実証研究をまとめてあげて「創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザイン原則」を提案できればと考えています。
【安斎 勇樹】
2013.05.16
本ブログ初登場です。
みなさま、はじめまして。
本年4月より、山内研究室に所属させて頂くことになりましたM1の中村絵里と申します。
よろしくお願いいたします。
【今年の研究計画】
シリーズ第7回目を担当しますが、その前に、4月に入学してからこの1カ月半で感じたことを述べさせて頂きます。
入学直前の3月末まで社会人だった私にとって、仕事と研究の大きな違いに触れたことは、やはり新鮮な驚きでした。
どんな違いかと言うと、成果を出すまでのプロセスが仕事の場合と研究の場合で大きく異なるのです。
これまでの社会人生活(10数年、、、と記しておきます)の中では、日々様々な学びが起こっていました。仕事の場合は、多種多様な学びから得られたいわゆる経験知に基づいて、自由に、創造的に、独自スタイルで、効率的に、成果を上げることが求められ、その成果が最終アウトプットとして認められてきた感があります。
しかしながら、研究の場合、経験はあくまでも個人の経験でしかなく、過去の研究で実証されていないものは、成果を上げるプロセスとしては通用しないという面があります。具体的には、先行研究において実証されているものは、定義や理論として通用しますが、一方で、一人の人間が感じたり見たりしたことは、単なる一事例に過ぎず、それを根底としてロジックを組み立てるのは難しいということです。「これまでの経験を通して暗黙知を得たからそう思った」では通用しない世界です。
社会人として経験したことは、私に沢山の示唆を与えてくれましたが、それらは、ひとまず引き出しの中に畳んでおくこととし、これからは、研究者として、成果を出すためのプロセスを大事にしたいと思います。一年目の今年は、とにかく先行研究にあたることに専念します。先行研究レビューの過程で、時々引き出しを開けて、畳んだものを広げてみる機会があると嬉しいと思います。
前置きが長くなりましたが、本題テーマに入ります。
――――――――――
■研究テーマ
「途上国の初等教育普及におけるソーシャルメディアの活用に関する研究」
■背景
2000年に策定された国連ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)では、2015年までに「普遍的な初等教育の達成」を掲げている。過去10年の達成状況を見ると、サハラ以南のアフリカの初等教育就学率が、55%(1999年)→76%(2010年)に上昇(UNICEF世界子供白書2012)したものの未だ目標達成までの道のりは長い。
Millennium Development Goals (MDGs)
目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
目標2:普遍的な初等教育の達成
すべての子どもたちが、男女の区別なく、初等教育の全課程を修了できるようにする。
目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
できれば2005 年までに、初等・中等教育において、2015 年までにすべての教育レベルで、男女格差を解消する。
目標4:幼児死亡率の引き下げ
目標5:妊産婦の健康状態の改善
目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
目標7:環境の持続可能性の確保
目標8:開発のためのグローバル・パートナーシップの構築
(出典:国連広報センターホームページ http://www.unic.or.jp/mdg/goal.html)
MDGsの8つの項目のうち、実に2つの項目が教育に言及していることに着目。
貧困や飢餓の撲滅、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、感染症などの予防、環境の持続可能性など、MDGsのもとに取り組まれているさまざまな問題を解決していくには、教育(とくに基礎教育)を通して人々が知識や技能を身につけることが必要(小川ほか,2008)と言われるように、教育はMDGs達成の大きなカギになる。
■長期的観点からの最終的な着地点(希望)
就学適齢期の小学校へ通ったことのない子どもが、男女の別なく、平等に就学の機会を得られるために、教育の重要性を地域社会ひいては政策立案関係者に対して認識させたい。
■目的(検討中)
1つの村、1つのコミュニティで実践されている初等教育普及のための住民参加型プロジェクト(参加型学習行動法:Participatory Learning and Action: PLA)の成果を、類似環境にある異なる村、コミュニティの住民と、ソーシャルメディアを通じて共有し、相互にプロジェクト効果を高め合う。
■今後1年間の研究の進め方(案)
1.先行研究をレビュー
2.問題意識→仮説に導く
3.実践・調査案(国、対象者、実践内容等)を考える
上記までを修士1年目で固める方向で研究を進めたいと思います。
続いて、以下4.~6.へとつなげて行きたいと考えています。
4.実践・調査
5.検証・評価
6.修論執筆
――――――――――
まだ、1年目がスタートしたばかりで、今後どのように計画を軌道修正して行くことになるのか先が見えない状態です。
どんな道を通ることになっても、上述の最終的な着地点(希望)に寄与することができる研究を行いたいと考えています。
【中村絵里】
2013.05.10
みなさま、はじめまして。
今年度より山内研究会でお世話になっております、修士1年の池田と申します。まだ研究テーマがふわふわしていますが、【今年の研究計画】シリーズ、今回は私が担当させて頂きます。
_________________
◆研究テーマ
社会に対する、深い興味関心を促し、
社会の諸課題について自分の意見や汎用的能力をを高校生(又は大学生)に
もってもらえるような(出来たらストーリーテリングを使った)方法の研究
→長過ぎてよくわかんないと思うのでまとめると
高校生(もしくは大学生)が
・社会に対する、深い興味関心をもつような
・社会の諸課題について自分の意見や、解決策を考えられるような
・プログラムが終わった後も残る汎用的能力を身につけられるような
(出来たらストーリーテリングを使った)方法について研究したいと思っています。
◆研究の背景
学部時代教職をとっていた私は、授業が終わって、暗記した知識が抜けた後も何かが残るような授業にずっと関心がありました。
又、人は社会の中で人は生きてる、将来どんな働き方をするにしても社会につながるのにも関わらず、社会との関わり方を考える機会や社会問題について主体的に考察したりする機会が少ないなと感じていました。
そんな2つの私のもやもやにアプローチできるような方法について研究していきたいと考えています。
◆今後やっていくこと
まずは、現在高校の公民の授業で行われている方法をレビューし、自分の最も興味のある分野、自分がやりたいことと1番にていることを探ろうと思っています。
_________________
.以上、が現在の私の研究計画です。まずは、先行研究をたくさんレビューして、研究テーマをしっかり練り上げていきたいです。。!
これからどうぞ、よろしくお願いします。
池田めぐみ
2013.05.03
皆さま,はじめまして.
今年度より2年間山内研で修士課程を過ごさせていただくことになりました,修士1年の 青木智寛 と申します.
ひとまず,大学院生活の最初の1ヶ月が過ぎましたが,学びの環境の違いと,得られる知識の多さに非常に刺激を受けている今日このごろです.
では,【今年の研究計画】シリーズの第5回です.
まだどうなるかわからない私の研究計画ですが,現在の暫定的な研究計画をご紹介します.
_________________
視覚的に理解可能なメタファを用いたWeb学習支援システムの提案
《研究の背景となるキーワード》
・自己制御学習と学習方略
近年,学習者が課題達成に向けて学習をする際の,自己制御学習の研究が進められており,これは教育心理学上の主要なテーマでもあります.自己制御学習には種々の定義が存在するが,「学習者が自身の学習目標を設定し,その目標達成に役立つように自身を認知,制御していく能動的で構成的なプロセス」という定義が包括的です.自己制御学習を行う際の学習は,学習方略(=学習の効果を高めることを目指して意図的に行う活動)として知られています.
・CSCL
また,複数の学習者が,コンピュータを用いてネットワーク上にグループを作り,助言や相談をしながら,一つの問題を解決させていくという学びのスタイルは,CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)として注目されてきています.
・SNSとGUI
その一方で,近年のICTの発展によって,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が急速に発達し,他者とのコミュニケーションの場をWeb 上につくり上げることが容易になってきています.このようなSNSではコミュニケーションを促進するために,ユーザに直感的な操作を促すGUIの設計が望まれています.
《研究の目的と概要》
このような背景から,Web上に設けられたコミュニティに,学びの場を設けるということは,自然で効果的であると考えられます.そこで私の研究では,直感的に理解可能なメタファを用いたGUIという形で学習者間の学習状況を可視化し,効果的な自己制御学習をWeb上で支援するシステムの開発を行いたいと考えています.
同一の達成目標を有する複数の学習者が,自身の選択した学習方略の妥当性をシステム上のメタファを用いたGUIを用いて確認し,他者との議論や相談を通じて,より効果的な学習方略を再設定していくことで,効率よく目標へ到達できるようになることを目的として行きたいと思います.
《今後の方針》
①関連研究の調査とその問題点の追求
・Web上での自己制御学習
・学習状況の可視化
・(その他)
②効果的なメタファの設定を含むシステム全体の構成決定 + 方法の決定
③実装
④実践
⑤評価
___________
また,上記の内容に加えて,最近興味のあるキーワードとして,実際の対面形式の授業とWebでの授業を混ぜながら授業を進めていく「ブレンディッド授業」があります.これも現在の研究状況をレビューしながらアイディアの素にしていけたらと考えています.
自分でもこの研究が今後どのように成長していくかわかりませんが,雨風に負けないようにしっかりと根を張り巡らせながら,必要があれば他領域からの肥料を与え,修士論文という立派な樹になるよう育てていきたいと思います.
どうぞよろしくお願いいたします.
2013.04.29
みなさま、ごきげんよう。修士3年の早川克美です。
昨年半年は,勤務先の大学の教員業務に専念するべくお休みさせていただき,
この4月から研究を再スタートさせたばかりです.(だから3年生です)
山内先生.ファシリテーターの高橋先生,研究室のみなさんに支えられて
感謝しつつ.ラストスパートをかけねば!と決意新たな春です.
さて本題です。
年度のはじめに際し、修士研究計画をご紹介いたします。
【研究テーマ】
「ラーニング・コモンズにおける学習空間および学習支援の現状と大学生の学習行動の実態に関する研究」
【研究の目的と意義】
ラーニングコモンズを対象とした研究では、米国ならびに国内の事例研究や、ラーニング・コモンズの定義,学習支援のありかたに関する指摘や調査研究が徐々に進められつつあります。しかし、ラーニングコモンズの計画に際して、想定された学習支援がどのように有効であるのか、また問題点は何か、学生中心の評価方法を用いて大学生の学習実態から考察した研究はまだありません。
そこで本研究では、学生中心の評価法により、大学生の学習実態を明らかにし,想定された学習環境の有効性について調査を行います。調査では、ラーニングコモンズを設置している大学でラーニング・コモンズを利用している学生を対象に、質問紙調査により学生の日常における授業外学習の実態を調査し、観察とインタビューといった質的な調査アプローチを加えることにより、大学生の学習実態およびラーニングコモンズの利用実態を明らかにするものです。
また,ラーニング・コモンズを計画・運営している職員に対し,計画内容をインタビューし把握します.これにより,学生の学習行動実態と想定された学習環境との対比を行い,評価をするとともに課題を抽出します.そして、ラーニングコモンズの計画において、空間・人工物からどのような学習支援が可能となるのかを提示し、未来の学習空間への可能性につながる有用な示唆を示すことを展望とします。
【研究の仮説】
今日の様々な共同体で行われる学習の75%以上は、インフォーマルな学習が占めている(Conner,2009)と指摘されることからも、授業時間外での活動も含め、学生の学びの実態を捉えていくことが重要であると考えます。
インフォーマルな学習の実態を調査し、明文化することにより、大学生の学習実態と学習空間の関係にパターンを見出すことによって、学生本人や教職員が意識していない場面で「学習」が発生しているというケースをピックアップし、そして、「学習が発生している空間」で何故「学習」が起こっているのか?どのような空間が学習を支援しうるのか?について考察を試みたいと考えています。
【研究の方法】
(まだ検討中ですが現在考えている内容です.)
1.PBLを実施している大学のラーニング・コモンズの利用動線実態調査
2.ラーニング・コモンズを利用している大学生に対し、質問紙調査〜インタビュー調査
3.ラーニング・コモンズ運営者(計画者)への計画内容と実態把握のインタビュー調査
4.1〜3をもとに分析
【今後に向けての課題】
●調査方法・分析方法の確定
●質問紙の項目設定、調査のスケジュール。
●評価のための原理・指標をもつこと。
課題が山積みですが、ひたすら積み上げて一つ一つの課題をクリアさせていきます。
2013年度もどうぞよろしくお願いいたします。
【早川 克美】