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2021.07.13

【研究テーマ紹介】EFLでの会話を促進する事前学習に関する研究(D2 井坪葉奈子)

こんにちは、D2の井坪です。
博士課程も2年目に突入しました。研究の大枠は変わっておらず、「日本の大学生が、外国語としての英語(EFL)での会話に積極的に参加するにはどうすればいいのか」ということについて引き続き考えています。

国際化が進む日本の高等教育現場では、多様な背景を持った国内外の学生が関わる場面が増えてきています。そのような場のひとつとして挙げられるEMI(English-Medium Instruction:英語で行う授業)は、留学生や国内の大学生が、共に英語を使って、教養・専門科目を学ぶ場です。
しかし、英語での会話や授業に参加することに困難を感じる英語学習者は多いようです。

私がこの研究を行おうと思った背景には、小学6年生でスリランカのインターナショナルスクールに通うことになった時のエピソードが強く関係しています。
インターナショナルスクールでは、全ての授業が英語で行われており、クラスメイトも先生も、全員が英語でコミュニケーションを取っていました。
ほぼ英語がわからない状態でそこに放り込まれた私にとっては、友達を作ることも、授業についていくことも、だいぶハードルが高かったように思います。

特に、授業では「多分答えがわかっているけれど、英語でなんと言えばいいか自信がない。なんとなくこうかなと思う言い方はあるけれど、英語が間違っていたら恥ずかしいから手は挙げないでおこう・・・」となったことが、数えきれないほどありました。
上述した、英語での会話や授業への参加に困難を感じている状態です。
唯一、私が自分らしくいられるなと思っていたのが、英語を母語としない生徒だけが集められているクラスにいる時でした。みんな英語を勉強中の身なので、お互いに遠慮せず話すことが出来て、そこでは「これは正しい言い方なのだろうか・・・?」といったことも意識しすぎることなく、活発に発言できていたように思います。
そこで初めて、英語力の問題だけではなく、環境によって、話すことが出来るかが決まる節があるのでは、と思った気がします。
では、どのような環境なら話しやすいのか?話すことが出来るのか?というのが、今の自分の研究です。

この研究を進めることで、あの頃の自分や、あの頃の自分と同じようなもどかしさを感じている人の助けになれればいいなと思っています。
長い道のりではありますが、研究の宛先となる人々のことを常に心に留めながら、残りの道中も進んでいけるように頑張ります!

【井坪葉奈子】

2021.07.05

【研究テーマ紹介】対話型鑑賞において知識構築を促すファシリテーションに関する研究(D5 平野智紀)

D5の平野智紀です。社会人院生として博士課程に入学してから、いつの間にか、院生の中でも古株になってしまいました。私はアート鑑賞の一手法である対話型鑑賞のファシリテーションについて研究しており、今年度は博士論文の審査を受ける予定です。他の院生のみなさんが自身のことを書かれているので、私も、これまで書いていなかった、なぜこの研究をするに至ったかについて紹介したいと思います。

私の修士課程での研究は、対話型鑑賞ではなく、ミュージアムでのインフォーマル学習についてでした。ある会で修士研究について発表させていただいたとき、「そういえば京都におもろいことをやってる福さんという人がいてな。週末に鑑賞会があるんやけど」という情報をいただき、京都造形大(当時)でやっていたACOP:アート・コミュニケーションプロジェクトの秋の鑑賞会に急きょ飛び込んでみたのが、私の対話型鑑賞との出会いです。

ACOP:アート・コミュニケーションプロジェクト(京都芸術大学)

ACOPでは毎年、アートプロデュース学科1回生の必修授業として対話型鑑賞のトレーニングを行っており、その成果発表会が秋の鑑賞会でした。ここでお会いしたのが、MoMAでエデュケーターの経験があり、アメリア・アレナスを紹介して対話型鑑賞を日本に広げた立役者である、福のり子先生でした。巻き込み力の高いパワフルな先生で、鑑賞会の後の打ち上げで「平野くん、せっかくやから、(ACOPの)報告書にレポート書いてくれへん?」と言っていただいたのを皮切りに、数年間でいろいろなプロジェクトをご一緒しました。印象に残っているのは、東京大学CoREFと連携した「ロボットと一緒にアートを見よう」や、関西アートビートの「ミュゼオバトル」など。自身でも、対話型鑑賞ワークショップ「まれ美:まれびと美術館ナイト」を企画するようになりました。

私はその後、機会をいただいて「六本木アートナイト」や「あいちトリエンナーレ」といったアートプロジェクトでボランティア育成を担当するようになりました。これにより、自身でワークショップを企画するだけでなく、対話型鑑賞のナビゲイター(ファシリテーター)育成に関わることが増えました。この頃には、博物館学の教科書で一節設けられて解説されたり、アート思考の本で方法が紹介されたりするぐらいには、一時期からすると対話型鑑賞は広く普及してきて、実践者の数も増えていました。そんな中、私自身が実践者のみなさんにどのように貢献できるかを考えた結果、研究者として対話型鑑賞の研究をするに至っています。

博士論文をまとめるにあたって痛感したことは、研究的には、対話型鑑賞は心理学研究に基づく方法論ですが、その理論的背景が十分に理解されていないこと、実践的には、一口に対話型鑑賞といっても、それが取り入れられる文脈によって、そのねらいも、実践デザインやファシリテーションも異なることです。この課題に自分なりに応えることができているかどうか、まずは博士論文を世に出せるよう、がんばっていきたいと思います。

平野智紀

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