BLOG & NEWS

2007.06.30

【イベント】 TREEワークショップ&シンポジウム

▼ワークショップ1「駒場アクティブラーニングスタジオワークショップ」において、山内がコーディネータを務めます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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TREEワークショップ&シンポジウム2007
- 大学生とメディアの"今"を探る -

2007年7月27日(金)東京大学駒場キャンパス
主催:東京大学 教育企画室
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■趣旨
TREEプロジェクト (Todai Redesigning Educational Environment:東京大学教育環境リデザインプロジェクト)は、「ITを活用した東京大学の教育環境の改善」を目的とする全学プロジェクトです。
教育企画室の企画のもと、各学部、研究科、教育部によって推進されています。

TREEプロジェクト
http://tree.ep.u-tokyo.ac.jp/

TREEプロジェクトでは、2005年のプロジェクト開始以降、毎年シンポジウムを開催し、学内外から200名程度の方々のご参加をいただいております。

今年は「大学生とメディアの"今"を探る」という統一テーマのもと、
1)教育の情報化の最新動向
2)教育コンテンツの著作権処理、開発の実務(学内限定)
3)大学生のメディア利用の実態
などを扱うワークショップとシンポジウムを企画しました。

「大学生をとりまくメディア環境の発展のスピード」は、教育の情報化の進展よりもずっと早く、いまや日進月歩です。TREEワークショップ・シンポジウム2007では、大学生を取り巻く教育メディア環境の「今」の実像をあますところなくお伝えすることができると思います。

本ワークショップとシンポジウムは、大学において教育情報環境の整備に従事なさっている方、教育の情報化を推進している方、大学生をとりまくメディア環境のトレンドについて知りたい方をメインターゲットにしております。

入場は無料です。
ふるってご参加いただければ幸いです。

東京大学 教育企画室長 岡本和夫
東京大学 TREE会議議長 藤原毅夫
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■日時と場所
○7月27日(金曜日)10時 - 12時
【TREEワークショップ1】
・駒場アクティブラーニングスタジオワークショップ
・東京大学駒場キャンパス 17号館 2F
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/jpn/kyoyo/map.html

○7月27日(金曜日)13時 - 17時
【TREEシンポジウム】
・「大学生とメディアの今をさぐる」
・東京大学大学院 数理科学研究科 大講義室(B1)
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

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■参加費、および募集定員
参加費は無料です
懇親会は3000円を申し受けます

・TREEワークショップ1 学内・学外 50名
・TREEシンポジウム   学内・学外 250名

※ワークショップはメディアの取材はご遠慮下さい
※参加申し込みは一番下のフォームに必要事項をお書きの上、tree_symposium@tree.ep.u-tokyo.ac.jpまで7月15日までにご返送下さい

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■TREEワークショップ1の内容
「駒場アクティブラーニングスタジオワークショップ」

主催:東京大学 教育企画室
共催:東京大学 教養学部附属教養教育開発機構
企画:東京大学 大学総合教育研究センター
マイクロソフト先進教育環境寄付研究部門
協力:東京大学大学院 情報学環

コーディネータ:望月俊男(大学総合教育研究センター)
        山内祐平(情報学環)
サポーター:林一雅(教養学部附属教養教育開発機構)

○ご挨拶
浅島誠(東京大学 副学長理事)

○企画趣旨
(10:00-10:15)

○ラーニングスタジオ型教室の現在
(10:15-10:30)

○ワークショップ
(10:30-12:00)
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■TREEシンポジウムの内容
「大学生とメディアの今を探る」

主催:東京大学 教育企画室
企画:東京大学 大学総合教育研究センター
TREEプロジェクトチーム

コーディネータ:中原淳(大学総合教育研究センター)
サポーター:神谷真紀(大学総合教育研究センター)

○ご挨拶
岡本和夫(大学総合教育研究センター)
(1:00-1:15)

○特別講演
清水康敬(独立行政法人メディア教育開発センター)
(1:15-2:05 : 質疑10分こみ)

○休憩
(2:05-2:15)

○仮想環境「セカンドライフ」に出現した教育環境
三淵啓自(デジタルハリウッド大学院大学)
(2:15-2:55 : 質疑10分こみ)

○iTunes U:携帯型音楽プレーヤを活用した教育リソースの配信
坂本憲志(アップルジャパン 教育プログラム推進)
(2:55-3:35)

○休憩
(3:35-3:45)

○日本社会の情報化の特徴と高等教育
木村忠正(東京大学大学院 総合文化研究科)
(3:45-4:25)
・・・大学生のSNS、blog利用調査などの側面から

○東大での取り組み1
知の構造化センター
松本洋一郎(東京大学大学院 工学系研究科)
(4:25-4:55)  

○東大での取り組み2
TREEプロジェクト
藤原毅夫(大学総合教育研究センター)
(4:55-5:15)

○懇親会
司会:岡本和夫(大学総合教育研究センター)
(5:45-7:30)

〆申込書・ココカラ---------------------------------
TREEワークショップ&シンポジウム2007
参加申し込みフォーム

下記の必要事項をご記入のうえ、
tree_symposium@tree.ep.u-tokyo.ac.jpまで7月15日までに
メールください

氏名:
フリガナ:
ご所属 :
メールアドレス:

※参加希望のセッションを下記よりお選び下さい。
参加を希望しないセッションについては、削除をお願いします。

1.TREEワークショップ1 参加希望
「駒場アクティブラーニングスタジオワークショップ」

2.TREEワークショップ2<学内限定> 参加希望
「教育の情報化と著作権ワークショップ」

※ワークショップ2参加希望の方へ:
教育と著作権に関して、事前に
具体的な関心や質問についてコメントいただければ幸いです。
質問や関心:(                  )

3.TREEシンポジウム   参加希望
「大学生とメディアの今を探る」

4.TREE懇親会      参加希望
(懇親会参加は当日3000円を申し受けます)

〆申込書・ココマデ---------------------------------


*今回いただいた個人情報につきましては、TREEプロジェクトから
ご案内を差し上げる以外の目的で利用することは一切いたしません。
また、ご本人の同意なく、第三者に提供することはございません。


■本ワークショップとシンポジウムに関するお問い合わせは
TREEワークショップ&シンポジウム2007 事務局
tree_symposium@tree.ep.u-tokyo.ac.jp まで

2007.06.29

【受験生に薦める1冊】「メディア・ビオトープ」

水越伸,2005『メディア・ビオトープ』紀伊国屋書店

この本に初めて出会ったのは学部時代で,院試勉強の際にも何回も再読しました。
日本のメディアの「生態系」の問題点やそのあり方について,非常にわかりやすく説明してくれていると思います。

この本の大きな特徴は,メディア表現活動が継続的な活動として展開,発展し,人々に根付いていくための方法を,生き物の世界に向けた人間の働きかけ方の1つである「ビオトープ」に隠喩して表現していくところにあります。その際,難解な専門用語を使用せず,著者が描写したイラストを各所に埋め込むことで,そのイメージをかき立てながら説明していくことも本書の特徴だと思います。

前半では,「日本のメディアの生態系」の問題点として,強大な杉のようなマスメディアの人工林が立ち並び,地方紙やケーブルテレビなどといった小さなメディアが生息しにくくなっている点を挙げています。
そのような問題を打開しうるモデルとして取り上げられるのが「ビオトープ」です。小さく,身近な場所もまた重要な「生態系」の一部であることをそのままメディアに置き換え,個々の活動の重要性を示します。また,個々の「ビオトープ」は「点」としてその中での生態系を維持するだけではなく,互いにネットワークとしてつながった「面」として地球の表面を覆っていかなければいずれは廃れていくことに触れ,それをそのままメディアに当てはめて説明していきます。

後半からは,この「メディア・ビオトープ」を形作っていくための3つの営みとして,「メディア実践」「メディア・リテラシー」「メディア遊び」の3層構造について説明していきます。「メディア・ビオトープ」を支え,その中の"あな"や"すきま"に棲みついて活動いく中心的な人物を「球根」に例えるなど,最後まで一貫して生態系を比喩とした説明による展開は変わりません。

個人的には,「メディア・ビオトープ」がネットワークでつながっていく様子は,実践共同体のそれに似た側面があるのではないかと思います。読む人それぞれの持つ背景に近いところからメディア論を読み解いていけるのではないでしょうか。
[坂本篤郎]

2007.06.25

【イベント】 Keyword Forest開催中

福武ホールの工事用仮囲いを用いたイベント・Thinking Forestの第2弾として、Keyword Forestを展開中です。

06252007036.jpg

Keyword Forestは、学環・学府所属の全員から広く募集した約800の研究キーワードを視覚化した知の森です。全体のデザインは、ゆるやかに有機的に連携する学際的な情報学環の知のありようを植物が繁茂する森の生態系のイメージとしてとらえ、仮囲い上を広く使ったグラフィックデザインです。

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「学び」の樹もあります。本郷キャンパスにおいでの際はぜひお立ち寄りください。

http://thinkingforest.info/kforest/

2007.06.23

【受験生に薦める1冊】「社会を読みとく数理トレーニング」

松原望[著]2004『社会を読みとく数理トレーニング』東京大学出版会

人間社会のメカニズムは,なかなか複雑で一見してわかるものではありません.そして,社会にはその複雑さを読み解くための情報(思考材料)が氾濫しています.これらの思考材料を読み解くためには,統計的データの分析力や,確率などの計量的な思考方法が有益といえるでしょう.

本書は,計量的思考を習得し意思決定へと総合していく基礎力を養う事を目指した基礎演習の本です.
第1章から第3章は統計の見方と利用のしかた,第4章から第6章は意思決定と確率,第7章から第10章はゲーム理論入門,第11章から第12章は政策と決定のしくみ,第13章から第15章は計量社会科学研究にわかれています.(まえがきより)

研究を進めていく上では,計量的な思考というのはさけては通れないものです.本書は実例を用いて説明されており,数字上の計算例は出てきません.そういった意味で統計にふれたことのない方にも入門書としておすすめしたいと思います.

[寺脇由紀]

2007.06.15

【イベント】 知の構造化センター設立記念ワークショップ

▼総長、学環長を始め、東大を代表する研究者による「知の構造化」に関する最新の情報が得られます。ぜひ、ご参加ください。

東京大学 知の構造化センター設立記念ワークショップの御案内

 東京大学では、本年6月1日、自律分散的に創造される膨大な知識を構造化し、現実
の価値に結びつけることを目的とし、知の構造化センターを設立いたしました。
知の構造化センターにおいては、文理、医工協働により、新しい知的価値、経済的価
値、社会的価値、文化的価値の創出を目指し、知の構造化の方法論を確立するととも
に、成果を速やかに実装することで、知の構造化の具現化を推進します。

 知の構造化センター設立に際し、今後の研究開発活動を明確にするために、以下の
要領でワークショップを開催する予定です。
多数の皆様の参加を期待しております。

日時: 2007年6月23日(土) 13:30~17:30
場所: 東京大学 本郷キャンパス
理学部1号館中央棟 小柴ホール
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_01_j.html
参加費:   無料
使用言語: 日本語

プログラムURL:
http://chishiki.t.u-tokyo.ac.jp/event/cks_ws_20070623.html

13:30-14:10 知の構造化センター設立について
センター長 工学系研究科 松本洋一郎 研究科長
小宮山宏 東京大学総長
文部科学省 研究振興局 徳永保 局長
14:10-14:40 基調講演
知の構造化と百学連環
副センター長 情報学環 吉見俊哉 学環長
14:40-15:40 知の構造化センター講演I
知的価値創出
教育における知の構造化-知の統合と活用
大学総合教育研究センター 藤原毅夫 教授
社会的価値創出
医療知識の構造化・可視化
医学部付属病院 永井良三 教授
15:55-16:25 関連プロジェクト講演
学術統合化プロジェクト
学術統合化で生物進化を理解する
新領域創成科学研究科 星山大介 助教
16:25-17:30 知の構造化センター講演II
経済的価値創出
材料ナノテクノロジー知識基盤の構築と活用
工学系研究科 野田優 助教
構造化手法開発
知の構造化とセマンティックコンピューティング
産業技術総合研究所 情報技術研究部門 橋田浩一 部門長
今後の活動計画
副センター長 工学系研究科 堀井秀之 教授


参加ご希望の方は、下記知の構造化センター事務局へ、以下の参加申込み様式にて、
電子メールまたはFAXでお申し込みください。

なお、9月にシンポジウムを予定していますので、
添付名簿に、関係者のご紹介を併せてお願いいたします。

問合せ先及び事前参加申込み先
〒113-8656 文京区本郷7-3-1
東京大学 知の構造化センター事務局 担当 沼尾
sec-cks@t-adm.t.u-tokyo.ac.jp
Tel: 03-5841-8800 Fax: 03-5841-8917

--------(知の構造化センター設立記念ワークショップ参加申込み)---------

To: sec-cks@t-adm.t.u-tokyo.ac.jp

東京大学 知の構造化センター設立記念ワークショップに参加を申込みます。

氏名:
大学名/会社名:
専攻名/部署名:
役職名:
郵便番号:
住所:
電話:
FAX:
Eメール:
備考:

2007.06.14

【受験生に薦める1冊】「コミュナルなケータイ」

水越伸[編著]2007『コミュナルなケータイ』岩波書店

2004年にMELLプロジェクトの中ではじまったケータイ研究のプロジェクト、MoDeプロジェクト(Mobiling & Designing Project)の成果を、メンバーがまとめた本。「コミュナル」という聞き慣れない言葉は、「共有の・協働による」という意味です。

ケータイはパーソナルなコミュニケーションのメディアであるとされがちです。しかし、そのような極私圏とパブリックな公共圏との間に、市民が自律的に関われるコミュナルな空間(ビオトープ的な空間、という言い方もできるでしょうか)を生み出すことができるメディアとして、ケータイは多くの可能性を秘めています。この本では、ケータイをめぐる歴史社会的研究と批判的メディア実践(ワークショップ)のサイクルの中で行われてきたMoDeプロジェクトの研究の成果・記録を見ることができます。今年3月に出版されたばかりの、メディア論におけるケータイ研究のまさに最前線の本です。

第1章ではケータイをめぐる問題状況とMoDeプロジェクトの視座が示され、第2章ではケータイを異化するワークショップと歴史研究が並びます。続いて第3章、第4章では、今あるケータイを超え、それを編みかえていくさまざまな事例が報告されていきます。各章はどれも刺激的で遊び心にあふれており、全く退屈することがありません。

この本には、フィンランドと日本で行った「ケータイの風景を演じる」ワークショップ、ケータイ・カメラを使った子ども向けの「世にもまれな地図作り」ワークショップ、同じくカメラを使った壮大な連想ゲーム「ケータイ・カンブリアン」ワークショップなど、毎日アタリマエのように使っているケータイを異化し、超え、編みかえることを意図した数多くのワークショップの実践事例が報告されています。その意味で、この本はワークショップの本でもあると言えます。

批判的メディア実践とは何か、ワークショップとはどのようにデザインされるのか、理論と実践のバランスをどうとるかなど、学ぶことのできる点は多いと思います。BEATの「おやこdeサイエンス」や「なりきりEnglish」もケータイを用いたモバイルラーニングのプロジェクトですね。しかし、そもそもケータイとはいったい何なのか。それを鮮やかなやり方で問い直すメディア論的な視座は、教育工学を研究する上でも有用なものだと思います。

[平野智紀]

2007.06.08

【イベント】新しい教育課題に教育工学は何ができるか

日本教育工学会 2007 年度 6 月シンポジウム 「新しい教育課題に教育工学は何ができるか-現代的問題に挑む-」 の指定討論者として山内 が登壇いたします。
無料・一般公開シンポジウムですので、お気軽にお越しください。

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日本教育工学会 2007 年度 6 月シンポジウム

http://www.jset.gr.jp/sympo/sympo_2007.html

日時:2007 年6 月16 日(土) 10:00-16:00

会場:東京工業大学 大岡山キャンパス 西9号館 ディジタル多目的ホール
東京都目黒区大岡山2-12-1(東急目黒線・大井町線 大岡山駅下車 徒歩1分)

参加:参加希望者は、当日受付にて直接お申し込み下さい。
(参加費として資料代500円をいただきます。開始30 分前より受付を行っております。)

午前の部:10:00-12:00 シンポジウム1
「高等教育における教育実践の成果をどのように共有し活用するか」

■司会者 永野 和男 (聖心女子大学 教授)

■登壇者
○「大学教育実践の共有化とネットワーク形成」
松下 佳代 (京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)
○「高等教育研究における開発型アプローチの可能性と課題」
近田 政博 (名古屋大学 高等教育研究センター 准教授)
○「大学の授業技法の体系化とFD研修への適用」
赤堀 侃司 (東京工業大学 教育工学開発センター 教授)
○「教師教育改善のための取組とその共有化」
山西 潤一 (富山大学 人間発達科学部 教授)

午後の部:14:00-16:00 シンポジウム2
「新しい教育課題に教育工学は何ができるか-現代的問題に挑む-」

■司会者 美馬 のゆり (公立はこだて未来大学 教授)

■登壇者
○「『教育ルネサンス』から見えてきたこと」
中西 茂 (読売新聞解説委員 教育ルネサンスデスク)
○「情報社会で快適に生きるには ITによる脱ニート・脱フリーター」
加納 寛子 (山形大学 学術情報基盤センター 准教授)
○「おやこde食育:日常生活における親子の食育実践を支援する学習環境の構築」
中野 真依 (ベネッセコーポレーション ベネッセ教育研究開発センター 研究員)

■ 指定討論者
山内 祐平(東京大学 情報学環 准教授)

2007.06.08

【受験生に薦める1冊】「アフォーダンス - 新しい認知の理論」

ゲシュタルト心理学による"こころ"というデカルト以来のメカニズムへの反論からはじまる本書は,認知科学や生態心理学にあまり馴染みのない読者をも惹き付けるだけの魅力が詰まった1冊だと思います.難解な理論が,驚く程容易な文章(!)で流れるように説明される本書は,アフォーダンスを始めとした生態学的心理学のキーワードへの良い羅針盤となってくれるのではないでしょうか.

視覚とは網膜への画像の投影であるという古典的理論には,網膜という感覚器官への「点刺激」を「推論機構」によって処理する過程が必要であるという前提がありました.ここに現実の世界との不整合性を見抜いたギブソンは,視覚の理論を拡張していきます.点と線から面へと,面からレイアウト,動きへ,そして動きから包囲光へといたる理論拡張が,ひとつの流れとして描かれるさまは本書の醍醐味でもあります.この結果,ギブソンは視覚は網膜を必ずしも必要としないという,とてもラジカルな理論へとたどりつくのです.

情報は,光の中にある.それまでの情報処理モデルを前提とした(つまり頭の中に情報があるとした)知覚理論とは異なる,ひとを包囲する光の中にこそ情報があるという知覚理論,生態学的認識論の誕生でした.

そのような情報は,"動物との関係として定義される環境の性質"としてのアフォーダンスも提供します.難しく,誤解される傾向があるアフォーダンスも,本書の流れの中でとらえれば,環境が動物に提供する"価値"として,"動物にとっての環境の性質"として明瞭に浮かび上がってくるでしょう.

さらに,アフォーダンスを知覚するための身体を考えれば,それまでの身体の動きを細かく分割して制御しているという運動制御モデルは相容れないものであることが主張されます.そこでギブソンは,協応構造や視覚による運動制御,知覚と行為のカップリングとしての"共鳴・同調モデル"といった新しい理論を打ち立てていくのです.

著者であり,日本の生態学的心理学,アフォーダンスの第一人者でもある佐々木先生の筆による格好の入門書でもある本書は,しかしながら,
・知覚にとって"環境"がどのようなものであるのか
・知覚が獲得する"不変項"がどのようなものであるのか
・そして知覚のために身体はどのような"システム"であるのか
を深く考えさせ,同じく佐々木先生の著書である「アフォーダンスの構想」やギブソンによる「生態学的視覚論」といった,より高度な内容を知りたくさせる,そんな良書でもあると思います.

佐々木正人 (1994) 「アフォーダンス ー新しい認知の理論」岩波書店

2007.06.02

【イベント】大学の新しい学習空間を構想する

▼山内が代表理事をしているNPO法人 Educe Technologiesで以下のイベントを行います。どなたでも参加いただけます。(無料Web会員としてご登録をお願いします。)どうぞおこしください。

【NPO法人 Educe Technologies Web会員イベント】
- Educe Cafe: 大学の新しい学習空間を構想する -

2007年5月、東京大学駒場キャンパスに、東京大学初のIT支援型協調学習教室
「駒場アクティブラーニングスタジオ」がオープンしました。*1
このカフェイベントでは、変化の時期を迎えている大学において、新しい学習空間を
どう作っていくのか、コーヒーを飲みながらみなさまと一緒に考えていきたいと思っ
ています。
大学だけでなく、広い意味で学習環境に関心がある方の参加も大歓迎です。
学生の方から大学・企業にお勤めのかたまで、ぜひEduce Cafeにおいでください!

■日時:2007年6月11日(月) 18:30-20:30
(18:00-18:30まで総会をしております。こちらもご参加いただけます。)

■場所:東京大学 大学総合教育研究センター
マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門 (MEET)
東京大学 本郷キャンパス 第二本部棟 4F 403

営団地下鉄丸ノ内線・都営地下鉄大江戸線 本郷三丁目 より 徒歩10分
http://utmeet.jp/access/image/contact-map-b.gif

■プログラム

<トーク 1> 「Learning Studioという発想-そのルーツと実現までの道のり」
山内 祐平 (東京大学 大学院 情報学環 准教授/Educe Technologies代表理事)

東京大学 駒場キャンパスにオープンした「駒場アクティブラーニングスタジオ」、
本郷キャンパスに2008年2月に開設される「福武ラーニングスタジオ」の概要を
ご紹介します。また、これらの教室の背景にあるコンセプトや、実現までの悪戦苦闘
についてお話しします。

<トーク 2> 「学習空間と情報技術の融合-Tablet PCを用いたソリューション」
望月 俊男 (東京大学 大学総合教育研究センター 客員准教授)

マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門 (MEET)で開発されたソフトウェアを
デモしながら、新しい学習空間を支える情報通信技術のあり方についてお話ししま
す。

・MEET Video Explorer
NHKアーカイブスの映像を探索して図にまとめ、探求課題を探す

・MEET eJournal Plus
eジャーナルなどの論文に線を引きながら読み、図にまとめて、レポートを作成する

<ディスカッション> 新しい教室をデザインする
グループに分かれて、新しい教室のデザインについて、自由にディスカッションして
いただきます。みんなで新しいアイデアを出して、共有しましょう!

※終了後 懇親会を開催いたします。ふるってご参加ください。

■定員:20名 (先着順とさせていただきます。)

■参加費:無料 (コーヒー・サンドイッチなどのサービスあり)

■参加方法:
下記の参加フォームから、お申し込みをお願いします。
http://www.educetech.org/regist/ec_regist.html

※Educe TechnologiesのWeb会員登録がお済みでない方は、お申し込み後、
以下のアドレスより、会員登録手続きをお願いいたします。
(Web会員はメールにより各種イベントの案内を受け取ることができます。
年会費等はかかりません。)
http://www.educetech.org/index.html (法人概要)
http://www.educetech.org/regist/webform.html (Web会員登録)

■主催:NPO法人 Educe Technologies
共催:東京大学 大学総合教育研究センター
マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門

(企画責任者:NPO法人 Educe Technologies 代表理事 山内 祐平)

*1 http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/news/

2007.06.01

【受験生に薦める1冊】「基礎情報学」

『基礎情報学』 西垣 通 著 NTT出版 ,2004

この本は学環の先生である西垣教授が書いた本です。先生が行う学環の授業の中でも、この本は教科書として使われています。

本の内容をすぐに紹介してもいいのですが、最初に、西垣先生が授業中に話していたエピソードをひとつ紹介します。そのエピソードを要約すると以下のようになります。
-----
いままで「学際」と名のつく様々なイベントにでた。そこには、文系理系問わずに様々な人が集まっていた。しかし、それらはお祭りとして集まっているだけで、まったく話が噛み合ない。そこで私は、共通の土台となる情報学の基礎。すなわち「基礎情報学」というものを作ろうと考えたのである。
-----
元々の話から多少私の解釈が入っているかもしれません。

ただ、この話は授業の最初の方にしたのですが、いまでも頭の中に残っている言葉です。

この本の内容をシンプルにいえば、「情報」という様々な分野で語られた概念を、生命情報,社会情報,機械情報に分類し、情報の意味、伝播ということについて論じていくものです。様々な概念が出てきますが、あれだけ複雑な概念をすっきり語る事ができるのは、西垣先生ならではと思います。

「学環」という組織は、まさに「学際的」であり「情報」を取り扱った組織です。受験にあたって、学環に所属する先生の著書を読むのはひとつの方法ですが、それだけではなく、学環での生活を豊かにする意味でも読んでおきたい一冊だと思います。

[舘野泰一]

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