2020.12.01
山内研究室では2020年4月より世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、STEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています(プレスリリースはこちら)。
当プロジェクトでは「研究プロジェクトの中間成果をみなさまにお伝えしたい」「このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい」という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。「アメリカのSTEAM教育」をテーマにした第1回の資料はこちらから、「韓国のSTEAM教育」をテーマにした第2回の資料はこちらからご覧になれます。
このたび「日本のSTEAM教育」シリーズの第1回目として、「『未来の教室』事業のSTEAM教育」をテーマに「STEAM夜話 Vol.3」(11月26日)を開催しました。経済産業省による「未来の教室」事業は、2018年の第一次提言以来「STEAM」に注目しており、2019年の第二次提言では基本的なビジョンとして「学びのSTEAM化」を掲げています。こうした「未来の教室」が掲げるSTEAM教育とはどのようなものか、今後展開していくSTEAMライブラリーとはどのような事業なのかについて、浅野大介様(経済産業省教育産業室 室長)、折茂美保様(株式会社ボストン・コンサルティング・グループ マネージング・ディレクター&パートナー)よりご講演いただきました。
参加者のみなさまとのディスカッション・質疑応答では、日本の教育現場での実践方法について意見が飛び交い、活発な会となりました。参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
「未来の教室」事業に関する情報は下記のリンク先からもご覧になれます。
・「未来の教室」とEdTech研究会-第2次提言
・「STEAMライブラリー」事業について
・STEAMライブラリーティザーサイト
特にSTEAMライブラリーティザーサイトでは、現在モニター教師・モニター学校を募集しています。
また、質疑応答の内容は下記のスライドからご覧になれます。
STEAM夜話 Vol.4も引き続き「日本のSTEAM教育」をテーマに開催予定です。また告知をいたしますので、関心のある方はぜひお申し込みください。
2020.11.11
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東京大学大学院 情報学環 山内研究室では、世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、2020年4月1日よりSTEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています。
研究プロジェクトでは、中間成果をみなさまにお伝えしたい、このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい、という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。
これまで、STEAM夜話 Vol.1 では「アメリカのSTEAM教育」、STEAM夜話 Vol.2 では「韓国と中国のSTEAM教育」に関するレビュー成果をご紹介しました。
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第3回となる「STEAM夜話 Vol. 3」では「日本のSTEAM教育」シリーズの1回目として、「『未来の教室』事業のSTEAM教育」に関するご講演をいただきます。
経済産業省による「未来の教室」事業は、2018年の第一次提言以来「STEAM」に注目しており、2019年の第二次提言では基本的なビジョンとして「学びのSTEAM化」を掲げています。日本におけるSTEAM教育を先導する取り組みの一つと考えられます。
その一方で、「未来の教室」事業が掲げる「STEAM」のイメージは、これまでのSTEAM夜話で見てきたアメリカ、韓国、中国のSTEAM教育とは必ずしも一致しません。
では、「未来の教室」事業は、一体どのような教育を想定し「学びのSTEAM化」を提唱しているのでしょうか。また、そうしたSTEAMのイメージが、STEAMライブラリーをはじめとする今後の事業にいかに反映されていくのでしょうか。
こうした点について、経済産業省教育産業室および運営事業者であるボストンコンサルティンググループからゲストにお越しいただき、お話をいただきます。
会の後半ではZoomのブレイクアウトルーム機能を活用し、研究プロジェクトメンバーやゲスト、参加者のみなさまが交流する時間を設けますので、「未来の教室」事業に関する質疑応答やネットワーキングの機会になればと考えています。
「夜話」という言葉には「夜に談話すること」と「気軽に聞ける話」という意味があります。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けオンラインでの開催になりますが、お仕事を終えた後、お酒などのドリンクを用意して肩肘張らずに参加いただければ幸いです。
開催日時などを確認いただき、以下のフォームから申し込みください。お申し込みお待ちしています。
https://forms.gle/9sH9B65GbsGADXNX7
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日時:11月26日(木)18時~19時30分
場所:Zoomを利用したオンライン開催(アクセス方法を追ってご案内いたします)
対象:STEAM教育に関心のある教育関係者(教職員、研究者など)
定員:50名
参加費:無料
内容:
・「未来の教室」事業におけるSTEAMの捉え方について
(ゲスト:浅野大介様, 経済産業省教育産業室 室長,折茂美保様, 株式会社ボストン・コンサルティング・グループ マネージング・ディレクター&パートナー)
・参加者のみなさまとの交流会
(コーディネーター:山内祐平, 東京大学大学院情報学環 教授)
2020.10.31
M1の倉持です。今回は、大学院生が、ゼミで扱っている英語文献とディスカッション内容を紹介するシリーズということで、私からは、春学期に扱った、International Handbook of the Learning Sciencesの第5章:徒弟的学習について紹介します。
徒弟的学習とは、LaveとWengerが1991年に出版した本である『状況に埋め込まれた学習:正当な周辺参加』にもあるような、実践共同体の中で、上級者から徐々に与えられた慣行を習得し、やがて共同体のメンバーとなっていくそのプロセス中にある学習のことです。
授業や何かしらの決まった講座を受けて得られる学習というよりかは、共同体の中に属し、その場で様々な人と相互作用しながら状況的に学習されていく点に着目をしています。
これまでは、上記にもあるように「実践共同体」をフィールドに研究が行われることが多かったのですが、そこでの研究成果を学校教育に持ち込み、学習者に様々な支援を行うことができるのではいか?という視点から、文献では徒弟的学習の学校への応用について、認知的徒弟制のモデル※1を参考にしながら、学ぶ知識、支援の方法、学習課題の順序付け、社会的文脈の構築などの観点から議論が繰り広げられています。
※1 「認知的徒弟制」とは、徒弟制の中にある学びを以下の4つの段階としてモデル化したもの
・徒弟が親方の作業を見て学ぶモデリング(modeling)
・親方が手取り足取り教えるコーチング(coaching)
・徒弟にできることを確認して自立させるスキャフォルディング(scaffolding)
・親方が手を退いていくフェーディング(fading)
今回のディスカッションテーマは「自然科学・社会科学・芸術領域における認知的徒弟制の事例を考えよ。」ということで、3つのグループに別れて、それぞれのグループのメンバーが様々な事例を持ち寄り、議論を行いました。
自然科学チームでは、大学の研究室などの場所を想定しながら、先輩-後輩間で徒弟的な学習が生じているではないかという議論が行われていました。ただ、自然科学らしい認知的徒弟制という点でオリジナリティを出すのが難しいよね、といった話もありました。
社会科学チームでは、教育実習にて、上記の認知的フレームワークをベースとした学習が行われているのではないかといった議論が行われていました。
芸術領域チームでは、美術領域では、モデリングが十分に行われないまま実践させることや、ダンスなどの領域では、ひたすらモデリングを行うことなどがあるなど、部分的に徒弟的に学習が行われているが、認知的徒弟制の4つの段階で熟達していくかは判断しにくいよね、といった議論が行われました。
このような事例を改めて考えてみると、私達が生きる様々なコミュニティの中にはあらゆる箇所で部分的に徒弟的な学習が行われており、そういった、状況的で、ある意味自然発生的な学習が繰り返されるうちに、いつか教える立場になっている、なんてこともあるんじゃないかと思います。
そうして教える立場になったときに、これまで自分が受けてきた指導の方法を鵜呑みにして行うのではなく、今回議論した認知的徒弟制のモデルという考え方を意識して実践してみると、よりよい教授ができるかもしれないです。
参考:
東京大学大学院情報学環 ベネッセ先端教育技術講座 BEAT, Beating 第16号「5分でわかる学習理論講座」第5回:実践を通した学習のなかで知識を獲得する〜「認知的徒弟制」:
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/016.html
2020.10.28
「学習環境のイノベーション」発刊記念ブックイベントを開催することになりました。
デザインマネジメントが専門の立命館大学八重樫教授との対談です。
よろしければご参加ください。
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コロナ禍のうちに始まった2020年度は、のちに「オンライン授業元年」と呼ばれるかもしれません。
対面授業の「再現」を目指す現場の悩みの向こうに、「新しい学びのかたち」は現れるのか…。
学習環境という人の学びをささえる仕組みをデザインする方法について、先駆的に研究・実践してきた東京大学山内教授と、「デザインマネジメント」を研究する立命館大学八重樫教授が、山内教授の新刊『学習環境のイノベーション』第III部を題材に語り合います。
特に「問題解決的デザイン」と「問題創出的デザイン」の2つのダブルループモデルに関する議論、必聴です。
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『学習環境のイノベーション』発刊記念 いま「学習環境のデザイン」を考える
──オンライン授業を超える「新しい学びのかたち」とは?
パネリスト:
山内祐平氏(東京大学教授)×八重樫文氏(立命館大学教授)
開催日:
2020年11月18日(水)19:30- zoom 開場 19:20-
2020.10.23
D4の平野です。大学院生が、ゼミで扱っている英語文献とディスカッション内容を紹介するシリーズです。私からは、International Handbook of the Learning Sciencesの41章:ラーニングプログレッションズについて紹介します。
ラーニングプログレッションズとは、適切な教授が行われた場合に実現する、個々の学習テーマについての比較的長期にわたる概念変化や思考発達をモデル化したもの(山口・出口2011, p.338)です。幼稚園児から大学生までのあらゆる学齢におけるスタンダードやカリキュラム、教授と評価のデザインのための仮説モデルであり、とくに数学と科学における学年を超えた学びのつながりを示すことを提案しています。
文献では、ラーニングプログレッションズの研究方法として、①インタビューや筆記テスト等の横断的アセスメントを行い、各段階の学習者の理解を精緻化する研究、②長期的なデザイン研究により学習者の理解の進展を追う研究、があるとされています。ディスカッションのテーマは、これら2つの視点から、大貫(2016)で述べられている「物質の変換」に関するプログレッションの研究の具体例を考えることでした。
↑「物質の変換」に関するプログレッション(大貫2016, p.43)
①横断的アセスメントチームは、水の状態変化(氷→水→水蒸気)について、身近な素材に関する実験を行った上で、学習者にインタビューすることで、概念の理解度を調査するアイデアを出してくれました。②縦断的デザイン研究チームは、状態変化は理解できているが化学変化が理解できていないレベルの学習者について、どのような教授を行えば適切な方向に理解を導けるかを、デザイン研究として行っていく案を考えてくれました。
私は社会人大学院生で、文献報告として本章を選んだのは、本務先で学力テスト等の大規模アセスメントの実務に携わる経験を長くしてきたことが挙げられます。その中で「AはできているがBはできていない」「両方できていない」「そもそもAとBの基準では判断できない」といった生徒の解答に数多く出会ってきました。
ディスカッションのまとめとして出てきたのは、ラーニングプログレッションズとは、ある意味で、学習科学によるカリキュラムへの挑戦だ、という意見です。科学・数学の何をどういう順番で教えるか、実際の子どもの理解の仕方をみて、研究をベースに、教え方やプログレッション自体も組み替えていくのが、ラーニングプログレッションズ研究です。
GIGAスクール構想により、コンピューターベースドテスティングの推進や、教育ビッグデータの活用がにわかに現実味をもって語られるようになってきていますが、ラーニングプログレッションズは、教育にエビデンスベースを導入するひとつの提案と言えるでしょう。
2020.10.13
大学院学際情報学府の冬季入試が1月から2月にかけて行われますが、それに先立ち研究室の説明会を10/29(木)にオンライン開催いたします。
▶︎山内研究室説明会
10月29日(木)12時から13時まで
12時〜12時10分:研究室の概要説明 (山内祐平)
12時10分〜12時20分:大学院生・スタッフの自己紹介
12時20分〜12時30分:質疑応答(山内祐平)※1
12時30分から13時:大学院生・スタッフとの個別相談 ※2
(ひとりあたり30分程度)
※1 受験の公平性を確保するため、研究計画に関するコメントはできません。
ゼミの運営や研究プロジェクトについて質問を受けます。
大学院生・スタッフとの相談
※2 研究室の雰囲気や研究の内容について聞いてください。
大学院生・スタッフは審査に関わりませんので、研究計画について意見を求めてもかまいません。
参加を希望される方は、研究テーマ(相談する大学院生・スタッフを選ぶ際の参考にします)を書いていただいた上で、iiiylabcontact[atmark]gmail.comにメールしてください。
折り返しZoomのアドレスをお知らせします。
2020.09.14
こんにちは、D1の井坪です。
今回も、小野寺さん、岩澤さんに引き続き、ゼミで扱っている文献とディスカッション内容について紹介したいと思います。
私が前回担当したのは、International Handbook of the Learning Sciencesの36章: Massive Open Online Courses (MOOCs) and Rich Landscapes of Learningでした。
MOOCsというのは、大規模公開オンライン講座のことで、
・何千、何万、時には何十万人が登録できるようにデザインされている
・インターネット接続があれば誰でも登録が可能
・レクチャー、フォーラム、学習者間の交流、テスト、受講証明書の発行などを含む
といった特徴が挙げられます。
ここ数年で、MOOCsのプラットフォームは増えてきており、東京大学もCourseraやedXなどのプラットフォームで、複数のコースを提供しています。
また、日本のプラットフォームのひとつであるgaccoでは、山内先生が講師のお一人となっている「アクティブで深い学びのデザイン」が開講されています。
今回の文献を受けてのディスカッション課題は、「MOOCsのような非同期型オンライン学習、Zoomのような同期型オンライン学習が普及する中で、今後対面学習のあり方はどう変わっていくのか、その価値とともに議論せよ」というものでした。
グループごとに議論した結果、
・休憩時間での会話や、図書館、先生との雑談などから生まれる、偶発的な学習の生起(リソースとの出会い等)はオフラインの方がよいのではないか
・実習やスポーツ、演劇といった身体性を伴う学びの形はオンラインだと難しい
・ビジョンを共有したり、信頼関係を築くといったコミュニティ形成は対面の方がやりやすい
といった意見が出ました。
ディスカッションの中で、対面の方がよい点というのも多く出てきましたが、一方で、マスタリー・ラーニングのように各個人のレベルやペースに合わせた学習はオンラインの方がやりやすい等、オンラインの良さというものについても話し合うことができました。
MOOCsでは、年齢、職業、レベルもバラバラな人々が、それぞれに目的を持って好きなコースを受講することができます。
そこでのほかの学習者との出会いや、学びの自由度は、従来の「学校」における対面での学びとは違った良さがあると感じます。
何事においても対面がいいと思い込むのではなく、オンラインとオフライン、それぞれの良さを理解したうえで、必要に応じてハイブリッド学習の形で組み合わせていくことが、今後重要になってくるのではないでしょうか。
【D1 井坪葉奈子】
2020.08.28
山内研究室では2020年4月より世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、STEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています(プレスリリースはこちら)。
当プロジェクトでは「研究プロジェクトの中間成果をみなさまにお伝えしたい」「このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい」という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。「アメリカのSTEAM教育」をテーマにした第1回の資料はこちらからご覧になれます。
このたび「中国と韓国のSTEAM教育」をテーマに「STEAM夜話 Vol.2」(8月26日)を開催しました。アメリカで誕生したSTEAM教育という概念が、韓国や中国の研究者・教育実践者にどのように受容され「ローカライズ」されていったのかを、論文や報告書のレビューをもとに発表しました。
また今回は韓国・晋州教育大学の孔泳泰先生にゲストとして参加いただき、韓国におけるSTEAM教育の現状をうかがいしました。参加者のみなさまとのディスカッション・質疑応答からも孔先生への質問がたくさん飛び交い、大変刺激にあふれる会となりました。参加いただいたみなさまありがとうございました。
当日発表したスライドと質疑応答の内容は下記にて公開しておりますのでご覧ください。
STEAM夜話 Vol.3は「日本のSTEAM教育」をテーマに開催予定です。また告知をいたしますのでご関心のある方はぜひお申し込みください。
スライドはこちらからもご覧いただけます。
2020.08.07
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東京大学大学院 情報学環 山内研究室では、世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、2020年4月1日よりSTEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています。
(https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/news/#a1373194)
研究プロジェクトでは、中間成果をみなさまにお伝えしたい、このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい、という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。
初回となるSTEAM夜話Vol.1では「アメリカのSTEAM教育」をテーマに、アメリカにおけるSTEAM教育の2つの源流について紹介しました。初回の内容はこちらでご覧になれます(https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2020/05/steamsteam-vol1.html)。
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このたび第2回となる「STEAM夜話 Vol.2」を開催することとなりました。
「STEAM夜話 Vol.2」では「韓国と中国のSTEAM教育」に関するレビュー成果をご紹介します。
2006年にアメリカで提唱されたSTEAM教育は、キム・ジンス教授を介して早くから韓国に紹介され、2011年からは本格的に実践されています。中国でもプログラミング言語Scratchを用いた情報教育に関する研究グループによって2013年ごろから紹介が進み、2016年にはメイカー教育に並んで国家的な政策目標に据えられています。
韓国と中国がいかにSTEAM教育を受容し「ローカライズ」していったのかは、日本においてSTEAM教育を実践していくうえでも示唆に富むのではないかと考えられます。
また、今回は韓国・晋州教育大学の孔泳泰先生をゲストにお招きします。孔先生は理科教育の立場からSTEAM教育を実践されており、日本科学教育学会での発表実績もお持ちです。
会の後半ではZoomのブレイクアウトルーム機能を活用し、研究プロジェクトメンバーやゲスト、参加者のみなさまが交流する時間を設けますので、孔先生に最近の韓国STEAM教育事情をうがかえればと考えております。
「夜話」という言葉には「夜に談話すること」と「気軽に聞ける話」という意味があります。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けオンラインでの開催になりますが、お仕事を終えた後、お酒などのドリンクを用意して肩肘張らずに参加いただければ幸いです。
開催日時などを確認いただき、リンク先のフォームから申し込みください。お申し込みお待ちしています。
https://forms.gle/oheWexF6QE3nhPz37
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日時:8月26日(水)18時~19時30分
場所:Zoomを利用したオンライン開催(アクセス方法を追ってご案内いたします)
対象:STEAM教育に関心のある教育関係者(教職員、研究者など)
定員:50名
参加費:無料
内容:
・韓国と中国のSTEAM教育に関するレビュー成果の報告
(報告者:杉山昂平, 東京大学大学院 情報学環 特任研究員)
・参加者のみなさまとの交流会
(ゲスト:孔泳泰, 晋州教育大学)
(コーディネーター:山内祐平, 東京大学大学院 情報学環 教授)
問い合わせ先:iiiylabcontact [atmark] gmail.com
2020.08.01
M1の岩澤直美です。
今回はゼミで扱っている文献とディスカッションの内容を紹介したいと思います。
毎週ゼミでは文献担当者がInternational Handbook of the Learning Sciencesから1つの章を選び、レジュメを作り、解説を行います。その後、小グループに分かれてのディスカッションを通して理解を深める活動を行なっています。
私がはじめに担当した章は「第21章:Learning Through Problem Solving」でした。伝達モデル(Transmission model)では、学習直後は暗記ができていることを確認できていたとしても、その後、学習内容を実践の場で転用/応用することが難しいと言われています。問題解決型のアプローチでは、既有知識と新規の課題の関連性の発見や、学習内容が広く適応可能であることを理解を促進することが可能です。さらに、①学習者は総合的な概念理解をしながら問題解決能力と自己調整学習能力を磨くことができること、②学習者のモチベーション維持がしやすいこと、などが利点としてあげられます。
以下は、問題解決型のアプローチとして共通点の多い「問題基盤型学習(Problem Based Learning, 以下 PBL)」と「生産的失敗(Productive Failure)」について紹介します。
■「生産的成功」と「生産的失敗」について
「生産的成功(Productive Success)」は、PBLを通して、既有の知識や技術を使いながら問題解決の成功体験を得るためのデザインです。これを行うには適切な足場かけ(認知負担を低減)とファシリテーション(学習プロセスのガイド)が重要です。(Ertmer & Glazewski, in press; Hmelo-Silver & Barrows, 2008) 一方、 「生産的失敗」は、新しい概念を学ぶためのプロセスで、学習者は未習得知識が求められる問題解決に挑みます。当然短期的には失敗しますが、認知的失敗を情報として捉え、長期的には失敗の確率を減らすことが可能になります。このプロセスにおいても、ファシリテーターの継続的な支援が求められます。
■PBLと「生産的失敗」のプロセスと特徴
PBLにおいても、「生産的失敗」においても、学習者は問題解決を行う中で新たな知識を習得します。ここで学習した知識は、類似問題解決を行う際に活用できるようになります。(Transfer-appropriate processing theory) PBLでは、Direct instruction(直接指導)と比べ基本的な知識習得は劣る(Vernon and Blake, 1993)との指摘もありますが、知識応用能力に関しては高い学習効果が認められています。(Gijbels, Dochy, Van den Bossche, & Segers, 2005)
「生産的失敗」の学習プロセスにおいては、①矛盾と以前の知識との違いに気づき、②誤った解決法と正しい解決法の比較・対照を通して新たな学習内容の特徴を学習、がポイントになります。現段階では、中等教育から高等教育レベルの数学や理科を扱う実践研究が多い傾向にあります。新たな問題を出す際、問題に取り組む前に指示(認知的サポート)をもらう生徒よりも、指示を受けずに解を出す生徒の方が、概念理解が促進されたという結果が出ています。(Kapur, 2014; Loibl, Roll, & Rummel, 2016)
■PBLと「生産的失敗」のデザイン
PBLも、「生産的失敗」も共同学習から始まりますが、違いは問題解決授業のデザイン及び全体を通した支援方法にあります。PBLは図1のように、①不良定義問題(Ill-structured problem)に取り組む、②小グループで問題について議論し、解を提案する、③指導者はガイドとして探求を支援するための足場かけを提供する、④振り返り&評価を活動の一部として導入しSelf-regulated learning(自己調整学習)を促進する(Savery, 2015)のような構成となっています。ここで重要なのは、複雑で不良定義な問題で、かつ学習者に関連する内容(モチベーションを保つため)に取り組むことと、十分なフィードバックがあることです。
図1 PBLのサイクル(p.212)
「生産的失敗」の構成は図2のように、共同作業などを通して ①既有知識の活性化と差別化をし、関連する既有知識を活用及び外化、②解法を比較して重要な特徴に気づく、③重要な特徴の解説を受け、④問題の特徴をよく考えて知識の定着と構築を行う、というものです。
図2 生産的失敗の構成要素(p.214)
■授業内ディスカッション
本章における議題は「表21.2(本投稿では図2)を参考にして、Productive Failureの事例を考えよ」というものでした。3グループに分かれ、20分程度で検討し、その後10分ほどで全体で共有するという流れです。グループディスカッションではもちろん議題通り事例を検討しますが、その過程で行われる知識構築や軌道修正でPBLと生産的失敗の理論への理解を深めていきます。例えば「地図を見ずに迷ってしまった経験から、地図の読み方を学習し、迷わず歩けるになった」という実体験の事例に対して、これは経験学習に近いものなので、生産的失敗のように「仕掛ける人」がいないと当てはまらないのではないか、との指摘がされました。
その前提を踏まえ、「インドネシアの牛乳に対する安全性・安心感を高める」という課題の事例において、学習者が既有の知識をふまえ「日本と同じように生産者の顔を表示する」を提案したところ、その解法がインドネシアでは望ましくない(失敗だった)ケースが紹介されました。この事例において、ファシリテーターが問題点とインドネシアの状況を指摘及び情報提供を行い、学習者はより適切な解法を提案することができたのだそうです。その他にも、統計を学ぶ授業において、同じデータセットを渡されて各自が相関分析をするという事例も挙げられました。それぞれが既有の知識に基づいて分析を試み、その多様な方法と結果を比較しながら、外れ値の扱いについてなどの違いがあることに気がつくよう、<重要な特徴への教師による注目促進>が行われるものでした。これを踏まえ、再度分析した結果を提出させることで、失敗からの再構築が行われた、という事例です。
「生産的失敗」は比較的新たな試みとして研究が進められていますが、うまく実践ができないと「失敗体験」として学習者のモチベーションや自信の低下などにつながってしまう可能性もあります。今回のディスカッションでは新たな事例の検討よりも、各自が経験してきた事例の分析が中心に行われました。今後様々な学習環境を観察・経験・実践する際、「何がおきているのか」をより深く理解するために、自分の引き出しのなかに理論に関する知識を持っておくことは重要だと感じました。
感染拡大も収まらないまま梅雨があけ、徐々に暑くなってきました。ゼミは夏休み期間中で、各自が論文のレビューや調査を進めています。来学期の授業がどのような形式で実施が可能なのか不明瞭ですが、引き続きブログを更新していきたいと思います。
M1 岩澤直美