2018.11.05

【今年度の研究計画】文字式の数量表現を支援するゲーム教材の開発と評価 -プロセプト的思考に着目して-

こんにちは!本実践真っ最中の修士2年、花嶋陽です。
自分の研究テーマは、「文字式の数量表現ができない子をどのようにできるようにするか」です。
文字式の数量表現というのは例えば下記のようなものです。
 
① ある数nの3倍より5小さい数はいくつか?(誤答率:22.6%)
② 赤色のテープの長さは 2b cmで、青色のテープは赤色のテープ より 3 cm長い。青色のテープの長さは何cmか?(誤答率:28.9%)
 
実際に、今年の6月に中学3年生350名程に行なった文字式のつまづき調査テストでは、2~3割程度が上記のような基礎的な文字式による数量表現問題ができないことが明らかになりました。(上の誤答率はその時のもの)
実際にどのような間違いが多いかというと、例えば①では、答えを3n-5としなければならないところを、-2nや2nとしてしまっていたり、②では2b+3としなければならないところを5bや5などとしてしまうものが、誤答のうち3~5割ほどになっています。また、そもそも無答の比率も高くなっています。
ここからわかるのは、「文字式を『一つの数』と見ることができない(計算の式としてしか見れない)」ということです。
つまり、「答えに+が残っていると計算の途中だと思う」や「『いくつか?』と数を聞かれた時に、文字式を答えられない」などといったことは、このことを要因としています。
 
これは、先行研究の中でも本質的な要因として指摘されており、”Process-Product dilemma”や”Process-Object duality”と呼ばれていて、
数学的概念には、手続き的な見方と、対象物としての見方の二面性があり、その両方を柔軟に切り替えてみれるようになる事が重要と言われています。
この対象物としての見方が、文字式でいうと、「一つの数」としてみるという事で、本研究ではこれを達成する支援をすることによって、文字式の数量表現をできるようにしようと考えています。
 
その「手続き的な見方と、対象物としての見方の二面性があり、その両方を柔軟に切り替えてみれるようになる」に至る発達段階を示したのが、D.Tallのプロセプト理論で、彼は、手続き的な見方から、異なる手続きの同値性を認識する事で、対象物としての見方を獲得し、両者を柔軟に切り替えて見える事ができるようになる事を述べています。
 
今回は、このプロセプト理論に依拠し、その発達段階に応じた支援をゲームに埋め込んでいます。
ゲームの具体的な内容は、以下のリンクから確認して頂ければと思います。
https://drive.google.com/file/d/1qh-eh_LcJTa8sbfaq8KKjuAVq9e8DJYD/view?usp=sharing
 
ゲームは以下のリンクからダウンロードできるので、みていただけたら幸いです。(iosのみ対応です)
https://testflight.apple.com/join/RokdrwM0
 
現在、本研究の実践にご協力いただける先生を探しています!もし、ご興味がありましたら、yohanashima@gmail.comまでご連絡頂ければと思います!
 
【修士2年 花嶋陽】

2018.10.26

【私の研究テーマ】興味を深める趣味縁生態系の解明

博士課程2年の杉山昂平です.これまで「興味を深める趣味縁生態系の解明」というタイトルのもと,どんな人間関係が趣味が面白くするのか?ということを研究しています.修士過程ではアマチュアオーケストラ団員の方々にインタビューし,楽団という「つよいつながり」の影響を分析してきました(→こちらで論文が読めます).そして現在は,SNSを活用するアマチュア写真家の方々にインタビューしながら,「ゆるやかなつながり」がいかに写真活動を面白くしているのかを分析しています.まだ詳細はご報告できませんが,そろそろ分析結果をまとめていきたいと思っています.

 

趣味は「興味に駆動された学習」

そもそもなぜ山内研で趣味を研究するのでしょうか.教育工学や学習環境デザインという分野に,一見すると「趣味」は関係がなさそうに思えるもしれません.ところが最近の教育・学習の分野では,趣味を対象にする研究者が私に限らず増えてきているのです.なぜでしょうか.キーワードは「興味に駆動された学習」です.

 趣味は「シリアスレジャー」と呼ばれることもあるように,真剣かつ大変専門的な知識・スキルを活用した遊びです.例えばアマチュア写真家の方々は,一眼レフカメラやレンズに関する技術的知識をもち,実際に美しい写真を撮影するスキルを持ち合わせています.たとえプロではないとしても,写真を趣味にしていない人からすれば大変高度なものです.いきなり「5年写真をやっているアマチュア写真家の人と同じレベルの写真を撮れ」と言われても,たぶん無理でしょう.どんな被写体に目をつけて,構図に気を配って撮影するのか.撮影したあと,Photoshopなどを使いどのように色味を調整するのか.とてもじゃないですが,「誰にでもできる」とは言えません(→Instagramのハッシュタグ #reco_ig に投稿された写真を見てみてください).そこには専門性があるのです.

 そして,趣味人が専門的な知識・スキルを持っているということは,彼らはどこかでそれを「学習」したはずです.おそらく趣味をやりながら.医者や弁護士になる場合は,まず大学で勉強し資格を取ってから,実際の医療活動や弁護活動を始めます.趣味ではその必要はありません.やりたくなったら,まず活動すれば良いのです.そして,やりながら学ぶ.アマチュア写真家の方々も,趣味として写真を撮りながら自主的にカメラの操作方法を本で勉強したり,これまでの写真の歴史を調べたりしています.

 重要なのは,「趣味人はいやいや学んでいるわけではない」ということです.むしろ,好きなこと,面白いことに導かれて自主的に学んでいる.このことを「興味に駆動された学習」と言います.学習者が「面白いから自分でどんどん学んでいく」という姿は,学校の先生からすれば見たくてたまらない光景でしょう.それが趣味では自然と起こっているのです.

 どうしたら自主的に学んでいくような「面白さ」は実現できるのだろう?どうやったら「興味」はサポートできるのだろう?こうした疑問が「趣味」をモデルにすることで解決できるかもしれません.だからこそ,趣味は教育・学習の研究者にとって興味深い対象なのです(→科学教育の分野でアマチュア科学者を研究されている木村優里さんの研究もぜひご覧ください.日本科学教育学会2018年度奨励賞を受賞された論文です).

 私が研究で「趣味縁」に着目しているのは,まさに趣味を通した人間関係こそが,趣味を面白くする重要なファクターだと仮説しているからです.昔から「同好の士」という言葉があるように,趣味を同じくする人々はサークルをつくったり,SNS上でフォローしたり,様々なつながりをつくってきました(→『美と礼節の絆』という本には,俳諧などを事例に江戸時代までの日本の趣味縁の歴史が豊かに描かれています).お互いの作品を見せ合ったり,新しい情報を交換したり,趣味縁を通して趣味が面白くなっていくことはかなりありそうです.では,どんなときに,どんな風にして趣味縁は機能するのか?これが「興味を深める趣味縁生態系の解明」というタイトルで,私が研究していることです.

 

最近は学部生に授業させてもらう機会も増えましたが,「自分にとって面白いものに打ち込んでいる時こそ人間の知性は最も発揮される」とよく話しています.趣味はそんな存在じゃないでしょうか.

 

杉山昂平

2018.10.07

【研究計画】中高生を対象としたメタ認知能力向上のための学習プログラム開発(M1 松尾奈奈)

こんにちは。かなりご無沙汰してしまいました。。
M1の松尾です。早いもので、山内研に入ってから約半年が経とうとしています。

私の研究テーマは「メタ認知を活かした学習支援」です。メタ認知とは「認知を認知すること」であり、例えば初対面の人と話すときに緊張のあまり早口になってしまう人が「緊張している」と感じるのは認知ですが、「今、緊張によりいつもより早口で喋っているな」と感じるのはメタ認知です。このメタ認知が上手に働くようになると、客観的に物事を捉えられるようになり、特に学習では「分かること・分からないこと」が分かるようになるので、メタ認知能力が高い子どもは学習成績も良いとされています。ですが、学習の中でメタ認知を働かせることはなかなか難しいため、メタ認知研究の中では学習活動を「計画」・「遂行」・「修正」の3段階に分け、それらの中でメタ認知をモニタリングし、上手にコントロールするための支援が様々にされています。

日本では、数学や理科など問題解決型の教科教育の中でのメタ認知研究が多いですが、私は教科学習のようなフォーマルな学習よりもインフォーマルな学びでのメタ認知に興味があるため、今後はProgram Based Learning(PBL)などでのメタ認知の育成に着目し、そのためのプログラム開発を行っていけたらと思っています。

メタ認知は非常に汎用性のある、人間にとって大事な認知ですが、そもそも非常に曖昧な概念であり、その育成や測定方法などは確立していません。実は私は、昨年度まで別の大学院にて教育心理学の分野内でメタ認知研究をしており、今回は2度目の修士課程となります。メタ認知のような発展途上なテーマについて実践的に研究していくには、学際的な分野が適しているのではないかと思い今に至ります。秋も深まり、そろそろResearch Question(RQ)を立てる時期も迫りつつあるので、今後も頑張っていきたいと思います。

【松尾奈奈】

2018.07.15

【研究計画】小中学生のICTを利用した個別最適化学習(Personalized Learning)における効果的なコーチング手法の研究(M1 谷口恵子)

こんにちは。今年4月に入学した社会人学生、M1の谷口恵子です。出版社でビジネス書や語学書の編集をしながら、英語学習コーチとして社会人向けに英語学習のサポートもしております。

私が山内先生の研究室で学習環境デザインについて学びたいと思ったきっかけは、主に2つあります。一つが、自分自身の社会人経験や、英語学習コーチとしての経験から生まれた「なぜ学びに対して消極的な人と積極的な人がいるのだろう?」「なぜ自分で学べる人と、人から教えられないと学べない人がいるのだろう?」という疑問です。社会に出てみるとわかりますが、学校教育が終わった後こそ、自ら学び続ける力が必要です。そして、何を学ぶのかを考えて選ぶ力も必要です。しかし、その力を持っている人と、そうでない人がいます。そして大人になってからその力を新たに身に付けることは、不可能ではありませんが、とても大変です。こうした学びに対する態度や能力形成の端緒はどこにあるのだろうか、それを教育によって向上させるにはどうしたらいいのだろうか。そんな疑問が出発点の一つでした。

そしてもう一つが、どんどん変化のスピードが増していくこの時代を生きる子どもの将来を考えたときに、自分の頭で考えて、自分の好きなことを見つけて、楽しく生きていく力を身に付けて欲しいと思ったことです。それはもちろん我が子だけでなく、これからを生きていくすべての子どもたちにそうあって欲しいと思っています。そのために必要な教育というのは、生徒が受け身になってしまいがちな一斉教育ではなく、自律的な学習の力を伸ばせる「自分で考えて選び進める形の学習」なのではないのだろうか、というところから、Personalized Learning という学習形態に注目し始めました。

Personalized Learning はアカデミックというよりも実践現場、特にアメリカを中心にここ数年バズワードのようになっている言葉です。定義も使っている団体によって様々ですが、たとえばUNESCOのIBE(International Bereau of Education:国際教育局)という機関が出している "Personalized Learning" というペーパーによると、以下のような定義になっています。

"Personalized learning is teaching and learning that is focused on the background, needs, potential and perception of the learner. It is learner-centred education."

つまり、個々の学習者のさまざまな違いや個性に応じた、学習者中心の学び方が Personalized Learning です。近年ではICTの進歩により、効果的にPersonalized Learning が進められるようになってきたのでは、ということで、特にアメリカのIT企業や、Philanthropists、教育関係者の注目を集めているのです。

私自身の興味関心に戻ると、ICTを使いこなす力も、生きていく力として非常に重要で役立つという実感があることと、ICTを活用することで効率的に学習が進められたりデータの管理がしやすくなったりするという利便性も活かしたいと考えているため、研究テーマは、ICTを活用した Personalized Learning に設定しています。ただ同時に、英語学習コーチとして人の学習のサポートをしてきた経験からは、ICTだけでは実現できない学習サポートの役割も指導者には求められると思っており、学習内容を教えること以外の指導者の役割にも注目しています。

入学して早くも4ヶ月目、ゼミでの研究発表も3回させていただきましたが、興味関心がまだ収束していないどころか、先行研究のレビューを進めるほどに興味関心がむしろ拡散していくような気すらしています。社会人で育児中でもあるため、目まぐるしい日々を送っていますが、それでも、先行研究のレビューや興味関心のある分野について調べることは本当に面白くて、なんとか時間をやりくりして、もっと研究に時間を使いたいと思っているところです。次回のブログでは、こんなふうに時間を活用できるようになりました、というご報告ができるようにがんばります!

【谷口恵子】

2018.06.26

【研究計画】中学生を対象とした自己調整学習支援システムの開発(M1 宮川 輝)

ご無沙汰しております。2年目のM1・宮川です。
昨年の秋から半年間の休学を経て、4月より研究室に復帰いたしました。

研究テーマは昨年度に引き続き「自己調整学習」です。

自己調整学習とは、アメリカの教育心理学者Barry Zimmermanにより提唱された理論の枠組みで、「予見段階」「遂行段階」「自己内省段階」という3要素のループによって表される図が有名です。いわゆる「PDCAサイクル」といったものに近い構造になっています。

Zimmerman (1986, 1989) において自己調整学習は〔学習者がメタ認知・動機づけ・行動において自身の学習過程に能動的に関与していること〕 と定義されています。特に「メタ認知」はその中でも主要な関心事であり、自分自身の置かれた状況を一歩外側から俯瞰するといった意味合いがあります。

自己調整の対象である学習過程とは「目に見えないもの」であり、そもそも捉えることが非常に困難です。そこで、たとえば学習目標の明文化であったり、学習日誌の作成であったりといった「プロセスの可視化」が基本的な支援として考えられる方法です。

そうした自己調整学習の支援研究はアメリカを中心として盛んに行われ、理論的・実践的な知見が多く獲得されてきていますが、日本においては特に実践研究に関する蓄積はまだ多くないという状況にあるようです。

しかし、平成32年度から順次実施される日本の学習指導要領において「主体的・対話的で深い学び」が目標として設定されていることからも、自らの学習のプロセスへの積極的な関与を促す自己調整学習という分野は、今後その役割を大きく広げていくことが期待されています。

さて、冒頭で述べましたZimmermanによる定義からも推察されるように、自己調整学習とはそれ自体が独立した研究分野であるというよりは、「学習プロセスへの主体的な関与」を軸に再構築された理論の体系である、と言えます。

そのため介入のアプローチ方法も様々ですが、私は持続的で人的コストの少ない支援方法として期待のできるICT(情報通信技術)を使用した実践に着目したいと考えています。また、介入の切り口として、「Co-regulation (共調整)」「Sense of agency (自己主体感)」「Perfectionism (完全主義)」といった、従来の介入研究においてあまり重視されてこなかった要素についても検討できないかと模索しつつ、先行研究のレビューを進めています。

私は休学中、テレビ番組の「構成」を考えるという仕事をしていました。番組における「エピソードトークの流れ」「企画の狙い」といった構成原理は、視聴者からすれば目に見えないものですが、メタな階層から番組を支える要素であると言えます。メタ認知的な頭の働かせ方というのは、勉強に限らず様々な場面で必要とされているはずです。

半年間の社会経験の中で私自身これまでとは異なる文脈を獲得し、また山内研にも多様なバックグラウンドを持つ新たなメンバーが加わりました。そうした学習環境の変化のなか、自らの研究・あるいは自分自身を再度見つめ直し、学際的な視野を保ちながら前進していければと思っています。

【宮川 輝】

2018.06.19

【研究計画】成人を対象としたフロー状態を引き出す支援

こんにちは。M1の小野寺です。
大変遅くなってしまいましたが、先日6月2日の入試説明会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。

さて、本日は私の研究計画について書かせていただきたいと思います。
私の研究テーマは、「成人を対象としたフロー状態を引き出す支援」です。
私は学部において教育学を専攻しており、特に初等教育について勉強していました。
つまり、初等教育については4年間学んでいましたが、学校以外の場面における学習についてはあまり馴染みがありませんでした。
それで、徐々に生涯学習について興味を持つようになりました。
学習という営為を長い目で見ていくと、子どもの頃は教師や保護者といった指導者の存在がありましたが、
生涯学習となると指導者不在、あるいは自らが指導者となって自分で進んで学習していかなければなりません。
その時に、いわゆる「やる気」をどのようにコントロールしていくかということは重要な問題となっていきます。
そのような問題意識が私の研究の土台となっていると思います。

以下、私の研究計画の概要です。
超高齢社会における高齢人口の増加や急速なグローバル化により、
絶えず知識や技術を習得・発展させていくことが必要となった現在、
学習という営みは、学校教育だけではなく生涯を通じてのものとなりつつあります。
そして生涯学習において、学習者がどのような学びを得、それをどのように生かしていくのかという、
学習内容や知識・技術の発展以外に、学びに向かう原動力と言える動機づけが重要となってきます。
その動機づけの1つの理論に、フロー理論があります。
フロー理論とは、「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、
その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」
(チクセントミハイ著 今村浩明訳『フロー体験 喜びの現象学』p.5)
についての理論とされています。
加えてこのフローの状態になりやすい人となりにくい人がいるとされています。
私はこの「フロー状態になりにくい人」に焦点を当てて、どうしてなりにくいのか、
また、どうすればフロー状態に近づくことができるのかについて研究していきたいと考えています。
よろしくお願いいたします。

【小野寺萌美】

2018.06.07

【研究計画】中学生を対象とした正課外活動における社会情動的スキルの向上に関する評価 ーUWC ISAK Japanのサマースクールと対象としてー(M2 中野生子)

皆さん、こんにちは。M2の中野です。
私は社会人学生で、昨年から働きながら学生との二足のわらじを履いています。今年から山内研に社会人学生が増え、研究室の多様性もさらに深みを増してとても刺激的な研究生活を送っています。


私の研究テーマは「社会情動的スキル(Social Emotional Skills/Competencies)」です。一般的には、「認知能力以外の能力」という意味で「非認知能力」とも呼ばれています。新米研究者として様々な文献を読む中で、アカデミック用語と一般的な用語とには乖離があることや、研究者の立ち位置によってある能力やスキルの捉え方が大きく異ることが分かりました(社会人学生あるあるです!笑)。当該スキルに関していうと、教育分野の研究者は「非認知能力」という言葉使いません。こう表現する研究者は経済学者であったり統計学者であったりします。また心理学の研究者はこれをパーソナリティ特性≒性格と捉えて、短期的には変わりにくいものとして捉える研究者もいます。教育分野の研究者は、社会情動的スキル(コンピテンシー)であったり、情動知能(Emotional Intelligence)として捉える研究者が多いと思いますが、国内にはあまりこの分野の研究者が多くないのが現状です。研究分野によって、長い年月多くの研究者に研究されて、知のマップが出来上がっている研究分野もあれば、社会情動的スキルのように比較的研究の歴史が浅く、概念の定義がまだまだ揺れている分野もあります。


私の研究では、CASELが定義する社会情動的スキル(Self-awareness, Self-management, Social awareness, Relationship skills, Responsible decision-making)に基づいて、当該スキルが育成される学習環境はどんな環境なのか、社会情動的スキルの育成には何がキーファクターであるかを明らかにし、教育プログラム・環境をデザインしている教育関係者の皆さんに知見をお返しできたら、と考えています。具体的にはUWC ISAK Japanが中学生を対象に実施しているサマースクールを研究対象として、社会情動的スキルに及ぼす影響や、変化の要因を明らかにすることを目的としています。


なぜ中学生に着目するのか?
大規模な身体的・社会的・認知的変化が起こる青年期の中でも、中学生は、小学校からの移行に伴って、学業面では学習内容の高度化、また学級担任制から教科担任制への転換、さらに対人関係面では友人や教師との新たな関係作りが求められ、部活動も始まるなど、大きな変化を経験する時期です。これらの状況への有望なアプローチとして、社会情動的スキルの育成が注目されており、当該スキルの育成が彼らが抱えうる問題の改善・予防に大きく寄与し、子ども達のWell-Beingに繋がると考えられるため、この年代の子ども達に着目しています。


なぜ学校外教育に着目するのか?
Granger(2002)は、Youthのwell-beingに寄与する要因の一つとして「supportive relationship with peers and adults」を、またDes Marais, Yang, and Farzanehkia(2000)は、Youth leadersの成長に重要な要素として「partnerships between youth and adults」を特定しており、対人関係を重要視しています。社会情動的スキルの5つの下位概念の中でも、他者との関係が色濃く反映される社会意識(social-awareness)や関係構築(relationship building)は其々、「The ability to take the perspective of and empathize with others, including those from diverse backgrounds and cultures.」「The ability to establish and maintain healthy and rewarding relationships with diverse individuals and groups. 」と定義されており、いずれも"Diversity(多様性)"を強調しています。
これまでの社会情動的スキル育成の実践・研究は学校内の活動に着目したものばかりで、正課外活動(学校外)を対象とした社会情動的スキルの研究は少なく、更なる実証研究の必要性が指摘されています(遠藤, 2017)。学校内の中でも、とりわけ学級内のものが多く、同じ地域出身、同じ年齢という、どちらかというと均質的なバックグラウンドを持つ子ども達が集まる環境であり「多様性に富んだ」環境とは言い難い環境です。一方で、正課外の活動は、異なる年齢、異なる学校出身の子どもが参加し、また関わる大人のバックグラウンドも教員だけではなく学校内の環境より多様性に富んでいるため、本研究では、正課外の活動に着目したいと思います。


なぜサマースクールなのか?
先行研究において、SEL指導のアプローチは制限的で、教育者の焦点を教室や学校内での人間関係に向かわせる方法ではなく、個人個人の欠点・弱点の測定と改善にのみ焦点を当てている(Hoffman, 2009)と批判されています。このような批判から、アメリカでは近年、Positive Youth Development(地域社会、学校、組織、仲間グループ、家族の中で、生産的で建設的な方法で若者を関与させる、意図的で向社会的なアプローチ)という考え方が広がってきています。ほとんどのサマーキャンプは、大人の監督の元、参加者が成人期に向けて成長を手助けできるように目標設定されており、そのプログラムモデルはPYD理論に根ざしています。キャンプは若者の情動的、認知的、行動的、身体的、社会的、精神的(spiritual)な成長を促進する、と言われています(Garst & Bruce, 2003)。上記より、本研究では正課外の活動の中でも、とりわけサマーキャンプ・サマースクールに着目します。


今はアセスメント手法を含めた調査方法を検討中で、引き続き四苦八苦の研究生活が続きそうです。

【中野生子(Seiko NAKANO)】

2018.05.30

【研究計画】外国語学習において学習者の情意に好影響を及ぼす異文化間のCSCLカリキュラム開発

こんにちは。今年度より山内研M1としてお世話になっております、井坪と申します。
新学期が始まって早2ヶ月。まだまだ自分は入学したてのひよっこだと思っていましたが、今週末には学府の入試説明会もあり、刻々と時が流れるのを感じています。


私の研究テーマは、「外国語学習において学習者の情意に好影響を及ぼす異文化間のCSCLカリキュラム開発」です。
概要としては、異なる母語と文化背景を持った、外国語(例:英語)の学習者同士が、CSCL(Computer Supported Collaborative Learning:コンピュータに支援された協調学習)を用いたワークショップを経験すると、どのような情意的変化(例:第二言語不安や動機づけ)が見られるのかについて明らかにしたいと考えています。学部の卒業論文では第二言語不安に焦点を当てていたので、現時点では、第二言語不安を軽減するカリキュラムの開発と評価を行いたいなと思っています。

私は小学4年生から高校卒業までを海外で過ごしました。中学時代にインターナショナルスクールに通い始めた時、様々な文化的背景を持つクラスメイトと関わりながら、英語を学んだ経験が7年半の海外生活の中で特に印象的だったなと思います。
EFL(English as Foreign Language)クラスと呼ばれる、英語が母語ではない生徒ばかりのクラスで最初のうちは長い時間を過ごしました。そこのクラスメイトと関わる中で、私は英語学習へのモチベーションを高めたり、英語への自信のなさを克服できたりした気がしており、この経験は一般論に落とし込めるのか、という疑問が、私の研究の出発点となっています。

また、社会的背景として、現行の学習指導要領では、「生きる力」を育むということをキーワードに、外国語でのコミュニケーション能力の素地を培うためのプログラム等が増やされており、特に、外国語でのコミュニケーション能力の素地を培うためのプログラムの増設など、グローバル化の進展など急速な社会の変化についていける人材の育成には、実践的な外国語教育が必要だと言うことが示唆されています。
今後必要になる実践的な外国語教育とはどのようなものなのか、また、コミュニケーション能力とは具体的にどのような能力のことを指すのか、研究を進めていく中で自分なりに明らかにしていけるよう、頑張っていきたいです。


山内研にご興味のある方は、ぜひ今週末(6/2)の学際情報学府入試説明会にもいらしてください。
お待ちしております!

【井坪葉奈子】

2018.05.17

【研究計画】学習者の自己評価と他者評価の折衝過程に関する調査

こんにちは、M2の根本です。
新年度が始まったと思ったらあっという間にGWが明け、いよいよ大学は五月祭ムードになってきました。本郷キャンパスは普段、夜中は静かなのですがこの時期になると心なしか人が多いように感じます。

ということで、新年度が始まってじわじわと考え進めている私の研究テーマをご紹介します。
昨年段階では「自己評価の変化」に関心を持っていたのですが、自己評価の変化が起きるのは、自己評価と他者評価の衝突の場面なのではないか?と考え、ではそこで何が起こっているのかが気になるようになってきました。


■自己評価
自己評価(Self-Assessment)とは、学習者が自身の学習や成果について評価することを言います。「今日の〇〇は何点だった?」というように点数をつけるものもあれば、「今日の良かったところ悪かったところを挙げましょう」と文章で回答するものもあります。
自己評価を行うと、成績が上がる・自分で学習ができるようになるといった効果があるとされ、どのように自己評価をするか、どうやって自己評価する力を高めるかという研究がなされています。


■自己評価する力の高め方
自己評価する力を高めるための代表的な方法は、指標となるもの(ルーブリックなど)を使って、自己評価するトレーニングを行うことです。学習者が「正確な」自己評価を行うことは難しいため、ツールを用いて自己評価を行うことを繰り返して自己評価のトレーニングをする方法が検討されています。


■自己評価と他者評価の衝突・差異
自己評価が変わるきっかけの一つとして「他者から自分が思っていたのと違う評価を受ける」ということがあります。「できた!」と思っていたのに「全然違う」、「できなかった」と思っているのに「それで良いんだ」、「え、ここ言われるの?」など...
自己評価のトレーニングも重要ですが、そういったきっかけで何が起きているのか、そういったきっかけで変化する人としない人がどのような異なるのか、という点に興味を持っています。


■差異をどう受け止めるか
差異の受け止め方は人それぞれなはずです。びっくりする人、そういうものかと思う人、「あの人はそうだから」と受け流す人、「あの人はどう考えているんだろう」と考える契機にする人...そういった受け止め方がどのようになっているのか、またその違いが自己評価のあり方、ひいてはその後の学習成果にどう影響を及ぼすのかを調査しようとしています。


文献を読んだりして見たいものや考えたいものを浮かべるのは楽しいのですが、実際の調査・研究計画に落とし込んでいくところに苦戦中です。これから頑張っていきたいと思います。

【根本紘志】

2018.05.09

【Research Plan】Deepening the Visitor's Inquiry Towards Explorative Geovisualization through Semi-Structured Facilitation (M2 Tetsuya Hasegawa)

In the era of sustainability, improving the general public's understanding of such issues is critical. Geovisualization, which converts complex geospatial data into a visual format, is one method to promote comprehension. Specifically, recent studies have started to investigate methods to engage learner themselves to explore geovisualizations in informal environments. The procedure of data exploration is to make observations, develop questions, and generate hypotheses. To deepen such process, Ma et al. (2012) designed a museum exhibit to afford the learner to link to another data in solving questions of one data. However, including further attempts to improve the system (Ma et al., 2015; Hseuh et al., 2016), most learners were limited to making simple observations in a particular data. Therefore, this research will look into staff facilitation as an alternative approach to support cross-data exploration. A design-based research will be conducted to iteratively refine a model of facilitation. Data collection is planned to be done by video and qualitatively analyzed based on constructivist grounded theory. The study hypothesizes that the design principle is to utilize data-connection not only for answering questions to the previous data but also to trigger another cycle of inquiry to the next data. Further design strategies to implement such principle is to "prompt questions that require data linkage", "allow the learning goal to change after data linkage", and"suggest data that possess a similar structure of relation".
 
【Tetsuya】

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