2019.07.08

【山内研の日々】夏合宿の思い出

こんにちは、M2の井坪です。
今回も、前回の谷口さんのブログに引き続き、【山内研の日々】というテーマで山内研の特色やイベント、日常などをご紹介します。
第2回目となる本日は、「夏合宿」についてです。

山内研では、年に2回の合宿が行われます。
3月に行われる春合宿では、修士課程を終えられる先輩方から使用した手法をはじめとした修士研究のことや、修士課程で大変だったことなど、色々とお話を伺います。

9月の夏合宿は、学者レビューと学習プログラムに分かれた2部構成となっていることが多いです。
学者レビューでは、ピアジェ、デューイ、ヴィゴツキーにプラスして数名の古典的学者についてグループごとに調べ、合宿で発表・ディスカッションを行います。
昨年度は毎年レビューしている3名に加え、ブルームとブルーナーについてレビューし、今年度は三宅なほみとパパートについてレビュー予定です。
私は昨年度、博士課程の先輩と2人でデューイを担当したのですが、デューイの生涯、思想、関係している研究者などについて知ることが出来、とても有意義な時間を過ごせました。
また、M1はレビューグループに分かれる際、博士課程の先輩と組ませてもらうことも多いので、調べ方の枠組みなどについても教えてもらうことが出来ます。
前回のファシリテーター制度ではないですが、先輩方から学ぶことは非常に多いなと感じました。
昨年度は、学者レビューの発表後に、レビューした5人の学者と、その学者に関係する学者達を1つの関係図にまとめるなかで、自分の研究の立ち位置なども明らかにしていくというアクティビティを行いました。最終的には、3つのグループそれぞれが、自分も含めた学者の巨大な関係図を作成することが出来ました。

また、昨年度の学習プログラムでは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の長谷部葉子研究会と合同で、「地域の人との連携方法と巻き込み方」、「目標の設定と共有」、「活動の評価」、「活動の一般化」といったテーマに沿ってディスカッションを行いました。
フィールドに入って積極的に活動する長谷部研の学生の皆さんとディスカッションを行うことで、理論と実践を行き来しながら研究を進めていくことの重要性について、改めて認識することが出来ました。

番外編として、夏合宿の非常に重要な時間だと個人的には思っている、夜の懇親会についても少し触れさせて頂きます。
助教や博士課程の皆さんも合宿にはいらっしゃっているので、普段なかなかじっくり話す時間を取ることが難しいメンバーとも、ゆっくり研究についてお話しすることが出来ます。
また、懇親会で行われるアクティビティを通して、ゼミの時間には知ることが出来ないメンバーの意外な一面なども垣間見え、懇親会はお互いのことを知るいい時間になっています。

今年の夏合宿ではどのような学びを得られるのか、またどのような思い出が出来るのか、今から楽しみです。

次回は江崎さんから「文献発表とグループ討論」についてご紹介いただきます!お楽しみに。

M2 井坪葉奈子

2019.07.01

【山内研の日々】ファシリテーター制度とは?

こんにちは。修士課程2年、社会人学生の谷口恵子です。

今回からは【山内研の日々】と銘打って、山内研の特色やイベント、日常などを紹介していこうと思います。第1回は「ファシリテーター制度」についてご紹介します。

山内研の「ファシリテーター制度」は、おそらく珍しい制度ではないかと思います。同じ東大内でも、他大の院生の方と話しても「そんな制度はない。うらやましい!」とよく言われます。私自身、この制度がなかったら修士1年目を乗り切れなかったかもしれない、と思います。

これは、修士課程と博士課程の院生に、1人ずつ「ファシリテーター」という役割の方がついて、研究の支援をしてくださる制度です。ファシリテーターになるのは、講師や助教の先生方、また博士課程の先輩などです。山内研のOB・OGで、現在は他大で教えていらっしゃる先生がファシリテーターとなっているケースもあります。

新卒で企業に就職すると、OJT期間中、育成係の先輩がついてくださることがよくありますが、これに似た制度かな、と思います。研究生活において、何かわからないことがあったときや、相談したいときに、「この方に相談すればいい」ということが最初から明確になっていることは、とても安心です。もし決まっていなかったら、先輩方や先生方、皆さんお忙しい中で、遠慮して誰にも相談できず、迷走し続けてしまうかもしれません。

山内研では、各院生がゼミで研究発表をする機会が月1回くらいあるのですが、研究発表の前にファシリテーターの方にご相談することで、研究相談と研究発表の両方が、研究を進めるためのマイルストーンになります。そのように、研究発表の合間に1~2回、ファシリテーターに研究相談をしている院生が多いと思います。

私の場合、仕事が忙しくて研究が思うように進められなさそうなときには、あえてファシリテーターとの研究相談の日を決めてしまうことで、その日に向けて少しでも研究を進めよう、というプレッシャーを作り出しています。また、研究相談の時間がとれないときには、メッセンジャーなどでファシリテーターにご相談をすることもあります。研究発表の直前に発表資料のドラフトを見ていただいたりと、無理をお願いしていることも多いのですが、昨年度のファシリテーターの仲谷さんも、今年度のファシリテーターの池尻さんも、お二人とも快く応じてくださり、本当に感謝しております。

1年3ヶ月、山内研で過ごしてきて、学習環境として本当に恵まれている!と思うことがたくさんありましたが、中でも今回ご紹介したファシリテーター制度は特にありがたいものでした。これから本実践、論文執筆と、山場を迎えることになりますが、引き続きファシリテーターにお世話になりながら、研究を進めていきたいと思います。

次回は井坪さんから「夏合宿」についてのご紹介です!お楽しみに。

M2 谷口恵子

2019.06.20

【研究計画】青年期を対象とした社会情動的スキル育成のための学習プログラムの開発(D1中野生子)

皆さん、こんにちは。D1の中野です。
社会人学生も3年目に突入しました。昨年は転職をし、仕事に大きな変化がありましたが、新たな環境でも引き続き研究者との二足のわらじを履いています。

私の研究テーマは「社会情動的スキル」です。欧米ではここ30年近くSEL(Social Emotional Learning)と呼ばれる社会情動的スキルの学習プログラムが開発されてきています。一方で日本ではまだ社会情動的スキルという概念が一般的ではなく、部活動やボランティア活動等で当該スキルが向上する可能性が示唆されている状況ですが、効果が検証されたSELプログラムもあまり存在しません。

私の修士論文では、UWC ISAK Japanが中学生を対象に実施しているサマースクールを研究対象として、社会情動的スキルに及ぼす影響や、パーソナリティ特性との相関を調査しました。博士研究では、修士論文での知見を踏まえ、社会情動的スキル育成のための学習プログラムの開発を行いたいと考えています。

また、自身の博士研究とは別に、山内研究室で行なっている下記の研究にも参加しています。

ICT統合型プロジェクト学習のあり方に関する研究(Google社助成研究)
一人一台の環境において、葛藤状況から創造的なアイデアを生み出す高度なプロジェクト学習を実現するためのカリキュラムおよびICT利用のあり方について検討します。

クリエイティブラーニングの発想を生かした授業のあり方に関する研究(Google社助成研究・MITメディアラボとの共同プロジェクト)
MITメディアラボの開発したScratchのベースになっているクリエイティブラーニングの発想を生かしながら、日本の小学校で実行可能な授業のあり方とそのデザイン原則について検討します。

今後は、テクノロジーが学習環境の一要因として含まれていく機会が増えていくと考えています。ゆくゆくは社会情動的スキルとテクノロジーに関連する研究も行いたいと思っています。


【中野生子(Seiko NAKANO)】

2019.06.11

【研究計画】新規事業における中堅管理職の経験学習(D4田中聡)

D4の田中聡です。私は「新規事業×中堅管理職の学び」をキーワードに研究をしています。


これまで12年間の民間企業での実務経験から「経営環境の変化に対して非連続な組織変革を牽引して経営を舵取りできる経営人材が日本企業には圧倒的に少ない」という問題意識を持つに至り、次世代経営人材である中堅管理職の育成に強い関心を持っています。
新規事業という経験に着目し、新規事業を創る過程で大企業の中堅管理職が誰からどのような支援を受けて何をどのように学んでいるのか、という学びの全体像を明らかにし、経営人材の育成に資する実践的な知見を創出したいと考えています。


現在、山内研究室在籍者の中で「社会人の学び」を研究テーマにしているのは私ただ一人です。
こう聞くと「え?研究は前に進むの?」と疑問に思われるかもしれません。ただ、そのような心配は無用です。むしろ専門領域が異なる(とはいえ「学習研究」という意味では共通項のある)山内研究室のメンバーとディスカッションをする中で発見することはとても多く、私にとってゼミは研究を前に進める上で貴重な学びの場になってます。


例えば、専門領域が近い研究者コミュニティ(例えば、私の場合であれば管理職研究者など)内では改めて問われることのないような質問が、研究室メンバーからはごく自然に投げかけられます。
つい先日のゼミでも、私の研究内容に対してあるメンバーから「経験学習」とはどういう意味で用いているのか?という質問を受けました。それがきっかけとなり、あらためて社会人学習の文脈で経験学習がどのように論じられてきたのかを考えることができました。


こうした「当たり前に問いを立てる機会の多さ」こそが、「学習」という共通の軸を共有しながら多様な研究フィールドを持つ山内研究室ならではの強みであり、コミュニティとしての魅力ではないかと私は思います。

「学習」に関心があるすべての方に開かれている研究室だと思いますので、ぜひ山内研究室に興味をお持ちの方は気軽に見学にお越しください。

【田中聡】

2019.05.31

【研究計画】美術鑑賞における協調学習のデザインに関する研究(D3平野智紀)

D3になります平野です。私は、美術館や学校教育で広がりを持ちつつある、美術史などの知識だけでなく、鑑賞者同士の対話から美術作品の鑑賞を深めていく手法としての「対話型鑑賞」について実践・研究しています。私の研究では、対話型鑑賞を協調学習の一場面として捉え、鑑賞者同士の学習支援と、ナビゲイター(ファシリテーター)による情報提供の両面から、よい鑑賞をつくるための活動のデザインについて検討しようとしています。研究フィールドとしては、京都造形芸術大学のACOP(アート・コミュニケーション・プロジェクト)にお世話になっています。

博士課程も3年めになり、最近とみに考えていることとしては、私の研究は「何学」に属するのか? ということです。美術という領域でやっているということで、私の研究を「美術科教育」として捉えようとすると、私自身は教員ではなく、研究としても正規の小中学校・高校の図画工作・美術科の授業をフィールドにしているわけではありません。あるいは、美術館で取り入れられる手法を研究しているということで「ミュージアム研究」として扱おうとすると、私は美術館の学芸員ではなく、美術館での実践を研究にしているわけではありません。山内研のメインである研究領域は「教育工学・学習科学」だと思いますが、教育工学・学習科学で美術領域での研究が多いかというと、全然そんなことはありません。ただ、協調学習というメガネで対話型鑑賞を研究することに意義があると信じて(?)、山内研に所属しているところはあります。

この、ある種の座り心地の不安定さは、対話型鑑賞自体がさまざまな学問や実践の「間」(美術と教育の間、学校と美術館の間、教授と学習の間)で起こっている事象であるということを示しているとも言えると思っています。山内研は学際情報学府という、東京大学の中でも学部を持たない独立した大学院組織に属しており、「学際」=学問の際(きわ)にあたる研究をしている人たちが集まる大学院ですので、そうなるのも自然かもしれません。

私は社会人院生で、現在はあいちトリエンナーレ2019のボランティア育成等に携わっており、研修講師のため毎月1回名古屋・豊田にお邪魔しています。8月から始まるガイドツアーでは、対話型鑑賞の考え方を取り入れたツアーが実施される予定です。今年は9月の日本教育工学会秋季大会が名古屋開催ですので、よろしければ現代アートの対話型鑑賞を体験しに、あいちトリエンナーレにぜひいらしてください。

(私の研究のねらいは、こうした機会にナビゲイターを務めるみなさんが困ったときの指針となる実践的知見を提供することだと思っています)

平野智紀

2019.05.27

【研究計画】幼児の物語行為を支援するシステムデザインに関する研究(D6佐藤朝美)

博士課程の佐藤です。

私の研究ーテーマのキーワードは「物語・ナラティブ」です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、ナラティブ研究では、物語っていく過程における「語り手」だけでなく「聞き手」の役割にも着目します。本ブログであれば、大学院入試説明会も近いこの時期、「読み手」は山内研究室の進学を検討されている方が多いのではないでしょうか?そんなことを想定しながらブログを執筆したいと思います。

私はD6!ということで、ブログ「研究計画」もうかなりの回数書いておりますが、毎年それなりに目標も知識も増強されていて、学びの螺旋を実感しています。

現在は、デジタル化、テクノロジー化の社会的な動きが、どのようにナラティブ環境を変え、どのような新たなナラティブ研究が登場しているかについて調べ直しをしています。グーテンベルクの活版印刷術が発明される以前、民衆のナラティブを伝える媒体は、口承でした。印刷技術の進歩により、多くの人に印刷物が普及し、カラーの書籍や芸術的な作品が子どもたちの手に渡るようになります。インターネットの普及により、誰でもWebにアクセスするようになり、現在はタブレットやスマホ等、乳幼児を取り巻く環境にデジタルメディアは溢れています。そんな中、ナラティブの表現媒体にデジタル機器を用いる実践研究も増えています。

デジタル・ナラティブ」や「インタラクティブ・デジタル・ナラティブ」と呼ばれる活動においては、今まで表現しえなかった物語が展開され、大きな可能性を感じます。例えば、幼稚園において、ビデオ映像に取りながら物語を作成する共同制作では、映像を友達と確認しながら制作する中で気づきや発見があったり、作品を保護者に共有できることが利点として挙げらています。お絵かきソフトのスタンプ機能から、発話が促され、お話が膨らむ様子も報告されています。マルチメディアによる動機づけは大きく、これまでコミュニケーションを上手く取れなかった子どもの活動に保育者が驚くという展開も見られます。履歴を残すことが可能なデジタル環境では、アウトプットが最終作品ではなく、制作過程そのものがナラティブとして捉えられるのではないかとの議論もあり、物語の概念自体も改めて考えさせられます。

現在行っている博論執筆は、修士研究で行ったシステム制作(「物語行為を支援するソフトウェア」や「親子のオンラインコミュニティ」)をどのように意味づけ、まとめていくかという作業になります。社会人大学院生として、予想を超えてかなり長く在籍してしまいましたが(涙)、お蔭で多くの素敵な院生さんと出会うことができました。

次年度はどんな方が、どんな問題意識を持ち、どんなテーマの研究計画を持って入学されるのか・・・とても楽しみにしております。

佐藤朝美

2019.05.23

【研究計画】興味の深まりに関与する趣味縁の生態系(D3 杉山昂平)

D3の杉山昂平です。

これまで,大人が趣味を続けるなかで新しいおもしろさに出会っていくこと[興味の深まり]に,趣味を通した人間関係[趣味縁]がいかに関与するのかを研究してきました。1つめの研究ではアマチュアオーケストラを事例に楽団という[実践共同体]の関与を,2つめの研究ではアマチュア写真を事例にSNSなどで見られるゆるやかな[実践ネットワーク]の関与を明らかにしています。

今年度は博士論文の執筆にむけて,2つの研究を統合する大きな枠組みを言語化していくことが研究の課題です。


いまのところ,大きな課題が2つあります。

1つめの課題が「社会的意義と学術的意義の接続」です。なぜ仕事ではなく趣味を研究するのか。「趣味程度」のまま自然に放っておけばいいと考えるのではなく,趣味が深まるような環境のあり方を研究することは,社会的にどんな意味があるのか。研究の前提や大きな目的を改めて考え直すことで,趣味を学術的に研究することに社会的な意義づけを与える作業です。

2つめの課題が「総合考察」です。実践共同体に注目したアマチュアオーケストラ団員の研究と,実践ネットワークに着目したアマチュア写真家の研究,両方を行ったことではじめて見えてくることはなにか。研究の大きな目的に対応するかたちで,博士論文全体としての答えを出す作業です。

いずれもとてもチャレンジングな課題です。しっかり時間をかけて考えようと思います。
 

ちなみに,総合考察について考えていることを小出しにしてみると,「いま一緒に趣味をしているわけではないが自分と近しい趣味を追求している人,がある程度近くにいること」が大事な気がしています。楽団を移籍して新しい面白さに出会ったり,写真家の界隈から刺激を受けたりすることは,直接関わりのない他者が別の場所で趣味を楽しんでいないと成り立ちません。そういう意味で,さまざまな趣味人が織りなす「生態系」の豊かさに鍵がありあそうです。

杉山昂平

2019.05.07

【研究計画】興味の深まりを支援する越境的学習環境(M1 渡辺拓実)

こんにちは。山内研M1の渡辺拓実です。
昨年度に東京大学教育学部を卒業し、今年度からは山内研究室で学んでいます。

人の「やりたいこと」はどのように育まれていくのか?

ということについて関心があります。

「やりたいこと」と言われても、
それは、今この瞬間やりたいことなのか、それともこの先やってみたいことなのか、どれくらいやりたいのか
色々あるかとおもいます。

自分が具体的に興味を持っている「やりたいこと」は具体的には以下のようなものです。

1.いくつかの選択肢がある中で、それぞれの選択を吟味した上で決定している
2.自分の生活のほとんどの時間を割くようなもの、もしくは自分でそれほどの価値があると感じているもの
3.比較的長い時間取り組み続けたい、もしくは取り組んでいること

ここでいうやりたいことが学術的に何に当たるのか、自分でもまだ完全には見えていないのですが、「興味」というのが少し近いのかなという風に考えています。
興味には「深まる」という考え方があり、これは僕の言葉でいうと「やりたいことが明確になっていく」ということに近いなという風に解釈しています。

1例を紹介してみたいと思います。
Hidi & Renninger(2006)は興味の深化(develop)には4つの局面があると述べています。

1. 誘発された状況的興味/Triggered situational interest
環境や課題の特徴によって一時的に感情や認知プロセスに変化が引き起こされることによって生じる興味
2. 維持された状況的興味/Maintained situational interest
課題の意義を感じたり積極的参加を行うことを通じ,持続的に注意が向けられたり取り組んだりする状態のこと
3. 発現した個人的興味/Emerging individual interest
特定の内容に対し、繰り返し取り組みたいと長期的に望む初期の興味
ポジティブ感情、知識の蓄積、価値の認知を伴う
4. 深化した個人的興味/well-developed individual interest
より多くの知識や価値の認知を伴い,特定の内容のに対して,繰り返し取り組みたいとより長期的に望む興味

例えば、この4つの局面に合わせて、人の「やりたいこと」を段階別に分け、各段階で「やりたいこと」を育みやすい環境を考えることができるかもしれません。

そして、僕自身の実体験がベースでもあるのですが、この興味の深まりは、異なるバックグラウンドを持つ個人や異なる組織に所属する個人同士が、対話や実践を行う越境的な環境下で起こりやすいのではないかと考えています。

自分の知らない新しい場に出向くことや経験をすることで、自分の中で「これをやってみたい!」と感じた経験があるのではないでしょうか?

読まなければならない先行研究や理論などは山積みです。
自分の妄想に、少しづつ現実味を持たせることに、悩み、楽しみながら一歩づつ取り組んでいければと思います。

渡辺拓実

2019.04.29

【研究計画】美術大学における産学連携プロジェクトの評価手法の検討


今年度から山内研究室にお世話になっています、M1の増田悠紀子です。
入学から怒涛の4週間で、あっという間にGWに入ってしまいました。初回のブログは、研究計画の紹介ということなので、自分のこれまでの問題意識を含めて書いていこうと思います。

私は都内の美術大学を修了後、別の美術大学のデザイン科に5年間助手として勤務していました。ですので、18歳以降の人生の大半を、ものづくりをしている人たちのなかで過ごしてきました。助手としての業務の傍ら、いくつかの産学連携プロジェクトに携わる機会があり、その活動の実践を非常に面白く感じたことが、研究テーマにつながっています。
ところで、皆さん大学の産学連携というと、理工学系の大学が行なっている開発研究などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。多くの大学で行われ、年々規模を増している産学連携ですが、さらなるイノベーションの促進のためその評価方法に関しても模索が続けられています。しかし、このような文脈で語られるのは通常理工学系分野での産学連携のみです。一方で、美術大学でも盛んに産学連携活動が行われています。例えば、製品やパッケージのデザイン提案、イベントの企画や運営、サービス提案、最近では地域創生に関する提案など、成果物がモノに限らないことも非常に多いです。こうした多様な取り組みがされている美大の産学ですが、それをとりあげた先行研究は少なく、各大学がホームページ上で行なっている実施報告にとどまっているような現状です。
特許庁の報告によると、美術・デザイン系の大学においては、理工学系分野と比較して高度な機器設備を要する必要がなく、そのため外部資金を獲得するインセンティブや意識が高くないという指摘がされています。このことも、この分野の研究があまり進んでいない要因の可能性があります。さらに、同じ資料の美術・デザイン系の大学への聞き取り調査によれば、産学連携に取り組む大学側の一番の狙いとして「学生への教育」が最も多く挙げられており、大学・学生たちにとっては産学連携が重要な実践的教育機会であることが示されています。理工学系の産学連携は、その評価の指標として特許出願数や経済波及効果を用いていますが、美術大学の産学連携は上記のように性質が大きく異なっており、別の観点からの評価の指標・方法が必要であると言えます。このような美術大学における活動を、PBL(Project Based Learning)の評価手法を参考に、そのあり方を検討したいと考えています。

産学連携は、実情として問題に直面している企業や地域に対して的確な提案を返すことと同時に、美術大学にとっては学生への実践教育活動の意味合いも強いことから、評価を検討する際もこの両方の視点が織り込まれる必要があるでしょう。
プレゼンテーションやプロジェクトの評価方法として、近年ではルーブリックによる評価が注目されています。大学でのフィールドワークの活動にルーブリックを用いた先行研究の例(猪池 2013)もありますが、ルーブリックの利点は、評価項目を自由に設定することができる点にあります。これを産学連携に携わる教員、連携先の企業や地域、学生の三者で一緒に項目を検討作成することにより、達成目標を全員で共有することが可能になるのではないでしょうか。大学でのサービス・ラーニングにおいて評価基準を地元住民と協働で開発した先行研究(杉原 2015)では、その有用性が報告されています。

以上のように、私自身の興味は、各プロジェクトの客観的格付けとしての評価ではなく、プロジェクトに関わるステークホルダーたちが一緒に目標とその段階を見定めることで、それ自体がプロジェクトの質を向上させるようなツールになり得るのではないか、というところにあります。そう行った意味で「評価」という言葉を使うのが妥当なのか、疑問を抱きつつあるのですが、まずは読まなくてはいけない基本的な先行研究の論文が机の上に山積みなので、それをさばくのでGWは終了しそうです。長く険しい研究の道のりの、まだスタート地点に立ったばかりですが、これからその途上で気づいたこと・変わってきたことも含めて、研究の進捗をまたこのブログでご報告できればと思います。

[参考文献]
経済産業省,平成24年度 産業技術調査「産学連携機能の総合的評価に関する調査」報告書 本編
特許庁,平成23年度 デザイン産学連携の多様性を踏まえた契約の在り方に関する研究
上田勇仁,合田美子,根本淳子,鈴木克明(2010)Project Based Learningにおける学習評価手法の動向と特徴,日本教育工学会第27回全国大会,p677-678,
猪池雅憲(2013)評価基準表を用いたフィールドワークの評価方法の改善―観光地域研究を例にして―. 太成学院大学紀要 ,15, 29-35
杉原真晃,橋爪孝夫,時任隼平,小田隆治(2015)サービス・ラーニングにおける現地活動の質の向上 : 地域住民と大学教員による評価基準の協働的開発.日本教育工学会論文誌,38(4), 341-349

【増田悠紀子】

2019.04.25

【研究計画】幼児の創造的音楽学習を支援するデジタルアプリケーションの開発と評価

こんにちは。修士2年の江﨑文武です。

私の研究については3月にこちらでご紹介させて頂いたばかりなのですが、今回は少しだけ具体的なお話しが出来ればと思います。

アブストラクト:
日本の音楽教育は機能和声による音楽の演奏表現を教え込むことに偏してきた。リコーダーや鍵盤ハーモニカ、歌唱による教育がその例である。しかし、幼稚園教育要領の領域「表現」において、「感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して,豊かな感性や表現する力を養い,創造性を豊かにする。」項目が追加されて以降、保育の現場では幼児の主体性・創造性を重視した表現活動が求められている。幼児と音楽をめぐる諸研究においても、領域「表現」の登場以降、楽器や歌唱を軸にした視点ではなく、子どもからの「音を介した」アウトプットを包括的に捉えた研究が登場してきているが、「自分の絵を描いて表現したことがある」ことがある人に対し「自分の音楽をつくって表現したことがある」人が少ないことからも、音楽教育の現場における「表現」を促す活動の展開およびその研究はまだ十分に行われていないと考えられる。

そこで、本研究では、主にヒップホップで用いられる「サンプラー」をベースに、身の回りの音を用いた創造的音楽学習(=既成の音楽を歌ったり演奏したりするのではなく、身の回りすべての音を使って子どもが主体的に音楽をつくる活動)を支援するデジタルアプリケーションを開発・評価する。

詳細:
幼児向けのデジタルアプリケーションを開発している企業プロジェクトに参加する形で研究を進めます。
全体的にはMurry Schafer(1965)の「創造的音楽学習」という概念をベースにしています。この学習では、子どもが多様な音素材を活用して即興的に音を探求しながら、経験創作(作りながら音を出す)によって音を創る学習であり、子どもの主体性や聴く力の育成、多様な音楽形式の追究による音楽観の拡大を促すことを目標にしています。
これまで、サウンドスケープやサウンドエデュケーションといった領域で、創造的音楽学習を支援する様々な教授法が試されてきましたが、音の即時的なデジタル加工編集・保存・共有は近年になって一般的に可能になったことなので、本研究はこれら『デジタルの強み』を積極的に活かす研究にしたいと思っています。支援原理は現在検討中ですが、まずは開発〜実践のサイクルを繰り返す予定です。アプリケーションのプロトタイプ開発は進んでおり、6月に幼稚園でプレテストを行う予定です。

研究の詳細は知財に関わることもあり、まだ詳細にはお話できませんが、音楽教育とICTについてご関心のある方、また、音楽家でこうした教育活動にご関心のある方はぜひご連絡頂ければ幸いです。

【江﨑文武】

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