2012.12.27
D2の安斎勇樹です。「研究発表のこだわり」シリーズ、第9回です。
研究発表といっても、学会口頭発表、ポスター発表など様々な場面が想定されますが、今回の記事では「ゼミにおける研究進捗発表」に焦点を当てて書きたいと思います。山内研究室ゼミでは、週に1回、院生3名が研究進捗を発表する機会が設けられています。所属メンバーは11名なので、4週間に1度自分の発表の順番が回ってきます。他の院生、助教、指導教員からフィードバックを頂く貴重な機会ですから、情報伝達の方法に工夫をし、進捗状況を正しく理解してもらい、適切な質問やコメントをもらえるように努力することは肝要です。それができなければ、自分の研究はいつまでも進みません。
しかし最近では、「自分の研究を進めるため」に発表するのではなく、「聞き手にとって学びがあるかどうか」も重要なのではないかと考えるようになりました。そう考えるようになったのは、同期の伏木田さんの研究進捗発表のレジュメがまるで授業テキストのように構成されていたのに感動したことがきっかけで、僕自身もあまり実践できていないことなのですが(笑)。
思えば大学院のゼミは、各々が専門のテーマを掲げ、多様なメンバーで構成されています。自分のテーマについては当然ゼミメンバーの誰よりも自分が詳しく、進捗発表までの4週間は誰よりもそのことについて考えてきているはずです。そう考えれば、研究進捗発表は「他人の視点からアドバイスをもらう場」であると同時に、「自分の専門性と努力の成果を共有する場」でもあるわけです。
自分の努力をおすそわけして、他のメンバーにも発見を持ち帰ってもらいたい。そのために、進捗をレジュメにまとめる過程で「これは誰かのテーマに関連しないだろうか?」「この方法論は誰かの役に立たないだろうか?」「この発見はみんなも面白いと思ってくれるのではないか?」と想像する。そういう意識を少しするだけで、わかりやすいだけでなく、聞き手に学びをもたらす発表に近づくのではないでしょうか。
ただ「困ってるんです、助けて」という姿勢で進捗を放り投げるのではなく、聞き手に貢献するつもりで発表を行うことで、より互恵的に学び合えるコミュニティをデザインしていく。そんなことを来年度の目標の一つにしたいと思います。
[安斎 勇樹]
2012.12.26
12月1日に開催されましたBEAT公開研究会「スマートレテレビが変える家庭学習」のセミナーレポートが公開されました。どうぞご覧ください。
http://www.beatiii.jp/seminar/051.html
【山内 祐平】
2012.12.23
こんにちは.M1の吉川遼(よしかわ・りょう)です.
12月20日に2012年最後のゼミが終わり,山内研でも忘年会が催され,非常に楽しい一時を過ごしました.とはいっても,M2の皆さんは忘年会が終わるとすぐ修論執筆に戻られ,かくいう僕も研究相談のためのレジュメを作ったり...,と大学院生にとって一年を締めくくることができる時が来るのはまだまだ先のようです.
さて「研究発表のこだわり」シリーズ,第8回目は吉川遼が担当します.
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●「前」と「後ろ」の繋がりを意識する
山内研のゼミは約1ヶ月周期で研究発表の担当が回ってくるのですが,研究発表は,
前回の研究発表→課題→ファシリテータの方との研究相談→[今回の研究発表]→課題→研究相談→次の研究発表→・・・
といったように,何を踏まえ,何について取り組み,その結果から何が分かり,何が分からないのか,どこについてアドバイスがほしいのかという1ヶ月の進捗を15分という時間でまとめて伝えないいけないため,情報デザインが非常に重要になってきます.まだまだ試行錯誤を重ねている段階ではあるのですが,この「前」と「後ろ」のつながりは意識して臨むようにしています.
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●なるべく読みやすく
細々とした話になるのですが,レジュメを作る際に気をつけていることは主に,
◦行間の開き具合
◦フォントサイズの統一
◦体裁の統一(箇条書き,罫線など)
の3つです.
このうち行間については,欧文と和文でも行間の開き方が異なるため,WordやPagesといったワープロソフトでは,デフォルトの行間を使うと詰まったように見えてしまいます.一般的によく言われるのは文字サイズの1.5-2倍程度ですが,普段は1.3倍程度開けることで調整しています.
また各項目の並びというものは自身の思考の流れを反映させたものなので,その流れを途切れさせないようになるべく各章はページを跨がないよう,1ページに収めるか,次のページの冒頭から始めるか,ということにも可能な限り気をつけています.
普段,体裁を考える上で参考にしている本は色々とあるのですが,例えば,
◦遠藤潤一, デザインリテラシー研究会. (2007). 情報デザインベイシクス : DTP・プレゼン・ウェブを始める人のために. ユニテ.
◦情報デザインアソシエイツ. (2003). 情報デザインソースブック = Information design source book. グラフィック社.
◦Wildbur, P., & Burke, M. (1998). Information graphics : innovative solutions in contemporary design. Thames and Hudson.
◦生田信一, 大森裕二, 亀尾敦. (2007). Design basic book : はじめて学ぶ、デザインの法則. ビー・エヌ・エヌ新社.
といったものを参考にしています.
もし,おすすめの情報デザインの本がございましたらご教授いただけると幸いです.
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●論点を明確にするためのイラスト
15分と限られた時間の中で,自分の思考や研究の概要について,少しでも直感的に理解してもらうために,レジュメにはなるべくモデル図,システムUI案カンプ...といったイラストを用いています.
ですがなかなか研究の方向性が決まらない中,研究発表に向けてモデル図を作成していると,途中で「あれ?これって実は違うんじゃない?」と気づいてしまい,不安感を抱いたままゼミに臨むことも多々あります.
とはいっても,論点を明確にすることは議論を活性化させるためにも大切な事なので,システムモデルやインタフェース案を掲載することは重要だと考えています.
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●情報に強弱をつける
発表に抑揚をつけることも重要な要素の一つです.
15分という中で,自分にとって一番伝えたいところはどこなのか,一番意見を欲しいところはどこなのかを明確にするために,話し方の強弱を意識してつけるようにしています.
初期のゼミ発表では自分がレビューした文献の要約をこれでもかと通勤ラッシュの電車のように詰め込んでいたため,それをただ読むだけでいっぱいいっぱいになってしまっていました.その結果時間もオーバーしてしまう上に,伝えたいことも伝わらず,もどかしい思いをしたことも多々ありました.それでも最近では情報の強弱について意識して発表することで,時間に余裕が生まれ,伝えたいことが伝えられるようになったと(自分の中では)思っています.
しかしながら,まだまだ僕の研究発表は内容においても構成においても改善点の余地が大いにあります.
先週まで記事を担当されてた先輩・同期の皆さんの「こだわり」,そして来週からのブログ記事を担当される博士課程の皆さんの「こだわり」を参考にさせていただきつつ,よい研究発表をすることで,ゼミでのフィードバックを研究につなげていけるよう邁進していきたいと思います.
それでは.
【吉川遼】
2012.12.19
教育や学習については経験から様々な思い込みが発生します。
脳の10%しか使っていない? 「神経神話」が教育に混乱
http://jp.wsj.com/public/page/0_0_WJPP_7000-550485.html?mg=inert-wsj
この記事の中で「個人の好みの学習スタイルで教えられた方が学習効果が高い。それは聴覚、視覚、ないし運動感覚の別を問わない。」という例が出てきます。
これの何がおかしいのか?と思われ方もいらっしゃるかもしれません。聴覚教材が好き、視覚教材が好きなど、学習スタイルに個人差があるのは事実です。また、視覚教材に学習効果が高いことも実証されています。
ところが、この記事で取り上げられている実験のように、生徒に言葉で学ぶか視覚で学ぶかを選ばせた上で、学習効果をはかると差が出ません。
このような例は、他にも起きている可能性があります。学習スタイルに関する神話も教員が多く信じていますが、専門だと思っている人がはまる落とし穴のようです。自戒したいと思います。
【山内 祐平】
2012.12.14
こんにちは。
11月から始まりました、"研究発表のこだわり"シリーズ。
第7回目は、M1の吉川久美子が担当させていただきます。
まだ私はM1ということもあり、研究について発表させていただく機会はあまり多くありません。
ですので今回は、ゼミでの研究発表場面で心がけていることに焦点をあて、
以下2点についてご紹介させていただきたいと思います。
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1.頭の中に架空の他者を設定する
発表資料を作成する時は、"どういう順番で情報を提示したら、私の考えていることを第3者に伝えることができるのか"ということに気をつけています。
ゼミの発表では、自分の研究に対して意見をいただける大事な場です。
ですので、次につながるアドバイスをいただけるように、"私がこれまで何を考えて、どこに興味を持ち、何をしたいと考えているのか"を少しでも伝えらえるように努めています。
そのため、どの順番で話を展開していけばいいのかを常に考え、頭の中に架空の他者を設定します。
そしてその他者に伝えるにはどうしたら良いかを考え、資料に載せる情報をいくつかのかたまりに分け、それを積み木のように重ねたり、組み替えたりしながら、発表の筋を考えて行きます。
また、これは自分の考えなのか、それとも誰か他者の考えたことなのか、その区別が不明瞭に他者に伝わることがないように、注意する必要もあります。ここまでは○○の考え、ここからは私の考えということをはっきりと区別して記述するように心がけています。
しかし、この積み木内の情報の事実的確認で、せっかくの研究発表の時間が終わってしまうこともあります。
そうならないために、使う用語等について咀嚼し、解りやすく記述するように意識しています。
この情報について説明したい時に、文章で表すことが必ずしも適切とは限りません。
その場合は、箇条書きに直してみたり、イラストや表で図示してみたり、いろいろな加工を試み、
一番しっくりとくる表し方を採用しています。
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2.発表する姿勢
発表する時間は限られています。
時間内におさめようとして、ついつい早口になってしまったり、発表資料ばかりに目がいって、
資料に話しかけているかのような発表になってしまうことがあります。
私もよくこのような発表をしてしまいがちです。
しかし、ちょっとしたことですが、それでは相手には伝わらないのではないかと考えます。
当たり前なことではありますが、まずは自分の発表を聞いてもらうためには、聞き取りやすい声の大きさとスピード、そしてその姿勢を示すことが大切なことのように思います。
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ゼミは、同期や先輩方の研究発表の仕方から良いところを学べる機会でもあると思います。
研究内容だけでなく、その発表の仕方についても多くのことを学びながら、
上記のこだわりを大切にしつつ、伝わる研究発表を心がけていきたいと思います。
【吉川久美子】
2012.12.12
東京大学大学院情報学環は教育部研究生を募集しています。メディア・ジャーナリズム、情報産業、情報社会、情報技術について学べる学部副専攻相当の教育プログラムです。他大学の学部生や社会人の方も受験できます。 山内も授業「教育と情報」を出講しています。
出願に関する情報はこちらからご覧いただけます。
【山内 祐平】
2012.12.06
こんにちは。M1の梶浦美咲です。
M2の方々が修論提出に向けてラストスパートを切っている傍ら、私は私でどのようなシステムを開発するのか、また研究以外のことで悶々とする日々を送っています。
さて、今回のテーマ【研究発表のこだわり】ということで、まずは執筆されたM2の方々の記事を読み、私自身も勉強させて頂きました。
ゼミでの研究発表では毎回レジュメを用意して発表するのですが、そのレジュメの構成やデザイン、発表準備段階に関する工夫、また、ゼミでの発表以外の場における研究発表の工夫について紹介されていました。
私は前者のゼミでのレジュメについて、その構成面とデザイン面に関して意識していることを紹介したいと思います。
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■構成面
私のレジュメの構成は以下の通りです。
0.発表内容の目次
1.前回の発表
2.研究の進捗
3.前回から今回までの間に進めたこと&その考察
4.今後の予定
5.参考文献
まずは、前回の発表の確認、そして現在していることを列挙、そして今回までに実際に行ったこととそれに対する自分なりの考え&最終的に自分の中で至った結論、今後の方針について報告しています。
特に3.では自分の思考プロセスを聞き手側が追えるように意識しています。自分のその過程が客観的に見て間違っていないかを確認してもらう意図があります。
また、ただ調査した結果を報告するだけでなく、それに対して自分がどう考えたのかをしっかり伝えるようにしています。今の自分の考えを伝えることで、ゼミにおいて、その考えを発端に議論が生まれる可能性があるためです。
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■デザイン面
◎罫線を使って見やすくする。
デザインとまではいかないかもしれませんが、私がこの山内研に来て、先輩方のレジュメを見ているとよく罫線が使われていることに気付き、私もそれを採用しています。
ご存知の方も多いとは思いますが、MS Wordメニュー[罫線]から[線種とページ罫線の網掛けの設定]を選択すると様々な罫線が引けます。これを使うだけで読みやすくなり、かつ見栄えが良くなります。
私は目次の各項目名の下に区切り線を引いてみたり、目立たせたい部分を罫線で囲んでみたりしています。
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以上、私のこだわりについてご紹介しましたが、やはりまず基本となるのは色々な発表を聴いて、良いと思った研究発表を真似することだと思います。
何をするにも、手本となる人をみつけてそれを自分なりに真似てみることがスキル向上の一番の近道なのではないでしょうか。
■最後に...
研究する上で、その成果を発表する場は必然的にやってきます。そこでいくら研究内容が優れていてもその内容が相手に伝わらなければ、相手から的確な意見を貰うことはできません。だからといってデザインを重視しすぎて、研究内容が疎かになってしまったり、ハロー効果を生んで聞き手側の評価を歪めてしまえば本末転倒だとは思います。
しかし研究する上で、いかに自分の研究を相手に伝えられるか、その手段としてのプレゼンスキルは大切だと日々実感しています。
今後も人に伝えることを意識して発表資料を作成していこうと思います。
【梶浦美咲】
2012.12.05
山内が早稲田大学永岡先生、電気通信大学植野先生と編集に関わらせていただいた教育工学選書第8巻「教育工学における学習評価」が発売されました。
学習者中心の教育を評価するための方法について体系的に記載してあり、ゼミでも指定文献にしております。ぜひお買い求めください。
また、教育実践を研究として論文化するための方法論についてご関心がある方は、特任助教の森さんが分担執筆した第3巻「教育工学研究の方法」もおすすめです。
【山内 祐平】
2012.11.29
みなさんこんにちは。M2の山田小百合です。
気づいたらもう修論提出まで1ヶ月ほどとなりました。毎日データや文献とにらめっこしながら過ごしています。
さて、研究発表のこだわりということですが、自分の研究を発表する機会は、ゼミでの研究発表のみにとどまりませんよね。
学会や研究会、何かのイベントに呼んでいただきお話をするなど...発表の機会は多岐にわたります。
研究室外で発表の機会をいただいたときは、自分が専門とする分野を知らない人が聴いてくださることも多いので、誰が聴いても伝わるようお話したいものだなと思っています。
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私は現在子ども(小学生)対象の研究をしているので、見栄えとして「保護者&子ども」に親しみのあるものにしたいというこだわりがあり、研究発表資料(ポスターやスライド)も活かしたいと思って意識しています。
少し話がそれますが、私の研究はワークショップ実践があってこそできる研究なので、何よりワークショップに人が集まってくれないと研究ができません。
しかも、対象は小学生なので、小学生に告知をする際には「保護者」にアプローチをしなければなりません。
保護者でインターネットから情報をキャッチしてくださる方は、正直まだまだ多くありません。
そこで、できるだけチラシを作るのですが、どんな情報も、子どもたちが興味を持ってくれても、「保護者」がOKしてくれないと、子どもたちは来てくれません。(当たり前ですね)
なので、子どもたちにも「楽しそう!」と思ってもらいつつ、保護者のみなさまにも、「子どもを参加させたい」と思ってもらう必要があります。
そんなとき特に意識するのが、どんな色の組み合わせだと(発表)資料が見やすいか、ということ。
明るい色がいいなぁと思いつつ、原色並べても目に痛いですし(笑)、優しい色で、かつ色でごちゃごちゃしないように気をつけ、少しでも親しみやすさを感じてもらえるように考えています。
発表の構成については先週までにM2メンバーが書いてくれたので、そういった構成・ストーリーに「どう色付けするか」が私のこだわりです。
アプローチしたい対象に、まずは直感的に親しみやすさを感じてもらわないと、そもそもその資料に目を向けてくれないと思うので、まずは目を向けてもらうことを意識しています。
今は子どもを対象にした色付けを意識していますが、対象によって変化します。
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ワークショップでの雰囲気が、研究発表という異なる場所でも伝わるといいなぁと思い、こうしたチラシなどのデザインの延長で、ポスターやスライドを作っています。
資料を作成する際、使う色は2色までにできる限りとどめ、度々テーマカラーを設定しています。
ちなみに現在の研究のテーマカラーはピンクで、サブカラーとしてスカイブルーを使っています。
できるだけ目にやさしいパステルカラーの中で組み合わせを考えており、なるべく赤に近い色のほうが、温かみがあるなぁと思って、ピンクを選定しています。
また、ピンクは女の子、ブルーは男の子をイメージしており、「男の子も女の子も楽しんでいる場面」をイメージしています。
*上が人工知能学会主催の研究会での発表資料で、下が修士論文中間発表資料です。
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実は保護者向けのサイトや、子どもの学習支援などのサイトのデザインをかなり見ていた時期がありました。
子供向けのサイトは「かわいい!」のはもちろんのこと、色の配置が優しくて、とても親しみやすさを感じるところが多いです。
子供向けのイラストを提供しているサイトなども参考になるのでお勧めです。
【山田小百合】
2012.11.28
ベネッセ教育開発センターのウェブサイトに山内のインタビュー記事が掲載されました。
ぜひご覧ください。
「未来のデジタル社会を生き抜く子どもたちを育てるために」
http://benesse.jp/berd/focus/1-digital/activity2/index.shtml
【山内 祐平】