2008.01.25

【研究に役立つウェブサイト】国立国会図書館 蔵書検索・申込システム

NDL-OPAC 国立国会図書館 蔵書検索・申込システム
http://opac.ndl.go.jp/index.html

国立国会図書館に所蔵されている資料は,書名,著者,出版者,出版年などの情報が一件一件保存されており,そのほとんどがインターネットを通じて世界のどこからでも検索することが可能なのだそうです。
実はこのシステムを使うと,保管されている日本中の博士論文が,他の資料と同じく検索することができます。

あらかじめ利用者登録をすれば,NDL-OPACで検索した資料のコピーを実費のみで郵送してもらえるサービスもあるらしいのですが,自分の興味のある分野のキーワードを検索するだけでも,自分と似た研究分野の研究者を探すのに一役買います。

例えば僕の場合だと,「協調学習」とキーワードを入れて検索をすると,副指導教員の中原先生や,ゼミでお世話になっている望月先生の博論以外にも,これまで知らなかった研究者の方の名前もヒットします。

その後,CiNiiGoogle Scholar,以前森さんが紹介してくださった科学研究費補助金採択課題・成果概要データベースなどを使って,その研究者がどのような論文を書いているかということを検索すれば,それまでは把握できていなかった先行研究について調べることができるわけです。

また,他にも,「協調学習」ではなく,「協働学習」の文脈ではどのような人が研究をしているのかや,「共同学習」ではどうか,など,似てはいるが異なる文脈の先行研究についても同様に調べることができます。

方法は簡単です。NDL-OPAC 国立国会図書館 蔵書検索・申込システムのページから「一般資料の検索/申し込み」というところをクリックし,次の「書誌 一般検索」の画面で「博士論文」にチェックを入れます。あとは気になる用語で検索するだけ。

この調べ方を聞いたときは,その便利さに驚きました。ぜひ一度お試しください。

[坂本篤郎]

2008.01.17

【研究に役立つウェブサイト】楽してしっかり論文チェック。

今回の【研究に役立つwebサイト】は、三宅の座右の銘でもある「楽」から、「最新の論文は目の前(=Desktop)まで届けてもらおう!」をコンセプトに、海外大手e-journal出版社のalert機能をご紹介したいと思います。

三宅は、自分でも悲しくなるくらいにモノを忘れてしまう質です。

ものを忘れるのは三宅の性なので自分が悪いのですが、とはいえ、自分の中心的な研究分野であればまだしも、隣接領域や関連分野の小さな学会誌等、いちいちこちらから出向いていって確認していたのでは、面倒で仕方ありません。何より、効率が悪くして仕方がない、と思うのは僕だけでしょうか。(それでもインターネットが発達する以前に比べれば随分と楽になったはずなのですが)

また、面倒だという以前に、これは認知的にもあまりよくない状態だと言わざるを得ません。僕の敬愛するDr.Don Normanが「誰のためのデザイン?」の中で「覚えるという大変な作業の一部は、外界の方にまかせた方がいいのではないだろうか。」(P.119) と言っているように、専門の研究分野をはじめ、隣接領域や関連した領域の学会誌の動向をすべて把握しようとすれば、すぐにでもミスが起きてしまいそうです。

そこで。

覚えられないのならば、他の人に覚えておいてもらいましょう、という話です。

海外大手出版社のウェブサイトを訪れたことがある方はご存知かもしれませんが、一部の出版社のサイトでは、ログインすることで自分専用のカスタマイズを行うことが出来ます(ScienceDirectやLawrence Erlbaum等が山内研究室で関係のあるところでしょうか)。それぞれの出版社によって名称は多少異なるものの、"My Settings"(ScienceDirect)、"My Profile"(Lawrence Erlbaum)など、"My ~"の名称が多いようです。

今回ご紹介したいのは、これら個人向け設定サービスの中の、"alert"機能と呼ばれるものです。この機能、名前の通りalertしてくれる、神経張りつめてみはっててくれます。さすが機械です。忘れることもありません。出版社によって若干の違いはありますが、基本的には、自分の選択したキーワードをもとに、新しく出版される論文を24時間365日見張ってくれます。

昨今は多くの方が電子メールを毎日チェックしていらっしゃるのではないかと思いますが、ほとんどのサイトが提供するalert機能は、自分の登録したキーワードにヒットした場合に、メールでお知らせを送ってくれますので、まさに、勝手に覚えていてくれていて、自分の机(=DeskTop)まで届けてくれる訳です(中身は別ですが)。

メールの内容があたり!という内容だったりすると、ついついalert君をほめてあげたくなること請け合いなだけでなく、何故か論文までとても読みたくなることも必至です。ぜひ一度試してみてください。


ScienceDirect
http://www.sciencedirect.com/
Lawrence Erlbaum Associates
http://www.leaonline.com/

2008.01.10

【研究に役立つウェブサイト】artscape

artscape
http://www.dnp.co.jp/artscape/

ミュージアム(博物館・美術館)は、学校とは違ったゆるやかな学びの場です。私の研究はミュージアムの展示における来館者の学習の仕方を学習論的/メディア論的に明らかにする研究なのですが、山内研究室でも、Monogatariプロジェクトという教育工学的なインタラクティブ展示の開発プロジェクトが行われています。学習は学校だけで起こっているわけではなく、ミュージアムなどのゆるやかな場でも起こっているのです。

今回ご紹介するウェブサイトは、artscapeという美術館情報のポータルサイトです。大日本印刷株式会社により運営されているこのサイトは、全国の美術館・博物館で行われている展覧会の情報が掲載されているだけでなく、ミュージアム研究者や学芸員によるコラムや、現代美術用語集、デジタルアーカイブ用語集などもあり、コンテンツが充実しています。

現代美術用語集・デジタルアーカイブ用語集に取り上げられている用語を見ると、ミュージアムはきわめて学際的な領域であることがわかります。現代美術やデジタルアーカイブは、美学・美術史的にも、あるいはメディア論的にも捉えることができますし、学習論としても捉えることができます。たとえば、「キッズ・アート」という項を見てみましょう。

キッズ・アート
http://www.dnp.co.jp/artscape/reference/artwords/k_t/kids_art.html

「-子どもが営むアート活動やその作品の総称。一般にその活動は、子どもの伸びやかな創造性やメタスキルの向上などを主な目的として、体験型のワークショップなどの課外活動を通じて行なわれることが多く、既存の学校美術教育とは別個のものとして考えられる。既存の美術教育に対する不信が根底にあるのはもちろんだが、その他にも自己表現、マイノリティ、ジェンダー、リテラシーといったさまざまな問題を孕んでいる。まだ歴史が浅いうえに、子どもの文化的営為をどのように評価していくのかなど難しい面は少なくないが、既存の美術の諸制度に対して多くの問いを投げかける批評的な概念であることは間違いない。なお日本でも、近年キッズアートへの関心が高まっており、多くの地方自治体が公教育プログラムの一環に組み入れており、その成果に注目が集まっている。文献としては、N・ペーリー編の『キッズ・サバイバル』が最も包括的。-(暮沢剛巳)」

キッズ・アートの試みは、アビゲイル・ハウゼンからアメリア・アレナスに至る、子どもの自由な語りを引き出す鑑賞教育の試みにも通じるものがあるでしょう。ここで「学び」は、知識伝達とは全く異なるものとして捉えられています。ミュージアムにおける学びの解明とその支援は、これからの重要な研究課題と言えるでしょう。

artscapeトップページの最下部には各美術館の展覧会ポスターの縮刷版が並んでおり、リロードするとポスターの種類や並び方が変わるというちょっとした仕掛けもあります。たまにはこのサイトを見て、どこかの美術館の展覧会に出かけてみてはいかがでしょうか。

[平野智紀]

2008.01.07

【エッセイ】論文の文体

毎年1月最初のゼミは、修士論文を集団添削する会になります。論文の間違いや表現のおかしさは自分ひとりではなかなか気がつきません。文章は、人の目を通ってはじめてよくなります。
学際情報学府のような多様な研究が行われている大学院では、領域による文体のずれをどう調整するかという問題がでてきます。自然科学系(理学・工学)の論文は、簡潔で短い文章が標準です。冗長な言い方をしていると、「無駄な言葉を使って」ということになります。
人文社会系(文学・社会学)では、程度の問題はありますが、表現の分厚さや余韻も「文章表現力」の指標になります。学際的な研究を行って学問の壁を越境しようとすると文体が分裂しそうになることがあります。それを統合するのは、新しい文化をつくる作業なのかもしれません。
ただし、どのような領域でも、自信のない文章はよくありません。「この論文の結論はおそらく正しいと考えているが、人によっては議論の余地があるかもしれないと思われる。」では、読者は苦笑いしてしまいます。
余韻と冗長は紙一重です。余計なものは含まれていないが、奥行きを感じさせる文章は、書くのは難しいですが、どの領域でも歓迎されます。自分でもなかなかできませんが、心がけたいものです。

[山内 祐平]

2008.01.03

【研究に役立つウェブサイト】時の紡ぎを残すこと

国立国会図書館デジタルアーカイブポータル PORTA
http://porta.ndl.go.jp/

〈お年玉企画〉「BitTime」(タイマーソフト)

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 新しい年も明け,平成も20年目へと入りました。かつて故小渕氏が「平成」という年号の額を掲げて示したときから,ほぼ一人の成人が育つまでの年月が経過したということであり,その時間の長さについてはそれぞれの方々がそれぞれに感慨をお持ちになるのだと思います。

 時の流れがいくら続いても,残す努力なしには歴史の積み重ねにはなりません。私たちの頭の中の記憶は儚いもので,語り継ぐことや書き記すことをしなければ,たやすく消え失せてしまいます。さらに,語り継ぎも記録の保存も実践は思いの外大変なことであり,その地味な印象のせいで,しばしば顧みられないときさえあるのです。

 しかし,情報通信だの知識だのの形容で表される現代社会において,私たちは情報の膨大な蓄積を基盤とする世界のなかで社会活動を営んでいます。そして,情報の活用ができる能力を求められもしています。

 一方で「無意識のうちに」膨大な情報が蓄積される処理が進行し,一方で「意識的に」情報の活用が奨励されているという,なんともアンバランスな事態が展開しているということです。

 メディアリテラシー教育などで,報道メディアにおける情報の捌き方などを学ぶような取り組みも展開され,情報がどのように記録され(また伝えられ)るかを学ぶ機会があります。しかしそれらは,世の中における情報記録や蓄積に関する活動のほんの一部でしかなく,全体は追いきれないほどです。

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 昨今,国立公文書館を独立行政法人から国の機関へと戻すとともに,我が国における文書館制度を整備しようとする動きが強まっています。アーカイブスの領域は,考えてみると,この国においてかなり端っこの方へと追いやられていた領域であり,その後進性は,先進国としてあるまじき状態という評判さえ生んでいました。そうした現状において,公文書館制度(アーカイブス)に関して注目が集まり始めたことは喜ばしいことでもあります(ただし一方で,性急にことを運んで失敗するというこの国の悪い癖についても用心しなければなりませんが)。

 それにしても,従来までのアーカイブスに対する無関心は,決して他人事ではなく,おそらく,学術研究の成果に対する世間の無関心とも地続きの何かがあるような気がします。

 そもそも学術研究は,連綿とした継続性の中で理解して初めて個々の研究が意味を成しうる世界です。そういう意味では,アーカイブスという領域とは切っても切れない関係を維持してきたともいえます。学術研究に携わる者は,おそらく誰もがこの問題について一家言持っており,ひいては教育論としても展開していく問題といえるでしょう。

 その議論がどうあれ,どう割り引いて考えても,そのような学術研究におけるアーカイブスの重要性とその蓄積や系譜の中で研究を理解しなければならないことの本質を,社会一般に理解してもらうことが成功しているとはいえません。なぜそのようなことがいえるのかといえば,たとえば「サイエンスコミュニケーター」といった科学知識などの伝道師育成の必要性が叫ばれていることや,「教養」に対する関心の高まりなどが周辺的な証左としてあげられます。そうした動きが出てくるということは,それが不足していたか欠けていたからであるとも考えられるからです。

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 ylab-blogでは【研究に役立つウェブサイト】と題して,たくさんのアーカイブス(データベース)やその入口が紹介されてきました。日本の学術関係ならばポータルサイトGeNiiはアーカイブスの基本中のキですし,それぞれの研究領域における興味深いウェブサイトはまさに小さなアーカイブスといえます。

 今回メインでご紹介するのは,国立公文書館と並んでアーカイブスの雄である国立国会図書館がつくった「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル PORTA」です。日本における有数のデジタルアーカイブスを一元検索できるようにと提供されています。

 デジタルアーカイブスと文書館のような旧来イメージのアーカイブスとの関係については,奥深い議論が待っていますので,それはまた余裕のあるときにアーカイブス学や記録管理学,あるいは図書館情報学などの諸分野について触れていただくのがよいかと思います。いずれにしても,残された記録への「アクセスのしやすさ」という側面は重要であり,その認知の普及を通して,むしろアーカイブス本来の主題である「残す」という側面への理解がより深まることが今後望まれているのだと思われます。

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 グダグダと情報の蓄積とその理解の重要性を綴りましたが,要するにその場の空気を読むこと以上に,歴史の文脈を読むことは大変なことであり,そのことを上手く伝えることもまた難題だということです。

 今日までに至る平成の20年間を要約することすら,なかなか大変な作業です。ゆえに普段の生活での私たちは,そうした膨大な情報からうまく自分自身を隔離するための術(たとえばステレオタイプという概念)を持っていたりします。そうした個々人の殻を破るよう複数の人間が互いにコンテキストを共有すること,たとえ大変な作業だとしても,私たちは是非ともそこをうまくこなして,前向きに前進することに多くの努力を注がなければなりません。

 そのためにも普段からアーカイブスを蓄積管理していく努力とそのことへの理解が通底音のごとく維持されていなければならないのです。ひいては,そのような知的財産や学術成果に対する一定程度の見識眼を養っておくことが必要です。おそらくは,それが「教養」の必要性議論として現れているのだと思われます。

 今回は,どのような研究分野や領域であれ,そのことについて研究する側にも意識と想像力が必要だということと,それを感じる一つのウェブサイトとして「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル PORTA」をご紹介した次第です。すぐに役立つというわけにいかないのが,玉に瑕ですけどね。

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 さて新年早々,堅苦しい文章をお読みいただき感謝感謝。私からお正月のお年玉プレゼントということで,ソフトウェアを提供させていただきます(今回はMac OSX用です)。
 「時を紡ぐ」ということに掛けて,タイマーソフトです。同様な機能のソフトはいろいろありますが,時間表示が大きくてシンプルな操作のものは意外と少ないので,あらたなバリエーションとして開発しました。「BitTime」と名付けました。

 ディスカッションの場面や,ワークショップの場面などで,活動時間を計測したり,表示したいときなどにお使いください。また今後は学会発表タイマーとしても使えるように改良したいと思っています。

bt.gif
【BitTime for OSX Ver0.22】→ ファイルをダウンロード

 ウインドウズをご利用の方は,今回のソフトの元ネタである「キッチンタイマー鉄」がより便利だと思います。また「BitTime」に対する感想やフィードバック,「こんなソフトがあったら嬉しい」というお話などありましたら,教えてください。


 それでは皆様にとっても今年がよい年になりますよう。

[林 向達]

2008.01.01

【新年のご挨拶】福武ホール完成間近

2008年になりました。3月26日に情報学環・福武ホールがいよいよ竣工します。建物の外側はほぼ完成しました。1月に内装、2月に検査、3月に引っ越しという最終段階にきています。

IMG_0011.jpg

建築の最終のつめやオープニングイベントの準備などで、息をつく暇もない年始になりそうです。鹿島建設の担当の方も、大晦日まで出てこられて、正月も2日から働かれるそうです。

福武ホールは以下のような構成になっています。
2F: 研究室 (山内研究室も福武ホールに入居します)
1F: 学環コモンズ(情報学環・学際情報学府の共有コミュニティスペース)
★UT Cafe BERTHOLLET Rouge(ベルトレ・ルージュ)
柳館シェフがプロデュースするテイクアウト型のカフェ。コーヒーの他、軽い食べ物や夜にはお酒も出ます。カフェトークなどのイベントも行われる予定です。ちなみにデザインは日本デザインセンター(原研哉さん)にお願いしています。すてきなお店になりますので、ぜひお楽しみに。
★テラス
建物の外側にはパブリックスペースがあり、インタラクティブアートイベントや屋外ワークショップができるようになっています。
B1F: 全学共有スペース (史料編纂所・情報基盤センター)
B2F:
★福武ラーニングシアター
180名定員のホールです。平日は国際遠隔授業などに使われ、土日は学会やイベントなどに利用されます。
★福武ラーニングスタジオ
48名定員(16名3スペース)のワークショップスタジオです。平日はタブレットPCなどのITを利用した協調学習に、土日には子ども向けワークショップや研究会などに利用されます。
★福武ラーニングラボ
新しい学習環境の創出のための、産学・社学連携研究拠点です。

福武ホールが、「学びと発見の交差点」になるように、がんばっていきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。

[山内 祐平]

2007.12.27

【研究に役立つウェブサイト】研究者は日々なにを考えているか?

今回紹介したいのは、学者が運営しているブログサイトのリンク集です。これは「はてな」で、「学者が運営しているサイト教えて!」という質問があって、その回答がたくさんついているページです。

質問:学者の方が運営している個人サイト・個人ブログを挙げられるだけ挙げて下さい。
http://q.hatena.ne.jp/1159083318

このサイト自体は去年見つけて、私自身もいくつかブログを紹介していたりします。このサイトの中で読んでいるblogだと例えば、茂木先生内田先生などでしょうか。もちろん、それ以外にも読んでいるblogはたくさんあります。

研究者のブログを読むと、

・いまどんなことが熱いのか
・研究者の心得とは
・どんな感性を持って生活をしているのか
・自分が次にどんな本を読んだらよいか

などについて示唆を得ることができます。

個人的に面白いなと思っているのは、世の中で話題になっているニュースなどに対する反応ですね。同じ問題に対してどのように捉え、どのように論を展開するのかを比較して見ることができるのはとても面白いですし、参考になる部分も多いかと思います。

このリンク集はいろいろな分野の人がいて、整理がされていませんがそれはそれでよい部分があります。違う分野の研究者がどんなことを考えているのかということは普通あまり知ることができません。

それをブログで見ると、「あの分野ではこんなことが言われているのなら、こっちでも使えそう」だとか、「分野は違っても考えていることは似ているな」などということが理解できます。また、普段どんなことを主張しているかなどを見ていると、論文や本などの主張がすんなり理解できることもあります。

このようにブログは、出版された本や論文には得られない情報を得ることができるという意味で研究に役立つと言えるでしょう。

梅田望夫さんは「ウェブ時代をゆく」の中で、日本の研究者はまだまだブログなどを使って論文の背景となる考え方などをアウトプットしている人が少ないと指摘しています。そういった状況の中で、いち早くブログを使って情報発信している人たちのリンク集というのは貴重なものではないかと思います。

もちろん、本当に自分の研究に役立てるという意味ではたくさんのブログを読むだけではなく、自分も同じように外に向けてアウトプットをしていくことが大切です。

個人的な話ですが、来年からは私も外に向けたブログを開設しようと思っています。研究をよりよいものとしていくには、広い世界の情報を集めながらも、自らもそのコミュニティの一員となり、考えをアウトプットしていくことが重要かもしれませんね。

[舘野泰一]

2007.12.25

【エッセイ】教材の条件としての"Cognitive Tools"

12月20日に、BEAT客員教授でカーネギー財団 上級研究員でいらっしゃる飯吉透先生に、ご自身の研究の歴史を聞く会を持ちました。
おもしろかったのは、博士研究になった日本を代表するマルチメディア教材「マルチメディア人体」と、今やっていらっしゃる教師向けの授業リフレクション・シェアツールである「KEEP Toolkit」をつなぐキーワードとして、"Cognitive Tools"という言葉が出てきたことです。
"Cognitive Tools" は、認知的道具と訳されることもありますが、人間が概念的な操作を行う際に有用な役割を果たす道具です。
マルチメディア人体は、NHKスペシャル「人体」をそのままデータベース化したもののように見えますが、文脈の中で知識を獲得できるようにゲームが用意されていたり、履歴やレポート作成ができるようになっていたり、各種の「仕掛け」が組み込まれています。それが"Cognitive Tools"として機能して、学習を支援しているわけです。
飯吉先生は、最近Open Educationにも積極的に関わっていますが、リソースを公開するだけではだめで、それが教育に役に立つことが重要だと一貫して主張していらっしゃいます。単なる「コンテンツ」でなく、「教材」である条件として"Cognitive Tools"が必要なのだということを再認識することができました。飯吉先生、ありがとうございました。

[山内 祐平]

2007.12.20

【研究に役立つウェブサイト】大学図書館以外も使おう

私は、とても本が好きです。

壁が一面本棚、という家庭で育ったというのも理由の一つだと思います。
しかしながら、おそらく私の読書好きを支えている大きなものとして、小学校で受けた教育があったように思います。

私は私立の小学校に通っていました。
その学校にはかなり充実した図書室があり、そこには専属の司書の先生がいらっしゃいました。
彼女はもう定年直前というベテランでした。
私は、その方に小1から小5まで、週に1回、「読書」という授業をしていただいていました。
国語の授業と同じように、本を読んで感想文を書くなどということもしていましたが、根本に、図書館の使い方、という内容があったのが印象的でした。
なぜ、目録が存在するのか、ですとか、なぜ、貸し出しの記録をとるのかといったことから、本の扱い方、出版のしくみなども習いました。
今、学習環境のデザインに関する研究をしていく中で、当時の授業に関する教育的な意味が少し理解できるようになってきました。目録は、今日でのインターネットをはじめとする検索、情報リテラシーにつながりますし、個人の貸し出し記録はポートフォリオという考え方と符合します。

そんな風に思いながら、大学院入学以来ご無沙汰していた公立図書館や専門図書館なども利用するようになっている今日この頃です。

Jcross
http://www.jcross.com/

Jcrossではインターネットに公開されている図書館サイト・古本サイト等の蔵書検索(OPAC等)を、館種・システムを問わず(どのメーカーのものでも)同時に横断して検索することができます(無料公開)。

リアルタイムに公開OPAC等に対して検索をかけているので、検索実行時点での各図書館サイト・古本サイトの公開された書誌・所蔵情報を知る事ができます。

図書館の蔵書検索や古書情報の検索など、本の検索を一度にやってしまいたい、といった時に非常に便利です。
私はよくこれを使って絶版本を探しています。

また、私は自分の専門である本を探すとき美術図書館横断検索も利用します。

美術図書館横断検索
http://alc.opac.jp/

特殊な環境にいる人だけではなく、全ての人に本が身近なものになるため、様々な図書館活動がなされていいます。
これらは研究にも多いに利用できると思います。

【森 玲奈】

2007.12.18

【エッセイ】Formative Researchのツボ

12月9日に、同志社女子大学の上田先生とゼミのみなさんがいらっしゃって、研究発表をしてもらいました。NHKの教育番組に関するFormative Researchのグループと、キッズデザインのグループの発表を聞きました。
Formative Researchは、セサミストリートが制作される際に行われた、事前に入念な予備調査をして、教材の質の向上を図る研究です。詳しくは、以下のBeatingの記事をご覧ください。
http://www.beatiii.jp/beating/036.html
Formative Researchにおいて一番難しいのは、子どもたちの行動をデザインにフィードバックする部分です。子どもたちは実に多様で興味深い反応を示します。教材開発において質の向上につながる重要なデータであるのは間違いありません。
しかしながら、そのデータが豊かであればあるほど、教材を変えていく方向性に関して、様々なバリエーションが考えられることになります。すばらしいデザインのアイデアがでなくては、いくらデータをとっても、教材の改善に結びつきません。
Formative Researchがなかなか普及しない理由のひとつとして、評価結果をどのようにデザインに反映させていくかということに関して、方法論が確立されていなかったことがあるように思います。
ネットで流通する教材が日常的に作られる今だからこそ、データがあるからこそ生まれる新しいデザインの創出を支援するシステムを確立すべき時期にきているのではないでしょうか。

[山内 祐平]

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