2008.01.10
artscape
http://www.dnp.co.jp/artscape/
ミュージアム(博物館・美術館)は、学校とは違ったゆるやかな学びの場です。私の研究はミュージアムの展示における来館者の学習の仕方を学習論的/メディア論的に明らかにする研究なのですが、山内研究室でも、Monogatariプロジェクトという教育工学的なインタラクティブ展示の開発プロジェクトが行われています。学習は学校だけで起こっているわけではなく、ミュージアムなどのゆるやかな場でも起こっているのです。
今回ご紹介するウェブサイトは、artscapeという美術館情報のポータルサイトです。大日本印刷株式会社により運営されているこのサイトは、全国の美術館・博物館で行われている展覧会の情報が掲載されているだけでなく、ミュージアム研究者や学芸員によるコラムや、現代美術用語集、デジタルアーカイブ用語集などもあり、コンテンツが充実しています。
現代美術用語集・デジタルアーカイブ用語集に取り上げられている用語を見ると、ミュージアムはきわめて学際的な領域であることがわかります。現代美術やデジタルアーカイブは、美学・美術史的にも、あるいはメディア論的にも捉えることができますし、学習論としても捉えることができます。たとえば、「キッズ・アート」という項を見てみましょう。
キッズ・アート
http://www.dnp.co.jp/artscape/reference/artwords/k_t/kids_art.html
「-子どもが営むアート活動やその作品の総称。一般にその活動は、子どもの伸びやかな創造性やメタスキルの向上などを主な目的として、体験型のワークショップなどの課外活動を通じて行なわれることが多く、既存の学校美術教育とは別個のものとして考えられる。既存の美術教育に対する不信が根底にあるのはもちろんだが、その他にも自己表現、マイノリティ、ジェンダー、リテラシーといったさまざまな問題を孕んでいる。まだ歴史が浅いうえに、子どもの文化的営為をどのように評価していくのかなど難しい面は少なくないが、既存の美術の諸制度に対して多くの問いを投げかける批評的な概念であることは間違いない。なお日本でも、近年キッズアートへの関心が高まっており、多くの地方自治体が公教育プログラムの一環に組み入れており、その成果に注目が集まっている。文献としては、N・ペーリー編の『キッズ・サバイバル』が最も包括的。-(暮沢剛巳)」
キッズ・アートの試みは、アビゲイル・ハウゼンからアメリア・アレナスに至る、子どもの自由な語りを引き出す鑑賞教育の試みにも通じるものがあるでしょう。ここで「学び」は、知識伝達とは全く異なるものとして捉えられています。ミュージアムにおける学びの解明とその支援は、これからの重要な研究課題と言えるでしょう。
artscapeトップページの最下部には各美術館の展覧会ポスターの縮刷版が並んでおり、リロードするとポスターの種類や並び方が変わるというちょっとした仕掛けもあります。たまにはこのサイトを見て、どこかの美術館の展覧会に出かけてみてはいかがでしょうか。
[平野智紀]