2008.03.12
月曜日に、立教大学の木下康仁先生においでいただき、質的研究の方法論として注目を集めているM-GTA(Modified Grounded Theory Approach)の研究会を開催しました。
M-GTAは、社会学者のBarney GlaserとAnselm Straussが1960年代に生み出したGrounded Theory Approachを改良したもので、文脈に沿ったデータの解釈や、分析方法の明示などに特徴があります。
看護・福祉領域で多くの研究に関わられてこられた木下先生の経験が随所にちりばめられており、質的研究の方法として、もっとも使いやすいもののひとつになっています。
私自身、2003年の論文「学校と専門家を結ぶ実践共同体のエスノグラフィー」で、GTAを参考にしながら自分なりの方法を作るのに苦労した経験があるので、こうした体系化はとても意味があるものだと思います。
木下先生がお話になったことで印象に残ったことは、(かいつまんでいうと)「研究の方法は、細かい技法の集積ではなく、なぜその研究を行っているかという目的から規定されている。」という指摘でした。これは当然のことなのですが、研究の方法は絶対化しやすく、意味もわからず教科書のやり方に従っていることが多いのが実情です。
実は、ほぼ同じことを10年前に言われたことがあります。当時私は、小学校でのフィールドワークに忠実にGTAを当てはめようとして四苦八苦しており、社会学や人類学の先生方に相談したのですが、そのときに、「あなたがみたいものを整理して、それに合わせて方法を考えなさい」とアドバイスを受け、目から鱗が落ちた記憶があります。
久しぶりに初心に戻った気がしました。ご多忙の中足をお運びいただいた木下先生、本当にありがとうございました。
[山内 祐平]
2008.03.08
今月から始まりました,新シリーズ「今年の研究計画」。先頭バッターは4月から新M2となる坂本がお送りいたします。
■題目
現在考えているタイトルは,「協調学習場面で教師が行う足場はずしの過程に関する調査と分析」です。
協調学習というのは,1人ではなく何人かのグループでメンバーが協力しながら学び合うことです。
教師から一方的に教え込まれるのではなく,子どもたちが自分たちで力を合わせて答えを発見したり,課題に取り組む力がつくようになるために,教師はどのように子どもたちに任せていくのかという,教師が学習支援から手を引いていくプロセスをまとめていきたいと思っています。
■人は1人では生きていけない
そもそもなぜ協調学習かというと,人間の知恵は,決して1人だけで創り上げられるものではないと思うからです。
学校を卒業すると,人はいきなり大海原へ飛び込むことになります。右へも左へも行ける。道を教えてくれる教師はいない。そもそも正しい答えなんてない。いるのは,一緒に泳いでいく先輩や同僚などの仲間です。彼らと一緒にどちらの方向へ泳いでいくべきかを考え,決めていきます。
企業で言えば,チームでディスカッションを繰り返しながら企画を練っていくという活動は,答えのない問題解決そのものです。
でも,他人と協力しながら新しい何かを創り上げていくというのは,非常にレベルが高く一筋縄ではいかないことだと思います。
自分の意見を押し通してばかりの人や自分だけ楽をしようとする人がいたり,いつまでたっても1つの方向へ意見がまとまらなかったりします。
人は,ただグループになって集まるだけでは,必ずしも生産性の高い活動をできるとは限りません。
そこで重要になってくるのが,課題の特性や構造を見極めたり,良好な人間関係を築いたり,責任を持って取り組んだりするといった能力です。
■教師のマネジメント能力に着目
ここで一度,学校教育へ視点を移し替えてみます。
学校の教師は,子どもたちの性格や人間関係,得意不得意を把握しながら,教室の中での学び合いを成立させるために日々取り組んでいます。
例えば,授業や日頃の学級経営の中で,課題の特性や構造を見極めるためにヒントを教えたり,良好な人間関係を築くためのルール作り,責任を持って取り組むための役割決めなどを行っています。
僕は,教育のプロである教師のこのようなノウハウを紐解いていくことが重要だと思っています。
■子どもたちに「まかせる」ということ
教師が学びをサポートするのは当然と言えば当然なのですが,僕はあくまで子どもたちが自分たちで力を合わせることに焦点をあてています。
先ほども述べたように,学校を卒業すると教師はいなくなります。逆に言うと,教師は,自分がいない環境でも子どもたちが学び続けられるように育てていかなくてはなりません。
そこでこの研究では,子どもたちを自立させるために,教師がどのように学習活動を支援しているか,ではなく,どのように支援から手を引いていくか,どのようなタイミングで子どもたちに任せているのかという点に着目して,そのプロセスを追おうと考えています。
■今後の進め方と課題点
複数人の小学校教師にインタビューを行い,それぞれの方から過去のエピソードをいくつか集めることで,共通するパターンを抽出できればよいなと考えています。
どのような現象をもって支援した・支援から手を引いたとするか,教科や単元などはどのような状況設定にするか,良質なデータを取るためにどのような質問項目を立てるか,などなど,考えなければいけない課題はたくさんありますが,現場の先生方にお話を伺いながら少しずつ進めているところです。
現場の先生方に少しでも意味のある知見を還元できるよう,頑張っていきたいと思います。
質問や意見等ございましたら,コメント蘭へご記入下さい。
長々とお読みいただきありがとうございました。
[坂本篤郎]
2008.03.01
「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、今回で最終回になります。
最後は「灯台もと暗し」ということで、BEAT (東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)のサイトをご紹介しましょう。
BEATでは、毎月1回メールマガジン"Beating"を発行してきましたが、11号より「5分でわかる○○シリーズ」を続けてきました。
2005年度が「学習理論」、2006年度が「学習プロジェクト」2007年度が「学習評価」に関する特集記事になっています。毎号毎号、編集担当と執筆担当が頭を悩ませながら書いた力作です。
ひとつひとつの記事は短いですが、教材開発や教育プロジェクトに関わる基礎的な用語について網羅的に学ぶことができます。
バックナンバーは、こちらからごらんになることができます。
また、BEAT Seminar Reportには、公開研究会の模様がビビッドにわかる写真入りの記事が掲載されています。教材開発に関わるホットトピックやゲストのお話が満載ですので、楽しみながら学ぶことができます。
バックナンバーは、こちらからどうぞ。
来週からのシリーズ企画(3ヶ月)は、「今年の研究計画」になります。研究室のメンバーの魅力的な研究計画をお楽しみください。
[山内 祐平]
2008.02.26
ちょっと前になりますが、MITからミッチェル・レズニック教授が来日して講演したという記事がありました。
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/01/28/879.html
レズニックさんは、プログラマブルブロックの研究からLEGO Mindstormsを生み出した人物として有名です。もともとジャーナリストだったそうですが、シーモア・パパートの後をついで見事にLOGOの研究を発展させました。
この記事の中に、「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」という言葉があります。
【レズニック教授は、そうした力を身につけさせて行くには、どういう方法が有効かを研究中だが、ヒントは幼稚園・保育園の子供たちの様子に隠されているという。好きなものを作って、そこからさらに友達と一緒になって、さらに新たな遊びに発展してという、「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」が重要なのだそうだ。
クリエイティブ・ラーニング・スパイラル(以下、クリエイティブ・スパイラル)=創造的思考のスパイラルは、例えばひとりの子が「町を作りたい」というアイディアを持っているところからスタートする。
それを、例えばレゴなどのブロックを使い、何かの建物を造ることで、第2段階へ進む。次にその建物を中心にして、別のクルマなどのオモチャなどで遊びが始まる。そしてそこへほかの子との遊びのシェアが始まり、遊びが拡大。そうこうしているうちに、建物が何かの拍子に倒れてしまったりする。
ここで、頑丈にするにはどうしたらいいかという工夫が始まるのだが、レズニック教授はここで先生が手伝ってあげられる部分があるという。例えば、実際の高層ビルなどの写真を見せてあげれば、基礎部分が太く、高層階へ行くに従って細くなるといった物理的に安定させられる形状というものを見いだせるかも知れない。こうしてスパイラルが繰り返されていくというわけである。
「想像する(アイディアを練る)」→「作る」→「遊ぶ」→「(友達と遊びを)共有する」→「振り返る」→「想像する……」、という創造的思考のスパイラルを、未就学の子たちは実際に行なっているというわけだ。レズニック教授によれば、これが小学校以上の子供たちにも、大人にもこれからは重要なことという。 】
シーモア・パパートがLOGOを世に送り出した1980年代と活動のイメージは重なっていますが、MITのグループが学習モデルを口にするようになったのには時代の変化を感じました。当時、LOGOは子どもの創造性を高めるかという議論がありましたが、LOGOという人工物と学習成果の相関だけが研究され、状況によって結果が異なるという当然の結果が導き出されていました。パパートは「文化」が大事なのだという説明をしていましたが、学習モデルや活動デザイン的なことはほとんど語りませんでした。
クリエイティブ・ラーニング・スパイラル自体は、ワークショップなどのやわらかい学習に共通したものだと思います。問題はこのスパイラルをどうまわしていくかというところなのですが、MITのグループは強力な人工物を開発して、環境側から発想のきっかけを与えようとしているのでしょう。この言葉の今後の展開が楽しみです。
昨年行われた BEAT Seminar Report「知育玩具−創造的制作活動をアフォードする人工物−」に関連した情報が掲載されています。よろしければご参照ください。
[山内 祐平]
2008.02.23
ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/
ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
http://d.hatena.ne.jp/arg/
研究に役立つウェブサイトはたいていの場合、元気なサイトです。元気なサイトは日々更新されていきます。
本はなかなか改訂されませんから、一度読めばとりあえず次の本を読み始めても大きな問題はありません。ですが、研究に役立つウェブサイトは日々チェックすることに価値があるものです。書籍というより、雑誌みたいなものでたくさん見ていると疲れてしまいます。
研究に限らずウェブサイトの利用は似たような事情をかかえており、多くの人々は情報の更新に追い付けないでいます。そんなときに役立つのがいわゆる「まとめサイト」ですが、インターネット上の学術情報に関する「まとめサイト」が今回紹介する「ACADEMIC RESOURCE GUIDE」です。
ACADEMIC RESOURCE GUIDEは「インターネット上に点在する学術研究に有用なサイトを順次紹介していきます」という趣旨のメールマガジンです(このブログ連載のテーマとかぶっていますね)。なんと1998年から続いており、今年で10年目の老舗サイトです。
ARGでは「最新の学術サイトの紹介と批評」「編集長・岡本真さんの日誌」「順不同のイベント情報」などの情報が発信されており、学術サイトに関する情報や、学術研究関係のイベント開催に関する情報を集めるには非常に便利です。
当初はメールマガジンだけでしたが、現在は「ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版」ができており、こちらは日々更新されています。
まさに「研究に役立つウェブサイト」の情報が欲しい方むけのサイトです。
【森 玲奈】
2008.02.15
昨年から紹介が続いている【研究に役立つウェブサイト】ですが、国立国会図書館に関係するサイトがいくつか紹介されています。
◆国立国会図書館 蔵書検索・申込システム by 坂本さん
NDL-OPAC 国立国会図書館 蔵書検索・申込システム
http://opac.ndl.go.jp/index.html
◆時の紡ぎを残すこと by 林さん
国立国会図書館デジタルアーカイブポータル
http://porta.ndl.go.jp/
今回も再び、国立国会図書館サイトからの紹介です。
◆テーマ別調べ方案内
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme.html
この”テーマ別調べ方案内”のページでは、「テーマ」あるいは、「特色ある資料群」ごとに、調べるためのツールの紹介や、関連する機関の紹介などを行っています。例えば教育統計というテーマのページには、教育統計を調べるための統計書にはどんなものがあり、どうやって入手できるのかといったことが紹介されています。また、子どもの学習費の統計が知りたい場合には、文部科学省のホームページの子どもの学習費調査にて入手することができ、そこでは公立、私立の幼・小・中・高の幼児・児童・生徒を対象に、学校教育費、学校外活動費のために支出した経費、およびそれらの内訳(支出項目)等が学校種類別に掲載されている、などの紹介があります。
研究、特に教育にまつわる研究は、社会の現状や問題をも考えていく必要があると思いますが、欲しいデータを実際に見つけるのには結構苦労します。そんなときに頼りになるのがこのサイト。欲しいデータを探すヒントを得ることができるのです。自分の修士の研究の際には、幼児を対象にした開発研究を行ったのですが、そうした場合、やはり幼児のコンピュータ使用にまつわる現状や諸問題を見る必要がありました。しかし、実際には、どうやってそんな情報を知る事が出来るのか、さっぱり分かりませんでした。
そこで、本サイトの教育産業に関する主要インターネット情報源の紹介から、
→Benesse教育研究開発センターのHP を発見
→第3回幼児の生活アンケート・国内調査 速報版 (2005年10月発刊) を発見
→第5「節家にあるもの」の中で「パソコンの使用頻度」の10年比較 を発見
というプロセスを経て情報にたどり着く事が出来ました。
今後は、どのような統計による資料があり、どのような事が分かるのか?について、普段から少しずつ気にしていく必要があると考えています。また、これらの情報は、研究だけでなく、”世の中の大抵の人は○○○だ。”という既成概念が果たして本当に事実であるのかを知るデータ取得への貴重な情報源になると思います。
[佐藤朝美]
2008.02.07
研究でなにかアプリケーションを開発してそれを利用して実験を行った場合,多くの場合ログ解析をするのではないのでしょうか?
そういう時,自分が欲しいデータを楽をしてまとめて早く解析の作業に入りたいですよね?
例えば,開発したものがWWWアプリケーションの場合おすすめしたいのが,JSON を利用することです.
JSON(JavaScript Object Notation) は,JavaScript におけるオブジェクトの表記方法の一つです.
JSONでは,2種類のデータ構造の組み合わせでできています.
- 「名前:値」の組み合わせ.組み合わせ自体をひとつの要素として扱うことができます.
- 要素の順序つきリスト.リスト全体をひとつの要素として扱うことができます.
JSONでは,名前のとおり(先に説明したとおり),JavaScript におけるオブジェクトの表記方法の一つです.具体的には,JSON のデータを丸ごとJavaScript のeval メッソドに通すと構造ごとオブジェクトができます.(セキュリティー上問題があるので,パーサを通すなどの工夫してください)
私は,修士研究で簡単なWWWアプリケーションを開発しましたが,JSONを利用したのでログ解析が短時間で行えました.
これまでのログ解析といえば,Awk, Perl が真っ先に頭に浮かびますが,これらの練習をしたい!という以外はやめておいた方が効率的だなと痛感しました.
たとえば,Awk やPerl でログ解析をする場合,まずログファイルを眺めて,デリミタを考慮しながら,正規表現を記述するといった感じですが,正規表現を書くのが大変,正規表現にマッチしないなど,必要とするデータを解析できる形式に整形すること自体に結構労力を使います.
しかし,JSON の形式は先に説明したようなデータ構造の組み合わせなので,必要とするデータを得るために2,3行のコードで済むということが容易に想像できますよね.
ということで,このたびはJSON の公式サイトをご紹介いたします.
http://json.org/
このたびは,JSON の公式サイトの紹介のみですが,JSON は多くの技術者が注目していますので,いろいろな情報やサンプルコードなどが容易に得られると思います.
これから,開発研究でがんばるみなさん.是非使ってみてください.
[寺脇由紀]
2008.02.04
2月1日に、橋本優子さん(宇都宮美術館主任学芸員)・佐藤優香さん(国立歴史民俗博物館研究部助教)におこしいただき、Educe Cafeを開催しました。
橋本さんからは、宇都宮美術館で開発されたデザインについて学ぶためのキット「deli」をご紹介いただきました。このキットでは、「着る Fashion & Culture」「坐る Furniture」「食べる Tableware」「使う Industrial Product」「見る Art and Technology」「遊ぶ MuseumStudies」「識る Graphic Technique」「伝える Visual Communication」に関わるデザインを学べるようになっています。
次の写真は「坐る Furniture」キットで、リートフェルトの椅子の2分の1のモデルを参加者のみなさんが作っている様子です。簡単そうに見えますが、意外に難しく、大人でもはまります。
佐藤さんは、前職の国立民族博物館で開発された、「みんぱっく」についてお話いただきました。みんぱっくは、こどもたちが新しい世界と出会い、触れあうためのカバン(トランク1個)で、世界各国、地域の民族衣装や生活の道具などと、それらにまつわる情報や解説がパックされています。今回お持ちいただいたのは、韓国編でしたが、参加者は衣装を着たり、教科書を眺めたり、様々に楽しんでいました。
ミュージアムで使われる教材は、展示と同じようにオープンエンドな思考や問いを産み出すことを目的としており、ひとつひとつは素材に近いものです。しかし、今回実物をさわってみて、対話や活動を誘発することを念頭に慎重にデザインされていることを実感しました。
教材というと、学習目的を達成するためにルートがきちんと決まったものを想像しがちですが、ミュージアムの教材は、それに対するオルタナティブなあり方を見せてくれたような気がします。ワークショップ的で、即興的な教材ーこのようなアプローチは、ミュージアム以外の他の領域の教材に、新しい風を吹き込む可能性を持っていると思います。
お話をいただいた橋本さん、佐藤さんには、貴重な洞察の機会を与えていただきました。ありがとうございました。
(企画をたてていただいた森さん、お手伝いいただいた平野さん、牧村さん、池尻さん、大城さん、お疲れ様でした。)
[山内 祐平]
2008.02.01
福武ホールが完成間近です!
これからあの場所が、私たちの居場所になります。
建築が立ち上がっていき、こんな話を聞いていると、人がそこにいる様子がどんどんイメージできるようになっていきます。
あの空間を「つかう」最初の人たちになれることはとても幸せなことです!
私は「空間をつかう」ということを研究で考えています。
研究に役立つwebsiteという意味では、あまり汎用性がないかもしれませんが、こんなものがあります。
6年間住んだ仙台にある、せんだいメディアテークのサイトです。
ここでは、せんだいメディアテークという施設がどんな施設なのか、理念や、どんなサービスやプログラムが行われているのか、伊東豊雄さんが設計された建築の特徴などが記されています。
もちろん、カフェやミュージアムショップの紹介もあります。
更に、
「活動する」では、市民の活動がプロジェクトとして、或いは空間的に支援されることを説明しています。
また施設による支援だけでなく、それを成り立たせるためのボランティアの募集もここで行っています。
「施設をつかう」では、1階から7階までのスペースの紹介がされています。
天井高や可動壁、ライティングなどについても細かい説明があります。
市民に「つかわれる」ことが、この建築の幸せなのだろう、市民が「つかう」姿があって初めて建築として成り立つのだろうと感じてしまうwebsiteです。
福武ホールも、そんな風になったらいいなと秘かに思っています。
せんだいメディアテークは公共施設です。
でも、「公共」と聞いて一般に思い浮かべるような、誰でも入れるのに誰にとっても居心地はよくない、というイメージとはかけ離れています。
個人的には、「公共」というより「パブリック」という言葉のイメージに近いような気がしています。
たくさんの人たちの「私の居場所」になった時、そこは「パブリック」な場所になったと言えるのではないかと思っています。
せんだいメディアテークを色々に「つかった」結果、あの場所が私にとって「居場所」と思える空間になったのと同じように、福武ホールも多くの人たちにとって「居場所」になるのではないでしょうか。
[牧村真帆]
2008.01.29
教育学部の授業「学習環境のデザイン」の最終日で、ゲストとして「NHKデジタル教材」を開発されてきた宇治橋祐之さんにおいでいただきました。
宇治橋さんには、NHKデジタル教材がどのような経緯・原則で作られたかをお話しいただきましたが、印象に残ったのは、教師支援をサイトの重要な機能としてとらえていることでした。
世界的にも教育放送やメディア事業者がオンラインで教師支援のサイトを設置する動きが起こっています。授業では海外の事例としてイギリスのティーチャーズ・テレビが紹介されました。
このサイトは、日本賞ウェブ部門最優秀ウェブ賞を獲得しています。(以下引用)
ティーチャーズ・テレビはイギリスの教育水準を高める目的で作られました。現在は1800以上のビデオをオンラインで見ることができ、一般的な履修科目から、いじめや自閉症といった難しい問題まで広く取り上げています。現在、多くの学校が抱えている重要な課題に焦点を当てています。
ビデオは教科別、小中高などの段階別、教師や教育委員や生徒など立場別に検索ができます。さらに、それぞれのビデオは別サイトとリンクしており、供給者名、コメント、教師による教師のための点数評価を見ることができるのです。
このサイトは、優れた教え方の共有と同時に、他の教師がどのような授業をしているのか見ることを可能にしました。イギリスの教師にとって、よりプロフェッショナルになるための情報源となっているのです。
加えて、「職員室での独白」があります。これは教育現場に携わる人たちの中から偉大な作家を見出すためのウェブサイト上のコンテストです。4つの短編映画シリーズで、それぞれの台本はこのコンテストの優勝者が書きます。投稿者は学校でのさまざまな出来事から物語を作り、優秀な作品はティーチャーズ・テレビによって放送用に番組化されます。
社会状況が激変し、「よい教師」であり続けることは困難な時代になっています。このようなサイトによって、課題を中心としたゆるやかなコミュニティが成立し、自律的な教育環境の変化につながれば、子どもに直接働きかけるのとは別のチャンネルによって、学習を支援することになるのでしょう。
[山内 祐平]