2008.02.26
ちょっと前になりますが、MITからミッチェル・レズニック教授が来日して講演したという記事がありました。
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/01/28/879.html
レズニックさんは、プログラマブルブロックの研究からLEGO Mindstormsを生み出した人物として有名です。もともとジャーナリストだったそうですが、シーモア・パパートの後をついで見事にLOGOの研究を発展させました。
この記事の中に、「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」という言葉があります。
【レズニック教授は、そうした力を身につけさせて行くには、どういう方法が有効かを研究中だが、ヒントは幼稚園・保育園の子供たちの様子に隠されているという。好きなものを作って、そこからさらに友達と一緒になって、さらに新たな遊びに発展してという、「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」が重要なのだそうだ。
クリエイティブ・ラーニング・スパイラル(以下、クリエイティブ・スパイラル)=創造的思考のスパイラルは、例えばひとりの子が「町を作りたい」というアイディアを持っているところからスタートする。
それを、例えばレゴなどのブロックを使い、何かの建物を造ることで、第2段階へ進む。次にその建物を中心にして、別のクルマなどのオモチャなどで遊びが始まる。そしてそこへほかの子との遊びのシェアが始まり、遊びが拡大。そうこうしているうちに、建物が何かの拍子に倒れてしまったりする。
ここで、頑丈にするにはどうしたらいいかという工夫が始まるのだが、レズニック教授はここで先生が手伝ってあげられる部分があるという。例えば、実際の高層ビルなどの写真を見せてあげれば、基礎部分が太く、高層階へ行くに従って細くなるといった物理的に安定させられる形状というものを見いだせるかも知れない。こうしてスパイラルが繰り返されていくというわけである。
「想像する(アイディアを練る)」→「作る」→「遊ぶ」→「(友達と遊びを)共有する」→「振り返る」→「想像する……」、という創造的思考のスパイラルを、未就学の子たちは実際に行なっているというわけだ。レズニック教授によれば、これが小学校以上の子供たちにも、大人にもこれからは重要なことという。 】
シーモア・パパートがLOGOを世に送り出した1980年代と活動のイメージは重なっていますが、MITのグループが学習モデルを口にするようになったのには時代の変化を感じました。当時、LOGOは子どもの創造性を高めるかという議論がありましたが、LOGOという人工物と学習成果の相関だけが研究され、状況によって結果が異なるという当然の結果が導き出されていました。パパートは「文化」が大事なのだという説明をしていましたが、学習モデルや活動デザイン的なことはほとんど語りませんでした。
クリエイティブ・ラーニング・スパイラル自体は、ワークショップなどのやわらかい学習に共通したものだと思います。問題はこのスパイラルをどうまわしていくかというところなのですが、MITのグループは強力な人工物を開発して、環境側から発想のきっかけを与えようとしているのでしょう。この言葉の今後の展開が楽しみです。
昨年行われた BEAT Seminar Report「知育玩具−創造的制作活動をアフォードする人工物−」に関連した情報が掲載されています。よろしければご参照ください。
[山内 祐平]