2008.03.08
今月から始まりました,新シリーズ「今年の研究計画」。先頭バッターは4月から新M2となる坂本がお送りいたします。
■題目
現在考えているタイトルは,「協調学習場面で教師が行う足場はずしの過程に関する調査と分析」です。
協調学習というのは,1人ではなく何人かのグループでメンバーが協力しながら学び合うことです。
教師から一方的に教え込まれるのではなく,子どもたちが自分たちで力を合わせて答えを発見したり,課題に取り組む力がつくようになるために,教師はどのように子どもたちに任せていくのかという,教師が学習支援から手を引いていくプロセスをまとめていきたいと思っています。
■人は1人では生きていけない
そもそもなぜ協調学習かというと,人間の知恵は,決して1人だけで創り上げられるものではないと思うからです。
学校を卒業すると,人はいきなり大海原へ飛び込むことになります。右へも左へも行ける。道を教えてくれる教師はいない。そもそも正しい答えなんてない。いるのは,一緒に泳いでいく先輩や同僚などの仲間です。彼らと一緒にどちらの方向へ泳いでいくべきかを考え,決めていきます。
企業で言えば,チームでディスカッションを繰り返しながら企画を練っていくという活動は,答えのない問題解決そのものです。
でも,他人と協力しながら新しい何かを創り上げていくというのは,非常にレベルが高く一筋縄ではいかないことだと思います。
自分の意見を押し通してばかりの人や自分だけ楽をしようとする人がいたり,いつまでたっても1つの方向へ意見がまとまらなかったりします。
人は,ただグループになって集まるだけでは,必ずしも生産性の高い活動をできるとは限りません。
そこで重要になってくるのが,課題の特性や構造を見極めたり,良好な人間関係を築いたり,責任を持って取り組んだりするといった能力です。
■教師のマネジメント能力に着目
ここで一度,学校教育へ視点を移し替えてみます。
学校の教師は,子どもたちの性格や人間関係,得意不得意を把握しながら,教室の中での学び合いを成立させるために日々取り組んでいます。
例えば,授業や日頃の学級経営の中で,課題の特性や構造を見極めるためにヒントを教えたり,良好な人間関係を築くためのルール作り,責任を持って取り組むための役割決めなどを行っています。
僕は,教育のプロである教師のこのようなノウハウを紐解いていくことが重要だと思っています。
■子どもたちに「まかせる」ということ
教師が学びをサポートするのは当然と言えば当然なのですが,僕はあくまで子どもたちが自分たちで力を合わせることに焦点をあてています。
先ほども述べたように,学校を卒業すると教師はいなくなります。逆に言うと,教師は,自分がいない環境でも子どもたちが学び続けられるように育てていかなくてはなりません。
そこでこの研究では,子どもたちを自立させるために,教師がどのように学習活動を支援しているか,ではなく,どのように支援から手を引いていくか,どのようなタイミングで子どもたちに任せているのかという点に着目して,そのプロセスを追おうと考えています。
■今後の進め方と課題点
複数人の小学校教師にインタビューを行い,それぞれの方から過去のエピソードをいくつか集めることで,共通するパターンを抽出できればよいなと考えています。
どのような現象をもって支援した・支援から手を引いたとするか,教科や単元などはどのような状況設定にするか,良質なデータを取るためにどのような質問項目を立てるか,などなど,考えなければいけない課題はたくさんありますが,現場の先生方にお話を伺いながら少しずつ進めているところです。
現場の先生方に少しでも意味のある知見を還元できるよう,頑張っていきたいと思います。
質問や意見等ございましたら,コメント蘭へご記入下さい。
長々とお読みいただきありがとうございました。
[坂本篤郎]