2009.05.07
山内研ブログへようこそ。
はじめまして。
修士課程1年生、帯刀 菜奈(おびなた なな)と申します。
【今年の研究計画】シリーズ第5回は、M1の帯刀がお送りします。
私の研究は
テレビの歴史番組制作の手法を学校における歴史教育の場に用いると、
生徒の学習への新たなる動機付けとなりうるか、
もしくは更なる歴史への興味を喚起することが出来るかを検証する
・・・というところに目的をおいています。
今回はなぜ、そしてどんなふうに研究を進めていきたいのか書いてみたいと思います。
さて。
私には中高社会科の先生になるという夢があります。
現代人としての生徒は、歴史から何を学び、自分の生活にどう生かしていくのか、
これを考えるのが教師としての目的です。
一方、大学で歴史上の日本の教育制度を勉強するなか、
「情報」というキーワードにぶつかりました。
歴史の中において「情報」は大切な要素であり、その情報を理解できないと、
間違った歴史観を持ってしまう危険があるのです。
さらに、情報ネットワークが飛躍的に進化する現代では、
膨大な情報から的確に選択、判断する能力がなければ、
その情報を教育に生かすことはできません。
学校をそれ自体啓蒙主義的な「メディア」として機能している空間だとするなら
教師を目指す私は、学校というメディアの中の、歴史分野における情報の送り手になるわけです。
一般的な授業は、教育という目的から、先生と生徒間でしか情報の伝達がありません。
ここにメディアの概念を導入してみます。
メディアの代表にテレビがあります。
NHKなどの歴史教育番組には高い評価を得るプログラムが多くあります。
歴史を視聴者に対していかに興味を持たせるか、さまざまな工夫が盛り込まれているのです。
そしてその評価は視聴率という形で現れます。
このときのキーワードは、「エンターテイメント」です。
そこで私の研究方法は授業を番組としてとらえます。約50分の番組制作です。
①どのような場面で、どのような手法を使うと有効か
②その手法をどのように使うと結果が出せるか
③その方法をどのように操作するのか
④どの点が優れており、どの点に限界があるか
生徒に番組企画書を作成させることを通して、以上の4点を明らかにします。
情報提供者の表現の仕方や知識の深さを問題にするのではなく、
伝えようとする情報の伝わり方、興味の喚起の仕方に着目したいと思っています。
まだ方法など、探し始めたばかりで定まっていませんが・・・
これから自分の足でたくさん動いて研究を形にしていきたいです。
帯刀菜奈
2009.05.04
ラーニングコモンズについて調べていたところ、面白い文章を見つけました。
D.) LC as transformational change: the above carried out with reference to (or within a framework of) campus-wide schema and/or faculty innovation such as core curriculum revision, writing/authoring across the curriculum, cognitive immersion learning paradigms such as the "classroom flip," and "learning object"/IMS implementation, such as D-Space. At this level, we continue to see functional integration across a horizontal plane, but we begin to see vertical differentiation as the former service delivery profile projected toward students becomes enhanced with another (or multiple) service delivery profile(s) projected at the needs of faculty as course authors, knowledge creators, learning coaches, and scholarly communicators. This also involves an enriched suite of services and toolsets.
(Beagle 2004) オリジナルはこちら
これはインフォメーションコモンズからラーニングコモンズへの進化過程について述べている文章の最後の部分なのですが、各種サービスの水平的統合と並行してユーザーのニーズに応じた垂直的分化が起きるという主張は、ユニークな視点だと思います。図書館・情報センター・学習センターを統合すれば「コストが浮く」という議論は多いのですが、同じ情報探索支援サービスでも、学生向け、教員向け、業務内容などによってさまざまなプロファイルをもうけて多様化していくことが求められることになるのでしょう。どういうプロファイルを作りどう支援していけばよいのか、ラーニングコモンズのみならず他の領域でも同じことが課題になりそうです。
[山内 祐平]
2009.05.01
みなさまこんにちは。はじめまして。
4月から修士課程に進学しました、安斎勇樹と申します。
【今年の研究計画】シリーズ第4回は、M1の安斎がお送りします。
まだ入ったばかりで具体的な計画はほとんど何もありませんが...、
修士課程で何をしていきたいのか、考えを書き殴ってみたいと思います。
■一言で言うと...
私がしたい研究は、一言で言ってしまえば
ワークショップだからこそ起きている「学び・変容」を明らかにしたい!
というものです。
■そもそもワークショップってなんじゃ?
ワークショップとは、元々は「作業場」を意味する言葉ですが、
現在では参加体験型の新しい学びのスタイルとして注目されています。
ただ教師の授業を"聞く"という知識伝達の場ではなく、
ファシリテーターの進行のもと、参加者が主体的に活動に参加し、
他の参加者と対話をして、相互に学び合うような場のことです。
実はきちんとした具体的な定義や要件は無いのですが...、
なんとなくワークショップのイメージはもって頂けたでしょうか。
■ワークショップの可能性
安斎は、学部時代、ワークショップという新たな学びのスタイルに魅力を感じ、
中学生と大学生の固定参加者を対象とした連続ワークショップを実施してきました。
ゲストを招いて毎回違ったテーマで、毎月1回開催しており、現在も継続中です。
※MindsetSchool
http://mind-set.jp/
こうした実践活動を1年間続けてみて、大きな手応えを感じました。
勉強が大嫌いだった子どもたちが、活き活きとした表情で活動に取り組んでいる。
参加者だけじゃなく、その保護者の方々も、とても喜んでくれている!
特に、参加者の中で、「変容」がたくさん起きていた!...気がする。
私は、知識やスキルが身につくような学習よりも、
自分の「ものの見方」や「信念」が変容した時の方が、
学んだ!成長した!と感じることが出来ます。
「学ぶことは変わること」...これが私のモットーです。
そしてワークショップは、単に知識やスキルを習得するのではなく、
体験や対話を通して「ものの見方」が変容したり豊かになる場として
可能性を感じるのです。
■問題意識・研究の目的
私だけでなく、ワークショップに対して魅力や可能性を感じている人はたくさんいるはずです。近年では実践活動も増え、これから学校教育においてもこうしたスタイルが増えていくでしょう。
しかし、ワークショップで何が起きているのか。
参加者の評価に焦点を当てた研究はありません。
それゆえ、
「ワークショップっておもしろいけど、本当に意味あるのか怪しいよね〜」
「ワークショップはその時は学んだ気になりやすいんだよね〜」
そんな意見も耳にします。
そこで私は、ワークショップの参加者に焦点をあてて、
ワークショップ参加者にはどんな学び・変容が起こってるのか?
ワークショップだからこそ起こりやすい学び・変容はどんなものなのか?
ワークショップに出来ること(効用)、出来ないこと(限界)は何なのか?
そんなことを明らかにしたい!と考えております。
対象は誰?変容って何を指してるの?どうやってそれを調べるの?
そんなツッコミが飛んできそうですが...
それはこれからじっくり考えていきます。
まだまだ考えがふわふわぼんやりとしていますが、
なんとか形にし、良い研究が出来ればと思っています。
[安斎 勇樹]
2009.04.23
みなさまこんにちは.
【今年の研究計画】シリーズ第3回はM2の岡本絵莉がお送りします.
ちょうど1年前に研究計画をこのブログで紹介してから様々な紆余曲折もありましたが、
再び私の研究計画を紹介します.
■□研究テーマ名□■
学習環境としての工学系研究室組織のデザインに関する探索的調査研究
■□研究の概要□■
大学研究室に埋め込まれた仕組み(共同体&活動)のデザインと、研究室のパフォーマンス
の関係を調査します.
■□研究の背景□■
<社会面での背景>
高等教育政策のひとつとして大学院の量的拡大が継続して行われてきました.そして、その拡大に伴う高等教育の空洞化が指摘されています.確かに組織が巨大化しても、そこでの研究や教育の質が保証されるものではありません.こうした中で今また、研究室などの小規模な組織の意義が指摘されています.
<研究面での背景>
これまでにも研究を行う「個人」と「組織」に関する研究は、多数存在しています.それはたとえば、研究者の思考プロセスや資質、経験、良い研究成果を生み出す研究者の協同に着目した研究などです.しかし、そうした研究で想定されているのは、既に研究者としての力を備えた個人です.本研究では、組織(研究室)に埋め込まれた、個人の力を引き出し、引き上げ、必要なリソースを共有する仕組みを明らかにします.
*本研究の対象とするのは、大学院の拡大に最も寄与し、日本の研究室制度の特徴を顕著に
持った工学系の分野の研究室です.
■□研究の方法□■
本研究では、質問紙調査&インタビュー調査を実施します.
対象は、工学系の大学研究室に所属する大学教員・大学院生・学部生です.
*具体的には...
メンバーが研究活動をきちんと行っていることを担保できる対象の研究室を選びます.
その研究室を対象に「どのような仕組み(研究テーマの決め方、研究の進め方、ゼミのやり方etc.)があるのか」を調査します.
その仕組みの存在は、研究室のパフォーマンス(研究業績、研究室全体のモチベーション、
ドロップアウト率etc.)とどのように相関を持っているのでしょうか?!質問紙で相関を明らかにした後、場合によってはインタビューを実施し、詳細を明らかにします.
■□進捗と今後のスケジュール□■
<これまで>
高等教育や研究者養成の現状、リサーチスキル、科学者の思考プロセス、問題設定・解決
プロセス、研究評価などに関する先行研究調査と、工学系の大学教員や大学院生らへの
インフォーマルな調査やミーティングを実施してきました.
<いま>
調査内容の明確化・調査項目の作成・調査方法の詳細を吟味中です.また、主に経営学の分野での組織論についての先行研究調査を進めています.
<これから>
6月にプレ調査を実施し、7月に質問紙調査の郵送、8月に回収と分析を行います.9月にはインタビューを実施(?)し、10月からは分析分析分析、執筆執筆執筆です!
■□最後に□■
私がこの研究に取り組む契機となったいきいき研究室増産プロジェクト/は現在も継続中です.まさに"現場"である大学研究室で日々「どうやったら○○くんと良い研究ミーティングができるのか」「どうやったらゼミで有意義な議論ができるのか」といったことを考えている研究者の方とお話するたびに、複雑な現実を「研究」という決まった手続きで切り取ることの意味(←良くも悪くも)を考えてしまいます.そうやって考えながらこの研究に取り組み、自分自身が研究室生活を送ることで多くのものを得ていると思うと同時に、想いにこだわりすぎることで逆に研究が辛くなることもあるのではないかなぁ、とも思います.ホット&クールをうまく使い分けながら、いい修士の研究をつくりたいです!
2009.04.21
4月14日のEduceCafeでは、フィールドワークとメディアを組み合わせたユニークな実践を展開していらっしゃる加藤文俊さん(慶応義塾大学准教授)に「旅する研究室:モバイルメディアを活用したフィールドワークの実践」というタイトルでお話しいただきました。
加藤さんは、ケータイのカメラを使って撮影したフィールドワークの記録をポストカードにまとめたり、知らない町に出かけて電車の中吊り広告を作るなど、学びが埋め込まれた魅力的なメディア実践をゼミの営みとして行われています。
フィールドワーカーとしての「他者性」をポジティブな意味に変える仕組みなど、いろいろ面白い話を伺えましたが、中でも記憶に残ったのが、「創造的な学びを生起させるためには、学生の状況を無理と退屈の間に持って行く課題設定が重要だ」という発言でした。これは、多くの実践者が指摘していると同時に、フロー理論などからも示唆されています。また、最近は課題設定をさらに「無理」に近づけることによって、よりその力を増幅する方向に関心があるとおっしゃっていましたが、ベイトソンの学習Ⅲや、エンゲストロームの拡張的学習などにも通じるものとして興味深く聞きました。われわれの業界ではよくHardFun(くるたのしい)という言葉を使いますが、指し示している事象はほぼ同じだという印象を受けました。
[山内 祐平]
2009.04.16
学生の研究計画をご紹介する【今年の研究計画】シリーズ、
第2回はM2大城がお送りします。
今回は、自分のやりたいことの大きなイメージをお伝えするとともに、
直面している課題事項の整理をしてみたいと思います。
○やりたいことを一言でいうと...
大学の多人数講義において、コミュニケーションの活性化を目的としたツールの利用を、これまで授業中の個人の学習方略として広く用いられてきたノートテイキングとドッキングさせることで、授業内容の理解を深めることに役立つようにすることを目的としています。
○デジタル・バックチャネルとその問題点
チャットやレスポンスアナライザ(授業中に学生の質問や意見を教師の手元に一挙に収集・集計するツール)といったツールは、デジタル・バックチャネルと総称できます。
バックチャネルとは、同じ部屋にいる大勢の人が一つのトピックに集中している場面において、フロントチャネル(講義やプレゼンなど)を補完するチャネルのことです。
私語などもバックチャネルに分類されることになりますが、特にICTを使う場合、デジタル・バックチャネルと呼ぶことができます。
デジタル・バックチャネルを授業中に用いる際の問題点として、3つの問題点が挙げられます。
1つ目は、使う人への負荷が高いことです。
つまり、先生の話を聞きながら、それについて同時に他の人とパソコンの画面上でコミュニケーションをとるという行為は、なかなか難しいということです。
2つ目は、そこで行われるコミュニケーションの内容が、しばしば講義とは無関係なものに飛びやすいことです。
結局、授業内容とは関係ない私語がデジタルで行われてしまっているということです。
3つ目は、ノートテイキングと両立できないことです。
1つ目の「負荷が高い」という問題とも関連しますが、実はノートテイキング自体も、人の話を聞きながら、情報の取捨選択を行い、自分なりの言葉でメモを取るという点で負荷が高く、誰もが満足のいくノートを取れているわけではありません。ましてや、コミュニケーションのツールの利用と同時に行うのはなかなかに困難であると言えます。
以上の3つから浮かび上がることは、授業中のデジタル・バックチャネルの利用は、授業の臨場感や、コミュニケーションを促進できていても、その内容が必ずしも授業内容の理解と結びついていないという問題です。
○修士論文で提案したいこと
そこで、問題を解決する方法として考えているのが、講義の裏でコミュニケーションをとる手段であるデジタル・バックチャネルの利用と、これまで個人でとっていたノートテイキングの結合です。
ブラウザで動く既存の文書やスライドの共同作成ツール(Google ドキュメントやZoho Writer、DocVerse等)のいずれかを用いて、授業内容の理解に結びつくような新しい利用方法の提案を行いたいと思っています。
具体的には、うまいノートテイカー1名のノートに対し、他の大勢の受講者がアノテーションの形でコメント投稿できるようにし、出来上がったノートを各自が復習用の素材として持ち帰ることができるようにする、という仕組みを考えています。
○現時点の課題
しかし、コミュニケーションを目的として作られたツールと、個人の理解を深めるためのノートテイキングという、一見すると別々のものを一緒にしようとしているため、食い違いやロジックの飛躍が起きています。よって、この案については、下記のような、かなり根本的なところでの検討課題があります。
課題1:その方法を使うことに際して、何に重きを置いているの?
...個人の認知の支援?臨場感を持った場の支援?
課題2:目指す理解のタイミングはいつのもの?
...その場での理解?復習する時の理解?
課題3:そもそも授業内容の「理解」って何?
...短期記憶?長期記憶?応用力?
今後は、今まで調べたデジタル・バックチャネルの開発研究や、ノートテイキングの効果に関する研究と、既存の文書共同作成ツールの整理を行いつつ、研究計画の練り直しを行いたいと思います。
[大城 明緒]
2009.04.12
「フィンランドを世界一に導いた100の社会改革」(イルッカ・タイパレ著)という本を読みました。
フィンランドには学会や視察などで数回行っただけですので、専門家というわけではないのですが、PISAの評価が世界一になったことに関する「フィンランドの学校を見習え」的な報道には若干の違和感がありました。
確かにフィンランドの教員は優秀です。子どもたちは生き生き学んでいますし、みんな学校が大好きです。(日本には学校に行きたくない子どもたちがいることを説明してもなかなか理解してもらえませんでした。)
ただ、この教育水準は、学校制度や教員養成の変革だけで実現できたわけではありません。世界一の図書館利用・一院制の議会など優れた政治システム・女性が大統領になるレベルの男女共同参画など、様々な社会変革の集積があってはじめて到達できたのです。100の社会改革を見ると、この国が貧しく混乱した時期から着実に努力を重ねた結果現在があることがよくわかります。
フィンランドは夢の国ではありません。ホームレスもいますし、アルコール中毒も根絶できていません。また、日本とは置かれている状況が違いますから、改革をそのまま輸入してもうまくいくわけではないでしょう。ただ、様々な領域で地道に改革を続ける粘り強さは、確実に学ぶべき美点だと思います。
[山内 祐平]
2009.04.11
みなさま、こんにちは。修士2年の池尻良平と申します。
新年度ということで、山内研にもフレッシュな1年生がたくさん入ってきました。今年も山内研のメンバーが毎週ブログを上げていきますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、第一回目のタイトルは【今年の研究計画】です。毎回、研究生の持っている目標と研究計画を書く今回のお題、トップバッターは歴史学習を専攻している池尻がお送りします。
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○歴史学習の歴史ってどうなっているの?
暗記だけをさせる歴史学習には問題点がたくさんあると言われてきました。例えば「生徒がやる気にならない」「一面的な歴史観を教えることになる」「多様な視点が欠けている」などです。
そこで、特に1990年以降、暗記の効率を上げる歴史学習から、「多面的に歴史を見る力」「史料を使って批判的に歴史を見る力」「歴史上の因果関係の構造を分析する力」などの知識以上の一般的な能力を伸ばす歴史学習を目指す研究が増えてきました。
○歴史って過去ベクトルの学問?いいえ、現在ベクトルの学問です。
ところが、歴史学の大哲学者E.H.Carrは、歴史とは現代の問題意識と合わせて語ることに意義があるのだといっています。同じように、歴史上の大きな社会的変化を現代に適応することこそが歴史を学ぶ最大の意義だという研究者もここ5年で随分と増えてきています。
しかし、現状の歴史学習は「過去の知識」から「過去のことを考える力」とシフトはしてきましたが、「過去の大きな因果関係を現在に引きよせて考える力」を育成するのに効的な学習方法は確立されていないのが現状です。
○じゃあ、僕は何をしようか?
そもそも僕は「歴史を役に立つ学問にする!」を目標に1年生から研究してきたので、じゃあ、歴史を現在に活かす学習方法を考えようということにしました。
具体的には、歴史でしか勉強できない大きな社会的な変化や因果関係(例えば、産業革命期の労働問題)を同じようなテーマの現在の問題(例えば、派遣問題)に置き換えて考えさせ、現在の問題をマクロな視点から解決する方法を身に付けさせることを目的にしています。
○それで、どうやって研究するの?
口頭でこれをやれ、と言ってもなかなか難しく、なかなか歴史と現在を結びつけるには至らない歴史学習が多いので、僕の研究では教材をデザインしてこの活動を促進させたいと思っています。特に、過去と現在のどことどこが構造的に似ているのかが一目でわかり、複雑な情報をパッケージ化して学習できるようなカードを使った教材を考えています。
○評価はどうするの?
カード教材を使うことで子ども達が「お、昔のこの原因と今のこの原因って実は似ているね」といった過去と現在をつなげて考えようとする発言をプロトコル分析で出せたらなと思っています。また、「ってことは、今は大きな流れで見るとこの原因が派遣問題の根本にあるんだな」といったマクロな視点で現在を分析する発言や「そうすると、今の問題を解決するにはこの大きな原因を解消しないといけないんだ」という発言が出てきてくれることを目指そうと思っています。
○対象は?
僕はずっと子どもの頃から学校の文化が好きじゃありませんでした。受験受験、試験試験、偏差値偏差値。しかも頑張って勉強しても社会に出て行くにつれてあんまり役に立たなくなる。じゃあ、高校生は何であんなに苦しんで勉強しているんだと常々思ってきました。特に歴史科はその傾向が強いものだと思います。だからこそ、歴史で身につく力は現在のあなたの生活、引いては未来を変える力につながるんだよということを早く高校生に伝えたいと思っています。発達段階的にも可能なはずなので、ぜひ全国の高校の歴史授業を一新できるように頑張りたいと思います。
○今後の課題は?
まず何よりもカード教材に魅力がないと使ってもらえないので、高校生が知的にもゲーム的にもワクワクして、遊びながら学べる教材を考えていきたいと思います。
今年度は実際に高校世界史の授業を長期的に見学させてもらい、高校生がどういうものに反応するのかをじっくりと勉強する予定です。
また、過去を現在に照らし合わせるという活動の結果がどうなるか自体、未知のことが多いので、実際にやってもらいながら、僕の中でどういう能力を上げさせたいのかを固めることも課題として取り組みたいと思っています。
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随分と長くなってしまいましたが、ゆくゆくはいつか子ども達が学んだことの全てが社会で役に立つような、ねじれが生じない自己調整的な教育システムを構築したいと思っています。修士ではその第一歩として、歴史を現在の問題関心に合わせて役に立たせられるこの研究を良い形でまとめたいなと思っていますので、温かく見守っていただければ幸いです。
[池尻 良平]
2009.04.06
3月29日(日)にプラス・サーキュレーション・ジャパンの中西紹一さんのコーディネートによる「ケータイ葬送ワークショップ」が開催されました。このワークショップは福武ホールアフィリエイトであるKDDI研究所と情報学環水越研究室・岡田研究室・山内研究室との共同研究で、市民のメディア表現やワークショップ活動と新しいサービスの創造をつなぐ試みを行っています。山内研究室からは、私と博士課程の森玲奈さんがプロジェクトに参加しています。
ケータイ葬送ワークショップは、亡くなった人を送るという行為とケータイがどうつながるのかという観点から、長期的なサービスの新しいプランを考えるもので、KDDI研究所のエンジニア、脚本作家、TVプロデューサ、ワークショップ関係者など、様々な領域で活躍している人々が集まり、本質的で深い議論を元に、新しいアイデアが次々に生まれました。
創発を目標にしたワークショップに企画段階から参加したのははじめてでしたが、想像以上に深い議論と新しいアイデアの創造に感銘を受けました。このような経験は、参加者に深い次元での変容を促し、学習という観点でも注目すべき成果を残していると推測できます。このあたりについて今年度から来年度にかけて研究していきたいと考えています。
[山内 祐平]
2009.03.31
こんにちわ。
2008年度最後のエントリーは、D2の森が担当いたします。
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福武ホールは、先日、満1歳のお誕生日を迎えました。
(誰も誕生日ケーキは買っていなかったようでしたが・・・。)
今年自分の活動をふりかえってみると、
福武ホールと深い関わりのあるものばかりだったように思います。
ーーー
■学環コモンズの空間デザインの補助(2007年12月〜)
情報学環の教員と学際情報学府の学生、情報学環教育部の研究生が集い語らう場として、活気あふれる場をデザインするべく、福武ホール内の学環コモンズというスペースに関し、企業の方や専門家の方と一緒にお仕事をさせていただきました。
■カフェイベント UTalk(2008年3月〜)
福武ホールの主催イベントとして、東京大学の教員をゲストに招き、一般の方向きのカフェイベントを企画・運営しました(現在も、毎月第二土曜日に開催中です)。
■CAMPとの共同研究(2008年9月〜)
福武ホールのアフィリエイトとしておつきあいさせていただいている(株)CSKホールディングスの社会貢献活動CAMPと共同研究を始めました。まず今年は、ファシリテーター育成を行うための研修プログラムについて、学習の様子を調査しました。
■KDDI研究所との共同研究(2008年12月〜)
福武ホールアフィリエイトであるKDDI研究所の方と、学環の水越先生・岡田先生・山内先生ほか、皆様とともに、携帯電話を使った新しいサービス等を考えていくことを目的としたワークショップに関わらせていただきました。
主に、今年度は、その中で、ワークショップ参加者の学習評価について、調査を行いました。
■Educe Cafeの開催
以前より続けてきたNPO エデューステクノロジーズでの社会貢献活動も、NPOが今年度から福武ホールアフィリエイトになったことを受けてより一層活発に実践を行いました。
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上記、福武ホールとともに、いろいろな研究・実践をやって参りました。
※私の研究・実践をもっと詳しく知りたいと思ってくださる方がいらっしゃいましたら
http://www.harinezuminomori.net/
をご覧いただけたらと思います。
それと同時に、研究室の1学生として、個人研究も着実に進めることができました。
新しい研究の成果は、残念ながら未だ公にはできておりませんが(今年度内にできなかったのは少々無念です・・)時期を見て、いずれまたこちらのブログで結果のお知らせが出来ると思います。
なお、以前書かせていただいた拙論が日本教育工学会にて表彰を受けることになったのも、今年度の喜ばしい成果の一つでした。
ーーー
何はともあれ、怒濤のように一年が過ぎてしまいました。
ここまでやってこられたのは、多くの実践者の方を初め、周りの方のご協力あってのものだと、深く感謝しております。
このご恩はどこかで少しずつ返して行けたらと思っております。
これからも若輩者ではございますが、どうぞあたかいご支援賜りますよう、
何卒、よろしくお願い申し上げます。
[森 玲奈]