2009.04.12

【エッセイ】フィンランドという国

フィンランドを世界一に導いた100の社会改革」(イルッカ・タイパレ著)という本を読みました。
フィンランドには学会や視察などで数回行っただけですので、専門家というわけではないのですが、PISAの評価が世界一になったことに関する「フィンランドの学校を見習え」的な報道には若干の違和感がありました。
確かにフィンランドの教員は優秀です。子どもたちは生き生き学んでいますし、みんな学校が大好きです。(日本には学校に行きたくない子どもたちがいることを説明してもなかなか理解してもらえませんでした。)
ただ、この教育水準は、学校制度や教員養成の変革だけで実現できたわけではありません。世界一の図書館利用・一院制の議会など優れた政治システム・女性が大統領になるレベルの男女共同参画など、様々な社会変革の集積があってはじめて到達できたのです。100の社会改革を見ると、この国が貧しく混乱した時期から着実に努力を重ねた結果現在があることがよくわかります。
フィンランドは夢の国ではありません。ホームレスもいますし、アルコール中毒も根絶できていません。また、日本とは置かれている状況が違いますから、改革をそのまま輸入してもうまくいくわけではないでしょう。ただ、様々な領域で地道に改革を続ける粘り強さは、確実に学ぶべき美点だと思います。

[山内 祐平]

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