2009.04.21

【エッセイ】無理と退屈の間

4月14日のEduceCafeでは、フィールドワークとメディアを組み合わせたユニークな実践を展開していらっしゃる加藤文俊さん(慶応義塾大学准教授)に「旅する研究室:モバイルメディアを活用したフィールドワークの実践」というタイトルでお話しいただきました。
加藤さんは、ケータイのカメラを使って撮影したフィールドワークの記録をポストカードにまとめたり、知らない町に出かけて電車の中吊り広告を作るなど、学びが埋め込まれた魅力的なメディア実践をゼミの営みとして行われています。
フィールドワーカーとしての「他者性」をポジティブな意味に変える仕組みなど、いろいろ面白い話を伺えましたが、中でも記憶に残ったのが、「創造的な学びを生起させるためには、学生の状況を無理と退屈の間に持って行く課題設定が重要だ」という発言でした。これは、多くの実践者が指摘していると同時に、フロー理論などからも示唆されています。また、最近は課題設定をさらに「無理」に近づけることによって、よりその力を増幅する方向に関心があるとおっしゃっていましたが、ベイトソンの学習Ⅲや、エンゲストロームの拡張的学習などにも通じるものとして興味深く聞きました。われわれの業界ではよくHardFun(くるたのしい)という言葉を使いますが、指し示している事象はほぼ同じだという印象を受けました。

[山内 祐平]

PAGE TOP