2009.04.23

【今年の研究計画】学習環境としての工学系研究室組織のデザインに関する探索的調査研究


みなさまこんにちは.
【今年の研究計画】シリーズ第3回はM2の岡本絵莉がお送りします.
ちょうど1年前に研究計画をこのブログで紹介してから様々な紆余曲折もありましたが、
再び私の研究計画を紹介します.

■□研究テーマ名□■
学習環境としての工学系研究室組織のデザインに関する探索的調査研究

■□研究の概要□■
大学研究室に埋め込まれた仕組み(共同体&活動)のデザインと、研究室のパフォーマンス
の関係を調査します.

■□研究の背景□■
<社会面での背景>
高等教育政策のひとつとして大学院の量的拡大が継続して行われてきました.そして、その拡大に伴う高等教育の空洞化が指摘されています.確かに組織が巨大化しても、そこでの研究や教育の質が保証されるものではありません.こうした中で今また、研究室などの小規模な組織の意義が指摘されています.

<研究面での背景>
これまでにも研究を行う「個人」と「組織」に関する研究は、多数存在しています.それはたとえば、研究者の思考プロセスや資質、経験、良い研究成果を生み出す研究者の協同に着目した研究などです.しかし、そうした研究で想定されているのは、既に研究者としての力を備えた個人です.本研究では、組織(研究室)に埋め込まれた、個人の力を引き出し、引き上げ、必要なリソースを共有する仕組みを明らかにします.

*本研究の対象とするのは、大学院の拡大に最も寄与し、日本の研究室制度の特徴を顕著に
持った工学系の分野の研究室です.

■□研究の方法□■
本研究では、質問紙調査&インタビュー調査を実施します.
対象は、工学系の大学研究室に所属する大学教員・大学院生・学部生です.
*具体的には...
メンバーが研究活動をきちんと行っていることを担保できる対象の研究室を選びます.
その研究室を対象に「どのような仕組み(研究テーマの決め方、研究の進め方、ゼミのやり方etc.)があるのか」を調査します.
その仕組みの存在は、研究室のパフォーマンス(研究業績、研究室全体のモチベーション、
ドロップアウト率etc.)とどのように相関を持っているのでしょうか?!質問紙で相関を明らかにした後、場合によってはインタビューを実施し、詳細を明らかにします.

■□進捗と今後のスケジュール□■
<これまで>
高等教育や研究者養成の現状、リサーチスキル、科学者の思考プロセス、問題設定・解決
プロセス、研究評価などに関する先行研究調査と、工学系の大学教員や大学院生らへの
インフォーマルな調査やミーティングを実施してきました.
<いま>
調査内容の明確化・調査項目の作成・調査方法の詳細を吟味中です.また、主に経営学の分野での組織論についての先行研究調査を進めています.
<これから>
6月にプレ調査を実施し、7月に質問紙調査の郵送、8月に回収と分析を行います.9月にはインタビューを実施(?)し、10月からは分析分析分析、執筆執筆執筆です!

■□最後に□■
私がこの研究に取り組む契機となったいきいき研究室増産プロジェクト/は現在も継続中です.まさに"現場"である大学研究室で日々「どうやったら○○くんと良い研究ミーティングができるのか」「どうやったらゼミで有意義な議論ができるのか」といったことを考えている研究者の方とお話するたびに、複雑な現実を「研究」という決まった手続きで切り取ることの意味(←良くも悪くも)を考えてしまいます.そうやって考えながらこの研究に取り組み、自分自身が研究室生活を送ることで多くのものを得ていると思うと同時に、想いにこだわりすぎることで逆に研究が辛くなることもあるのではないかなぁ、とも思います.ホット&クールをうまく使い分けながら、いい修士の研究をつくりたいです!

PAGE TOP