2011.03.28
皆様、こんにちは。4月より修士課程2年目になります土居由布子です。
3月末になってもひどく寒い日が続いています。
東北地方太平洋地震、津波や原発事故の影響で被災された皆様にひと時でも早く心休まれますよう、強く願います。
そして深刻な事態が続く中、懸命に復旧作業に取り組まれている皆様に常に熱いエールを送り続けたいと思います。
私自身も少しでもお役に立てればと考え、できることを実践していく次第です。
【1年間を振り返る】
私にとってこの1年は本当にたくさんのことを悩みながらたくさんのことを学べた1年だったと思っています。学際情報学府、そして山内研究室という実践的で様々な機会にめぐまれた環境の中で研究に取り組み、とても刺激的な1年となりました。
ゼミや研究室の中で先生方や、先輩、そして同期、そして研究室外でも様々な人にお会いし参考となるアドバイスやお話をたくさん頂きました。
また研究の基礎を日々学ばせて頂きましたが、これからも強化していかなければならないと強く思うばかりです。この1年を通して自身の何が足りないのか、何を学ぶべきか等の課題が次々と明らかになってきました。
なかなか研究の新規性を見出せず、時間ばかり過ぎてしまい、2年目を迎えることになった今もまだまだ悩みがつきませんが、だからこそ「Hard-Fun」を感じてきました。
この1年は時間との勝負が深刻となり、私にとってこれまで以上に「勝負の年」となること間違いありません。皆様の期待を裏切らぬ様、日々精進して研究を進め、1年後には、皆様にお見せして恥じない論文を仕上げたいと思っております。
どうかこれからも宜しくお願い致します。
【土居由布子】
2011.03.25
みなさま,こんにちは。 修士課程1年の柴田アドリアーナです。
東北地方太平洋沖地震から2週間たちました。まだ余震も続いてとても心配ですが、被災された皆様に一日も早い復旧•復興を心よりお祈り申し上げます。
それでは、メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】,第6回をお送りいたします。
修士課程の一年間
修士に入ってからの一年間はあっという間に過ぎてしまいました。
研究生として山内研究室に入ってから「HardFun - 苦楽しい」という言葉をよく耳にしてきました。今年を振り返ると「HardFun」はこの一年間に一番ぴったりの言葉だと思います。
前回のシリーズ、【私の学びの場】で紹介したBEATのメールマガジンの執筆、授業の課題やゼミでの研究発表と英語文献でとても忙しくて「Hard」でした。特に前学期にはグループワークが多くてスケジュールはミーティングでいっぱいでした。
しかし、課題の中で実際にワークショップや学習環境のデザインをしながら「Fun」な時間も沢山ありました。そして、授業では他の研究室の方々とグループワークをしながら、幅広い分野からの視点を通してコミュニケーションすることができました。多様な意見を聞きながら、とても魅力的な学習環境だったと思います。
研究の進み具合
こんな忙しい毎日の中で学習し、研究も進んできました。この一年間は研究に関する内容を沢山レビューしました。放課後学習やFifth Dimension、さまざまな事例を見てきました。そして、在日ブラジル人に関する状況やその子どもたちの教育に関する活動にも注目しました。
こんな沢山の情報の中で、今の自分の研究に必要な情報をまとめるのがとても大変でした。毎回のゼミ発表で皆から頂くコメントを大事に聞いて、研究の方向性を決めてきます。そして、定期的にファシリテータの佐藤朝美さんと研究相談をしながら研究を進んできました。いつも貴重なアドバイスを頂いて本当に感謝しています。
4月になると修士2年になります。去年の今頃を思い出すと、先輩達の研究発表をみながら修士課程に進みました。この一年間、彼らの頑張っている姿を見て感動しました。(修了生の皆さま、おめでとうございます!)
ここからの一年間を想像することはとても難しいが、これからも自分としっかり向き合って改善しながら研究して行きたいと思います。
【柴田 アドリアーナ】
2011.03.16
このたびの大規模な地震により被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
地震発生当時、私はCSK株式会社との共同研究発表シンポジウム「子どもワークショップの持続と発展」で話をしていました。すぐおさまるかと思い話を続けていましたが、断続的に地震が続き、大学から建物より外に出るように命令が来ましたので、合格発表の会場前に退避し、安全確認を行った上で解散しました。
その後、交通機関が復旧しなかったため、一部のお客様と帰宅困難になった教職員・学生など約100名が福武ホールで夜を明かすことになりました。福武ホールの運営責任者として食料の手配などを行い、日曜日になって全員帰宅しました。都心の大学には帰宅困難を想定した食料や寝袋などの備蓄が必要だと痛感しました。
あれから6日たちましたが、停電や余震、原発事故などで疲れがピークに近づいているようです。当初は元気だった人も、緊張が続くと疲れてきていらいらするようになります。Twitterでも心配や怒りのTweetが増えてきているようです。
私は阪神大震災の時に宝塚に住んでいましたが、そのときも1週間ぐらいで人々が同じような状態になった記憶があります。最初は非常事態のため気分が高揚しますが、そのペースを長期間維持することはできません。当たり前だと思っていた前提が失われ想定外のことが起き続ける中、被災地の映像に感情移入することによって気分が落ち込むのは人間として自然な反応だと思います。
今必要なのは、少しずつでも足を地につけた日常を取り戻すことではないでしょうか。自分がやるはずだった仕事をゆっくり始め、食事をきちんととり、知り合いと談笑し、娯楽でリラックスする時間を持つこと ー地震がなければあったはずの世界ー を作りなおすことです。
東北地方にいらっしゃる被災者のことを思うと、それが悪いことのように思えるという「気分」はよくわかります。また、原発事故の動向について「不安」があるのは私も同じです。しかし、支援しなければいけない我々が参ってしまっては、長い時間がかかる復興に望むことはできません。
被災地になにかしたいという思いを少しでも形にすることができるのが「募金」です。阪神大震災の時もそうでしたが、インフラの整っていない被災地に専門性のないボランティアが行くことは、かえって現地の状況を悪化させます。また、物資も置き場に困ったり配送できなかったりします。今我々ができる最善の選択は、楽しみながら節約し、それを募金にまわすことです。
「きちんと生活、しっかり募金。」そういう日々を過ごしていきたいと思います。
※さまざまな募金が始まっていますが、日本赤十字社のリンクをあげておきます。
【日本赤十字社】東北関東大震災義援金を受け付けます
※コンビニエンスストアでもレジ横で募金しているところが多いようです。おつりを寄付するだけでも、人数が集まれば大きな金額になります。
※3月17日追記:物資を配給する自治体が消滅しているため、NPO経由の物資送付が必要という情報があります。詳しくはこのページをご覧下さい。
[山内 祐平]
2011.03.14
みなさま、こんにちは。修士課程1年の菊池裕史です。
まず、このたびの東北地方太平洋沖地震により被災された多くの方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。被害を受けられた皆様の生活が、一刻も早く回復することをお祈りいたしております。また、今回の地震により、関東地方に住まわれている皆様にも多大な影響が及ぼされていることを、僕自身が経験することにより実感しております。今、自分自身ができることを1つ1つ積み上げていくことにより、少しでも早く、いつも通りの生活を取り戻せるようにと願っております。
さて、それでは山内研のメンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】、第5回をお送りいたします。
一年間を振り返る
僕が大学院に進学してから、約1年が経過しました。驚くべき速さで過ぎていった1年間を、今ようやく振り返っています。びっしりと書きこまれたスケジュール帳を過去に向かって遡っていくと、様々な記憶が蘇ってきます。参加した授業もプロジェクトも、今までに経験したことがないようなものばかりでした。例えばワークショップの開催や共同研究への参加、BEATのセミナーレポートを書いたり、福武ホールのテクニカルスタッフをしました。また、2回の合宿への参加や毎月の研究発表、山内研のメンバーとして受験希望者の相談にものりました。濃密で充実した日々だったからこそ、「驚くべき速さ」で日々が過ぎていったのだいうことを、今になって実感しております。
ジェネラリストは、よりジェネラリストへ
話は変わりますが、つい先週の木曜日に、山内研・中原研(東京大学大学院学際情報学府 中原淳研究室)での合同合宿から帰ってきました。合宿初日の食事のときに、中原研博士2年の舘野泰一さんと話した、自身の成長に対する振り返りを促す面白い話題がありましたので、それについて書いてみたいと思います。「ジェネラリストとスペシャリスト」についてです。
僕が大学院に進学した理由はいくつかあります。もちろん進学を決意した1番の理由は、「研究が面白いからもっとやってみたい!」というものでしたが、それと並ぶほどのもので、「(自分だけがもつような)専門性を高めたい!」という思いもありました。今までの人生において、「なんでもそこそこできる」キャラクターであった僕は、自身の専門性を確立し、その専門性を軸として様々な活動ができる人になりたいと考えておりました。そのような思いをもちながら、この1年間を過ごしてきました。
実際の大学院での1年間がどのようなものであったかと言うと、「教育」という専門領域を軸として、様々な活動を行った1年間であったと言うことができると思います。古典と呼ばれる書籍から、最先端の論文にまでに目を通し、ラーニングコモンズやワークショップのデザインといった実践的なグループワークを行い、複数の企業との共同プロジェクトなども行いました。しかし、今自分自身に「スペシャリストになれた?」と問いかけてみても、自信をもって「なれた!」と答えることはできません。「教育分野」という桁で自分の能力を捉えたときに、専門性を高めることができた、と言うことはできると思いますが、より細かく専門性を捉えたときに、「○○についてはキクチに任せておけ!」と言われるような分野は確立できなかったかな、と思います。「なんでもそこそこできる」僕は、様々な種類の活動を経験することにより、「よりなんでもそこそこできる」人間に成長したのかな、と思っています。
ジェネラリストからスペシャリストへ
さて、4月から僕の修士生活も後半戦です。様々な活動に手を出し、「よりなんでもそこそこできる」人間に成長した僕は、今年こそ専門性を確立したいと考えています。先日の合宿の際に、中原研の舘野さんとは、「扱える範囲が広いというのも一種のスペシャリティーだよね」といったような話をしましたが、果たして僕は、今後どのような専門性を確立するのでしょうか・・。今の僕にはまだまだ1年後の自分を想像することはできませんが、日々の努力を積み重ねることにより、何らかの専門性を高めることができていればいいなと思います。また1年後に、僕がどのような専門性を確立することができたのかということを、このブログを通して報告できたらいいなと思っています。来年度も、今年度以上に積極的な態度で学問・研究に打ち込んでいきたいと思います。
2011.03.07
京大などで起こった入試投稿事件について、様々な論調があります。その中には「今の入試システムは知識を問うことに特化しているので、より問題解決的な課題や長期的な評価、ITを利用できる条件整備をすべきである。」という意見も見られます。
このような方向性に対して異議はありません。しかし、今回の事件と結びつけられて論じられることには違和感があります。
問題解決学習やプロジェクト学習を行っている大学も増えてきています。(BEAT Seminar:プロジェクト学習が大学を変える)このような学習では、課題解決結果や制作物の評価(成果の評価)と学習状況を記録したポートフォリオの評価(学習過程の評価)の組み合わせが一般的に行われています。このやり方を応用すれば、1ヶ月程度のプロジェクト型の課題をAO入試の書類・面接審査と組み合わせて実施することは原理的には可能です。(膨大な手間とコストがかかりますが、ここでは別の問題として切り分けます。)
このやり方であれば、ITを利用しながら他の人と協調して課題解決するプロセスも評価対象として取り扱うことができます。また、アウトプットに論文を入れれば、思考力や作文能力を見ることもできます。
ただし、このような方法を使うためには、本人が正直に過程を公開することが前提になります。他者がなりすましを行ったり、答えをプロセスも含めて直接引き写されては評価は機能しません。面接を組み合わせればかなりの割合で防ぐことができますが、入試が人生を左右する重みを考えれば、公正さの保証は必要になります。
研究者が論文執筆時にオリジナリティに関わる盗用を行えば、場合によっては職を失うほどの厳しい処分が行われます。ウェブ上の情報共有コミュニティでも、情報を提供した人への敬意が必要であり、人がやったことをそのまま自分のものにすることは許されていません。今回の事件のように直接他者に回答を丸投げする行為は、問題解決的で長期的な評価でも盗用にあたり、公正さに反するのではないでしょうか。
今回の事件は多様な側面を含んでおり、大学として入試とは何かということを真摯に問い直すきっかけにすべきだと考えています。ただし、改善案を考える際には、受験生が納得できる公正さを担保する必要があると思います。
【山内 祐平】
2011.03.03
みなさま,こんにちは。
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】,第4回は修士2年の伏木田がお送りいたします。
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1年間で1番変わったこと。
それは,「研究に対する心構え」だと思っています。
それまでの自分は,ほんとうに人に甘えていて,誰かがやってくれればそれでいいと,自分の研究を傍観しているようなところがありました。
与えられた課題を淡々とこなすことが好きで,その課題が誰に何をもたらすのかを考えることに苦痛を感じていました。
人の役に立つ研究をしたいと強く思いながらも,そのために自分がすべきことから目を背けて過ごしていました。
そういうふわふわとした考えでは駄目なんだと,少しずつじわじわと気づくことができた。
それが今年1年の大きな収穫だったと感じています。
研究をはじめるにあたっては,「社会的背景」と「理論的背景」をじっくり見極めることが求められます。
なぜその研究が社会に必要なのか,これまでの研究にはない新規性はどこにあるのか。
自分の知りたいことは何で,それを知るためにはどのような方法をとる必要があるのか。
修士研究において最も大切だと感じたのは,「リサーチ・クエスチョン」を立てることでした。
私の場合,以前から教員と学生,学生と学生が関わり合う中で学ぶ場に興味がありましたが,文系の学部ゼミナールをテーマとして選択するまでには1年近くを要しました。
その後,学部ゼミナールについて知りたいことをあらゆる視点から書き出し,徐々に焦点を絞っていくのに数か月。
先行研究や関連する情報と照らし合わせ,学部ゼミナールの何が明らかにされていないのかを焦点化するまでにさらに数か月。
その間,文献のレビューだけでは具体的な課題が見えてこなかったこともあり,複数の教員の方々にお願いをして,いくつかのゼミナールに参加しました。
自分が選んだ学部ゼミナールというテーマに関して,頭の中にある知識と,実際の現場から得られた知見とを織り交ぜるプロセスは,楽しくもあり辛くもありました。
「リサーチ・クエスチョン」がようやく見えてきたころ,研究の「目的」を具体的に描けるようになりました。
そしてそれに沿う形で,研究の「方法」も少しずつ決まり始めました。
学部ゼミナールに参加している学生を対象に調査を行うため,学部ゼミナールにおける学びを構成している概念を操作的に定義し,その概念を測定するための尺度を作成し,質問紙を構成する。
これら一連の作業は,どこかで常に「仮説」を意識しながら行わなければならず,徹底的に自分の研究と向き合い続けることを強いられました。
「背景」,「目的」,「方法」,この3つが一直線に結ばれているか。
そして,得られた「結果」の分析とその「考察」は矛盾を含んでいないか。
最終的な「結論」は,「リサーチ・クエスチョン」の答えとしてふさわしいか。
1年間をかけて取り組んだ研究を修士論文にまとめる際は,この3点を強く意識させられました。
こうしてできあがった修士論文は,大きな課題とたくさんの可能性を含んでいます。
"もっとこうすれば...","もしかしたら別の方法も..."という前へ前へと進む気持ちをバネに,これからも誰かに寄り添えるような研究を続けていきたいと思います。
そして,そこから生まれた成果を本や論文という協力者へのラブレターとして,多くの方に届けていくことが望みです。
[修士2年 伏木田稚子]
2011.02.26
みなさま、こんにちは。修士2年の程琳と申します。
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】。
第3回は、修士2年のテイがお送りいたします。
一年間を振り返るといっても、この一年間は夜明けを待っていたように待ち遠かったものの、あけぼのの一瞬だけ真実を感じたように短かったものでした。
第一回目において、すでに安斉さんがタイムシートを挙げてくれましたが、学年度の始まりオフライン発表があり、七月に中間発表があり、その後の半年は修士論文を実の形にするために日々カウントダウンしてきたのです。いろいろやりたいという欲張りの自分と限りのある時間内で終わらせないといけないけっちな自分との戦いというしかありません。その中から私もたくさん学ばせられました。
(1)割愛ができないと愛は形になれない
入学式の日、学環の先生方から新入生への一言のショート演説がありました。その日に私はこういう話を聞きました:
「いくら計画しても、実際手足を動かし、始めてみたら、予定の三倍以上の時間がかかると分かります。」
院生の一年目は、二年目の仕上げがきっちりできるように、関係あるものを全部網羅してできるだけ抜けがないような関係図を作るための手探りと積み重ねの一年間に対して、二年目は探してきたものをどんどん捨てていかないといけない割愛の一年間でした。
というのは、研究者としてやれることは、探検者や革命者と真逆だということです。探検者や革命者は新しい世界を開く人で、ライトをどこまで当てられるかが問われるが、研究者は一羽の鳥ごとく、どんなに大きな森の中でも、結局一本だけの木にしか巣を作ることができません。
オフライン発表から中間発表を経て、実際の実践活動を決定するのも、活動の結果を修士論文に仕上げるのも、いずれも「選びと捨て」が伴っていました。
(2)雨降れば地固まる
二つ目は、多くの人の意見に耳を傾ける重要性です。
山内研で最大な幸せは、多くの方の支えと見守りのなかで、自分が愛を持ってやりたい研究を貫いてがんばれることです。
言われることしかできないのでもなく、独りよがりなパターンでもなく、山内研では、自分の研究をさらしだし、多くの方が叩き台を作ってくださるのです。
いくら修士論文を書き上げたにしても、研究の世界においては、私たちは子どものような存在で、「かわいい子には旅をさせろ」という考え方が先生方の頭の中にいらっしゃるのかな、私たちの未知の研究世界への旅の道中、ずっとまわりの人たちが照らしてくれた灯台がありました。
このかたがたがいないと、最初の甘い自分の考えのまま、実践原案から最後の修論へはたどりつけるのかも懸念でしょう。皆さん、本当にありがとうございました!
(3)カレンダーの使い方
時間は進むしかできませんが、カレンダーの使い方はいろいろあると分かったのもこの一年間でした。
今日これをやり終わったら、明日は次をやろうという人もいるでしょうが、タイムリミットがかかっているから、この日までにあと何日あるかを数えてカウントダウンをするタイプもきっといます。
私はいろいろな締切日を先にカレンダーに赤色で塗り、その前にプレの締め切り日、つまり、原形が出来上がるべき期限の最終日に更に黄色で塗り、それまではカウントダウンするという感じでした。
研究は個人作業ですが、一人では仕上げることができません。ですから、そのプレの締め切り日はつまり、叩き台に一度さらすことです。もしもそこで大きなミスがあったら、残りの時間でやり直して、また二度目の叩きあいを受けるのです。山内研では、研究員と院生からなるファシリテーター制度があるおかげで、いっぱいたたきを受けました。
こうして、経験する日々は長く感じましたが、やることが多すぎて、時間が去っていくのもはや過ぎです。それが私のこの一年間でした。
【テイ リン】
2011.02.23
この季節は人事選考や論文審査などで面接の機会が増えます。たくさん面接をしていると、内容と直接関係ない挙動で印象が変わることに気がつきます。
1)部屋への入り方
部屋に入るときに、笑顔で挨拶してきびきび動く人と、緊張した面持ちで小声で話す人では、好感度が変わります。
2)説明
相手が理解しているかどうか確認しながら落ち着いてリズム感よく話す人と、早口で一方的にまくしたてる人では、説明の理解度が違います。
3)やりとり
聞かれたことに短いフレーズで的確に答えてから補足説明する人と、前置きが長く答えも理解しにくい人では、やりとりの充足感に差があります。
人事選考の場合、これらの差を対人能力のあらわれととらえて評価対象にすることもあります。しかし、通常の論文や企画案の審査では、評価指標には入っていません。その場合、審査員は評価指標だけを意識するよう努力することになりますが、実際には無意識のバイアスを消すことは難しいのです。
このような面接やインタビューにおけるバイアスは、様々な研究によって明らかにされています。容姿の影響に関する研究が有名(たとえば人事面接における肥満の影響に関する研究)ですが、容姿以外にも評価指標と関係ない多くの要因が判断に影響することが避けられないのが、面接という方法なのです。
もちろん、対面でやりとりをすることによって得られる情報は多く、面接が評価の有効な方法の一つであることは間違いありません。しかし「会えばわかる」というほど確実な方法でもないということを十分理解した上で、他の評価方法と組み合わせて使うべきものだと思います。
【山内 祐平】
2011.02.17
みなさま、こんにちは。
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】。
第2回は、修士2年の帯刀菜奈がお送りします。
私にとって修士課程最後の1年間は、夢を形にするため突進した日々でした。
と同時に・・・
4年前から抱いていた「高校生が夢中になれるような日本史学習の実践をしたい」との思いが実現するまでの軌跡は、迷走の記憶でもありました。
■倒せない妖怪、ぬりかべと対峙した夏
6月、修士研究では太刀打ちできない、大きな桁の学習課題を相手取ろうとしている自分に気付き、行き詰りました。
[どうして私の研究は必要があるのか] を捜して、焦点をあてたのは「学習指導要領に書いてある学習目標」でした。しかし修士研究で克服するには課題が大きすぎたのです。
目の前に 分厚い土壁 のように私の前に立ちはだかり7月の中間発表を前に途方にくれました。
■戦う相手を、いったんもめん(勝てそう)に変えた秋
私ひとりでは、なぜ研究が前に進まないのかもやもやしていましたが、研究ファシリテータの椿本先生や、山内研・中原研のゼミメンバーのアドバイスから、もっと小さな問題を切り出すことになりました。「歴史を考える力の構成要素、共感を向上させる」ことにシフトしたのです。
どうしても高校生の楽しそうな笑顔が見たい!!という思いは日に日に強くなり、
10月(プレ実践・本実践あわせて)およそ40名の高校生にご協力いただいて
映像制作ワークショップを開催することができました。
11月は助教の佐藤先生、山内研の池尻先輩に評価のお手伝いをいただきながら、分析と考察をしました。12月はひたすら執筆していました。
■ミッションを終えた冬
修士2年間を振り返ると、山内研には困ったときにいつも助けてくれる仲間がいました。
いま福武ホールの2階は私にとってかけがえのない居場所となりました。
山内先生、たくさんのチャンスと気付きをくださって、本当にありがとうございました。
修士論文提出を追え、私は4月から社会人になります。
山内研での学びを糧に学習環境デザインのお仕事に携わります。
中等教育から高等教育にフィールドを移してまた勉強したいと思っています。
ブログに登場するのは最後となりますが、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
2011.02.11
みなさま、こんにちは。修士2年の安斎勇樹と申します。
早いものでもう2月...。今週から、今年度の最後のテーマとして、メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】をお送りします!
昨年度は、身体がバラバラになりそうなほど様々なことにトライした「実践の1年」でしたが、今年度は「修士研究」にとことん注力した「研究の1年」でした。
春〜夏にかけては研究計画や実験計画の決定、プレ実践を何度も重ねながら仮説の検証と分析方法の開発をしました。秋は初めてのJSET学会発表、そして本実践。冬にはデータ分析と論文執筆...と、まさに修士研究に全力を注いだ1年間でした。というわけで、1年間の修士研究のプロセスを振り返り、そこから僕が学んだことを3つ、まとめたいと思います。
(1)研究に時間をかける
一つ目は、研究に十分な時間をかけることの重要性です。
「時間をかけろ」というと、生産性や効率主義に反する古くさい根性主義に聞こえるかもしれませんが笑、それでもやはり、研究活動においては一定の時間を投資することが大切なのだと強く実感しました。
しかし僕の場合、昨年度までは常に複数の実践プロジェクトを抱えており、「そもそもじっくり考える時間が取れない」という致命的な状況でした...。そうすると、スキマ時間を使って作業をするしかないので、どうしても表面的で浅いアウトプットになりがちです。
そこで、今年度は「どんな魅力的な仕事であっても、実践のお誘いは断る!」というのを年間目標に掲げ笑、研究に無関係な実践は極力封印をしました。実際にかなりの数のオファーを断ることになり、とても心苦しい我慢の1年となりました...(笑)
しかしそのおかげで、うんうんと唸りながら一つのことをじっくり考え抜いた先に、ようやく新しい小さな発見が見えてくる...。そして、そうした発見の蓄積が研究を支えていくということを体感することが出来ました。
今後も、新しいコトへのチャレンジや可能性の拡がりは大切にしながらも、最低限研究に投資するまとまった時間は確保しなければ!と思ってます。
(2)精緻な視点で実践を眺める
二つ目は、精緻な視点で実践を分析することの重要性です。
僕はもともと実践家だったので、つい「子どもの目が輝いていた」とか「面白い作品が沢山生まれた」とか、ワークショップで起きているプロセスを"ざっくり"と捉えがちです。
しかし研究をするからには、具体的に学習者にどのような変容が起きていたのか?どのような実践上の仕掛けが効いてアイデアが誘発されたのか?良いアイデアが出たグループとそうでないグループの違いは?うまくいったグループはどのような発話のプロセスをしていたのか?...など、より精緻に現場で起きていることを見つめなくてはいけません。
修士研究では、44名を対象にプレ実践を13回、101名を対象に8回の本実践を行い、総計40を超えるグループの発話データを全て書き起こし、発話がどのように連鎖しながらアイデアが生成されていったのか、そのコラボレーションのプロセスの分析を行いました。分析方法に関しては、石橋健太郎さんに何度も相談をさせて頂き、認知心理学の精緻な視点を学ばせて頂きました。
これだけ細かく丁寧にワークショップを眺めるのは初めての経験で、数え切れないほどの発見がありました。実践のときには何気なく見ていた現象であっても、それをより精緻な視点で眺め捉え直すことによって、はじめてその本質が見えてくることを実感しました。
(3)人とのつながり
最後に、人とのつながりの大切さです。
言うまでもなく、修士研究は1人の力では成し得ないものでした。プレ実践や本実践のワークショップに参加して下さった大学生の皆さん、それらの実践の広報に協力して下さった皆さん(twitterでは何百ものRTを頂きました!)、実践に協力して下さった皆さん、そして大学院のゼミや他研究室の皆さん。多くの人とのコラボレーションや支援があってこそやってこれたのだなぁーと、振り返って強く思います。ご協力下さった皆さんには大変感謝しています。
大学院での研究は個人プロジェクトだと思いがちですが、今後も人とのつながりと大切にしながら、多くの人とコラボレーションしながら良い研究をしていきたいと思います。
※参考
これから修士研究をする人のために、今年度のスケジュールも掲載しておきます!
4月:研究計画の決定 / 研究構想発表会(オフライン発表会)
5月:プレ実践開始 / 複数の仮説を検証
6月:プレ実践 / 仮説(実験計画)の決定
7月:プレ実践 / 中間発表会
8月:プレ実践 / 分析方法の開発
9月:本実践開始 / 学会発表
10月〜11月:本実践 / データの分析
12月〜1月:データの分析 / 執筆
2月:修士論文審査 / 博士課程入試
[安斎勇樹]