2011.02.11
みなさま、こんにちは。修士2年の安斎勇樹と申します。
早いものでもう2月...。今週から、今年度の最後のテーマとして、メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】をお送りします!
昨年度は、身体がバラバラになりそうなほど様々なことにトライした「実践の1年」でしたが、今年度は「修士研究」にとことん注力した「研究の1年」でした。
春〜夏にかけては研究計画や実験計画の決定、プレ実践を何度も重ねながら仮説の検証と分析方法の開発をしました。秋は初めてのJSET学会発表、そして本実践。冬にはデータ分析と論文執筆...と、まさに修士研究に全力を注いだ1年間でした。というわけで、1年間の修士研究のプロセスを振り返り、そこから僕が学んだことを3つ、まとめたいと思います。
(1)研究に時間をかける
一つ目は、研究に十分な時間をかけることの重要性です。
「時間をかけろ」というと、生産性や効率主義に反する古くさい根性主義に聞こえるかもしれませんが笑、それでもやはり、研究活動においては一定の時間を投資することが大切なのだと強く実感しました。
しかし僕の場合、昨年度までは常に複数の実践プロジェクトを抱えており、「そもそもじっくり考える時間が取れない」という致命的な状況でした...。そうすると、スキマ時間を使って作業をするしかないので、どうしても表面的で浅いアウトプットになりがちです。
そこで、今年度は「どんな魅力的な仕事であっても、実践のお誘いは断る!」というのを年間目標に掲げ笑、研究に無関係な実践は極力封印をしました。実際にかなりの数のオファーを断ることになり、とても心苦しい我慢の1年となりました...(笑)
しかしそのおかげで、うんうんと唸りながら一つのことをじっくり考え抜いた先に、ようやく新しい小さな発見が見えてくる...。そして、そうした発見の蓄積が研究を支えていくということを体感することが出来ました。
今後も、新しいコトへのチャレンジや可能性の拡がりは大切にしながらも、最低限研究に投資するまとまった時間は確保しなければ!と思ってます。
(2)精緻な視点で実践を眺める
二つ目は、精緻な視点で実践を分析することの重要性です。
僕はもともと実践家だったので、つい「子どもの目が輝いていた」とか「面白い作品が沢山生まれた」とか、ワークショップで起きているプロセスを"ざっくり"と捉えがちです。
しかし研究をするからには、具体的に学習者にどのような変容が起きていたのか?どのような実践上の仕掛けが効いてアイデアが誘発されたのか?良いアイデアが出たグループとそうでないグループの違いは?うまくいったグループはどのような発話のプロセスをしていたのか?...など、より精緻に現場で起きていることを見つめなくてはいけません。
修士研究では、44名を対象にプレ実践を13回、101名を対象に8回の本実践を行い、総計40を超えるグループの発話データを全て書き起こし、発話がどのように連鎖しながらアイデアが生成されていったのか、そのコラボレーションのプロセスの分析を行いました。分析方法に関しては、石橋健太郎さんに何度も相談をさせて頂き、認知心理学の精緻な視点を学ばせて頂きました。
これだけ細かく丁寧にワークショップを眺めるのは初めての経験で、数え切れないほどの発見がありました。実践のときには何気なく見ていた現象であっても、それをより精緻な視点で眺め捉え直すことによって、はじめてその本質が見えてくることを実感しました。
(3)人とのつながり
最後に、人とのつながりの大切さです。
言うまでもなく、修士研究は1人の力では成し得ないものでした。プレ実践や本実践のワークショップに参加して下さった大学生の皆さん、それらの実践の広報に協力して下さった皆さん(twitterでは何百ものRTを頂きました!)、実践に協力して下さった皆さん、そして大学院のゼミや他研究室の皆さん。多くの人とのコラボレーションや支援があってこそやってこれたのだなぁーと、振り返って強く思います。ご協力下さった皆さんには大変感謝しています。
大学院での研究は個人プロジェクトだと思いがちですが、今後も人とのつながりと大切にしながら、多くの人とコラボレーションしながら良い研究をしていきたいと思います。
※参考
これから修士研究をする人のために、今年度のスケジュールも掲載しておきます!
4月:研究計画の決定 / 研究構想発表会(オフライン発表会)
5月:プレ実践開始 / 複数の仮説を検証
6月:プレ実践 / 仮説(実験計画)の決定
7月:プレ実践 / 中間発表会
8月:プレ実践 / 分析方法の開発
9月:本実践開始 / 学会発表
10月〜11月:本実践 / データの分析
12月〜1月:データの分析 / 執筆
2月:修士論文審査 / 博士課程入試
[安斎勇樹]