2011.03.03
みなさま,こんにちは。
メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】,第4回は修士2年の伏木田がお送りいたします。
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1年間で1番変わったこと。
それは,「研究に対する心構え」だと思っています。
それまでの自分は,ほんとうに人に甘えていて,誰かがやってくれればそれでいいと,自分の研究を傍観しているようなところがありました。
与えられた課題を淡々とこなすことが好きで,その課題が誰に何をもたらすのかを考えることに苦痛を感じていました。
人の役に立つ研究をしたいと強く思いながらも,そのために自分がすべきことから目を背けて過ごしていました。
そういうふわふわとした考えでは駄目なんだと,少しずつじわじわと気づくことができた。
それが今年1年の大きな収穫だったと感じています。
研究をはじめるにあたっては,「社会的背景」と「理論的背景」をじっくり見極めることが求められます。
なぜその研究が社会に必要なのか,これまでの研究にはない新規性はどこにあるのか。
自分の知りたいことは何で,それを知るためにはどのような方法をとる必要があるのか。
修士研究において最も大切だと感じたのは,「リサーチ・クエスチョン」を立てることでした。
私の場合,以前から教員と学生,学生と学生が関わり合う中で学ぶ場に興味がありましたが,文系の学部ゼミナールをテーマとして選択するまでには1年近くを要しました。
その後,学部ゼミナールについて知りたいことをあらゆる視点から書き出し,徐々に焦点を絞っていくのに数か月。
先行研究や関連する情報と照らし合わせ,学部ゼミナールの何が明らかにされていないのかを焦点化するまでにさらに数か月。
その間,文献のレビューだけでは具体的な課題が見えてこなかったこともあり,複数の教員の方々にお願いをして,いくつかのゼミナールに参加しました。
自分が選んだ学部ゼミナールというテーマに関して,頭の中にある知識と,実際の現場から得られた知見とを織り交ぜるプロセスは,楽しくもあり辛くもありました。
「リサーチ・クエスチョン」がようやく見えてきたころ,研究の「目的」を具体的に描けるようになりました。
そしてそれに沿う形で,研究の「方法」も少しずつ決まり始めました。
学部ゼミナールに参加している学生を対象に調査を行うため,学部ゼミナールにおける学びを構成している概念を操作的に定義し,その概念を測定するための尺度を作成し,質問紙を構成する。
これら一連の作業は,どこかで常に「仮説」を意識しながら行わなければならず,徹底的に自分の研究と向き合い続けることを強いられました。
「背景」,「目的」,「方法」,この3つが一直線に結ばれているか。
そして,得られた「結果」の分析とその「考察」は矛盾を含んでいないか。
最終的な「結論」は,「リサーチ・クエスチョン」の答えとしてふさわしいか。
1年間をかけて取り組んだ研究を修士論文にまとめる際は,この3点を強く意識させられました。
こうしてできあがった修士論文は,大きな課題とたくさんの可能性を含んでいます。
"もっとこうすれば...","もしかしたら別の方法も..."という前へ前へと進む気持ちをバネに,これからも誰かに寄り添えるような研究を続けていきたいと思います。
そして,そこから生まれた成果を本や論文という協力者へのラブレターとして,多くの方に届けていくことが望みです。
[修士2年 伏木田稚子]