2012.10.26
みなさま、こんにちは。
「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、最終回はD3の池尻良平が担当します。
よく研究の要は良いリサーチ・クエスチョンを作ることだと言われますが、そのためには「良い」先行研究を「大量」に読むことが大事です。
ところが残念なことに、先行研究の調査に割ける時間はそれほど長くはありません。例えばあなたが学部3年生、もしくは修士1年生で卒論や修論を書くとしたら、おそらく先行研究の調査に時間を割けられるのは2年間のうち1年間程でしょう。そのうち1/3くらいは遊んだり他の用事があったりするのが実情だと思うので、実質先行研究の調査に費やせるのは8ヶ月くらいだと思います。仮に1冊の日本語の本を読むのに3日、1本の日本語論文を読むのに1/3日、1冊の英語の本を読むのに2週間、1本の英語論文を読むのに1日かかるとします。そうすると、大量にある先行研究のうち、8ヶ月で調べられる先行研究は例えば以下の分量「しか」ないのです。
・英語の本約6冊(3ヶ月)、日本語の本約20冊(2ヶ月)、日本語の論文約90本(1ヶ月)、英語の論文約60本(2ヶ月)
つまり、先行研究の調査で読める文献には限りがあり、大量にある文献から「良い」先行研究を「選べるか」が大事だということです。たとえ仮定した読書スピードよりも早く、より努力家で熱心に調査を進めたとしても、良い論文に出会えないために残念ながら鋭いリサーチ・クエスチョンが出ないこともあるのです。
日本語・英語の文献の場合は、研究室の本棚や教授に教えてもらうことで、「教科書」や「著名な本」をある程度知ることは可能です。ところが、論文はCiNiiやGoogle Scholarで検索すると大量に存在するため、ここで良い論文に出会えないことが多々あります。
そこで役立つのがレビュー論文です。レビュー論文とは数多くの論文を整理した上で各々の論文を紹介しているもので、その領域の近年の動向を1本の論文で吸収できるお得な論文です。つまり、その領域で重要な論文を幅広く知ることができると同時に、自分が読みたい論文を選択することもできるのです。さらに、著者の主観が多少は入るものの、レビュー論文で挙げられている論文は、取り上げるに値する良い論文が選定されています。そのため、参考文献だけザーッと見て関心の近い論文を選ぶだけでも、質の良い論文が手に入ります。
では、レビュー論文にアクセスするにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは僕が普段レビュー論文にアクセスするためによく使っているサイトを2つ紹介します。
(1)博士論文書誌データベース
1つ目のオススメサイトは博士論文書誌データベースです。当然のことですが、博士論文は非常に高い水準をクリアした良い論文です。さらに(僕はまさに今取り組んでいるのでよくわかるのですが)、博士論文ではきっちりとその領域の先行研究をレビューしないといけません。そのため、博士論文は一種のレビュー論文の役割も持っているのです。たとえそれがやや古いものであっても、その研究者は博士号を持っているきちんとした研究者であるため、その人の最新の論文や著書を読めば近年の動向やその領域で注目されている良い論文にアクセスすることができるでしょう。試しに自分の研究領域のワードをちょっと打ってみて検索してみて下さい。きっと良い論文に出会えると思います。
(2)Educational Psychology Review(SpringerLink)
もう1つのオススメサイトは、レビュー論文を扱っている海外誌にアクセスすることです。例えば教育が専門の僕の場合は、SpringerLink のEducational Psychology Reviewの検索サイトをよく使います。試しに自分の研究関心に合った論文を開いてもらえればわかると思うのですが、この海外誌は参考文献が非常に多く、その領域の海外の先行研究が簡潔に整理されています。英語の論文を読む際の1本目としてぜひ利用してみて下さい。
先行研究の読み込みは自分の研究の基礎となる部分です。これから論文提出シーズン、院試シーズンが来るということで先行研究を調べている人も多いと思いますが、ぜひこれらのWebサイトを利用して良いレビュー論文を見つけて下さい!
[池尻 良平]
2012.10.23
10月19日(金)にミネソタ州高等教育局が、進展著しいMOOC(大規模オープンオンラインコース)の一つであるCourseraに対し、州法を根拠に、州への登録と登録料の支払いを求める意向を表明しました。
この動きはネット上で批判を受け、その後ブログで事実上の撤回をしています。
Facing Backlash, Minnesota Decides to Allow Free Online Courses After All
この問題は頭の固い役人がベンチャー企業を圧迫するという図式でとらえられがちですが、もう少し事態は複雑です。根拠となった州法は20年前に作られていますが、オンライン営利大学の参入によって授業の質保証が難しくなり、学習者保護のために策定されたと考えられます。アメリカは日本と違い、大学の設置や運用に関して教育省が直接的なコントロールを行わず、民間認証団体が授業やカリキュラムの質を保証する仕組みになっています。実質的な授業をともなわず学位を発行するディプロマミルが発生しやすく、特にオンライン教育サービスはこの問題の危険性が高かったという事情があります。
現在のCourseraは学位授与を目的としたものではなく、かつ無料のサービスですので、この法令をあてはめようとするのは無理があるのですが、今後MOOCのコース修了証をもって大学の単位を与えるという動きがでてくるのは間違いないと思いますので、質保証にからむ議論は避けられないと思います。
現時点においては、MOOCのビジネスモデルとして、一流大学の授業を理解できる世界各国の優秀な学生をテストで識別し、企業に推薦するマッチングモデルが有望視されているようです。しかし、このモデルに従うと、できない学生を教育サービスとして引き上げるためにコストをかけることは意味がないことになります。
情報通信技術を利用した学習は変化が激しく、制度や運用を常に見直していく必要があります。今回の件も、根本的には20年前の法律を見直すべきでしょう。制度の見直しが遅れていることについては日本も他の国を笑える状況ではありません。
ただし、今回の騒動は単純に制度を変えればよいというものではなく、MOOCの教育サービスとしての位置づけが曖昧であることも要因になっているように思います。MOOCがバブルで終わるのか、それとも、破壊的な教育イノベーションになるのかは、今後1、2年で見えてくるのではないかと考えています。
【山内 祐平】
2012.10.19
みなさま、こんにちは。
「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、第10回目はD2の伏木田稚子が担当します。
深まりゆく秋、みなさまはどんな風に楽しまれていますか?
わたしは、秋の夜長にぬくぬくと暖をとりながら、じっくりゆっくり本を読みたくなります。
読みたい本が手元にないときや、そのときの気分に合った本を読みたいときは、お気に入りの"古本屋さん"や大きな"本屋さん"に行きます。
新しい本との出会い、それまで知らなかった作者との出会いに、自然と心が弾むからです。
その、"なんとなくわくわくする楽しい出会い"は、普段の読書だけではなく、研究に関連のある文献を読む際にもあてはまると感じています。
研究を進めるプロセスにおいて、「文献を読む」ことはとても大切なことです。
あるときは、自分の中にふっとひらめきが生まれるための準備として。
またあるときは、自分の問題意識を専門的な用語で表現したいという必要性にかられて。
状況は人それぞれあると思いますが、いずれにしても、そのときの自分に合った文献との出会いは、前へ前へと研究を推し進めてくれるように感じています。
だからこそ、そんなとびきりの文献と出会うために、日頃からふらふらとウェブサイトを渡り歩くようにしています。
そこで今回は、わたしにとってのお気に入りの"古本屋さん"であり、大きな"本屋さん"のような存在であるサイトをご紹介したいと思います。
Springerは、1842年にベルリンに設立されて以来、世界トップレベルの科学出版社として多くの研究者に愛され続けています。
具体的には、科学・技術・医学などの研究分野において、専門的な書籍やハンドブック、学術ジャーナルなどを出版しています。
Springer Linkは、Springerが情報ツールとして提供しているデータベースのひとつで、出版物のオンラインコレクションです。
分野ごとに閲覧することが可能で、アルファベット順に並べられた分野を眺めているだけでわくわくします。
国際的に第一線で活躍する研究者たちの知見に触れたいと思ったら、まずは興味のある分野をクリックしてみましょう。
出版物の種類や、さらに詳細な学問分野の区分ごとに、関心をもった記事をオンラインで読むことができます。
こちらも同じく、Spiringerが提供しているデータベースのひとつで、興味のある研究分野や関連分野の研究者をみつけることができます。
とてもうれしいのは、研究分野や研究者の所属機関、出版物名、出版社、出版年など、いろいろなキーワードを検索にかけられることです。
そして、このサイトの最大の魅力は、検索の結果ヒットした研究者が世界地図にマッピングされることではないでしょうか。
例えば、Educationという分野を選択すると、Higher EducationやLearning Assessmentなどのキーワードによる絞り込みができます。
そして、わたしの専門分野であるHigher Educationを選択すると、その分野の論文や研究者の数を、数値だけでなく人の形のアイコンで視覚的に把握することができます。
わたしもこの面白さにはまり始めたばかりなので、これからもっと上手な使い方を探していきたいと思っています。
古き良き研究との出会い、新しくて勢いのある研究との出会い、そしてそうした研究に熱心に取り組んでいる研究者との出会い。
そうしたうれしい出会いを、ぜひこの2つのサイトを使って多くの人に実感していただけるといいなと思い、おすすめさせていただきました。
【伏木田 稚子】
2012.10.11
D2の安斎勇樹です。研究と一口にいっても、修士論文を一つ書き上げるまでには様々な課題を乗り越えなければいけません。先行研究の調査は当然として、最新の技術や現場の動向についても把握していなければいけないし、その上で、過去に誰も取り組んでいない研究のアイデアをみつけなければいけません。そのような課題の解決に役立つウェブサイトは、これまで修士課程のみなさんが紹介してくれました。
ところが、修士論文を書き終えてみると、論文に取り組んでいたときとはまた違った問いに頭を悩ませることになります。
ー自分は、いったいなんのために研究をしているのだろうか?
ー必死に書き上げたこの論文は、誰に、どのように役に立つのだろうか?
ー社会の中で、自分は「何者」としてこれから生きていくのだろうか?
つまり、研究者として(あるいは修士卒の社会人として)、キャリアをどのようにデザインしていくべきかという課題です。キャリアは偶然に左右されるとはいえ、定期的に立ち止まって自身のアイデンティティを見つめ直し、主体的にキャリアを築いていく意識をもつことはとても大切です。
そんな時に役に立つのが、自分よりも遥か先を走っている研究者たちの「物語」ではないでしょうか。
1)TED: Ideas worth spreading
http://www.ted.com/
言わずと知れた「TED」では、様々な分野の著名人のプレゼンテーションを視聴することが出来ますが、研究者も数多くエントリーしているのをご存知でしょうか。
例えば、心理学者のチクセントミハイのプレゼンテーションでは、第二次世界大戦中の幼少時から振り返り、心理学を学ぶことになった経緯、現在の研究内容や今後のビジョンについて幅広く語られています。
特に僕が気に入っているのは発達研究者のロイのプレゼンテーションです。ロイは、息子が生まれてからの3年間、自宅の全ての部屋にカメラとマイクを取り付け、9万時間の動画と14万時間の音声からなる記録を収集し、周囲の支援を得ながら言語的に発達していく過程を詳細に分析しています。ロイの経歴的な物語はこのプレゼンテーションからはわかりませんが、研究にかける覚悟と情熱、さらには膨大なデータを魅力的かつわかりやすく可視化する技術など、研究者にとって大切な姿勢を多く学ぶことが出来ます。
2)研究者の仕事術 -実践と研究の両輪を回す実践的研究者の仕事のつくり方-
http://amphibia.jp/
また、手前味噌になりますが笑、ウェブマガジン「研究者の仕事術」では、実践志向の研究者たちがいかにして研究と実践を連携させているのか、その思想や技法について、また、そこに至るまでの経緯について、インタビュー記事によって紹介しています。
ただ論文を書き続けるだけでなく、研究と社会をどのように接続させ、価値を生み出していけばよいのか、沢山のヒントが詰まっています。
山内先生が指摘している通り、他人の物語を鵜呑みにし、それによって自分の可能性に制限をかけてしまっては本末転倒ですが、自分のキャリアを相対化し、自ら人生の舵をきっていくためのヒントとしては、先人の物語は大いに役に立ちます。
研究をしていると目の前のタスクに忙殺されがちですが、ちょっと一息ついて、先人たちの物語を楽しみ、自分を見つめ直す時間をとってみるのも良いかもしれません。
[安斎 勇樹]
2012.10.09
知性や才能に関する信念体系は、学習の成果に大きな影響を与える要因のひとつです。スタンフォード大学教授のCarol Dweckが提唱している「マインドセット」はその代表的な例だといえるでしょう。彼女は、著書の中で知性や才能は生まれつき決まると考える固定マインドセット(Fixed Mindset) と知性や才能は変えることができると捉える成長マインドセット (Growth Mindset)があると述べています。固定マインドセットを持っている人は、自分の才能を証明しようと学習し、失敗を恐れます。批判されると攻撃と感じ、他者の成功を自分に対する脅威とみなす傾向があります。成長マインドセットを持っている人は、進んで挑戦し、批判や他者の成功も成長の機会だととらえます。
成長マインドセットを持ちたいと願っても、どうすればいいかわからないという人も多いと思います。下記のアドレスにはマインドセットを変えるための方法が記載されていますが、その中でも重要と思われるモデリングの段階を紹介したいと思います。ここには、どういった考え方をすればよいのかというポイントがまとめてあります。
http://www.thoughtfullearning.com/blogpost/get-smart-become-talented
以下のように考えない ←→ 以下のように考えるようにする
私は馬鹿だ。 私には何が欠けているのだろうか?
私はすごい。 現在のところ正しいやり方をしているようだ。
数学ができない。 今から数学について訓練しよう。
きつすぎる。 もうすこし時間をとった方がよさそうだ。
彼女はできすぎる。むかつく。 彼女がやっている方法を試してみよう。
今のままで十分。 改善のための興味深いアイデアだ。
ここにあげられているのは信念が思考としてあらわれたものであり、思考を変えるだけで信念がすぐ変わるわけではありません。ただ、このような考え方をして今までよりうまくいくケースが増えてくると、それが自信につながり、信念体系が徐々に変わってきます。この過程では、まわりの人たちが学習者をほめてあげることも重要です。魔法のような方法ではありませんが、試してみる価値はあると思います。
【山内祐平】
2012.10.06
こんにちは.M1の吉川遼です.
10月に入り,すっかり大学構内も秋めいてきました.
10月4日から冬学期ゼミもスタートし,来年度から入学されるM0の方々もお越しになり,いつもよりにぎやかなゼミとなりました.またゼミ後には歓迎会も開かれ,M0の方々の多様なバックグラウンドと興味深い研究計画を聴かせて頂きながら,交流を深めることができました.
早くも半年が経過して後輩が入ってきたことに驚きと焦燥感を覚えつつも,残り1年半の短い修士生活を有意義なものにできたらと思っています.
さて「研究に役立つウェブサイト」シリーズ第8回目はM1の吉川遼が担当いたします.
● Keyword
背景情報,開発研究,デジタル学習,モバイルラーニング,Android
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● 技術系ニュースサイト
現在僕は「物事の背景情報をどう可視化し,学習に役立てるか」という切り口から研究を進めているのですが,「物事の背景情報」を使いつつ「それを学習支援に役立てられる」ような「新規性を持った学際的なアイデア」というのはなかなか出てこず,悶々とした日々を送っています.
そのため,普段から頭の中でぼんやりと「こんなシステムでこんな背景が可視化できればいいなあ」と考えつつ,論文や記事やWebサイト,ニュースなどありとあらゆるものを眺めています.
例えば,RSSリーダーを使って,
◦GIGAZINE
http://gigazine.net/
◦ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/
◦@IT
http://www.atmarkit.co.jp/index.html
◦Engadget Japanese
http://japanese.engadget.com/
◦CNET Japan
http://japan.cnet.com/
など,技術系で面白いものを取り上げているニュースサイトの記事をちょっとした空き時間が出来た時にRSSリーダーでざっと眺め,「この技術をこういう場面で使えばどんな学びが学習者に生まれるかな」ということをぼんやりと考えています.
● 情報収集
情報収集にはRSSリーダーの他,Gunosy(キュレーション系メールマガジン),Tumblrなどを主に使っています.このうち,Gunosyは自分のTwitterやFacebookアカウントを分析し,興味にあった話題やニュースを毎朝メールマガジンとして送ってきてくれるサービスなのでとても重宝しています.
◦Gunosy(グノシー)
http://gunosy.com/
◦Tumblr
https://www.tumblr.com/
● 教育におけるICT活用実態・事例
また,前々回の記事で梶浦さんも取り上げていましたが,国内外の教育におけるICT活用の実態や事例に関しては,以下のWebサイトを参考にしています.
◦SMATOOS
http://jp.smatoos.com/
◦カレントアウェアネス・ポータル
http://current.ndl.go.jp/
◦リセマム
http://resemom.jp/
SMATOOSは国内外のデジタル教育に関するニュースサイトで,子ども向けのアプリや大人向けアプリ,などにカテゴライズしてモバイルアプリのレビューをしているので,他の一般的なアプリレビューサイトとは異なり,教育の側面からアプリの有用性を知ることができます.
● アプリ開発
開発研究,ということで少しお話させて頂くと,以前学部時代にAndroidでOpenCV(画像認識系のライブラリ)を組みこんで博物館向けの背景情報提示アプリを開発していた際には,以下のコーディング開発の連載解説記事を参考に,また細かい所については個人ブログなども参考にしつつ,開発を行っていました.
◦Gihyo.jp DEVELOPER STAGE
http://gihyo.jp/dev
◦Androidで動く携帯Javaアプリ開発入門 - @IT
http://www.atmarkit.co.jp/fsmart/index/android.html
@ITの「Androidで動く携帯Javaアプリ開発入門」では,Android OS向けアプリ開発に関して基礎的なところから解説記事を連載しているので,何かまずアプリを作ってみたい,という方はこちらも参考になるかもしれません.
OpenCVライブラリを使って,Android端末で画像認識しようという方は,こちらの記事が参考になるかと思います.
◦AndroidとOpenCVで試す特定物体認識 - 遙かへのスピードランナー
http://d.hatena.ne.jp/thorikawa/20110612/p1
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紹介させていただいた上記のWebサイトはかなり技術系に偏っていて,教育系に関してはまだまだ追いかけることができていないのでお恥ずかしい限りですが,TwitterやFacebookなどでご意見頂けると幸いです.
来週はD2の安斎さんによる「研究に役立つウェブサイト」です.お楽しみに.
【吉川遼】
2012.09.26
こんにちは。
8月から始まりました、研究に役立つウェブサイトシリーズ。
第7回目は、M1の吉川久美子が担当させていただきます。
私の研究対象は"造形ワークショップ"です。
今回は、私が造形ワークショップの情報収集等の際に参照しているサイトをご紹介させていただきます。
▼
1.アーティストこども
http://artists-children.net/
トヨタ自動車株式会社とAISプランニングにより運営されています。
子ども向けアートイベントの情報や、学校などでアーティストにより行われる
ワークショップの全国各地の情報を提供してくれています。
こちらのサイトの良いところは、イベントの情報掲載だけでなく、①こども向けワークショップなどを開催したことのある国内外の団体(コーディネータ一)、アーティストの一覧リストがあること、②そうした経験者(教師、アーティスト、コーディネータ)の経験談を掲載してくれているところにあると思います。メールマガジンも配信してくれており、私も読んでいます。
「アーティストに学校に来てワークショップを行って欲しい」、「全国でどのような活動が行われているのか知りたい」という方にオススメです。
2.武蔵野美術大学「造形ファイル」
http://zokeifile.musabi.ac.jp/
武蔵野美術大学通信教育課程の学生の補助教材として開発されたようです。
テキストと動画、写真により、素材、道具、技法に関する知識や用語などを
わかりやすく解説してくれています。PDFとして出力することも可能です。
こちらのサイトの良いところは、①動画で制作技法や道具の使い方を教えてくれる、②素材の歴史が解る、③例えば日本画を描きたいと思った時に、どのような用具を揃えればいいのかが解るところにあると思います。ケント紙に鉛筆で描いたらこんな表情になるという作例も掲載されているのもおもしろいかと思います。
「自分で何か制作をはじめたい」、「造形ワークショップに新しい技法を取り入れたい」、「参加者に素材や道具の説明をどうしようか悩む」という方にオススメです。
3.「ネットTAM」
http://www.nettam.jp/
トヨタ自動車株式会社と企業メセナ協議会により運営されている
アートマネジメント(アートと法律、助成金に関する情報など)に関する総合情報サイトです。
先ほどご紹介した子ども向けの情報に特化した「アーティストこども」より、
さらに幅広くアートイベント等の情報を検索することができます。
こちらのサイトの良いところは、①アートマネジメントを学びたいと思った際の関連サイトや書籍を紹介してくれていること、②芸術分野の求人情報を提供してくれていることころにあると思います。
「芸術文化活動の支援・運営に関する情報を知りたい」、「実際にアルバイトなどで関われる現場を探したい」などという方にオススメです。
以上3つのサイトを簡単にご紹介させていただきましたが、
まだまだ私自身、研究に役立つウェブサイトを見つけている最中です。
今後、さまざまなサイトと出会いながら、研究の刺激やアイディアをもらいつつ、
日々研究に取り組んでいきたいと思っています。
【吉川久美子】
2012.09.20
こんにちは、M1の梶浦美咲です。
先日、長崎で開催された日本教育工学会に参加してきました。
沢山の研究発表を聞けたのはもちろん、多くの研究者の方々と知り合うことができ、有意義な時間を過ごせました。学会に参加し、情報収集するのも大切だと思います。
さて、M2の方々のお役立ちウェブサイト紹介が終わりましたので、続く第6回目から3回分はM1が担当させて頂きます。
私は現在「初年次大学生の学習スキルを支援するシステムの開発研究」に取り組んでいます。そこで、研究の対象としたい初年次大学生の現状を見ようと思い、先日大妻女子大学の学生にインタビューに行って来ました。
現場の声を聞きに行くことも大切ですが、ベネッセが実施している大学生を対象とした調査の結果も大学生の現状を知る上で非常に役立ちます。
***
1.ベネッセ教育研究開発センター「大学データブック2012」
http://benesse.jp/berd/center/open/report/dai_databook/2012/index.html
実際の大学生の生活や学習時間、就職活動等、現代の大学生像を浮き彫りにしています。大学生を対象とした研究をしない方でも、大学関係者であればデータを眺めているだけでも面白いかと思います。
その他ベネッセ教育研究開発センターでは大学生に限らず様々な調査・研究データを一般公開しています。学習者の実態を把握する上で参考になるのではないでしょうか。
***
現状の大学生を知ることも大切ですが、権威のある行政機関が発信する情報も重要です。
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2.文部科学省
http://www.mext.go.jp/
言わずと知れた文科省のウェブサイトですが、日本の教育における現状や問題点、方向性などを知ることができるという点で重要なサイトです。
特に私が現在着目しているページがここ(「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」(審議まとめ) )です。
現代の大学生において、学修時間が不足していることが問題視されており、授業の事前準備、授業後の展開等の主体的な学びの重要性から、質を伴った学修時間の確保を重要視していることが分かります。
***
また、私はICTを活用した教育にも関心があります。
ICT教育の最新情報を発信しているサイトは沢山存在するのですが、その中でも私のお気に入りは「リセマム」というサイトです。
***
3.リセマム
http://resemom.jp/
教育ICTに関することのみならず教育や生活に関するニュースを幅広く発信しているサイトです。
電子黒板やタブレットPCの普及状況等初等中等教育に関するニュースも豊富ですし、高等教育分野においても、eラーニングやオンデマンド授業等、様々な情報が提供されています。「アプリ」という項目もあるので、教育系アプリ開発をする方は、このサイトで最新の学習アプリ情報を得ることもできます。
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その他、小中学校におけるデジタル教科書・教材の普及にご興味のある方は、DiTT(デジタル教科書教材協議会)のページをチェックすると良いかと思います。
***
4.SocialLearning.jp
http://sociallearning.jp/
このサイトでは、海外のソーシャルラーニングに関する記事を邦訳して簡潔に紹介してくれています。
海外の大学に関する記事も多く取り上げられています。海外のICTを活用した教育動向に関心のある方はこちらのサイトも確認すると良いのではないでしょうか。
***
最後におまけです。
私は現在Androidアプリ開発の勉強をしているのですが、プログラミングができない方でも容易にAndroidアプリが開発できてしまうサービスが存在するので紹介しておきます。
***
5.MIT App Inventor
http://appinventor.mit.edu/
マサチューセッツ工科大学(MIT)が提供しているコーディング不要のAndroidアプリ開発ツールです。
本来はプログラムの作り方の基礎を学習するためのツールなのですが、部品を組み合わせていくだけで誰でも手軽にAndroidアプリが作れるようになる、ということで関連書まで出ているようです。
***
以上で私のウェブサイト紹介は終わらせて頂きます。
上記以外にも、M2の早川さんも記事に書いていましたが、Twitter等のSNSを利用して情報収集するのも良いかと思います。
まだまだ私の知らない有益なサイトが沢山ありそうなので、今後も情報収集していこうと思います。
【梶浦美咲】
2012.09.19
Harvard Business Reviewのブログで面白い記事を見つけました。
Y世代(現在23歳から37歳)の標語「好きなことをしよう (follow your passion)」の落とし穴:好きになったり楽しさを感じられるまでには時間がかかり、仕事を選ぶ基準としては機能しない
http://blogs.hbr.org/cs/2012/09/solving_gen_ys_passion_problem.html
世代論の妥当性はともかくとしても、「意識が高い」学生と話していると情熱がなければならないという強迫観念を持っているのではないかと感じることはあります。
この記事で面白いのは、後半にスティーブ・ジョブスについて触れているところです。ジョブスは有名なスタンフォード大学でのスピーチで仕事に情熱を持つことの重要性を訴えていますが、伝記が示すようにジョブスの情熱の対象は東洋の神秘主義など様々に移り変わっています。現実に起こったことは複雑で、単純な「お話」に還元できないものですが、ジョブスをカリスマとしてあおぐY世代がこのスピーチに影響されている可能性はあるかもしれません。
スピーチなどの「物語」は人間に不可欠なコミュニケーション様式であり、出来事の意味を人に語り共有することは価値あることです。ただし、自分の人生に予定枠として「物語」をあてはめることの危険性については意識した方がよいと思います。
TEDなどのプラットフォームによって、物語は流通するようになりました。それに刺激を受けることはよいことですが、物語として単純化された「過去の」情熱を、今から始まる「未来の」選択の前提にすると、かえって可能性を狭めてしまうのではないでしょうか。
今の自分が物語に出てくる人のようでなくても、あせることなく目の前にある現実の中からよりよい選択を積み重ねていけば、振り返ったときにそこに物語ができているかもしれません。
物語の「予定枠化」は若い人たちだけのことではありません。時代が激しく移り変わる中で、自分を明治維新の英雄になぞらえる中高年もたくさんいます。誰に迷惑をかけているわけでもないのですが、「自分は坂本龍馬のように生きるのだから○○しなければいけないんだ」というような話を聞くと、「そういう枠を捨てて考えたら違う未来が待っているかもしれないのに」と残念に感じることがあります。
物語から学びながら、物語にしばられない。ーそういう生き方は意外に難しいのかもしれません。
【山内 祐平】
2012.09.13
みなさまこんにちは。M2の山田小百合です。
【研究に役立つウェブサイト】第5回目を担当させていただきます。
...ということで、何を紹介したらいいかなぁと考えていたのですが...
最近、「特別支援教育(or インクルーシブ教育)に関心があります!」という方(学生さんも社会人の方も)と、ユニバーサルデザイン(orインクルーシブデザイン)に関心のあるデザイナーさん、クリエイターさんとお目にかかる機会が増えました。
これまでは「ニッチな領域」なんて言われていたように思いますが、多くの人の関心の1つになってきているように感じています。
個人的関心に留まるだけでなく、社会的にも実は大きな動きもありました。
先日、厚労省は、民間企業の障害者雇用率を2.0%とすることなどの方針について発表しましたし、
文科省は、現在障害を持つ子供の通学先が「原則として特別支援学校」と定められている法令を改正し、普通の小中学校に通学しやすくする方針を固めた、というニュースもありました。
現在日本は障害者権利条約の批准に向け、いろいろな現場で地道に改革を行なっている傾向を見ると、これからますます注目される分野ですし、この領域はとてもおもしろいので、全く知らない人、ちょっとだけ興味ある人にも、もっと知ってもらいたいなと思っています。
というわけで、この分野にほぼ素人だった私が研究を始めて1年半たって、この領域の動向をチェックする際にお世話になっているサイトをご紹介しますね。
▼
まず、特別支援教育といえば、特別支援教育総合研究所(通称:特総研)が有名なのではないでしょうか。
■独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
http://www.nise.go.jp/cms/
特別支援教育を専攻していたり、専門の方にとっては当たり前かもしれませんね。
知らない方もいらっしゃると思うのですが、研究や報告書などが充実しているので、最近どんなことがされているか、一つの目安として参考にして良いと思います。
ちなみに私は特総研のメールマガジンを拝読しています。
■発達障害ニュース
http://sogamoni.blogspot.jp/
こちらはブログですが、特別支援教育や障害者福などに関するニュースをいち早くお伝えしてくれるブログです。
新聞社のニュースだけでなく、網羅しているメディアは幅広いです。
また、関東だけでなく、地方のニュースも取り上げてくださるので、日本全国の動向が把握できます。
■Disability Scope
http://www.disabilityscoop.com
お次は海外のサイトをご紹介します。
ここは障害者福祉、特別支援教育に関するニュースを提供しています。
障害種別やジャンルにわけられてニュースをチェックできるのがポイントです。
情報の質としても、Education WeekやThe Washington Postなどとも連携しているようで、まさに世界の動向をチェックできます。
Facebookページもあり、私はこちらでもチェックしています。
http://www.facebook.com/disabilityscoop
■Inclusive Schools Network (ISN)
http://inclusiveschools.org/
続けて海外のサイトをご紹介。
こちらは、世界中でインクルーシブ教育に注目している専門家、ご家庭、学校、その他組織やコミュニティ向けのサイトです。世界の教育のリソースを共有したり、ネットワークとして機能しています。
とにかくインクルーシブ教育に関するリソースが豊富!
また、このネットワークに加盟している団体はとっても多く、たくさんご紹介されていることもあり、海外での教育実践現場の実態や、そもそもどんな団体があるのか、知ることができました。
■イソムラ式
http://isoamu.exblog.jp/
株式会社グラディエ代表取締役 磯村歩さんのブログです。
ユニバーサルデザイン、サスティナブルデザイン、建築、福祉、介護などを扱っておりとっても充実しています。
インクルーシブデザインなどのお話も時々扱っており、拝読させていただいております。
ワークショップもよく開催されているようで、いつかおじゃましたいなぁと思っています。
磯村さんにもぜひ一度お会いしてみたいですね。
というわけで、5つのサイトをご紹介しました。
その他、Facebookでは海外のNPOのFacebookページなどもこっそりチェックしたりしています。
もし面白そうなサイト、団体等ありましたら、ぜひぜひ教えて下さい!
【山田小百合】