2012.10.23

【エッセイ】ミネソタMOOC騒動

10月19日(金)にミネソタ州高等教育局が、進展著しいMOOC(大規模オープンオンラインコース)の一つであるCourseraに対し、州法を根拠に、州への登録と登録料の支払いを求める意向を表明しました。
この動きはネット上で批判を受け、その後ブログで事実上の撤回をしています。

Facing Backlash, Minnesota Decides to Allow Free Online Courses After All

http://chronicle.com/blogs/wiredcampus/facing-backlash-minnesota-decides-to-allow-free-online-courses-after-all/40588

この問題は頭の固い役人がベンチャー企業を圧迫するという図式でとらえられがちですが、もう少し事態は複雑です。根拠となった州法は20年前に作られていますが、オンライン営利大学の参入によって授業の質保証が難しくなり、学習者保護のために策定されたと考えられます。アメリカは日本と違い、大学の設置や運用に関して教育省が直接的なコントロールを行わず、民間認証団体が授業やカリキュラムの質を保証する仕組みになっています。実質的な授業をともなわず学位を発行するディプロマミルが発生しやすく、特にオンライン教育サービスはこの問題の危険性が高かったという事情があります。

現在のCourseraは学位授与を目的としたものではなく、かつ無料のサービスですので、この法令をあてはめようとするのは無理があるのですが、今後MOOCのコース修了証をもって大学の単位を与えるという動きがでてくるのは間違いないと思いますので、質保証にからむ議論は避けられないと思います。

現時点においては、MOOCのビジネスモデルとして、一流大学の授業を理解できる世界各国の優秀な学生をテストで識別し、企業に推薦するマッチングモデルが有望視されているようです。しかし、このモデルに従うと、できない学生を教育サービスとして引き上げるためにコストをかけることは意味がないことになります。

情報通信技術を利用した学習は変化が激しく、制度や運用を常に見直していく必要があります。今回の件も、根本的には20年前の法律を見直すべきでしょう。制度の見直しが遅れていることについては日本も他の国を笑える状況ではありません。

ただし、今回の騒動は単純に制度を変えればよいというものではなく、MOOCの教育サービスとしての位置づけが曖昧であることも要因になっているように思います。MOOCがバブルで終わるのか、それとも、破壊的な教育イノベーションになるのかは、今後1、2年で見えてくるのではないかと考えています。

山内 祐平

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