2012.11.29

【研究発表のこだわり】親しみのある色をのせる

みなさんこんにちは。M2の山田小百合です。

気づいたらもう修論提出まで1ヶ月ほどとなりました。毎日データや文献とにらめっこしながら過ごしています。

さて、研究発表のこだわりということですが、自分の研究を発表する機会は、ゼミでの研究発表のみにとどまりませんよね。
学会や研究会、何かのイベントに呼んでいただきお話をするなど...発表の機会は多岐にわたります。
研究室外で発表の機会をいただいたときは、自分が専門とする分野を知らない人が聴いてくださることも多いので、誰が聴いても伝わるようお話したいものだなと思っています。

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私は現在子ども(小学生)対象の研究をしているので、見栄えとして「保護者&子ども」に親しみのあるものにしたいというこだわりがあり、研究発表資料(ポスターやスライド)も活かしたいと思って意識しています。

少し話がそれますが、私の研究はワークショップ実践があってこそできる研究なので、何よりワークショップに人が集まってくれないと研究ができません。
しかも、対象は小学生なので、小学生に告知をする際には「保護者」にアプローチをしなければなりません。

保護者でインターネットから情報をキャッチしてくださる方は、正直まだまだ多くありません。
そこで、できるだけチラシを作るのですが、どんな情報も、子どもたちが興味を持ってくれても、「保護者」がOKしてくれないと、子どもたちは来てくれません。(当たり前ですね)
なので、子どもたちにも「楽しそう!」と思ってもらいつつ、保護者のみなさまにも、「子どもを参加させたい」と思ってもらう必要があります。

そんなとき特に意識するのが、どんな色の組み合わせだと(発表)資料が見やすいか、ということ。
明るい色がいいなぁと思いつつ、原色並べても目に痛いですし(笑)、優しい色で、かつ色でごちゃごちゃしないように気をつけ、少しでも親しみやすさを感じてもらえるように考えています。

発表の構成については先週までにM2メンバーが書いてくれたので、そういった構成・ストーリーに「どう色付けするか」が私のこだわりです。
アプローチしたい対象に、まずは直感的に親しみやすさを感じてもらわないと、そもそもその資料に目を向けてくれないと思うので、まずは目を向けてもらうことを意識しています。
今は子どもを対象にした色付けを意識していますが、対象によって変化します。

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ワークショップでの雰囲気が、研究発表という異なる場所でも伝わるといいなぁと思い、こうしたチラシなどのデザインの延長で、ポスターやスライドを作っています。
資料を作成する際、使う色は2色までにできる限りとどめ、度々テーマカラーを設定しています。
ちなみに現在の研究のテーマカラーはピンクで、サブカラーとしてスカイブルーを使っています。
できるだけ目にやさしいパステルカラーの中で組み合わせを考えており、なるべく赤に近い色のほうが、温かみがあるなぁと思って、ピンクを選定しています。
また、ピンクは女の子、ブルーは男の子をイメージしており、「男の子も女の子も楽しんでいる場面」をイメージしています。

写真.JPG
*上が人工知能学会主催の研究会での発表資料で、下が修士論文中間発表資料です。


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実は保護者向けのサイトや、子どもの学習支援などのサイトのデザインをかなり見ていた時期がありました。
子供向けのサイトは「かわいい!」のはもちろんのこと、色の配置が優しくて、とても親しみやすさを感じるところが多いです。
子供向けのイラストを提供しているサイトなども参考になるのでお勧めです。

山田小百合

2012.11.24

【研究発表のこだわり】構造的に見せるデザイン

みなさまごきげんよう.修士2年の早川克美です.

修士2年のこの時期,みな修論執筆の大詰めに差し掛かっています.
私は...というと,4月から勤務を開始した大学で来春開講予定の新学科開設準備との調整が難しく,修論提出を1年延ばすお許しをいただき,少し研究活動からは離れた同期とは異なるリズムの日常となっております.

さて,今回のお題は「研究発表のこだわり」.

山内研究室では月に1回研究の進捗を報告することとなっています.
社会人院生である自分にはその1ヶ月の過ごし方が難しく,ずっと頭の片隅にありながら...発表1週間前に資料化に着手するという正直,悪循環となっています.
そんな状況の発表ですが,私にもこだわりはあります.

私のこだわりは「視覚的に構造がみえる」資料を作成し,ラボのメンバーに伝え,ご意見をいただくことです.できているか?というとまだその域に達していない状況.(これは何より私自身の脳内が構造化されていない状況で資料化にのぞんでいることに問題があります)
...と自省ばかりしていても記事が進まないので,どのように準備して資料化に至っているかをご紹介します.

◯準備段階
 参考文献のマークしたポイントを最初はポストイットにメモ書き,
 その後,Pagesにテキスト化して書き溜めます.
 出典もテキスト化しておくと後の整理が楽になります.

◯ページネーション
 資料の構成をどのように表すか?の台割をノートに書きます.章立てに近い作業.
 前回のふりかえり,今回の課題,進捗,今回までの到達点,参考文献リスト.

◯レイアウト・フォーマット
 私は発表資料をすべてIllustratorで作成しています.(良し悪しですね)
 台割を美しくまとめるグリッドを,白紙のベースにミリ単位で置いていきます.
 どんな資料でもこのグリッドが決まっていると見え方が違ってきます.

◯文字の設定
 研究発表では皆A4横位置を半分に分割して2ページ見開きで作成しています.
 そこで読みやすい文字の設定をルール化します.
 大タイトルは新ゴM12pt, 見出しは新ゴM10pt, 本文は筑紫明朝L8pt,
 図版はボリュームによって新ゴMor見出しゴmin4.75pt〜max8pt,
 文字は大抵ベタで組み,行間は文字高の1.25倍を目安にします.

 基本は3種類,それ以上の文字(太さ・大きさを含む)を使わない.

◯カラー計画
 特に議論・ご意見をいただきたい箇所に使用するキーカラーの設定.
 この色は大抵鮮やかな色を使います.
 これに対し,本文説明段階での注視ポイントに使うサブカラーは無彩色で.
 基本はキーカラー・サブカラー・本文の3色. 

◯図版の作成
 私はデザイナーであることもあり,山内先生から理解したことをインフォグラフィック化するようにご指導いただいています.その時点での自分の理解を,テキストのみではなく,図示する作業は自分の能力には向いていると思い,ありがたく挑戦しています.

◯完成後は共有していただくためにPDF化


多分,以上はポスター発表の際にも参考になるかと思います.
サイズが異なるのでただ等倍にすればいいというものではありませんが.
(ポスターの場合はさらに強弱の度合いを高めると明快になります)

他のメンバーとはちょっと異なるデザインの視点でのこだわりをご紹介しました.
同期のがんばりを目に焼きつけて,早く研究活動に復帰し,最初にも書きましたが本来の目的である「研究を構造的に見せる」ステージに進まねばと思っています.

今年の冬はかなり寒いそうです.
みなさま,ご自愛くださいませ.

ではまた.
拙文におつきあいいただきありがとうございました!

早川 克美

2012.11.20

【エッセイ】MOOCsで大学はいらなくなるのか

CourseraやedXといった大規模オープンオンラインコース(MOOCs)を単位として認める大学が少しづつでてきています。このような動向については、オープンエデュケーションについて研究されている重田さんのブログにまとめが掲載されています。

【解説】MOOCsを使った大学単位認定の現状

これで実空間の大学はいらなくなるという論調もあるようですが、事態はそう単純ではありません。単位認定と卒業認定の間には大きな差があり、実習を含め全ての卒業単位をMOOCsでまかなうのは現時点では難しいからです。

MOOCsのコンテンツは一流大学の授業を元にしており、内容は優れたものです。ただ、学習支援が十分に行われているわけではありません。チューターをつける金銭的余裕がないので、学習者相互の助け合いに頼っているのが現状です。アメリカの教育研究者の中には、あまりに学習支援が貧弱であることに怒っている人たちもいます。このような状況でもまわっているのは、現在のMOOCsが対象としているのがトップ層に限られているからです。つまり、学習支援をあまり必要としていない人たちを対象にしているので成立しているということであり、このモデルを一般の大学に適用することは難しいでしょう。

現状では中小規模の大学で科目の多様性を確保しにくい場合に、MOOCsと対面型の学習支援を組み合わせて、単位として認めるケースが現実的なシナリオだと思います。実際、edXとゲイツ財団がそのような試みを始めています。

日本ではあまり知られていませんが、アメリカにはオンライン大学がたくさんあり、学位をオンライン授業のみで与えることが20年以上行われてきています。これらの大学はMOOCsとは違い学習支援にも力を入れています。それにも関わらず対面型の教育がなくならなかったのは、対面型の教育に一定のメリットがあるからです。教育省の調査でも、オンライン学習単体よりもオンラインと対面型を組み合わせたブレンド型学習が効果的であることが明らかになっています。

私はMOOCsの真価は大学をそのままオンラインに置き換えることではなく、学習内容に関心がある優秀な人々を国境を越えて集めたという点にあると考えています。高等教育のアメリカへの寡占化が進むのと裏腹に、多くの国では高いレベルの教育を受けられない人々が、持てる可能性を広げる機会を待ち望んでいます。その方法は従来の大学という形にとらわれる必要はありません。Courseraのジョブマッチングモデル(授業を優秀な成績で修了した学生を企業に斡旋する)はその一例といえるでしょう。

山内祐平

2012.11.16

【研究発表のこだわり】建設的なコメントをもらうために

こんにちは,今週のブログ担当の,M2末 橘花です.
寒い日が続きますが,皆様いかがお過ごしでしょうか?

さて,我らが山内ゼミでは月に一度,研究の進捗発表が回ってきます.たくさんの方からコメントをいただける月一度の大事な回なのです.

しかし発表の仕方で,いただけるコメントの質に差が出てしまうこと,そんな経験をしながら私が気づいたこと,そして今現在ももがいていることをひっくるめてお伝えしようと思います.

恥ずかしながら,M1の最初の頃は,先輩方の発表と比べ,自身の発表は議論が盛り上がらない印象を受けました.そんな時,たまたま研究室の卒業生とお話をする機会があり,研究室の先輩のレジュメを真似てみてはどうか?とアドバイスいただきました.それまでは漠然と資料作成をしていたのですが,それを機に,先輩方にレジュメをいただき,参考にしながら発表資料を作ってみました.すると,建設的なコメントをいただける発表のポイントが見えてきたのです.具体的には,

・自分の状況や現状の共有する
・先行研究の報告だけではなく,その中でとりたい立ち場を明確にする
・何に対してアドバイスが必要なのかを明らかにする

などでした.

例えば,博士課程の先輩ですと博論という大きな枠組みの中で,何章の研究しているのか,が明確になっていること,また,先行研究の紹介にしても,調べた結果を報告するだけでなく,その中で自身がどの立場を取るのか明確でした.更に,これまでの研究で,どこまで決定していて,どこにつまづいていて,どんなコメントを必要としているのかがとてもわかり易く書かれており,発表を聞いていても理解しやすかったです.

自分の発表は,調べたことをまとめただけのただの進捗報告だったことに気づきました.それからは,どんなコメントをもらうためにどのように発表するべきなのか,また,わかりやすく伝えるためにはどうするべきなのか,ということをより意識するようになりました.

また,いろんな人のレジュメの構成や発表の仕方,デザインに興味を持つようになりました.実は,今回のブログのテーマも私が是非とも聞いてみたいということで,提案させていただいたのです.これからもゼミ生の「発表のこだわり」がたくさん出てくるので楽しみにしていてくださいね.

今でも,発表でうまく伝えられず,苦労をしている部分もありますが,少しずつうまくなってると良いなと思います.修論提出まであと1ヶ月ですが,こちらも先人(先輩方)の知恵をお借りしつつ,自分らしい修論が書けるように,最後の追い込み,頑張りたいです!


末 橘花

2012.11.08

【研究発表のこだわり】自分のための研究発表

皆様、ご無沙汰です。今週のブログの担当の呉重恩です。
丁度ゼミの研究発表が1回しか残っていないときにこのようなテーマについてブログを書くのは、時期的にとても相応しいと感じています。

ゼミでの発表自体には特に何もこだわっていないと思います。ただいままでの先輩達の発表やレジュメを見ていて、真似をしていただけです。

ただし、ゼミの限られた時間の中での発表は、あくまでも「人に見せる」ものです。なるべく簡潔にまとめて、言いたいことを人に伝えれば済むという、所謂1種の報告文です。
そして「自分に見せる」ものとしての発表は、決して15分間以内に簡単に伝えられるようなものだとは思っていません。
研究発表は、人に自分の進捗状況を伝え、今後の方向についてコメントとアドバイスを頂く機会だけではなく、自分の研究の足跡でもあります。他人に理解してもらうのも大事ですが、究極的にいえば自分の研究ですから、まず自分のための研究発表にしなければならないと思います。
このような研究発表は、ゼミ発表という一時期だけに機能するものではなく、事前の計画でもありますし、ゼミの終わった後のリフレクションでもありますし、さらに言えば、卒業論文を書くときに直接使える資料としても機能できると思います。資料を見て、すぐ以下のものを提起してくれたような発表資料だったら、それが合格な資料だ、とわたし的には考えています。
「×という間に、わたしは×ぐらいの作業をしていた;
目標の×%ぐらいを達成した;結局完成できなかったところは×というところだった―その原因としては×だった;
ゼミで×というようなコメントをもらった;

次の研究発表との間にとういう繋がりがあったのか」

そこで、研究発表が含んでいるのは、ただゼミで皆に見せるレジュメだけではなく、研究発表までの準備作業、そしてその後のまとめとリフレクションが大事になり、前後を含めている時間帯の中にするべきこともレジュメの作成よりはるかに多くなります。

自己流なんですが、研究発表のために必ず確保するタスクとしては:
1、発表のゴールと発表するまでのスケジュールを確定
2、文献を大量にダウンロード  1~2日
 ―効率を求めるので、大体疲れている時や、集中力が足りていない時、つまらない授業にいた時にこの作業をします。だいたい文献を探したり、ダウンロードしたりするのは、相対的に言えば一番楽な作業だからです。
3、文献を読む  1~3日
 比較的に体力がかかる作業ですから、基本的に身体状態と精神状態が一番良い時にするようにアレンジします。私の場合は、ダウンロードするだけのものを全部読みます。読む部数は毎回の発表の課題によっているのですが、基本的に毎回20-80部の量で、限界は英文300ページぐらいです。
 目的を持たずに読むと、余計に時間がかかる以上に、読んだ後に結局何が分わかったのかも分からなくなることがありますから、発表の課題とゴールを常に覚えながら読みます。
 読むときは必ず重要なところに印を残しながら読みます。さらに文献の表紙に類型と重要さを表記します。
4、文献を抜粋  1日
 今後のために、特に重要な理論や知見を抄録します。わたしにとっては、今の研究は全く新しい分野ですから、先行研究について十分に調べる必要があります。ばた、特に重要な理論なら、今後論文を書くときにも論点を支える重要な根拠となりますので、重複作業を避けるため、とりあえず抄録の作業をしておきます。
5、レジュメを作成  1日
 この作業はむしろ簡単です。ゴールも課題も文献の抜粋も全て出来ている段階ですから、ただこれらを体系化するだけが残ります。
6、ゼミ発表  30分間
7、コメント整理と研究相談  1時間
 ゼミ後は、皆様からのコメントを整理して、それに基づいて次のゴールとスケジュールをさらに作成します。また、次のゼミまでに研究相談を行い、ファシリテーターに悩んでいるところについて相談をし、方向性の調整をします。
8、リソースを広げる  念頭に置きながら適当な時間を使う
 2のとことで集めた文献は、基本的にその回の発表に限って使われる文献です。しかし、研究、特に自分にとっていままで全く触れていなかった分野の研究をする場合は、目の前の時期に必要とされる文献だけを読むのは、視野が狭くなりますから、そうすると最終的出来た研究の厚味と説得力が不十分なことになるかもしれません。ですから、読まなければならないものからもうちょっと範囲を広げて、様々なルートから様々なリソースに触れたほうが良いと思います。関係分野の人のブログ、関係の話題をめぐった掲示板、関連しそうな製品開発・広告・実業などは、レベルとしては直接論文で引用できそうなリソースではないけど、研究をする時の視角と発想を多様化してくれる役目がありますから、大事にしたいと思います。こういう工夫をしているうちに、研究は社会と実生活から疎遠しているものではないということも段々分かるようになると考えていました。

大体こういう感じです。といっても、たぶんゼミの全員が同じようなことをしていますから、とてもわたしならではのこだわりとはいえないかもしれません。最後の研究発表の前に「いままでの研究発表のやりかた」を回想しながら、それを共有させて頂く思いで今回のブログを書きました。

ps:
最後の研究発表で潰されないように、最後の努力をします。よろしくお願い致します。

2012.11.02

【研究発表のこだわり】先行研究のまとめ方

 皆様お久しぶりです!M2の河田承子です。ハロウィンも終わり、あっという間に11月に入ってしまいました。修士論文に向けて焦りは募りますが、頑張るしかないと自分を奮い立たせる今日この頃です。

 さて、今週からは新テーマ【研究発表のこだわり】をお送りいたします。研究発表といっても色々な場面があると思いますが、ちょうど昨日研究発表が終わったところですので、自分が発表の資料を作る時にどのような所にこだわっているのかをご紹介したいと思います。

 日頃から物事を整理したり綺麗にまとめるのが苦手な私にとって、調べた数多くの先行研究をどのように分かりやすく、研究発表の資料にまとめるか、という事はM1に入った時の課題でした。ひたすら先行研究と向き合うM1の時期は、ゼミ発表までの1ヶ月間に山のような論文に埋め尽くされることがよくあります。その為、論文を読んで線を引くだけしかしていないと、何がどの論文に書いてあったのか思いだせなかったり、欲しい論文がすぐ出てこなかったりしてしまいう事が多々ありました。
 そこで私は、論文を読む時には常にポストイットを常備し、気になったキーワードや大切だと思った記述、自分の考えを書き出して、読み終わった論文に貼付けていました。貼付ける数も1枚や2枚ではすまず、貼付けすぎて論文のタイトルが見えなくなってしまったものもある程でした。ゼミ発表の2週間前までは先行研究を読みつづけてこの作業を繰り返し、その後は、ポストイットに書かれたキーワードが同じ論文ごとに仕分けをする作業に入ります。不思議なことに、この作業の過程でどの論文がどこに位置するのかが頭の中で整理出来ていきました。
 この作業が終わると、次に行うのが叩き台のレジュメ作りです。仕分けされたキーワードごとに、各論文の【目的】【結果】と【自分が気になった記述】を書き、このレジュメを基に研究発表の資料でどの部分を使うのかを毎回考えていました。キーワードごとに論文の要約がまとめられていたので、資料を作る時にも見やすく大変便利でした。本当は、論文を読みながら内容をパソコンに打ち込んでレジュメを作っていく方が時間の短縮になるのかもしれませんが、印刷された文字が苦手な私にとっては、一度鉛筆と紙(ポストイット)で書き出すことは思考の整理にもなり、自分には合っていたのかなと思います。

 というわけで、【研究発表のこだわり】というよりは【研究発表の前段階の作業でのこだわり】になってしまいましたがいかかでしたでしょうか?
これから、他のゼミ生の【こだわり】が続々と公開されていくので、私も楽しみです。今年も残り2ヶ月となってしまいましたが、一生懸命頑張りたいと思います。

M2 河田承子

2012.10.26

【研究に役立つWebサイト】良いレビュー論文を見つけるために

みなさま、こんにちは。

「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、最終回はD3の池尻良平が担当します。


よく研究の要は良いリサーチ・クエスチョンを作ることだと言われますが、そのためには「良い」先行研究を「大量」に読むことが大事です。


ところが残念なことに、先行研究の調査に割ける時間はそれほど長くはありません。例えばあなたが学部3年生、もしくは修士1年生で卒論や修論を書くとしたら、おそらく先行研究の調査に時間を割けられるのは2年間のうち1年間程でしょう。そのうち1/3くらいは遊んだり他の用事があったりするのが実情だと思うので、実質先行研究の調査に費やせるのは8ヶ月くらいだと思います。仮に1冊の日本語の本を読むのに3日、1本の日本語論文を読むのに1/3日、1冊の英語の本を読むのに2週間、1本の英語論文を読むのに1日かかるとします。そうすると、大量にある先行研究のうち、8ヶ月で調べられる先行研究は例えば以下の分量「しか」ないのです。


・英語の本約6冊(3ヶ月)、日本語の本約20冊(2ヶ月)、日本語の論文約90本(1ヶ月)、英語の論文約60本(2ヶ月)


つまり、先行研究の調査で読める文献には限りがあり、大量にある文献から「良い」先行研究を「選べるか」が大事だということです。たとえ仮定した読書スピードよりも早く、より努力家で熱心に調査を進めたとしても、良い論文に出会えないために残念ながら鋭いリサーチ・クエスチョンが出ないこともあるのです。


日本語・英語の文献の場合は、研究室の本棚や教授に教えてもらうことで、「教科書」や「著名な本」をある程度知ることは可能です。ところが、論文はCiNiiやGoogle Scholarで検索すると大量に存在するため、ここで良い論文に出会えないことが多々あります。


そこで役立つのがレビュー論文です。レビュー論文とは数多くの論文を整理した上で各々の論文を紹介しているもので、その領域の近年の動向を1本の論文で吸収できるお得な論文です。つまり、その領域で重要な論文を幅広く知ることができると同時に、自分が読みたい論文を選択することもできるのです。さらに、著者の主観が多少は入るものの、レビュー論文で挙げられている論文は、取り上げるに値する良い論文が選定されています。そのため、参考文献だけザーッと見て関心の近い論文を選ぶだけでも、質の良い論文が手に入ります。


では、レビュー論文にアクセスするにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは僕が普段レビュー論文にアクセスするためによく使っているサイトを2つ紹介します。


(1)博士論文書誌データベース
1つ目のオススメサイトは博士論文書誌データベースです。当然のことですが、博士論文は非常に高い水準をクリアした良い論文です。さらに(僕はまさに今取り組んでいるのでよくわかるのですが)、博士論文ではきっちりとその領域の先行研究をレビューしないといけません。そのため、博士論文は一種のレビュー論文の役割も持っているのです。たとえそれがやや古いものであっても、その研究者は博士号を持っているきちんとした研究者であるため、その人の最新の論文や著書を読めば近年の動向やその領域で注目されている良い論文にアクセスすることができるでしょう。試しに自分の研究領域のワードをちょっと打ってみて検索してみて下さい。きっと良い論文に出会えると思います。


(2)Educational Psychology Review(SpringerLink)
もう1つのオススメサイトは、レビュー論文を扱っている海外誌にアクセスすることです。例えば教育が専門の僕の場合は、SpringerLink のEducational Psychology Reviewの検索サイトをよく使います。試しに自分の研究関心に合った論文を開いてもらえればわかると思うのですが、この海外誌は参考文献が非常に多く、その領域の海外の先行研究が簡潔に整理されています。英語の論文を読む際の1本目としてぜひ利用してみて下さい。


先行研究の読み込みは自分の研究の基礎となる部分です。これから論文提出シーズン、院試シーズンが来るということで先行研究を調べている人も多いと思いますが、ぜひこれらのWebサイトを利用して良いレビュー論文を見つけて下さい!


[池尻 良平]

2012.10.23

【エッセイ】ミネソタMOOC騒動

10月19日(金)にミネソタ州高等教育局が、進展著しいMOOC(大規模オープンオンラインコース)の一つであるCourseraに対し、州法を根拠に、州への登録と登録料の支払いを求める意向を表明しました。
この動きはネット上で批判を受け、その後ブログで事実上の撤回をしています。

Facing Backlash, Minnesota Decides to Allow Free Online Courses After All

http://chronicle.com/blogs/wiredcampus/facing-backlash-minnesota-decides-to-allow-free-online-courses-after-all/40588

この問題は頭の固い役人がベンチャー企業を圧迫するという図式でとらえられがちですが、もう少し事態は複雑です。根拠となった州法は20年前に作られていますが、オンライン営利大学の参入によって授業の質保証が難しくなり、学習者保護のために策定されたと考えられます。アメリカは日本と違い、大学の設置や運用に関して教育省が直接的なコントロールを行わず、民間認証団体が授業やカリキュラムの質を保証する仕組みになっています。実質的な授業をともなわず学位を発行するディプロマミルが発生しやすく、特にオンライン教育サービスはこの問題の危険性が高かったという事情があります。

現在のCourseraは学位授与を目的としたものではなく、かつ無料のサービスですので、この法令をあてはめようとするのは無理があるのですが、今後MOOCのコース修了証をもって大学の単位を与えるという動きがでてくるのは間違いないと思いますので、質保証にからむ議論は避けられないと思います。

現時点においては、MOOCのビジネスモデルとして、一流大学の授業を理解できる世界各国の優秀な学生をテストで識別し、企業に推薦するマッチングモデルが有望視されているようです。しかし、このモデルに従うと、できない学生を教育サービスとして引き上げるためにコストをかけることは意味がないことになります。

情報通信技術を利用した学習は変化が激しく、制度や運用を常に見直していく必要があります。今回の件も、根本的には20年前の法律を見直すべきでしょう。制度の見直しが遅れていることについては日本も他の国を笑える状況ではありません。

ただし、今回の騒動は単純に制度を変えればよいというものではなく、MOOCの教育サービスとしての位置づけが曖昧であることも要因になっているように思います。MOOCがバブルで終わるのか、それとも、破壊的な教育イノベーションになるのかは、今後1、2年で見えてくるのではないかと考えています。

山内 祐平

2012.10.19

【研究に役立つウェブサイト】文献との出会いを楽しみませんか?


みなさま、こんにちは。
「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、第10回目はD2の伏木田稚子が担当します。

深まりゆく秋、みなさまはどんな風に楽しまれていますか?
わたしは、秋の夜長にぬくぬくと暖をとりながら、じっくりゆっくり本を読みたくなります。
読みたい本が手元にないときや、そのときの気分に合った本を読みたいときは、お気に入りの"古本屋さん"や大きな"本屋さん"に行きます。
新しい本との出会い、それまで知らなかった作者との出会いに、自然と心が弾むからです。
その、"なんとなくわくわくする楽しい出会い"は、普段の読書だけではなく、研究に関連のある文献を読む際にもあてはまると感じています。

研究を進めるプロセスにおいて、「文献を読む」ことはとても大切なことです。
あるときは、自分の中にふっとひらめきが生まれるための準備として。
またあるときは、自分の問題意識を専門的な用語で表現したいという必要性にかられて。
状況は人それぞれあると思いますが、いずれにしても、そのときの自分に合った文献との出会いは、前へ前へと研究を推し進めてくれるように感じています。
だからこそ、そんなとびきりの文献と出会うために、日頃からふらふらとウェブサイトを渡り歩くようにしています。
そこで今回は、わたしにとってのお気に入りの"古本屋さん"であり、大きな"本屋さん"のような存在であるサイトをご紹介したいと思います。


  • 研究に広く深く触れよう!

Spinger Link

Springerは、1842年にベルリンに設立されて以来、世界トップレベルの科学出版社として多くの研究者に愛され続けています。
具体的には、科学・技術・医学などの研究分野において、専門的な書籍やハンドブック、学術ジャーナルなどを出版しています。
Springer Linkは、Springerが情報ツールとして提供しているデータベースのひとつで、出版物のオンラインコレクションです。
分野ごとに閲覧することが可能で、アルファベット順に並べられた分野を眺めているだけでわくわくします。
国際的に第一線で活躍する研究者たちの知見に触れたいと思ったら、まずは興味のある分野をクリックしてみましょう。
出版物の種類や、さらに詳細な学問分野の区分ごとに、関心をもった記事をオンラインで読むことができます。


  • 大好きな研究者をみつけよう!

AuthorMapper

こちらも同じく、Spiringerが提供しているデータベースのひとつで、興味のある研究分野や関連分野の研究者をみつけることができます。
とてもうれしいのは、研究分野や研究者の所属機関、出版物名、出版社、出版年など、いろいろなキーワードを検索にかけられることです。
そして、このサイトの最大の魅力は、検索の結果ヒットした研究者が世界地図にマッピングされることではないでしょうか。
例えば、Educationという分野を選択すると、Higher EducationやLearning Assessmentなどのキーワードによる絞り込みができます。
そして、わたしの専門分野であるHigher Educationを選択すると、その分野の論文や研究者の数を、数値だけでなく人の形のアイコンで視覚的に把握することができます。
わたしもこの面白さにはまり始めたばかりなので、これからもっと上手な使い方を探していきたいと思っています。


古き良き研究との出会い、新しくて勢いのある研究との出会い、そしてそうした研究に熱心に取り組んでいる研究者との出会い。
そうしたうれしい出会いを、ぜひこの2つのサイトを使って多くの人に実感していただけるといいなと思い、おすすめさせていただきました。

伏木田 稚子

2012.10.11

【研究に役立つウェブサイト】 研究者として「物語」を紡ぐために

D2の安斎勇樹です。研究と一口にいっても、修士論文を一つ書き上げるまでには様々な課題を乗り越えなければいけません。先行研究の調査は当然として、最新の技術や現場の動向についても把握していなければいけないし、その上で、過去に誰も取り組んでいない研究のアイデアをみつけなければいけません。そのような課題の解決に役立つウェブサイトは、これまで修士課程のみなさんが紹介してくれました。

ところが、修士論文を書き終えてみると、論文に取り組んでいたときとはまた違った問いに頭を悩ませることになります。

ー自分は、いったいなんのために研究をしているのだろうか?
ー必死に書き上げたこの論文は、誰に、どのように役に立つのだろうか?
ー社会の中で、自分は「何者」としてこれから生きていくのだろうか?

つまり、研究者として(あるいは修士卒の社会人として)、キャリアをどのようにデザインしていくべきかという課題です。キャリアは偶然に左右されるとはいえ、定期的に立ち止まって自身のアイデンティティを見つめ直し、主体的にキャリアを築いていく意識をもつことはとても大切です。

そんな時に役に立つのが、自分よりも遥か先を走っている研究者たちの「物語」ではないでしょうか。


1)TED: Ideas worth spreading
http://www.ted.com/

言わずと知れた「TED」では、様々な分野の著名人のプレゼンテーションを視聴することが出来ますが、研究者も数多くエントリーしているのをご存知でしょうか。

例えば、心理学者のチクセントミハイのプレゼンテーションでは、第二次世界大戦中の幼少時から振り返り、心理学を学ぶことになった経緯、現在の研究内容や今後のビジョンについて幅広く語られています。

特に僕が気に入っているのは発達研究者のロイのプレゼンテーションです。ロイは、息子が生まれてからの3年間、自宅の全ての部屋にカメラとマイクを取り付け、9万時間の動画と14万時間の音声からなる記録を収集し、周囲の支援を得ながら言語的に発達していく過程を詳細に分析しています。ロイの経歴的な物語はこのプレゼンテーションからはわかりませんが、研究にかける覚悟と情熱、さらには膨大なデータを魅力的かつわかりやすく可視化する技術など、研究者にとって大切な姿勢を多く学ぶことが出来ます。


2)研究者の仕事術 -実践と研究の両輪を回す実践的研究者の仕事のつくり方-
http://amphibia.jp/

また、手前味噌になりますが笑、ウェブマガジン「研究者の仕事術」では、実践志向の研究者たちがいかにして研究と実践を連携させているのか、その思想や技法について、また、そこに至るまでの経緯について、インタビュー記事によって紹介しています。

ただ論文を書き続けるだけでなく、研究と社会をどのように接続させ、価値を生み出していけばよいのか、沢山のヒントが詰まっています。


山内先生が指摘している通り、他人の物語を鵜呑みにし、それによって自分の可能性に制限をかけてしまっては本末転倒ですが、自分のキャリアを相対化し、自ら人生の舵をきっていくためのヒントとしては、先人の物語は大いに役に立ちます。

研究をしていると目の前のタスクに忙殺されがちですが、ちょっと一息ついて、先人たちの物語を楽しみ、自分を見つめ直す時間をとってみるのも良いかもしれません。

[安斎 勇樹]

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