2012.11.20

【エッセイ】MOOCsで大学はいらなくなるのか

CourseraやedXといった大規模オープンオンラインコース(MOOCs)を単位として認める大学が少しづつでてきています。このような動向については、オープンエデュケーションについて研究されている重田さんのブログにまとめが掲載されています。

【解説】MOOCsを使った大学単位認定の現状

これで実空間の大学はいらなくなるという論調もあるようですが、事態はそう単純ではありません。単位認定と卒業認定の間には大きな差があり、実習を含め全ての卒業単位をMOOCsでまかなうのは現時点では難しいからです。

MOOCsのコンテンツは一流大学の授業を元にしており、内容は優れたものです。ただ、学習支援が十分に行われているわけではありません。チューターをつける金銭的余裕がないので、学習者相互の助け合いに頼っているのが現状です。アメリカの教育研究者の中には、あまりに学習支援が貧弱であることに怒っている人たちもいます。このような状況でもまわっているのは、現在のMOOCsが対象としているのがトップ層に限られているからです。つまり、学習支援をあまり必要としていない人たちを対象にしているので成立しているということであり、このモデルを一般の大学に適用することは難しいでしょう。

現状では中小規模の大学で科目の多様性を確保しにくい場合に、MOOCsと対面型の学習支援を組み合わせて、単位として認めるケースが現実的なシナリオだと思います。実際、edXとゲイツ財団がそのような試みを始めています。

日本ではあまり知られていませんが、アメリカにはオンライン大学がたくさんあり、学位をオンライン授業のみで与えることが20年以上行われてきています。これらの大学はMOOCsとは違い学習支援にも力を入れています。それにも関わらず対面型の教育がなくならなかったのは、対面型の教育に一定のメリットがあるからです。教育省の調査でも、オンライン学習単体よりもオンラインと対面型を組み合わせたブレンド型学習が効果的であることが明らかになっています。

私はMOOCsの真価は大学をそのままオンラインに置き換えることではなく、学習内容に関心がある優秀な人々を国境を越えて集めたという点にあると考えています。高等教育のアメリカへの寡占化が進むのと裏腹に、多くの国では高いレベルの教育を受けられない人々が、持てる可能性を広げる機会を待ち望んでいます。その方法は従来の大学という形にとらわれる必要はありません。Courseraのジョブマッチングモデル(授業を優秀な成績で修了した学生を企業に斡旋する)はその一例といえるでしょう。

山内祐平

PAGE TOP