2012.10.26

【研究に役立つWebサイト】良いレビュー論文を見つけるために

みなさま、こんにちは。

「研究に役立つウェブサイト」シリーズ、最終回はD3の池尻良平が担当します。


よく研究の要は良いリサーチ・クエスチョンを作ることだと言われますが、そのためには「良い」先行研究を「大量」に読むことが大事です。


ところが残念なことに、先行研究の調査に割ける時間はそれほど長くはありません。例えばあなたが学部3年生、もしくは修士1年生で卒論や修論を書くとしたら、おそらく先行研究の調査に時間を割けられるのは2年間のうち1年間程でしょう。そのうち1/3くらいは遊んだり他の用事があったりするのが実情だと思うので、実質先行研究の調査に費やせるのは8ヶ月くらいだと思います。仮に1冊の日本語の本を読むのに3日、1本の日本語論文を読むのに1/3日、1冊の英語の本を読むのに2週間、1本の英語論文を読むのに1日かかるとします。そうすると、大量にある先行研究のうち、8ヶ月で調べられる先行研究は例えば以下の分量「しか」ないのです。


・英語の本約6冊(3ヶ月)、日本語の本約20冊(2ヶ月)、日本語の論文約90本(1ヶ月)、英語の論文約60本(2ヶ月)


つまり、先行研究の調査で読める文献には限りがあり、大量にある文献から「良い」先行研究を「選べるか」が大事だということです。たとえ仮定した読書スピードよりも早く、より努力家で熱心に調査を進めたとしても、良い論文に出会えないために残念ながら鋭いリサーチ・クエスチョンが出ないこともあるのです。


日本語・英語の文献の場合は、研究室の本棚や教授に教えてもらうことで、「教科書」や「著名な本」をある程度知ることは可能です。ところが、論文はCiNiiやGoogle Scholarで検索すると大量に存在するため、ここで良い論文に出会えないことが多々あります。


そこで役立つのがレビュー論文です。レビュー論文とは数多くの論文を整理した上で各々の論文を紹介しているもので、その領域の近年の動向を1本の論文で吸収できるお得な論文です。つまり、その領域で重要な論文を幅広く知ることができると同時に、自分が読みたい論文を選択することもできるのです。さらに、著者の主観が多少は入るものの、レビュー論文で挙げられている論文は、取り上げるに値する良い論文が選定されています。そのため、参考文献だけザーッと見て関心の近い論文を選ぶだけでも、質の良い論文が手に入ります。


では、レビュー論文にアクセスするにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは僕が普段レビュー論文にアクセスするためによく使っているサイトを2つ紹介します。


(1)博士論文書誌データベース
1つ目のオススメサイトは博士論文書誌データベースです。当然のことですが、博士論文は非常に高い水準をクリアした良い論文です。さらに(僕はまさに今取り組んでいるのでよくわかるのですが)、博士論文ではきっちりとその領域の先行研究をレビューしないといけません。そのため、博士論文は一種のレビュー論文の役割も持っているのです。たとえそれがやや古いものであっても、その研究者は博士号を持っているきちんとした研究者であるため、その人の最新の論文や著書を読めば近年の動向やその領域で注目されている良い論文にアクセスすることができるでしょう。試しに自分の研究領域のワードをちょっと打ってみて検索してみて下さい。きっと良い論文に出会えると思います。


(2)Educational Psychology Review(SpringerLink)
もう1つのオススメサイトは、レビュー論文を扱っている海外誌にアクセスすることです。例えば教育が専門の僕の場合は、SpringerLink のEducational Psychology Reviewの検索サイトをよく使います。試しに自分の研究関心に合った論文を開いてもらえればわかると思うのですが、この海外誌は参考文献が非常に多く、その領域の海外の先行研究が簡潔に整理されています。英語の論文を読む際の1本目としてぜひ利用してみて下さい。


先行研究の読み込みは自分の研究の基礎となる部分です。これから論文提出シーズン、院試シーズンが来るということで先行研究を調べている人も多いと思いますが、ぜひこれらのWebサイトを利用して良いレビュー論文を見つけて下さい!


[池尻 良平]

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