2012.06.28

【山内研との出会い】「就職活動をやめました」

みなさまこんにちは。M2の山田小百合です。「山内研との出会い」シリーズ5回目を担当させていただきます。

今月頭に大学院の入試説明会も行われ、毎週木曜日には受験希望者が研究室に来ているのを見ながら、私の入試決断のときを思い出していました。「就職活動をやめました」というタイトルの通り、私は就職するつもりでいた人なので、大学院という選択肢をなぜ選んだのかを踏まえながらいろいろと振り返ってみようと思います。

高校時代の話になるのですが、教育の影響と社会の営みに興味があった当時の私は、大学時代は教育社会学を学んで、教育に関わるマスコミ業に就きたいと漠然と思っていました。教育の現場をたくさん見て回って、世界中の良い実践・現場をより多くの人に伝えられる人になりたいと考えていたからです。それもあって、高校卒業と同時に、教育・福祉・その他自分の関心のある新聞・雑誌記事をスクラップして集めていました。(今はネットがあるのでやめましたが、これは大学2年の終わりごろまでやっていました。)
結局教育社会学を学べる大学に行けなかったのですが、社会科学全般を学べるところに入学しました。

大学2年次、とあるマスコミサークルで活動していた際に、自分が思い描いているところに到達するまで遠回りをする気がしてならなくて、逆にマスコミという選択肢に疑問を持ち始めてしまいました。その時期くらいから「社会起業家」という言葉を聞くようになり、これを機に「マスコミじゃなくて、こうやって社会的に価値のある現場を自ら生み出す・現場を支えるような活動をしたほうがよっぽど良いのでは」というような考え方に変わっていきました。このあたりからもともとアプローチしたかった「特別支援教育・インクルーシブ教育」に今後どうアプローチするかを考えていました。

そこで大学3年からは教育系の団体に足を突っ込んでは、まさに実践的な活動をしていました。それぞれの「現場」で気づいたことは多々ありました。しかし同時に「実践だけでは次のステップに行けないのでは」と薄々感じていました。
(ちなみに特別支援教育の現場には大学4年間足を突っ込まないと決めていました。18歳まで必然的にそういう環境で過ごしていたのであえて離れてみたかった。)

大学院という選択肢に最初に大きな影響を与えたのが「すずかんゼミ」でした。元文科副大臣の鈴木寛先生が行なっているインカレゼミです。大学3年前期、現場に足を突っ込むと同時に、月曜の5限に東大の駒場に毎週通う生活をしていました。ここは実践とは逆の場所で、まさに「次のステップに行くために鍛えられた場所」で、自分の苦手なことが何かを痛感させられるばかりでした。レジュメの作り方、自分の伝えたいことをどう伝えるか、言葉を選んで議論すること...たくさん内省しては学ばせていただいた環境でした。すずかんゼミの最後の日、すずかん先生とお話をしていくうちに、「大学院」という進路の選択はどうかという話になり、大学院進学を決めていた友人もいたことがきっかけで、大学院、一番良い選択かもしれない、と感じていました。

こうして就職活動の時期に突入するのですが、大学3年(正確には大学4年4月の半ばまで)大学院という決断ができないまま、実は就職活動に取り組んでいました。迷いが強すぎる故に、どちらも中途半端になっていることに気づきました。これはどちらかに決断せにゃならんなと思って、「就職活動を辞める」ことにしました。就活から逃げてると言われたこともありますが、両親は応援してくれていましたし、他にも背中を押してくださる方が多々いたので、決断をすることができました。そして大学院進学準備のために「就職活動をやめました」と周りに宣言して自分にハッパかけていました。笑
ただ、大学院という場所がどんなところで、どんな人がいるのか、全然わかっていなかったので、4月に入って1週間のうち3人の大学院生と会うという目標を立て、いろんな大学院生にお会いし、お話をきかせて頂きました。特別支援教育らしい研究を、「特別支援教育専攻でない研究室で」というこだわりだけは持って探していましたが、気づけば1ヶ月経つにもかかわらず、手応えがないまま不安ばかりが募っていきました。

悩んでいたそんなとき、本当に偶然、「学環とかいいんじゃない?」と、とある方に言われ、(当時「がっかんって何?」と思っていたくらい学際情報学府のことは知らなかった)たまたま現在は研究室の先輩となる安斎さんを紹介してもらった、というのが私の山内研との出会いです。初めて会った安斎さんとお話してて「探してたところはここなんじゃ?」とやっと前向きな気持ちになりました。その数日後、早速山内先生とお会いさせていただくことにもなりました。先生がNPO法人の代表でもあるので、そういう観点からも学べる、すごく贅沢な環境ではないか、と思いました。お話させてもらった際に、「まさに探してたのはここじゃないか!」と確信を得たことは今でも忘れられないですね。
(NPO法人 Educe Technologies http://www.educetech.org/

それからは必死な数ヶ月を過ごしました。研究の「け」の字もわからないなりに、研究計画書を考え、入試の勉強をして、初めて出会う言葉をひたすら身体に覚えさせたような記憶があります。それでも現在は、着々と研究が進み、わからないこともわかるようになってくるのだから、人間ってやればできるのだなぁ、なんて思っています。そしてやっぱりまだまだできないことだらけだなぁと痛感させてくれる贅沢な環境でもあります。

そもそも東大なんて絶対無理だと思って考えてもいなかったので、あの日の一言がなかったら、安斎さんと会わなかったら、私はずっと山内研の存在を知らなかったと思います。でも行きたい研究室に出会えたのは、あきらめずに「どんなことがしたいのか、この研究にどんな意義があるのか」考えては人に相談して、をただひたすら繰り返したからかなぁ、と感じています。

他大学のみなさん、特に、教育・学習について専門でない方でも、挑戦する価値はありますよ。入学が決まった方は来年度の研究室春合宿でお会いできると思うので、今から誰とお会いできるのか、とても楽しみです。


山田小百合

2012.06.27

【中間報告】21世紀型スキルを育てる授業

6月20日に、豊島区教育委員会・東京大学・マイクロソフト・レノボの共同研究として、豊島区立千川中学校で行われている21世紀型スキルを育てるためのICTを利用した授業について、中間成果報告が行われました。とりあげていただいた記事をご紹介します。

PC Online
東大、MS、レノボなどが「21世紀型スキル」を育む授業を公開

CNET Japan
現小学生の65%は今存在していない職に就く--マイクロソフトが教育事業に取り組む理由

マイナビニュース
タブレットPCで授業はどう変わる? - 東大、MS、レノボが実証研究の中間結果を公開

RBB TODAY
千川中学校の「21世紀型スキル育成」公開授業...日本MSらが実証研究

山内 祐平

2012.06.25

【山内研との出会い】山内先生との出会い

みなさま、ごきげんよう。修士2年の早川克美です。
研究室メンバーそれぞれの【山内研との出会い】を語る今回のシリーズ、バックナンバーも個性豊かで興味深いですね。今までメンバー間ではなんとなく雑談の中で語られてはいたものの、テキストでまとめられると「出会いの背景」が構造化されて見え、興味深いものがあります。個人的には1年越しに実現したいblogテーマだったので(大げさ?でも本当に)これから先の後輩、先輩方の記事が楽しみでなりません。

...いささか前文にて、勝手にハードルを高くしてしまったきらいがありますが(笑)、私、早川の【山内研との出会い】を心して書かせていただきます。

これまでのblogでもお話ししてきましたが、私は20年以上デザイナーとして働き、経験を重ね、40歳をとうに過ぎて東京大学大学院学際情報学府→山内先生の門を叩いた者です。山内研、そして山内先生に辿りつくまでには、20年を語る必要がありますが、そんなことをしていたら長編連載になってしまうため、出会いに至るまでのプロセスを5つにわけてお話したいと思います。

1.【デザイナーとしての領域】
私の仕事は「環境デザイン」という、まだ歴史は30年程度と浅く、定義も曖昧な領域です。領域、と言っていいのか?という疑問すらあります。したがって、以下は私の捉えている環境デザインについてです。
都市計画・土木・建築・インテリア・プロダクト・グラフィック...と私たちの生活環境は実に様々な職能領域による見えない境界で分けられ、思考され、計画されています。もちろん、日常生活でこの境界を意識することはほぼないことなのですが、この職能境界によって、私たちの暮らしや生活には、あたりまえになって感じなくなっている不都合が多々存在しています。人のふるまいや生活を起点として生活環境を見つめ直し、再構築することで、不都合は徐々に取りのぞかれ、生活環境の豊かさを実現できるのではないか。つまり、「人」を中心に、職能領域を横断的に捉え、つながり・関係性を意識して環境を思考する行為を「環境デザイン」であると考えています。

2.【環境デザインの社会的認知の壁】
近年、「人間中心デザイン」という言葉が良い意味で(と思っています)流行していますが、「環境デザイン」はずっとその考え方で行われてきたのです。ただ、「環境デザイン」は先にお話したように、社会においてその定義を広く曖昧にしてきたために、明確な言葉を持たずにきてしまいました。依然として、重要性の認知が低い状況にあると感じています。実際に、社会における様々なプロジェクトの中で、「環境デザイン」に関連する仕事は、土木や建築という確固とした専門性の中の一部門、「下請け」の扱いを免れてはいません。例えば建築においては多くの場合、計画の最後の演出・化粧のように扱われています。
私はこのことを重く受け止めてきました。「人」を中心にすえて考えるはずが、その「人」の核心に触れきれずに表層を飾ることを「環境デザイン」であるかのように扱っている残念な事例を目にするたびに、『なんとか変えたい』『どうしたらいいのか』を悩み続けました。まずは自分の仕事で。小さくても一つ一つの仕事を通して、自分の考えを社会に伝えていきたいと挑戦してきました。しかし、私のような者が行うことなど、たかが知れています。そこでデザイン団体に入り、運動としても表明していけないか?とも模索しました。しかし、長い歴史に支えられてきた職能を壊すことは当然のように容易ではありません。大小の挫折を味わいながら、「自分には何が足りないのか?」を考えるようになっていきました。

3.【仮説と検証】
仕事としてデザインを考える時、課題を抽出し、目的を設定し、その実現のための「仮説」を立て、計画し、具体化していきます。仕事は多くの場合、計画が完成すると完了します。そこで立てた「仮説」が想定通りだったのか?何が効いていたのか?何が足りなかったのか?等の「検証」を行うということがなかなかできないまま、次の仕事に移るわけです。いわば「仮説」を消費しているだけの状況。これでは、いくら重要性を説いたところで、社会に還元できるわけがありません。自分に足りないことは「仮説と検証」に取り組んでいないことなのだと、情けないほど時間をかけて気づいたのでした。

「学問」として捉える必要があるのではないか?
「研究」という取り組みが必要なのではないか?

もう遅いのではないか?今さらアカデミックに挑戦して何になるんだ!いや、違う。
これだけ時間がかかったからこそ、そこに進む意味を十分に感じているのでしょう?...
大学院に進もう、やっとこの思いに至ったわけです。

4.【東京大学大学院学際情報学府への興味】
環境デザインで進学候補を調べていくと、既成の学問領域の中で扱われている実態を知ることとなります。違和感をおぼえ、あきらめかけた時、そうだ!最高学府(誤用ですが。笑)を調べてみよう!と、バカ丸出しで、東京大学のwebに...。
大学院学際情報学府 を見ると、「...領域横断的な文理融合による新しい情報学の創造...」吸い込まれるような思いがしました。何日かおきにそのページを訪れては、スタンス(という表現は適切ではないと思いますが)に共感し、でも自分には無茶な話だとため息をつく日々。

5.【仕事仲間からの一冊の本】
時を同じくして、1年ほどもやもやしていたある日。仕事で大変刺激をいただいていた大先輩ともいえる方から「あなた、この本きっと面白いと思うよ」と一冊の本を手渡されたのです。
『「未来の学び」をデザインする 空間・活動・共同体美馬のゆり・山内祐平 著。
この本では「デザイン」を「目的、対象、要因、そこへ至るまでのプロセスなどを意識した活動」として、学習環境を構築するときの中心になる概念として使われていました。「つくって、語って、振り返る」ことの実践。...あぁ、これだ。腑に落ちる思いで巻末の作者プロフィールを見ると、作者のお一人である山内先生は学際情報学府の先生でいらっしゃいました。とにかくお会いしたい。お話を伺ってみたい。
そう思って、本をいただいた方に山内先生へのご紹介をお願いしたのでした。
真剣に悩み考え動いていると良いことって本当に訪れるものなんですね。(笑)


こうして私は山内先生と出会い、直接お話しする幸運に恵まれました。
最初に先生とお話しした率直な感想は「ひゃーなんて頭のいい人なんだ!」。
選ばれる言葉に何一つ無駄な要素がなく、的確で、私の言葉足らずの行間までお見通しのように、すぱっと鮮やかに回答くださいました。これはすごい方を発見してしまった!と自分の引きの良さに感激したほどです。
(この思いは、先生の意外なお茶目ぶりを発見する感動(笑)と共に、山内研に入ってからもますます強く確信されていくこととなります)

受験勉強、試験、合格...と無事に入学し、研究室に入ると、そこにはまた感動の先輩と同期の仲間達がいました。歳は若くても私にとっては先達です。こんな仲間に出会えたことも、一生の宝物だと思っています。

これまでの研究生blogからもおわかりのように、山内研メンバーのそれぞれの山内研との出会いは実に多様です。その多様な面々を柔軟に受け止め、厳しく、そして大きな優しさで選択肢や道を示してくださるのが山内先生です。

回り道(とも思っていないのですが)したからこそ、こうした出会いに恵まれたのだと、今までのすべてに感謝しています。

この連載、まだまだつづきます。次回以降もどうぞお楽しみに。

短くまとめるつもりがどうにも長くなってしました。
生きてきた時間が長い分、どうかご容赦くださいませ。
長文&拙文におつきあいいただきありがとうございました。

早川 克美

2012.06.17

【山内研との出会い】社会学と教育の重なり

皆様こんにちは。
【山内研との出会い】シリーズ、今回はM2の末が担当させていただきます。

なぜ今、私が山内研究室で修士研究をしているのか...
少しさかのぼってお話ししようと思います。

【国際関係学から始まった大学生活】
私は昔から歴史が好きだったのですが、特に近現代の日本と他国との関係性に興味を持ち、学部では国際関係学を専攻していました。国際関係学という学問はもともと、冷戦のさなかアメリカがソ連に対抗するために確立した学問であり、法学、経済学、社会学、歴史学など様々な領域が混じった学際的な学問で、4年間幅広く学ぶことができました。

入学当時は、国際政治や国際法などに興味があったのですが、授業を受けるうちに、例えば戦後和解などの問題は、政治や経済といった国同士のマクロの視点だけではなく、社会や文化に目を向け、人々の声に耳をかけるといった社会学やミクロの視点も重要であるということに気づかされました。またその中で、マイノリティや大衆の文化や生活の実態、政治の決定過程など、歴史として「残りえない歴史」を様々な立場の人へインタビューし、文字史料としてアーカイブしていく「オーラル・ヒストリー」という概念を知りました。

【アーカイブと教育の接点】
私は専攻を変えずに大学院に進学するつもりでいたのですが、次第にもやもやしたものが生まれていきました。それは、私自身が授業や卒論を通して様々なことを学ぶだけではなく、何か貢献をしたいということです。近現代史への興味は、いつしかオーラル・ヒストリーへの興味と代わり、その果てにはオーラル・ヒストリーを自らが研究するのではなく、たくさんの子どもたちがそういった活動に行ってほしい、そして私はその支援をしたいのだと考え、教育に興味を持つようになりました。

それはもともと、私自身が幼い頃に祖父母から聞いていた、戦争体験の話や若い頃の思い出話が心に残っていたからだと思います。これらの思い出話は、自分自身が生きる現代とは、暮らし方や考え方の異なる世界であり、同じ日本であってもこんなにも違うのかと幼いながら驚きました。また、当時の様子を想像し、教科書で学んだ歴史と結びつけて考えることは個人的にもとても面白く、歴史の理解が深まり、私自身の歴史好きが形成されたのではないかと感じました。

【先輩との出会い】
そんなことを考えていた時に出会ったのが、研究室の先輩である@YukiAnzai こと安斎さんでした。当時M1だった安斎さんは、大学生向けにワークショップを開催していました。そこで初めてワークショップというものに触れ、教育工学というアプローチがあることを知り、この領域でならば自分の興味に従って研究ができるのではないかと考えました。また、学際情報学府は、メディア、社会学、歴史学など、私が学んできたことを活かしながら、研究できるのではないかと考え、受験を決めました。

実際に入学してみて、学際的という意味で横に広がる学びと、研究室で一つの研究を深めるという意味で縦に深めていくことができる場所であると感じています。教育に関して幅広いテーマを受け入れてくださる研究室であり、実践的な活動を行いながら研究を行うのでとても有意義な研究生活を送っています。

現在も、実際に高校でオーラル・ヒストリーを用いた授業をさせていただいており、夢が叶って嬉しいです。この実践活動をしっかりと研究に落とし込み、修士論文を書き上げたいです。

末 橘花

2012.06.12

【エッセイ】教員志望の大学生と授業でのICT活用

 佐賀や大阪で、生徒一人一台の情報端末の整備が発表されるなど、日本でも教育の情報化に関する具体的な動きが出てきています。
 しかし、学校において情報機器を授業に統合するのは教員であり、端末が整備されても授業が変わらなければ学習の改善は見込めません。隣国である韓国の教育の情報化は世界一といってもよい速さで進んでいますが、その背景には10年以上かけて実証実験を広げ、教員への普及をはかってきた経緯があります。そういう意味で今後の教育を担う教員志望の学生に期待がかかります。

東京大学教育学部に在籍している中野啓太氏は、『せんせいしょん―教員養成と大学生活に関する調査報告書―』 (発行 東京大学 教育学部 総合教育科学科 比較教育社会学コース 2012年5月20日) の中で、1389名の教育系学部の教員志望の学生に対し、授業でのICT 活用について関心をもっているかどうか、また関心がどのような要因に規定されているのかを実証的に検討し、以下のような知見を得ています。

1)教員志望の学生は授業でのICT 活用に一定の関心(74.2%)をもっている。

2)高校時代に情報を効果的に活用できていた学生の方が授業でのICT 活用に関心をもっている。(9ポイント差)

3)インターネットを能動的に使いこなしたり、情報活用を効果的に行えなかったりした学生でも、学校現場でパソコンやインターネットを活用している様子を見ると、自らも授業でのICT 活用に関心を持つ。

 この研究から、教員になりたい大学生は、ICTによって自分の将来の授業がよくなることが理解できれば活用してみたいと考えていることがわかります。学生に学ぶ意欲がある以上、できるだけはやく、大学の教員養成においてICTを取り入れた授業実習を必修化できる体制を整えることが重要なのではないでしょうか。

山内 祐平

2012.06.09

【山内研との出会い】山内研との出会い

皆様、こんにちは。M2の呉重恩です、新しいシリーズの第2回をお送りさせていただきます。

なぜこの研究室に入ったのですか?という質問はいろんな人に聞かれていました。一応オフィシャルな回答を作りました:
「文理融合の情報学環で幅広い分野の知識を学んで、総合的な人材になり、将来社会に貢献したい...bla bla」
どうでしょう...こんな派手なウソを信じてくれる人がほとんどいなかったんですが、父に留学を許可してもらい、さらに仕送りを払わせる時にこの言い方が機能していたのでよかったです。

留学の情報を調べていたときはまだ中国にいましたので、たとえ自分が行きたい研究室があっても見学できないし、第一に情報の入手が難しかったです。もともとこれといった研究をしたい!という強い志を持っている人間ではないので、研究をしたいよりも留学に行きたい気持ちが強いかもしれません。そういう背景で、留学について調べ始めました。


なぜ日本?―あの頃、日本に興味を持っていましたから
なぜ東大?―恐らく日本人の学生達が東大を憧れる理由と同じでしょう
なぜ学環?―留学を申請したとき、締切りまだ来ていない研究科は学環しかなかったから(入試の時間は他の研究科とかなり違っている)
なぜ山内研?―中国にいたから、研究室に関する情報をブログというルーツ以外からなかなか手に入れられませんでしたから、山内研究室が様々な研究室のうち、とても綺麗で分かりやすいブログを持っているので、すぐ好感を持ってきました。

そういえば、山内研に入ったのはブログのお陰だったのですね。そして今は山内研の一員としてブログを書いているなんて、なかなか不思議な感じでした。


山内研のメンバー達とリアルで出会ったのは09年の秋でした。ちょうどゼミの時間で、福武ホールの会議室でした。ピンク系ストライプのシャツの山内先生、黒の服の池尻さん、柴田さん、安斎さんと帯刀さん、薄色のカーディガンの伏木田さん、ライトグリーンのシャツの程さん・・・という印象でした(なぜかくだらないものばかり覚えていて、どうやらわたしの記憶力が重要性フィルター機能がないみたいです)。

時間の経つのが速いです。あっという間にもうm2になって、ここにいる時間が半年ぐらいしか残っていないです。残りの時間をいっぱい楽しんで、良い研究ができるように頑張りたいと思います。

2012.05.31

【山内研との出会い】教育部からの出会い

皆様お久しぶりです。M2の河田承子です。今週より新シリーズ、「山内研との出会い」をお送りさせていただきます。よろしくお願いいたします!

私が山内先生のことを知ったのは大学3年の時でした。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、東京大学大学院には情報学環教育部という機関があります。この機関に所属する学生は教育部研究生と呼ばれ、東大の学生や他大学の学生、社会人など様々な方が入学されています。当時私は他大学に所属していたのですが、面白そうな所だなと思い大学3年の1月に受験をしました。運良く合格することができ、大学4年から教育部の授業に参加するようになったのですが、最初から衝撃の連続でした。授業に行くと、皆がMacを開き活発に意見交換をしています。大学院に入学してからはこの光景は当たり前になりましたが、当時PCを授業に持ち込む生徒なんて珍しい大学にいた私にとっては、「場違いな所に来てしまったな」と思いながら過ごしていました。

そんなスタートでしたが、慣れてくると色々な方がいるこの環境はとても刺激的でした。特に、研究生と学府の修士を掛け持ちされている方から伺った、学府の授業の内容や研究活動のお話は非常に魅力的で、ここで学びたいと考えるようになりました。
当時の私は、大学で異文化間コミュニケーションについて学んでいたのですが、副専攻で学んでいた幼児教育に傾倒しており、大学院では子どもや親の教育に関する研究をしたいと考えていました。大学院で何を研究したいのかを考えるうちに、学部時代にベビーシッターをしたり、幼稚園でアルバイトをした経験から、「育児情報と親」に着目して研究をしていきたいと思うようになりましたが、同じ大学の院に進学するか他大学を受験するかで迷っていました。そんな時に、学情報学府での研究生活の話を聞き、トライしてみようと思ったのが受験の動機です。

山内研を志望することはその段階で決めていました。というのも、教育部を受験する時に山内先生の著書『「未来の学び」をデザインする』を読んだり、教育部の先輩から山内研のお話を伺うなかで、私がやりたい研究はこの研究室でしか出来ないな、と思ったからです。同じ頃に大学で永野和男先生の授業を取っており、ここで研究とは何か、教育工学とは何かを学んだことも大きく影響したと思います。ただ、研究室訪問をせず、先輩方がどのような研究をされているのか知らずに受験してしまったので、しておけばよかったかなと少し後悔しました。

このような、色々なご縁が重なり、現在は「母親と育児情報活用に関する研究」をさせていただいております。入学してからの半年はとても大変でしたが、毎日充実した研究生活を送っております。残りの修士生活を悔いのないよう、これからも日々精進して参りたいと思います。

M2 河田承子

2012.05.28

【論文募集】情報化社会におけるインフォーマルラーニング

▼編集委員として以下の特集号の仕事をさせていただいております。
〆切は2013年2月6日です。投稿をお待ちしております。

日本教育工学会論文誌 特集号 論文募集
「特集:情報化社会におけるインフォーマルラーニング」のご案内(第一報)

 情報化の進展により,学校教育以外の学習機会が増えています.eラーニングによる在宅学習やユビキタス機器を用いた体験学習を始め,ワークショップ,サイエンスコミュニケーション,博物館,企業における人材育成などの領域において,情報通信技術を活用した生涯学習の基盤が整いつつあります.また,初等中等教育における総合的学習の時間や大学のプロジェクト学習などにおいて,学校外学習と連動する試みが行われるようになってきました.シリアスゲームやソーシャルラーニングなど新しい方法も導入されています.本特集号では,拡大しつつあるインフォーマルラーニングやノンフォーマルエデュケーションの実践について,今後の学習環境の充実に寄与する論文を募集します.

1.対象分野
(1) eラーニングによる在宅学習
(2) ユビキタス機器を用いた体験学習
(3) ワークショップ・サイエンスコミュニケーション
(4) 博物館における学習
(5) 企業における人材育成
(6) シリアスゲーム・ゲーミフィケーション
(7) ソーシャルラーニング
(8) 学校外と協働する初等中等教育での取り組み(総合的学習やキャリア教育など)
(9) 学校外と協働する高等教育での取り組み(プロジェクト学習やサービスラーニングなど)
(10) その他インフォーマルラーニングに関する実践研究など

2.募集論文の種類
 通常の論文誌と同様に,「論文」「システム開発論文」「教育実践研究論文」「資料」「寄書」を募集します.それぞれの論文種別については,投稿規定をご覧ください.論文の査読は,通常の論文誌の場合と同じです.ただし,査読は2 回限りとし,編集委員会が示した掲載の条件を修正原稿で満たさない場合は採録になりません.「ショートレター」として既に掲載されている内容を発展させて「論文」として投稿することも可能ですが,単に分量を増やして詳細に説明しただけでは発展させたことになりませんので,ご注意ください.なお,     
本特集号へ投稿された論文が特集号編集委員会にて対象分野外と判断された場合には,一般論文として扱うことになりますので,あらかじめご了承ください.
 なお,特集号編集委員会では,本特集号のテーマの特徴から,インフォーマルラーニングやノンフォーマルエデュケーションに関する実践を「教育実践研究論文」,あるいは「資料」の条件を満たすようにまとめ,積極的に投稿していただくことを期待しています.

3.論文投稿締め切り日(2013年11月発行予定)
 投稿原稿を02月06日までに電子投稿をお願いします.ただし,02月13日までは,論文を改訂することができます.締め切りの延長は行わない方針です.
投稿原稿提出締め切り(電子投稿):2013年02月06日(水)
最終原稿提出締め切り(電子投稿):2013年02月13日(水)

4.論文投稿の仕方
 原稿は,「原稿執筆の手引」(http://www.jset.gr.jp/thesis/index.html)に従って執筆し,学会ホームページの会員専用Web サイトから電子投稿してください.郵送による投稿は受け付けないことになりました.

5.問合せ先
日本教育工学会事務局
Tel/Fax:03-5740-9505
電子メール:tokushu2013 [atmark] jset.gr.jp

6.特集号編集委員会
検討中

2012.05.26

【D3の研究計画】歴史的類推を現代の問題解決に応用する力を育成する学習方法の提案

こんにちは、【研究計画】シリーズ、最終回はD3の池尻 良平がお送りします。

早いもので、山内研に入ってはや5年が経ち、そろそろ博士論文を視野に入れる時期になってきました。今年度は博士論文を書くことを目標にしようと思っていますので、今回はその構想を書いてみたいと思います。

僕が山内研に入ってきて研究していることは、高校生が歴史的類推を現代の問題解決に応用できる学習方法のデザインです。

歴史的類推は、実は社会の色んなところに溢れています。例えば、統制実験のできない外交政策を決める際は、政治家は過去の政策例をもとに予測していることがアメリカの研究で明らかになっています。そもそも歴史という概念が生まれたギリシア時代では、歴史は同じような社会的問題に直面した際に参照できるような知として扱われており、歴史は社会で応用できるポテンシャルを秘めた、特殊な情報形態なのです。

ところが、実際の歴史教育では暗記教育が多いのが現状です。それを問題視し、ここ20年は歴史家の熟達した思考(歴史的思考力と呼ばれています)を生徒に教えようという動きが活発になり、当時の歴史的背景に共感できるようになったり、自分達で史料を使いながら歴史の因果関係を作ってみたり、史料と史実を照らし合わせてより妥当な解釈を行うことが目標になっています。

これ自体はとても良い傾向なのですが、歴史家を育てることが目標なのかという疑問の声も出始め、もっと歴史を実用的な過去と捉えることも大事なんじゃないかという意見も多く出てくるようになりました。

ところが、歴史的類推を現代の問題解決に応用できる学習方法っていうのは、実はまだ確立されていないんです。最近は、デジタル・アーカイブを利用した学習方法が開発されたり、コンセプトマップ式の教材が開発されたり、史料を引用できるブログ型のツールが開発されたり、歴史のシミュレーション・ゲームが開発されたりと、教科書を読むだけじゃない色々な学習方法が生まれてきました。ところが、このような上に書いた歴史家の持つ歴史的思考力を育成する学習方法であって、これだと現代に応用はできないのです。(ちなみに、この歴史的思考力のバリエーションとそれと対応する学習方法は現在論文としてまとめているところです)

そこで、僕の研究の登場というわけです。まずはじっくり歴史が現代に与える影響をじっくり細かく調べていったのですが、その結果、歴史が現代に与える影響は大きく以下の2つに分かれることがわかりました。
(1)問題の原因構造の分析に役立つ
(2)多様な解決策の生成に役立つ

修士の研究では(1)を目標に、高校生が産業革命の労働問題を下敷きにして現代の労働問題をマクロに捉えることができるゲームをデザインしました。(実際の教材はコチラに載せています。自由にDLできるので、ぜひご利用下さい)

博士の研究では、(2)を目標に、経済を活性化させた様々な歴史上の人物の政策を高校生が利用しつつ、現代の日本の経済を活性化させる政策を多様に作れるゲームをデザインしました。(詳しくはコチラよりどうぞ)

それぞれの目標に特化したゲームを、どのように統合するのか。また、教材を作る際のポイントは何か。歴史と現代が繋がるテーマは何か。高校でもこのような目標が掲げられつつあるけども、カリキュラムにどう組み込むか。歴史だけじゃなく、現代の知識もどう連動して生徒に教えていくか。

博論の結論ではこのような疑問を解消しながら、高校生が歴史的類推を現代の問題解決に応用できる学習方法を提案しようと考えています。


[池尻 良平]

2012.05.18

【D2の研究計画】汎用的技能に着目した学部ゼミナールに関する研究


みなさま、こんにちは。
あっという間に、新緑のきれいな5月も半ばに差しかかりましたね。
【今年の研究計画】シリーズ、今回はD2の伏木田稚子がお送りいたします。

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これまでの研究
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 私はこれまで、学部ゼミナールでの学生の学習経験に焦点を当てて、研究を行ってきました。具体的には、学部2、3、4年生を対象に、専門教育の授業科目として成立しているゼミナールについて質問紙調査を実施しました。その結果、(a)発表・議論や教員による指導は、学生の学習意欲や共同体意識の醸成に影響を与えていること、(b)学習意欲や共同体意識は、学生の汎用的技能(問題解決力や対人関係力など)の成長実感に影響を与えていることなどが明らかになっています。

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これからの研究
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背景
 ゼミナールの実践は多くの場合、教員個人の「技」に還元して論じられます。現場対応の出たとこ勝負といったブリコラージュの面が強く、方法があるのかどうかも分からない(船曳 2005)という声もしばしば聞かれます。その一方で、誰が担当するかでゼミナールの教育効果(e.g 汎用的技能の成長)には大きな差が生じるという指摘もされています。
 ある授業の有効性を検討しようとする場合、学生が得た経験の内容や質だけでなく、教員の指導や教授のあり方に焦点を当てることも重要です。教員の授業過程を評価することには、教員自身が授業過程を評価することに加えて、学習者側の反応を調べることも含まれます。

目的
 そこで今年度の研究では、学部2・3・4年生を対象に開かれている専門教育としてのゼミナールについて、①教員による授業構成の実態を明らかにすること、②その上で、授業構成と学生の学びの関係について実証的に検討することを目的とします。

方法
 多様化しているゼミナールの実態を広く捉えるために、質問紙調査を方法として採用します。東京都内に本部がある大学の、人文科学・社会科学・総合科学系学部に所属している教員(専任講師以上)と、その教員が担当しているゼミナールの受講学生(2・3・4年生)を質問紙調査の対象とします。
 教員用調査票は、「学生の特性把握」、「教育目標・学習目標の設定」、「学習活動(前期・後期)の設定」、「発表・課題に関する指導」などに関する質問項目を中心に作成しました。学生用調査票は、「学習意欲」、「共同体意識」、「汎用的技能の成長実感」、「充実度」に関する質問項目を中心に作成しました。両調査票を用いた質問紙調査は、2012年1月~3月に実施し、回答データの収集を完了しています。

今後の方針
 今後は、回答データをもとに分析を行う予定です。最終的には、①授業構成の理論モデルを提案すること、②授業構成が汎用的技能の成長実感に与える影響を検討することを目標にしています。


[伏木田稚子]

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