2012.07.27
博士課程2年の安斎です。山内研究室に進学して早いもので、気づけばもう4年目です。僕が山内研究室の存在を知ったのは、大学3年生の時のことでした。
僕は学部時代、東京大学の工学部の精密機械系の学科に所属しており、インダストリアルデザインやプログラミングなどを学んでいました。しかし、所属する学部の専攻内容よりも、教育や学習に関心が移ってきており、会社を立ち上げて教育系ウェブサービスを運営していたり、中学生向けの連続ワークショップなどの実践活動に積極的に取り組んでいました。
おかげで、それはもう絶望的に単位が足らなかったんですよね(笑)にもかかわらず、通常の大学の授業というのは普通「1授業あたり2単位」が割り当てられていますが、工学部の授業はなぜか「1授業あたり1.5単位」で、しかもたいていの授業に筆記試験があるため対策が結構大変なのです。そんなお尻に火がついた状況で目をつけたのが、「他学部聴講」という他学部の授業を履修できるシステムです。少しでも自分の関心に近い授業はないかと他学部のシラバスから探していたところ、たまたま目に留まったのが山内先生が教育学部で開講している『学習環境のデザイン』という授業でした。なんとなく面白そうなタイトルだし、試験もないし、2単位ゲットだ!と思ってとりあえず履修登録をしてみることにしました。
授業内容自体は「デジタル教材」に焦点を当てたもので、そこまで自分の興味対象ではなかったのですが、第1回目の授業で山内先生が「学習環境デザインとは、人が自発的に学び、賢くなる仕組みを作ることです。」というようなことを仰っていて、その一言に自分の潜在的な関心を射抜かれた想いがし、直観的に「ここの研究室で研究が出来たら面白いことが出来るかも」と感じました。また、授業の内容も、山内先生はほとんど講義を行わず、学生による調査・発表・議論で構成される参加型の授業スタイルで、想像を超えた歯ごたえのある内容で、授業設計としても興味深く感じた記憶があります。その後は先生の書籍を読み、研究室を訪問し、情報を集めて受験をし...今に至ります。
正直に言うと、学部生の頃の自分は、教育や学習の分野において研究者の力をそこまで信じておらず、学会にこもって論文を書いているだけでは世の中を変えられるはずがないと思っていました。けれども、学際情報学府に入って山内先生をはじめ、魅力的な研究者に沢山出会い、学問を軸足に起きながらももう片足で実践活動を展開しながら社会にインパクトを生み出すようなスタイルに可能性を感じ、研究と実践を続けています。
とはいえ、この先のキャリアがどうなっていくかはわかりません。あの時単位がもし足りていたら、今の自分はなかったかと思うと、キャリアは偶然と直観の積み重ねによってつくられていることを強く実感します。もしかすると10年後、何かの拍子で研究者じゃなくなっているかも...。などと、色々な未来を妄想しながらも、自分の「いまの直観」を信じて、引き続き楽しく進んでいきたいと思います。
【安斎勇樹】