2012.06.12
佐賀や大阪で、生徒一人一台の情報端末の整備が発表されるなど、日本でも教育の情報化に関する具体的な動きが出てきています。
しかし、学校において情報機器を授業に統合するのは教員であり、端末が整備されても授業が変わらなければ学習の改善は見込めません。隣国である韓国の教育の情報化は世界一といってもよい速さで進んでいますが、その背景には10年以上かけて実証実験を広げ、教員への普及をはかってきた経緯があります。そういう意味で今後の教育を担う教員志望の学生に期待がかかります。
東京大学教育学部に在籍している中野啓太氏は、『せんせいしょん―教員養成と大学生活に関する調査報告書―』 (発行 東京大学 教育学部 総合教育科学科 比較教育社会学コース 2012年5月20日) の中で、1389名の教育系学部の教員志望の学生に対し、授業でのICT 活用について関心をもっているかどうか、また関心がどのような要因に規定されているのかを実証的に検討し、以下のような知見を得ています。
1)教員志望の学生は授業でのICT 活用に一定の関心(74.2%)をもっている。
2)高校時代に情報を効果的に活用できていた学生の方が授業でのICT 活用に関心をもっている。(9ポイント差)
3)インターネットを能動的に使いこなしたり、情報活用を効果的に行えなかったりした学生でも、学校現場でパソコンやインターネットを活用している様子を見ると、自らも授業でのICT 活用に関心を持つ。
この研究から、教員になりたい大学生は、ICTによって自分の将来の授業がよくなることが理解できれば活用してみたいと考えていることがわかります。学生に学ぶ意欲がある以上、できるだけはやく、大学の教員養成においてICTを取り入れた授業実習を必修化できる体制を整えることが重要なのではないでしょうか。
【山内 祐平】