2014.04.20

【今年度の研究計画】高校生を対象にした柔軟なキャリア展望を学ぶワークショップの実践と評価???

こんにちは。まだまだ、朝晩は冷えますが
桜も散って、すっかり新しい生活にも慣れてきましたね。
新年度第2回目のBlogはM2の池田めぐみが担当させて頂きます。

私はざっくりいうと、高校生向けのノンフォーマルなキャリア教育の実践プログラムを考え、その効果を測るというような研究をしたいと思っています。
また、現状のキャリア教育の①将来の見通しを一つにしぼりこませる傾向と②高大接続において、大学でのノンフォーマルな活動を軽視している点に違和感を覚えています。

そこで、4月2日に行われた学際情報学府の修士論文構想発表会に以下のような研究計画のアブストラクトを提出しました。

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技術の進化とグローバル化により、労働と雇用の在り方が変革期を迎え(Gratton 2011)若者を取り巻く 労働環境も厳しさを増している。また、大学全入時代に突入し"とりあえず"進学する若者が増え(文部科学省 2006)退学率も上昇している。これらのことから高校でのキャリア教育は重要度を増しており、実際に高校ではインターンシップや社会人の講演、大学の授業の聴講など、将来の見通しの形成を重要視した取り組みがなされている。しかし現行のキャリア教育には以下二点において問題がある。1つは、将来の見通しを一つに限定する危うさを意識できていない点である。児美川(2012)が、「この先は一人の人間が40年以上同じ仕事を続け、同じ会社で働くという時代ではなくなり、途中で転換する力も必要になってくる。すなわち、個人がキャリアを開発する時代であり、キャリア教育にはこうしたことへの視野が必要である」と指摘するように、個々人のキャリア転換が頻繁に行われる社会において、見通しを1つに絞り込ませる現行のキャリア教育では、その職業が未来においてなくなった場合、その職業に当人がつけそうになくなった場合危険をはらむ。もう1つは、高大接続において、大学におけるノンフォーマルな学びを軽視している点である。政策研究・研修機構(2007)の進路が決定した大学4年生向けの調査によると、「進路選択で役立った大学の経験」として「経験の場」(ゼミ・研究、授業、サークル活動、アルバイトなど)を挙げる学生が全体の59.3%いること、中でも授業・講義よりも、サークル活動や、アルバイト・仕事を重要と挙げる学生の方が、相対的に多かったことが明らかになっている。このように、ノンフォーマルな活動が進路選択に影響を与えることが明らかになっているにも関わらず、現行の高大接続の取り組みにおいては、学部選びにおける大学の授業の聴講等正課内の学習しか着目されておらず、高校生が大学生の正課外の学びについて知らないのが現状である。そこで、本研究では学びに着目しながら参加者の興味にそった参加者のとりうる複数のキャリア展望を描く高校生向けのークショップを開発し、その効果検証を行う。
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しかし、ご覧の通り、今の研究計画のままでは
実践の計画がうんぬんの前に
自分が問題だと感じる部分を綺麗に、しっかりと指摘することができていません。

なので、先行研究をレビューし、現行の高校でのキャリア教育の問題点の指摘をしっかりできるようにするというのが今の課題です。
よって研究の方向性もかわるかもですな。
ぬううううう!がんばらねば!えむに。。。。。。。。。!

そんな感じで、未熟に未熟を重ねたような私ですが今年度もどうぞよろしくお願いします。。。。。。。。!


池田めぐみ

2014.04.13

【今年度の研究計画】他者との相互作用を用いた学習計画のプランニング支援システムの開発と評価


みなさま、こんにちは。
ylab修士2年の青木智寛です。本年度もどうぞよろしくお願いします。
早いもので、修士生活2年目=修士生として折り返しの地点にやってきました。
去年の今頃、まだ何もわからなかった頃に比べると、かなり専門的な内容に関する知識も増え、自分の関心のある領域において、どのような研究が盛んに行われており、何が問題として挙がっているか、ある程度全体像を把握できるようになりました。
1年間ひたすら調べる活動を続け、年度末には実際に高校生にインタビューすることもでき、現在、より具体的に自分の研究の形を作っている最中です。
まだ、暫定的なものではありますが、現時点では以下のような研究を進めようと思っております。

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●他者との相互作用を用いた学習計画のプランニング支援システムの開発と評価●


【背景】
 近年、教育における「自ら学ぶ力」をもった自律的な学習者の育成が重要視されており(市川 1995)、人の学習の自律性について説明する理論としては、自己調整学習という理論が注目されている。
 自己調整学習とは、「学習者が課題の解決のために計画を立て、モニタリングを通じて、自らの認知、行動、意欲の調整を図る過程」(Hadwin et al. 2011)のことである。
 人間の認知的活動には認知的活動とメタ認知的活動の2つがあり、ともに自己調整学習における重要な役割を果たす。メタ認知に関する学習方略は自己調整学習の要素として必ず含まれている方略であり(佐藤 1998)、おもに認知の調整と制御に焦点をあてている。具体的には、課題を分析して目標を設定する「プランニング」や、自分自身の理解を確認するため自問自答する「モニタリング」、自分の認知活動がうまくいくように整える「調整・制御」などがある(Pintrich et al., 1993)。これらのメタ認知的な学習の要素に着目すると、プランニングに焦点をあてた研究がいくつか見受けられる。
 学習課題を先延ばししないためには正確なプランニングをすることが有効であり、(藤田 2010)学習者は成長に従ってプランニング方略を習得していく(野上,丸野 2005)ことが明らかになっている一方で、プランニングに対する知識を習得することは必ずしもその実行につながるわけではないことも指摘されている(Pintrich & Schrauben 1992)。森(2004)の研究によれば、プランニングに対する知識があっても、そのコストを認知していると使用が抑制される。

実際、私が高校生を対象におこなったインタビューでも、定期テストまでに与えられた学習内容について勉強しなければならないことはわかっており、それを実現するために学習計画を立てる方法は知っていながらも、実際に計画を立てるには至らないと言った声を多く聞いた。


【目的】
 そこで本研究では、学習者がプランニングを実際に行うことができるようになるために、プランニング方略に対する「有効性の認知」に着目する。有効性の認知によって自身のプランニング方略の調整をするシステムを開発し、実践を通じて評価することを目的とする。


【方法】
プランニング方略の価値を認識させるために、「他者との相互作用」を利用する。他者との相互作用とは学習者同士で可視化されたプランニングの調整過程を確認し、それをもとにコミュニケーションを取ることである。これを実現するためのアプリケーションを開発する。
(UIについては検討中)


【実践】
対象期間: 定期テスト前の2~4 週間(中長期におけるプランニング調整の変化を追う)
対象とする学習者: 高校生(学習者はプランニング調整能力の発達段階にあると思われる)
学習目標: 定期テストにおいて試験範囲に含まれる学習課題を完了させること

1グループ10名前後の学習者の集団に、支援システムを利用しながら学習を進めてもらう。

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...と研究計画を立てたものの、研究の意義や、成功可能性など、詰めるべき部分は多々残されており、まだまだ根本からひっくり返る可能性を残したものとなっております。
今後もさらに先行研究を調べ、問題の明確化、支援原理の必然性なども含めて、柔軟に研究計画をブラッシュアップしていきたいと思います。


青木智寛

2014.03.28

【5年間をふりかえって】急がば回れ


梅が散り、杏子が満開を迎え、桜のつぼみがほころび、春が巡ってきました。
1年で1番、おだやかな気持ちになれる暖かい季節ですね。
2013年度のYlabブログの最終回は、D3の伏木田が担当させていただきます。

大学院生活は早くも5年目が終わろうとしていますが、学部時代も含めるとかれこれ9年もの間、大学という学び場を堪能させていただきました。
決してひたむきに勤勉というわけでもなく、集中力に長けているわけでもないわたしが、こんなにも5年間をのびのびと過ごすことができたのは、ひとえにたくさんの方々の支えがあったからだと心から感謝をしています。


修士に入る直前、それまで心理学専攻でお世話になっていた先輩が、こう言ったのをとてもよく覚えています。
「君は何年に1人という逸材ではないけれど、こつこつ頑張り続けたらきっと、そういう人の背中が見えるくらいには追いつけるかもしれないよ。」
...だから頑張れ。
その人はそう励ましてくれたんじゃないかなぁといい方に解釈をして、そこから大学院生活がスタートしました。


それから1年後のちょうど今頃、その後4年間にわたって研究の手ほどきを教えてくださった助教の方から、こんなメッセージをいただきました。
「走り始めたら止まれないから。」
そのときは、なんでこれから走ろうとする人にそんな恐ろしいプレッシャーを...と思ったのですが、そのタイミングで言っていただいたからこそ、これまでめげずに自分らしく走れたように感じています。
止まれないなんてまたまた...と思って、しょっちゅう隙を見てはサボっていたわたしですが、"止まるなら潔く、止まった後はその分取り返そう"という気概をもって前を向き直すことができたのも、そのひと言のおかげだと思っています。


そして、博士課程に進む年の春、なんとはなしに落ち込んでいたときに、ある先生がかけてくださった言葉に救われました。
「いろいろなタイプの人がいるのだから、無理に野望を持とうとしなくていい。」
何かを変えたいという強い意志もなければ、絶対にこれがやりたいという信念もない。
その代わりに、目の前に見える景色の中で、自分ができる最大限の努力をしたい。
そう心では決めていても、ほんとうに今のペースで進んでいいのかなと不安になっていたときに、"このまま、こつこつと歩みを止めないようにいこう"と思い直すことができました。
そのときのほっとした瞬間を、今も大切に心にとめています。


IMG_2861.jpg


その時々に、悩んだり大声で文句を言いたくなったりしましたが、"やめたい"と1度も思わずに済んだのは、「あなたが好きで選んだ道でしょ」という、突き放すようで思いやりにあふれた両親の励ましがあったから。
圧倒的に優秀な人に出会うたびに、律儀にも毎回きちんと凹んでいましたが、「人は人我は我」と言い聞かせながら少しずつ成長しようと背伸びができたのは、たくさんの友人がみんなそれぞれに頑張っていたから。
どんなに大変でも、"つらい・忙しい・大変の3ワードは絶対に言わない"という自分の中の決まりごとをそこそこ貫けたのは、もっともっと過酷な状況で自分を削りながら挑み続ける友人がいたから。


今あらためていろいろなことに思いを馳せながら、"ほんのちょっとでも自信がほしい"ともがき続けた5年間の日々をふりかえってみました。
研究だけでなく、仕事やそれ以外の時間を一緒に過ごしてくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。
危ない道よりは遠くても安全な道を、急ぎ過ぎて転ぶよりはゆっくりと確実に、そんなふうにこれからも進んでいきたいと思っています。
4月からは情報学環 特任助教として、もうしばらく本郷の地にお世話になります。
どうぞよろしくお願いいたします。


伏木田稚子

2014.03.22

【5年間をふりかえって】初心忘れるべからず

D3の安斎勇樹です。5年間にわたる大学院生活も早いもので今月で終わり。これが最後の研究室ブログの更新となってしまいました。これまでの5年間を総括しながら、いまの心境を綴りたいと思います。

安斎が入学の頃より掲げていたテーマは、「研究と実践の両輪を回す」ということでした。工学部からの進学で、入学時は学問的なバックグラウンドはなにもなく、あるのはわずかな実践感覚のみでしたから、せめてその種を活かし、現場のリアリティをしっかりと掴みながら、社会に付加価値を生み出せる実践的研究者になりたい。そう考えながら、さまざまな活動に取り組んできました。研究もろくにでできない癖に「研究も実践も」と欲張ったおかげで、途中何度も足がもつれそうになりましたが、幸いにも指導教員の山内先生を筆頭に、周囲にはロールモデルとなる研究者や先輩方が沢山いらっしゃり、さらには日々刺激をくれる同期、そのほか活動を支援してくださる多くの方々など環境に恵まれて、自分が目標として当初から思い描いていた大学院生活は、おおむね実現できたのではないかと思います。

博士論文はまだまだ仕上がっておりませんが、取り組んできたワークショップの実践はおそらく200回を超え、研究成果は3本の論文と2冊の書籍にまとめることが出来ました。数としての成果が重要だとは思っていませんが、振り返るとその一つひとつの実績が積みあがるにつれて、着実に現場で視えることが増え、逆にわからなくなることも増え。そうした経験学習のサイクルを螺旋的に駆け上りながら、ワークショップデザイン論という未開の領域を探ってきた5年間だったと思います。苦しい時期もありましたが、総じてとても楽しく、面白く、とても幸せな5年間でした!

こうやって書くと、ややもすると「一人前の何者か」になれたかのような錯覚に陥りそうになりますが、残念ながらそんな感覚にはほど遠く。いまだに海外文献のレビューは遅々として進まずストレスを感じるし、文章はヘタクソで嫌になるし、知識量も足りなすぎる。ある一つの研究の型は身についたけど、その他の無数の方法論については素人同然。苦手意識のあった統計も、苦手なまま5年経ってしまいました...やばい...。そんな膨大な未熟さを抱えたまま、一つか二つの小さな武器をなんとか身につけて、ようやく戦場に立つ権利を得たのかな...という、そんな心境です。

4月からは、東京大学大学院情報学環の特任助教として、主にFLITのプロジェクトに取り組む予定です。ワークショップの専門性と接続しながらも、また新たなチャレンジが必要になりそうなプロジェクトです。また並行して、博士論文も仕上げなければいけません。研究者としてはちょうどフェーズが移り変わる、区切りの時期となりますが、大学院で積み上げたものを良い意味でリセットして、自分の未熟さから目を背けず、慢心せず、改めて一から知識と技術を積み上げていきたい!という想いです。もしどこかでサボってあぐらをかいていたら、喝を入れて下さいませ。引き続き、よろしくお願いします。

安斎 勇樹

2014.03.14

【1年間をふりかえって】驥は一日にして千里なるも、駑馬も十駕すれば之に及ぶ

みなさま、こんにちは。
M1の中村絵里です。


本日から10日後、モンゴルへ旅立ちます。

研究のフィールドがモンゴルに決まり、まずは本実践に向けた事前調査のために訪問することになりました。

昨年4月の時点では、実践先がモンゴルになるとは夢にも思っていませんでした。いえ、それどころか、今年1月の時点でも、フィールドがどこになるのかは全く予測不能でした。それが、実践先が決まってからは、その地がずいぶん前からフィールドとして予定されていたかのように、私の中にすんなりと「モンゴル」が浸み込んでいきましたので、不思議としか言いようがありません。

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この1年間をふりかえると、やはり駑馬なりに、たくさん走ったなぁという気持ちになります。

入学以前は、長らく社会人として普通に仕事をしてきていましたし、3人の子どもを持つ母親として育児をし、さらに妻としても家事などを細々としていました。そう考えると、20代の頃に思い描いていた道のスタート地点に降り立つまでに、ずいぶんと遠回りをしたものです。

4月に入ると、新鮮な情報の嵐に圧倒され、学びの一つ一つが楽しく、もっと知りたいという意欲が膨れ上がりました。しかし、如何せん駑馬なもので、目的地にたどり着くためには、人の10倍は走るという日々でした。例えば、文献はもともとの蓄積がなかったために、なるべくたくさん(可能な限り良質なものを)読むように心がけました。授業の中で発表があれば、その発表のために、いかに効率よく自分の時間を割くことができるかを考えつつ、ひたすら文献を調べてまとめる作業に注力しました。数々のグループワークでも、なるべく率先して調べたり、メンバーの調整役に回ったりして、脱落者を出さないように陰ながらグループを支える努力をしました。ゼミでは、先輩や同期の発表のときにも、どんなコメントやアドバイスが出ているのか、注意して耳を傾けていました。

と、ここまで書くと、なんだかとても優等生っぽくて嫌味な人のようですが、実際には、ただ目の前に次々に現れる山を乗り越えるのに、精いっぱい走り続けたというだけなのです。

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M1の1年間は、ふりかえると、とても幸せでした。

フルタイムで仕事をしていた時と比較すると、自分自身の声を素直に聞いて、今、何をすれば良いか確認しながら、前に進むことができましたので、心の中は平穏でした。

とはいえ、回り道や寄り道も、たくさんありました。家に帰れば、子ども達が起きている時間は、子ども達のための母業の時間。研究のための時間は、当然ながら、深夜か早朝に限られます。週末は、家族のための時間。家族行事や子どもの習い事とクラブ活動が最優先です。時間が足りないと感じることもしばしばありましたが、今できることを精一杯しようと心に決めて、時間はかかりながらも進んできました。

研究活動においては、まずは問題点を整理することから始め、研究のロジックを組み立てようと奮闘してきましたが、正直なところ、1年間では満足のいく着地点には到達できていません。

そんなこんなで、なかなか目的地にたどり着けない私を支えてくださったのは、山内先生をはじめ、研究室の助教の皆さま、M2~D3までの先輩方、そして困った時にお互い支え合える同期の仲間達でした。特に、今年度ファシリテーターを務めてくださった伏木田さんには、道に迷った時の指南役として大変お世話になりました。この場を借りて、皆様にお礼を申し上げたいと思います。

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来月からは、M2として新たな1年が始まります。
これからも、きっと回り道や寄り道をすることがあると思いますが、いつの日か、前を走る驥に追いつくことができると信じて、研究に真摯に取り組みたいと思います。

モンゴルの草原では、驥にも駑馬にも遭遇できるかもしれません。そのときは、驥を褒めたたえるだけでなく、駑馬の方もそっと労わりたいと思います。


【中村 絵里】

2014.03.03

【1年間を振り返って】少年易老學難成

皆さんおはようございます、こんにちは、こんばんは。山内研究室修士1年の青木智寛です。
早いもので大学院修士課程としての1年間が終わろうとしております。

今回のテーマにおいて、ブログのタイトルの流れが完全に出来上がってしまったので、これを崩すわけにもいかず、何かマイナーな故事成語を使ってやろうと、あれこれ考えていたのですが、やはり自分の頭から出てきた素直な言葉に落ち着けるのがいいだろうということでこのようなタイトルになりました。

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文字通り、あっという間の1年間でした。軒並みな表現ですが、正直、まだ数ヶ月ほどしか経っていないのではないかと思うくらいです。時間の経過を早く感じるのは、そこに注意が向けられないほど、熱中したり没頭したりすることが多かったから、とも思いますが、これは疑う余地もないことだと思います。

入学から4日間連続で行われた、概論(学際情報学概論Ⅰ)という洗礼を浴び、研究室ゼミ発表、基本的にグループワークかディスカッションで進む授業形態... 一度立てた研究計画も一旦保留に。自分がやりたいことは何なのか。価値のある研究は何なのかについて、一から作り直すことが始まりました。
前期はとにかく新たな環境での自分の創り方を必死に模索する数ヶ月でした。今までの自分が経験してきた「学び」のスタイルのどれにも属さない形態の学習に戸惑う日々を過ごしました。
特に、「読む」中心の形態の研究の進め方になれない自分にとって、読む、調べることに専念できたことは、非常に成長につながりました。そもそも「読む」とは何をすることなのかということから始まり、「読む」という行為に対する研究室のメンバーの皆さんとの意識の共有が徐々に図れてきました(ように思います)。言い換えれば、批判的思考が全然できていなかったのです。自分ではやっているつもりでも、まだどこかで漠然と読んでいたり感じていることが多く、自分という軸、自分の視点から、理論や文献の事例を比較検討しながら捉えるということができていなかったのです。(今でもまだまだ未熟ではありますが。)
それは、明文化こそされていませんが、毎週のゼミの時間に先生方、先輩方とのディスカッションの中で、またファシリテーターである池尻先生との会話の中で、自然に醸成されたことだと思います。山内研究室という「環境」から徐々に自分に浸透していくような学びでした。
そんなこんなで、夏の研究室合宿、共同研究のための出張、日本教育工学会全国大会への参加を経て、始まった秋学期、少し安定が見えました。ようやくなんとかやっていけそうだと感じました。
...が、そう安心したのもつかの間、学期末には重なる課題、発表。さらに追い打ちを掛けるように就職活動の開始。学期が終わってもまた、必死に疾走する日々がやってきています。きちんとしたRQも立ちません。今は研究の実現可能性を探るべく、現場に足を運ぶ毎日です。

とにかく、入学後、一度も止まらずにここまでやってきて、今もずっと走っています。おそらく止まったら再スタートはできないのではないかと思うくらいです。

でも、それでいいのだろうと思います。いかに修士課程という期間が短いかは、諸先輩方のお話やblog記事にも書かれていることだと思います。できることは本当に限られていて、気がついたら終わってしまうのだと思います。まさに「少年老い易く学成り難し」ではないでしょうか。

あと一年、限られた時間のなかで、邁進したいと思います。

(...なんだか血の気の多い文章を書いてしましましたが、とはいえ、適宜リフレッシュしながら進めていきたいです。とりあえず、春合宿の温泉が楽しみです。)

青木智寛
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2014.02.22

【1年をふりかえって】知らざるを知るとなす.これ知るなり


みなさまごきげんよう。修士2年の早川克美です。

山内研究室のブログも今回で最後の担当となります。
そのことはさみしいような誇らしいような不思議な気持ちです。山内研究室で過ごした3年間は私の人生において最も貴重な学びの時間であったと思っています。正直、この場を旅立つことは積み重ね始めた思考の拠り所を失うようで、大変心細い思いでいっぱいです。
...と、未練がましく最後のブログを終わらせてはいけません。笑。
本題にまいりましょう。

この1年をふりかえる。
長いようであっという間だったと言うべきところですが、正直、私にとっては果てしなく長く感じられた1年間でした。勤務している大学の授業で使用し、一般書籍としても出版する教科書の執筆・動画教材の開発と、修士論文が重なり、物理的にも精神的にもプレッシャーで押し潰されそうな1年だったからです。
時間軸で正確に書くと、今でも奇跡か?と思うほどとのギリギリの工程であったため控えますが、こうしてすべてを何とかカタチにできたことをご報告できることに感謝しております。

実は、今こうして書いていてる時になっても、この1年をうまくふりかえることができずにいます。気持ちの整理がうまくできません。あまりにたくさんの事があったためか、記憶が断片的で俯瞰することが難しい状態です。しかし、そんな中でも、印象的だった事がいくつかあります。その中でも最も鮮明な出来事は、修論を書いている時の気づきでした。

それは、修論を書きながら、様々な箇所で、ゼミの時に指摘をいただいてたことが脳裏に浮かび、やっと言われていたことの真意がわかったことでした。「あぁ、そういうことだったのか!」と何度机の上で頭を抱え、嘆息したかわかりません。何故、ゼミの時にわからなかったのかを考えました。それは、修論という器の構造を、書く時まで理解できていなかったということにほかなりません。書き進めれば進めるほどに足りない自分が明らかになっていく過程は、修論の構造を理解し完成させていく作業とは反比例に、内省を強いられる厳しく苦しい時間だったといえます。

「知らざるを知るとなす.これ知るなり」

この1年を表すとするならばこの言葉しかないでしょう。情けないことですが、何がわからなかったのかがわかった1年でした。そして、いつまでも落ち込んでいては、ご指導いただいた山内先生、助教の先生、研究室のみなさんに申し訳がたちません。足りなかった自分に正面から向き合い、学び続けていこうと思っております。


「現象に謙虚であれ」

山内先生からいただいた言葉を大切に胸に留め、山内研究室で得た学びを、自分の中にしっかりと根づかせて活動していきたいと考えております。

山内先生、山内研究室のみなさま、ありがとうございました。

そして最後に、
3年間にわたってブログを読んでいただき、ありがとうございました。

春はもうすぐですね。

早川 克美

2014.02.14

【この1年を振り返って】男児当に死中に生を求むべし

お久しぶりです.M2の吉川遼です.
本来であれば僕も今年で晴れて修了,さあ社会人!...,なのですが,現在ご縁がありフィンランドのアールト大学芸術デザイン建築学部(Aalto University, School of Arts, Design and Architecture)に留学させて頂いております.

Arabia

Aalto University, Arabia Campus. 昨年までMedia Labはこの建物内にあったのですが,今年よりHelsinkiの隣,EspooのOtaniemi Campusに引越してしまったため,あまりこちらに来る用事がないのが残念です.Alvar Aaltoが設計したOtaniemi Campusの整然とした佇まいもよいですが,こちらの雰囲気の方が個人的には好きです.

現在僕が在籍しているメディア・ラボの良い点として,講義の多くをメディア・ラボの卒業生が受け持っており,彼ら自身の専門や仕事で会得した実践知を学生と共有できる接点が複数あることが挙げられます.また各分野に特化したスタッフも数多く在籍しており,学生のサポート体制は非常に整っています.
また留学生の多さもさることながら,それぞれの学生が非常に多様なバックグラウンドを持っていることもよい環境を生み出している要因だと感じています.
コペンハーゲンで街中を使ったインスタレーションを制作していた人,身体を用いたタイポグラフィを研究していた人,漫画家でありながら化学を専攻していた人,...など皆さん非常に豊かなバックグラウンドを兼ね備えており,大変刺激的な毎日を送っています.

その一方,研究体制に関しては,特定の教授に就くといった日本のような体制ではないそうで,まだ組織自体が新しいこともあり理論的な枠組みの体系化や研究知見の積み重なりがまだ弱い,という声も聞かれました.

まだ留学生活もようやく1ヶ月を過ぎたばかりではあるので,何とも言えない部分が多いですが,これから先も色々と面白い体験ができそうです.


さて,昨年は色々な出来事が続々と降りかかってきて,今までにないくらい波瀾万丈の一年でした.どこからまとめてよいのか,といった状況なので少し雑多になってしまうかもしれませんが,研究活動を軸に留学に至るまでのこの1年を振り返っていきたいと思います.


■研究の焦点化
1月から3月にかけては,入学時よりこだわっていた「背景情報」を学習に活かすために何が求められるのか,対象とする分野や学習者,そして何をもって「背景情報」と呼ぶのか,自分が漠然と抱いていた背景情報を用いた学習支援のイメージをより具体化していく作業に追われていました.その結果として,熟達者の暗黙知的な要素(例:伝統舞踊や弓道の身体動作,譜面からの楽曲イメージ生成)が自分の抱いていた背景情報のイメージ,そして学習に活用できそうな背景情報と合致していたため,まずは「熟達者のプロセス」を用いるということでさらに対象を絞っていきました.


■問題意識の欠如
対象を楽器演奏に絞ってからは,認知科学や演奏領域の先行研究などを読み,自分が対象としている領域において何が問題となっているのか,その問題に対してどのような方法が有効なのか,頭の中では分かっているようなつもりになってロジックを組んでいたのですが,今思い返してみると前提となる「学習者が抱えている問題」や「社会的背景」の部分が非常にもろく,不安定なものであったように思えます.そのような砂上の楼閣に心柱が通っていると思い込んだまま,とにかく何か作らなくては,と焦燥に駆られていました.

それでも,自身の問題意識をより確固たるものにするため,楽器演奏熟達者の方々へのインタビューを通し,「どのように楽曲に対するイメージを形成しているのか」「それをどのように演奏に反映しているのか」といった点に対する理解を深める事ができました.実際にヘッドマウントディスプレイを使ってアプリケーションのプロトタイプを作ったり,...と(様々な課題をそれはそれは潤沢に残しつつ周囲に心配されながらも)順調に進んでいるように自分の中では思っていました.


■本厄の本領発揮
・・・とここまではよかったのですが,昨年末から無理をしていたツケが回ったのか,日常生活に支障がでる程体調が悪化してしまったことや,色々なトラブルも重なったため,JSETでの発表以降少しお休みを頂き,色々と思案を巡らせ,以前より興味のあったメディアデザインについて学ぶならこのタイミングしかない,と一念発起し,10月になんとかアールト大学に留学を申請し,年末年始ドタバタしつつも今年の1月6日に無事ヘルシンキに来ることができた,...というのが僕の2013年でした.

なので去年1年を振り返る,となるとよいこともあった反面,1年を通して辛く,苦しい時期が続いていた,というのが本音です.


■壁
研究活動において,壁は幾度となくやってきます.昨年までは小さな壁と大きな壁が毎月押し寄せ,その壁を乗り越えることに自身の全てのリソースを費やしていました.

壁を乗り越える活動からしばし引き剥がされたことで,今までの自分の物の見方を相対的に捉えることができたことは,留学してよかったことの1つだと思っています.また同時に自分の研究の立ち位置を相対的に捉え直したことで,今までの自分が大変な視野狭窄に陥っていたことに気づくことができました.当時ゼミで僕が研究発表をした後の空気感や皆さんから頂いた貴重なコメントの真意,そして僕自身が研究発表の前後に毎回抱いていた「コレジャナイ感」と毎日追い縋ってくる得体の知れない「何か」が何だったのか,今になってようやく気づくことが出来たような気がしています.

とはいえどこに行こうが壁にはぶつかるもので,留学における壁も言語や文化など様々です.これから先も僕は様々な壁にぶつかるのだと思います.

そのような場面において,自身の平衡感覚を麻痺させることなく,正面から対峙し,乗り越えられる力こそが,恐らくいつ,どこで,何をしていても自分自身を保つために,そして自分自身を成長させていくために必要なのかもしれない,と去年の8月上旬から先月までにかけての葛藤や苦悩,そして様々な方から頂いたご助言から学んだ次第です.


■経験に根を張った研究を
今後研究を進めるにあたり,僕自身の経験とそこで感じたものを自分の研究にどこまで入れ混ぜることができるのかが重要になってくると実感していますし(この点については最近,研究室の先輩の池尻さんのブログを読んで重要性を再認識しました),なによりそれだけの時間と場所を与えていただいたことに今は感謝しています.

また,研究室のメンバーの実践に携わることで,実験の準備や手順について間近で学ぶ機会があったことは来年度僕自身が実践をおこなっていく上で大変勉強になりました.どの方も綿密に計画を立て,スケジュールから機材等必要なものをきちんと管理し,参加者・実践者双方に実りのあるものを作り上げていく様子は,非常に参考になりましたし.大変尊敬できるものでした.

今の研究テーマがどのように進んでいくのか,どのように変わっていくのか,僕自身もまだ明確な方向性を打ち出せないままモヤモヤとしている状況ではありますが,今,この場所で学んでいる事を無駄にしないよう,自分が今持っている手札を学際的かつ有機的に結びつけていくことで,研究をより実りのあるものにしていければと思っています.

来年度も様々な方々にご指導・ご協力を仰ぐことになるかと思いますが,何卒よろしくお願い申し上げます.

suomelinna.JPG
ヘルシンキより

吉川遼

2014.02.07

【2年間をふりかえって】時間蝿は矢を好む

先日行われた修論審査会を無事乗り切り,とりあえず一区切りついたM2の梶浦美咲です.
今回から毎年恒例1,2年間のふりかえりをテーマにブログをお送りします!

私にとって最後のYlabブログなので,今回は私の回顧録として2年間どのように研究を進めていったのかを記事にしてみたいと思います.

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【M1の前半:支援対象者の現状調査 & 先行研究レビュー】
一番最初,初年次大学生にメタ認知を促して学習計画を支援するシステムを開発したい,ということで山内研の門を叩いたのですが,ゼミメンバーから本当に初年次大学生はそれを必要としているのか,どのような困難を抱えているのかインタビューしてはどうか,という提案がありました.
そこで,もともとインタビュー調査の経験は皆無であったため,質的調査の作法など本を読みながら手探りで学び,先行研究のレビューと並行して大学生へのインタビューに臨みました.実際は同じ世代であったために全く緊張もせず,むしろインタビューから現場の声を聴くことで私が学部生であったときに抱いていた考え,勉強法とは違うものに触れることができ,非常に興味深かったです.
また,研究室の博士課程の先輩方からは,上手な学習方略のヒアリングをさせて頂きました.授業内容を自分の興味と関連づけて考える,友人とゲーム感覚で得点を競い合うなどの方法を伺い個人的には収穫が大きく,今振り返ってみても良い経験をさせて頂いたと思いました.

【M1の後半:システムアイデアの発想】
支援対象となる大学生像が大体描けてきた後は,ひたすら開発するシステムのアイデア出しをしました.質より量を優先してKJ法,オズボーンのチェックリスト法を使用したり,ロジックツリー,コンセプトマップを作成したりして,実現不可能であってもくだらないものであっても,とにかくひたすらアイデアを出していきました.アイデアは普段使用しているメディアの機能と組み合わせて考えたりもしました.
そのプロセスを経てみつけた良さそうな案を深化させ,最終的に他者の講義メモの入力状況を通知する講義の聴き方支援システムというアイデアに収束しました.ちなみにこのシステム案は宝探し+facebookメッセージの「入力中...」通知から着想を得ました.面白いシステムにするにはどうしたら良いか,自分1人で考え込まず,他の人とディスカッションするなどして数ヶ月考え続ける日々が続いたことを覚えています.

【M2の前半:システム開発】
そして開発フェーズ.もともと何かしらシステムを開発してみたいという思いが強かったのですが,当時の私のプログラミングスキルではシステムを開発できる自信がなく,やりたいという気持ちが強まる反面,実現できるのか不安が募るばかりでした.
そこで,自分なりにアプリ開発のできるベンチャー企業でアルバイトをしてプログラミングを学んだり,プログラミングに関する書籍を何冊も買い込んで家でひたすらコーディングをしたり....開発にこぎつけるまで私なりに試行錯誤して努力を重ねていました.
分からない部分はバイト先の社員さんに教えて頂いたりトラブルが発生した際は助けて頂いたりとお世話になりつつも,最終的には独力で開発できるまでもっていけたので,とても達成感がありましたし,自分の夢が実現して本当に幸せでした.システム開発中に自分の思い通りに動いてくれずやきもきすることも多々ありましたが,その分システムが完成したときには自分自身をほめていました(笑).

【M2の後半:評価実験・分析 & 修論執筆】
最後に評価実験をしました.正直評価実験もかなり苦労しました.被験者にPCでシステムを使用してもらえばすぐに実験が行える,と楽観的に考えていましたが,多人数で使用するシステムであるため,サーバーに負荷がかかってしまったり,プロトコルの通信速度に問題が生じたり,プロトコルが切断されたり,使用するパソコンが頻繁にフリーズしたりとにかく直前になって問題が多発し,もう修了できないのではないか,と危機感を抱いたときもありました(笑).
しかし数度の予備実験を重ね,最良の実験環境を模索したり,様々なトラブルを想定して対処プログラムを急遽追加したりして自分なりに最善を尽くした結果,なんとか評価実験を成功させることができました.システムの評価実験はトラブルが付きものだということを痛感しました.これも良い思い出です(笑).

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この2年間,今振り返ると沢山の経験を積んできたように思えますが,実感としてはあっという間に時がかけていったという感じです.学部生時代は指導教官に手取り足取り指導して頂き,あまり困難を感じませんでしたが,それに比較するとよく頭を使った気がします.
研究について沢山思考を巡らせて納得のいく研究ができて,本当に幸せを感じた2年間でした.しかし周囲の助け無しにはこのような充実した2年間は過ごせなかったと思います.研究を進める上で本当に多くの方にお世話になりました.数々の場面で助けて下さった方々に改めて感謝させて頂きます.ありがとうございました.
2年間の経験を人生の糧に,社会人になってからも精進していこうと思います.


※評価実験前に日本教育工学会第29回全国大会(2013年9月20日(金)~23日(月))でポスター発表をしたので,その際使用したポスターを記念(笑)にアップします.
JSETポスター「講義メモ書き込み状況アウェアネスに基づいた講義の聴き方支援システムの開発」

梶浦美咲

2014.01.30

【山内研のプロジェクト紹介】FLEDGE by Educe Technologies

みなさま、こんにちは。修士1年池田めぐみです。
山内研のプロジェクト紹介の最後となる今回は、「FLEDGE」について紹介させて頂きます。FLEDGEとは、半年間かけてワークショップデザインについて実践的に学ぶ大学生向けの勉強会です。NPO法人Educe Technologiesの社会貢献事業として、2009年より展開されています。
FLEDGEの共同企画者であり、『ワークショップデザイン論』の共著者でもある安斎勇樹さんに、FLEDGEについてインタビューさせて頂きました!


FLEDGEとは
Q.FLEDGEの名前の由来は何ですか?
巣立つ/巣立たせるという意味の英単語fledgeと、Future Learning Environment Design GEneration の頭文字をかけています。これからの学びの場作りを担う若き世代のための勉強会であるということと、ワークショップの「主体的な学びを促す」という志向性はひな鳥が自ら巣立っていくのを支援するメタファーに近いと考え、無理矢理こじつけています(笑)。

Q.FLEDGEの概要について教えて下さい。
毎期12名の大学生メンバーを募り、半年間で6回の勉強会を通して、ワークショップを自ら実践するところまで挑戦します。第1回目はワークショップを参加者として体験し、第2回目はワークショップデザインの演習課題、第3回目に実験的にミニサイズのワークショップ実践にトライし、残りの2回で本番の実践に向けて4名グループで企画を行います。本番の実践をした後、第6回目に成果報告会をして修了です。

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勉強会の様子

実践し、暗黙知を学ぶ
Q.プログラムの工夫点について教えて下さい。
ワークショップデザインって、いくら理論で説明されてもピンとこないというか、やってみなきゃわからないことが沢山あるじゃないですか。だから出来る限り理論的な部分は『ワークショップデザイン論』を無料で配布して事前に読んできてもらい、対面の勉強会ではとにかく手を動かして企画にトライしてもらい、それに対して僕や山内先生、FLEDGEのOB・Gから随時フィードバックをするかたちで進めています。

Q.実践型のプログラムにおいて難しさを感じた点はどんな点ですか?
ワークショップはデザインするのも難しいんだけれど、それを教えるのも難しい。デザインの方法論は出来る限り『ワークショップデザイン論』に言語化してまとめましたが、「なんとなくこの企画はいまいちな気がする」「煮詰まっているから、このタイミングで情報収集をしたほうがいいかも」といった感覚的な実践知は、やりとりの中でしか教えることができないんですよね。なので、なるべく毎回の勉強会で進捗を報告してもらい、それに対するフィードバックを重ねることで、書籍には書けなかった暗黙知を学んでもらうことを意識しています。


OB・Gが育てるFLEDGE
Q. OB・Gとの関わりについて教えて下さい。
FLEDGEを巣立った卒業生たちを「FLEDGED」と過去形で呼んでいます。OB・GコミュニティはFLEDGEの最大の魅力の一つです。FLEDGEDが今でも勉強会に遊びにきてくれ、後輩たちにフィードバックをくれたり、その後も食事に一緒にいったりしてくれていて、ハードな勉強会を乗り越えるための支えとなってくれています。いまだに何年も前の卒業生が同期で飲み会をしたり、連絡をとりあったりしているそうです。先日の新年会には歴代FLEDGEDが30名ほど集まり、卒業後のつながりも深いです。こういう飲み会の企画も、卒業生によるものです。

また、FLEDGEの重要なシステムの一つに「卒業生が次期の運営ディレクターを担う」というものがあります。僕や山内先生が授業運営のように直接統括するのではなく、期が終わるごとに参加者から次期のディレクターを募って運営を任せているのです。ディレクターは、具体的には、勉強会のコーディネートや参加者のグループワークのファシリテーションなどをしてくれています。自分たちが参加者として不満だった点を解消できるように、常に試行錯誤してくれています。

Q. ディレクターも教えることを通じて学んでいそうですね。
まさにそうです。参加者のときは「ワークショップをデザインする」という目の前の課題に全力で取り組めばよかったのですが、ディレクターは自分たちがアイデアを出せばよいというものではありませんから、全体の状況を俯瞰し、参加者が課題に集中できるように、色々な細かい点を整えなければいけない。参加者のモチベーションを維持するためのケアやコミュニティ作りも必要になるし、学習環境デザインについて総合的に学ぶことができますね。

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FLEDGE8期の打ち上げにて

葛藤を乗り越える経験としてのFLEDGE
Q.FLEDGEでの学びは、その後どのように活かされているのでしょうか。
FLEDGEはワークショップデザインを学ぶ場であり、実際に卒業後のキャリアのなかで、ワークショップデザインのスキルを活かしている人もいます。一方で、当初は想定していなかったけれど、FLEDGEが「良い意味で挫折経験になった」「人生が変わった」と言ってくれている人たちが結構いるのです。自分の大学の外に出て、多様で刺激的なメンバーとぶつかりあいながら、真剣にワークショップを企画し、厳しいフィードバックを何度も受けて、悔しさや葛藤を乗り越えながら何かを創りだす体験は、多くの大学生にとって貴重な成長機会になっているのかもしれません。

FLEDGEに参加する大学生たちは、ただでさえ本業の学業やサークル活動、学生団体やインターンなどで忙しい人が多いんです。そのなかでこれだけハードなプログラムをやりとげるということは、本当にすごいことです。他方で、やはりどうしても支援がいたらずに、途中でドロップアウトしてしまうメンバーも少なからずいます。それは課題の一つです。

Q.今後のFLEDGEはどうなっていくんでしょうか?
現在が9期なんで、10期が終了したら、ちょうど5年間。一つの区切りだと思っています。終了するのか、継続するのかはまだわかりませんが、同じやり方でそのままずっと続けていくのは面白くないですよね。まあ、今後のことはまだわからないですけど...!(笑)

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研究室にてFLEDGEDと安斎さん

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安斎さんインタビューにご協力ありがとうございました。
巣立つ/巣立たせる学びの場FLEDGE。今後が増々楽しみですね。

以上、FLEDGEについてのレポートでした。

池田めぐみ

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