2014.07.22

【助教の方々へインタビュー】安斎さんにインタビュー!

みなさま、こんにちは。
山内研M1の松山彩香です。
今学期のゼミも残すところあと一回!最後まで気合いを入れていきたいと思います。

さて、前回から「山内研の助教の方々へインタビュー」というテーマでブログをお届けしています。
第2回である今回は、去年まで山内研の博士課程に在籍され、今年の4月に情報学環の特任助教に着任された安斎勇樹さんにインタビューしてきました。
ワークショップの実践と研究で知られる安斎さんの貴重なお話、楽しんでいただければと思います。

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----まず今のお仕事について教えてください。

メインは、FLIT(反転学習社会連携講座)のメンバーとして、日本初のMOOCである「gacco」の開発や運営、それに連動した反転学習モデルの開発などを行っています。僕はワークショップデザインが専門で、MOOCのようなオンライン教育は専門性ではありませんが、映像授業のリソースをベースに、より協調的な学習を支援する仕組みをつくるのが仕事です。
並行して、SCSK株式会社と共同で、CAMPワークショップの開発研究にも取り組んでいます。

----たしかに安斎さんはワークショップの研究や実践をされている印象が強いですが、実際にFLITのお仕事の中で、ワークショップに関係する内容が占める割合はどれくらいなのですか?

今のところ直接的にワークショップを使うことはありませんが、例えば、反転学習のプログラムについて、ワークショップデザインの観点から、「こういう課題設定や活動構成にしたほうがいいんじゃないか」など、口出しはしています。今後は、よりワークショップデザインの知見を活かした取り組みも行っていく予定です。

----ワークショップに関連してお聞きしたいのですが、今私はワークショップをつくる授業(文化・人間情報学研究法Ⅲ)を取っていて、なかなか良いアイデアが出ないことが悩みなのですが、安斎さんはどうやってアイデアを出しているんですか?

ワークショップって、「何かを創ることで何かを学ぶ」っていう、二つ目標が結びついているじゃないですか。
だからまず一つには、ねらいとする「学習目標」について、精緻に分析したり、別の視点で捉えたりというような、論理的な作業を進めます。
でも、学習目標から活動目標を逆算して考えるとつまらないものになってしまうので、それとはまた別に、日常生活の中でおもしろい活動のネタになりそうなものを常に収集しています。僕はお笑いの番組が好きなので、低予算の深夜番組の演出だったり、東急ハンズや美術館で見かけた面白い素材だったり、そういう活動に使えそうなアイデアのストックを常に仕入れていますね。そうすると、学習目標と活動目標がぱっと結びつくときがある。

----なるほど。そういう結びつきが初めからできていたんですか?

いや、最初はできませんでした。過去の経験の蓄積がなければ、難しいですよね。それでも、今振り返るとワークショップデザインには「型」のようなものがある気がしていて、こういう学習目標のときは「演じる活動」が合うとか、「見立てる活動」が相性がよいとか、そういうデザインのパターンについて言語化してまとめたいと思っています。

----話は変わりますが、安斎さんは今博論を書かれていますよね。前回のインタビューで伏木田さんが、安斎さんに博論のペースを確認したりしているとおっしゃっていましたが、やはり研究にあたって同期の影響はありますか?

同期の影響は、修士課程のときからかなり大きいですね。伏木田さんとは今は全く別の研究テーマに取り組んでいるけれど、M1のときは興味関心がとても似ていたんですよ。M1の夏に、「メタ認知についてレビューしなさい」っていう、ゼミでの課題がかぶるという事件が起きたくらい(笑)。根っこで面白いと思っていたものは似ていたのに、いまは気づけば、質的な実践研究と量的な調査研究という手法の部分でも、大学教育のフォーマルとノンフォーマルというフィールド面でも補完関係にあるから、同世代の研究者として意識せざるを得ないですね。なので、同期は大切にしてください(笑)。

----学府の院生に研究のアドバイスをお願いします!

修士課程の頃にやっていてよかったなと思うことは二つあります。
一つは、自分の研究領域の、現場の実践者、特にエキスパートとのつながりをM1の間にたくさんつくっておくこと。
僕はM1の夏学期に、ワークショップを長年実践しているエキスパートの方々を先輩の森さんに紹介してもらって、実践を見学したり手伝ったりしていました。現場で見聞きした発見は、仮説生成や分析の際にダイレクトに役に立ちました。また、修論を書き終えたときも、エキスパートの方から「僕が現場で無意識にやっていたことを、見事に言語化してもらえた」と言ってもらえて、自分の研究の筋は間違っていなかったと自信になりました。
もう一つよかったと思うのは、プレ実践をたくさんしたことです。
十分にプレ実践を重ねておかないと、データがどういう形で上がってくるかわからないし、分析の感覚が持てないまま本実践に入らないといけない。それに、仮説ではうまくいくと思っていても、いざやってみるとうまくいかないことはたくさんあります。自分の研究が机上の空論にならないためにも、出来るだけプレ実践をたくさんしておくことはとても重要だと思います。僕はM2の春頃から数ヶ月かけて、プレ実践だけで15回ほど行いました。そのデータを繰り返し分析して、仮説と分析手法を洗練させていきました。

----M2の春頃というと、私のペースだとまだプレ実践ができるほど研究が固まっていないかもしれないと思うのですが、もっと前の時期に研究を固めた方がいいんですか?

当時はなんとなく固めたつもりになって実践していたんだけど、今振り返るとその時点では全く固まっていなかったですね。
僕の修論は、最終的には「危険だけど居心地が良いカフェをデザインする」という課題で、矛盾した課題設定の効果を検証するということをしたのだけど、春頃にプレ実践をしたときはそんな仮説も思いついていなかったし、カフェどころか「秘密基地をつくる」という別のワークショップでいくつかの仮説がうまくいくかどうか試していました。そのときにあった10案ほどの仮説は、プレ実践ですべてボツになりました(笑)。
ところが、プレ実践のとあるグループの中に、たまたま秘密基地を「秘密」なのだからクローズドな場にしたいという参加者と、「基地」なのだからオープンな場にしたいという参加者がいて、その2人のコラボレーションが感動的に面白かったんですね。逆に同じ意見の人たちが集まったグループは、コラボレーションがうまくいかなかった。このデータをゼミで検討している最中に、元ベネッセの大辻さんという方が、「うまくいっているグループは、意見が矛盾しているね」と指摘してくれて、そこで山内先生がパンって手を叩いて「これだ!」って(笑)。地道に行ったプレ実践のデータをゼミで共有したことで、矛盾条件の仮説が見つかったんです。
こう振り返ってみると、エキスパートの現場の観察にしろ、プレ実践にしろ、「実践から研究をつくる」というスタイルは一貫していたんだと思います。

----ありがとうございました!とても勉強になりました。
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安斎さんの研究は、実践から入るということで確立されていったんですね。
エキスパートとのつながりを持つことと、プレ実践をたくさん行うこと...、私も今から意識していきたいと思います。それから、同期も大切にしていきたいです。
安斎さん、たくさんの参考になるお話をありがとうございました!

次回は池尻さんへのインタビューです。お楽しみに!


【松山彩香】

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