2014.09.25

【学者紹介】John Dewey

こんにちは。

夏休みの終わりが刻一刻と近づいており、戦々恐々とした日々を過ごしております、
修士1年の逆瀬川です。

さて、1ヶ月前より、お送りしています【学者紹介】ですが、今回は、経験学習の生みの親であります、ジョン・デューイについて紹介したいと思います。

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ジョン・デューイは、アメリカを代表する哲学者であり、教育思想家です。
生徒が受け身の姿勢で学ぶ伝統的教育を、個性の表現と育成を阻止するものだと強く批判し、進歩主義教育運動を展開しました。
今回は代表的なデューイの思想を紹介したいと思います。

◆知性道具主義
全ての観念というものは、実践的に役にたたなければ意味がないとする「プラグマティズム」という19世紀後半から20世紀にかけて主にアメリカで発生した思想を発展させ、デューイは、自己の経験を推し進める過程において、だんだんに知性を発達させ、さらにその知性を道具としてあたらしい経験にたちむかう知性道具主義を確立しました。

◆経験主義
「学習者個人の成長」と「よりよい社会をつくる」という社会との目的を、達成するための教育は、経験によって基礎付けられなければならないという経験主義を提唱しました。
ここでは2つの代表的な原理が存在します。
①連続制
ある経験が、その後の経験に影響をおよぼし、その後の経験の質も変化するというものです。
②相互作用
正常な経験は、周囲の環境に代表される客観的条件と自己の変化という内的条件の相互作用によってなされるものということです。
この2つの原理は、互いに独立している訳ではなく2つセットとなっている経験こそ真の経験であるとデューイは説きます。


◆社会における学校の必要性
人間は、きまった期間しか生きることができないため、集団はその特異性を保つためには、未成熟な成員に、成熟した成員の関心や、知識、技術を教えなければなりません。
また、人は無関心な状態で生まれてくるため、積極的な関心を抱かせる必要があります。
人々が共同体、つまり社会を形成するために共通にもっていなければならないものは、目標、信仰、抱負、知識といったことへの共通理解でなのですが、文明が進歩するにつれて、子どもたちの能力と大人たちの仕事の間のギャップは拡大し、大人たちの仕事に直接参加することによる学習は難しくります。 
つまり、社会の伝統が非常に複雑になり、その社会的蓄積の大きな部分が文書として書き留められ、文字記号によって伝達されるようになるとき、フォーマルな学校の必要性がでてくるとデューイは説明します。

◆教育実践
1896年、シカゴ大学の附属小学校として「デューイ・スクール」を開講し、発達や学習についての心理学的原理と社会生活を通じての仲間づくりの原理とを、結びつけた実験ができる学校がほしいという願いを実現しました。
学校の課業の中に、技術・家庭を取り入れ、従来の社会において個人の創意工夫によって行われてきた作業に従事させるだけでなく、これらの作業が、人間社会に対してもっている本質的な意義を、現代において生かそうと考えました。


◆デューイへの批判
現代にいたるまで、教育界に大きな影響を与えているデューイの思想ですが、多大な貢献をしている一方で、批判も生じています。その中から代表的な2つを紹介したいと思います。
①這い回る経験主義
生活経験を重視するあまり、伝統的な学問体系の教授が軽視され、断片的な学習に終わって知識の積み重ねが不十分であったり、また、活動という手段が目的化された活動主義に陥りがちなどの批判が起きています。
②学校への過度の期待
教育を、社会の最高の機能と考え、複雑な民主的社会の成立を教育によって保障をするという考え方は楽観的であるとの批判もあります。

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 デューイが残した研究蓄積は、もちろん素晴らしいのですが、彼の生き様そのものも魅力的であり、知的好奇心にあふれたデューイは、教育にとどまらず、政治学、論理学、倫理学に至る、幅広い著作を晩年まで書き続けます。
私の研究関心である、協同学習の源流にもデューイの思想が息づいているように思います。
古典学者であるデューイの思想を深く学んでいく作業は、自らの研究だけに留まらず、意思とは何か、自由とは何か、という自分の人生に架かる思慮になったと感じています。

【学者紹介】も、残すところあと2回となりましたが、私もこのブログを通して、研究者の思想について学んでいきたいと思います。

【逆瀬川愛貴子】

デューイ著, 宮原誠一 訳 (1935) 「学校と社会」, 岩波文庫
デューイ著, 市村尚久 訳 (1938) 「経験と教育」, 講談社学術文庫
デューイ著, 松野安男 訳 (1975) 「民主主義と教育」, 岩波文庫
山田英世 (1966) 「J. デューイ」, 清水書院
笠原克博(1972) デューイの思想形成過程 : ヘーゲルとの関係を中心に, 九州工業大学研究報告. 人文・社会科学20, pp,1-19
光成研一郎(2000) デューイの探求(反省的思考)の教育的意義について思考力要請の観点から, 人文論究50(1):44-55

2014.09.24

【学者紹介】ヴィゴツキー L.S.Vygotsky


みなさま、こんにちは。M1の青木翔子です。
去る9月19〜21日に、日本教育工学会に行って参りました。
諸先生方、先輩方の研究発表や、実践の発表などに大変刺激を受ける毎日でした。
合宿や学会など盛りだくさんの夏休みもそろそろ終わりですが、ブログ【学者紹介】はりきって参りたいと思います。

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ヴィゴツキー L.S.Vygotsky

私が今年の夏合宿で担当しましたのは、旧ソヴィエトの心理学者 L.S.Vygotsky(1896-1934)です。
彼は、心理学の学問の方法論から問い直し、発達心理学や教育心理学などに多大な影響を与えた学者です。

彼の心理学を、3つの観点からみていこうと思います。
① 心理的道具
② 心的機能の社会的起源
③ 発達の方向性

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① 心理的道具

ヴィゴツキーは、マルクス・エンゲルスの人間と生産を媒介する道具に関する考えを、人間の精神機能の発達に応用させました。
つまり、人間と社会の間には、道具の媒介があると考えたのです。
人間は、心理的記号の助けをかりて、外からの働きかけから脳に新しい結合をつくり出すと考えました。
高次の精神活動は、言語や、社会文化などの記号によって媒介された人間と社会の関係から生じるのです。
スクリーンショット 2014-09-24 08.59.44.png
また、このようなA-B間を媒介するXを含めた3者の関係を、人間活動の最小単位として彼は考えました。
この3角形は、彼の理論を理解する上で根本となるもので、以下の②〜③にも繋がります。


② 心的機能の社会的起源
人間と社会が、心理的記号によって媒介されているとして、それはいかにして精神機能を発達させていくのでしょうか。

彼は、高次精神機能は、精神間(interpsychic)から精神内(intrapsychic)へ転化するとしました。
つまり、子どもは、母親との会話や社会的な状況としての精神間機能を、内化させ、自分自身への問いかけや指示だしなどの精神内機能へ転化させることで、高次精神機能としての思考などを行うようになると考えました。

これをより理解する際のキーワードとして、「内言」というものがあります。
「内言」とは、思考を行うような(意味処理が優位であり、音声を伴わない)心のなかの発話のことを指します。
その反対に、コミュニケーションなどを行うような(伝達機能が優位であり、音声を伴う)発話を「外言」と呼びます。
彼は、社会的な外言は、内化され内言となり、それによって思考などの高次精神機能は発達すると考えました。
子どもは、話しことばの発達から、書き言葉への発達へ移行しますし、子どもの書き言葉の水準と話言葉の水準にへだたりがあることを考えると理解できるのではないでしょうか。


③ 発達の方向性
③−1生活的概念と科学的概念
②をふまえると、発達は、心理的道具を媒介とし社会的なものを内化させながら、一方向へのびていくように考えられます。
しかし、ヴィゴツキーは、発達には二方向あると考えました。
ひとつは、生活的概念の発達の方向であり、具体性と経験の領域から発達していきます。
もう一方は、科学的概念の発達であり、こちらは自覚性と随意性の領域から発達していきます。
子どもの科学的概念の発達は、(ある一定水準まで生活的概念が発達していることが前提となりますが)生活的概念の発達が辿ったすじ道とは反対にすすむものとして、ヴィゴツキーは定義しました。

具体的な例を考えてみます。
「水」という概念を、子どもたちは、学校で習う以前の生活で、雨やお風呂、飲み物など様々な体験から経験的に学習しています。
そして、その後、液体でありH2Oである「水」を科学的な概念として、経験とは違う方向から再び学びます。
このような例を考えると、2方向の発達について理解できるのではないでしょうか。


③−2 最近接発達の領域 Zone of Proximal Development
以上までで、人は社会との関係のなかで、心理的道具を媒介としながら、社会を内化しながら発達し、さらにその発達は生活的概念と科学的概念の2方向から伸びていくものだということがわかりました。
では、そのような発達はどのような進み方をするのでしょうか。
また、それは自動的に行われるものでしょうか、それとも教育によって行われているのでしょうか。

この問いにこたえる上で重要になるのが、彼の有名な最近接発達の領域の理論です。

彼は、発達過程と教授ー学習過程の関係を考えるうえで、
ピアジェらの"発達が教授ー学習に先行する"という考えや、ジェームズらの"発達は教授ー学習と平行である"という考えを否定しています。
彼は、教授ー学習という社会的な文脈は発達過程に多大な影響を与えている一方で、子どもたちは内言や随意性などを自身で獲得していると考えました。

そこで、ある実験を行います。
ある発達水準を測定するテストで、7歳と診断された子どもが2人(AとBとします)います。
つぎに、2人に、援助ありでテストを継続していきます。
すると、Aは、援助ありだと9歳の問題まで解くことができる一方で、Bは、援助ありでも7歳半の問題までしか解くことができませんでした。
スクリーンショット 2014-09-24 09.40.03.png

このような援助によって可能になる知的水準の差異についての理論が、最近接発達の領域です。
最近接発達の領域とは、「自主的に解決される問題によって規定される子どもの現在の発達水準と、おとなに指導されたり自分よりも知的な仲間と共同したりして子どもが解く問題によって規定される可能的発達水準とのあいだのへだたり」のことを指します。

この最近接発達の領域は、模倣の重要性や教育はいかにあるべきかということを示唆してくれます。
実際にヴィゴツキーは、「子どもがすでに何を学んだのかではなく、むしろ何を学ぶことができるのか」について考え、指導するべきであると述べています。


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他にも、彼は、芸術について、情動についてなど多くのことについて言及しています。
彼は、最終的には、人間の「意識」の問題を扱う心理学を、社会、人格などとの関係から解き明かそうとしていたと言われています。
しかし、残念ながら彼は38歳という若さでこの世を去ってしまいました。
ヴィゴツキーの残した、発達から考える教育、学習についての理論は、私たちが学習を研究する上でたくさんの示唆を与えてくれます。
そんな彼に出会えた夏に感謝しながら、今回のブログはこの辺りで失礼いたします。

青木翔子


◆参考文献
ヴィゴツキー著, 柴田義松訳(1962)『思考と言語 上』明治図書出版
ヴィゴツキー著, 柴田義松監訳(2005)『文化ー歴史的精神発達の理論』学文社
ヴィゴツキー著, 土井捷三・神谷栄司訳(2003)『「発達の最近接領域」の理論』三学出版
柴田義松(2006)『ヴィゴツキー入門』寺子屋新書
神谷栄司(2005)「ヴィゴツキー理論の発展とその時期区分について(Ⅰ)」 社会福祉学部論集
神谷栄司(2006)「ヴィゴツキー理論の発展とその時期区分について(Ⅱ)」 社会福祉学部論集

2014.09.14

【夏の特別編】山内研夏合宿レポート

みなさま、こんにちは。
9月となり急に涼しくなってきましたね。

さて、現在【学者紹介】のテーマでお送りしている山内研ブログですが、
今回は夏の特別編ということで、9月1日〜3日に行われた山内研の夏合宿の様子をレポートさせていただきます。

今年は島根県隠岐郡の海士町に行ってまいりました。
近年、まちおこしの取り組みで一躍有名になった海士町。
一体どんな発見があるのか、わくわくしながら合宿当日を迎えました。

1日目

早朝の飛行機で出発し、フェリーに乗っていざ海士町へ。
到着して早々、きれいな海とおいしいご飯を堪能して気分が高まります。

一日目は、現地で活動されている方々に海士町を紹介していただきました。
島の暮らし、産業、学習環境など、興味深いお話が盛りだくさん。
みなさまの海士町に対する熱い思いが伝わってきます。

そして夜は、そんな海士町のみなさまと山内研メンバーとの懇親会がありました。
島根県と東京都の距離を考えると、こういった面々で交流できるなんて夢のような機会です。
それぞれの活動についてお話を伺ったり、山内研の研究の話をしたりして盛り上がり、とても楽しい時間となりました!

2日目

翌日は、山内研合宿に欠かせない「学習プログラム」を行いました。

まずは恒例の学者レビューの発表から!
現在のブログテーマでも紹介していますが、山内研の夏合宿では、代表的な学者の人生や理論について学生が調べて発表するのが定番なのです。

今年は各自レビューする中で生じた疑問点を投げかけ、ディスカッションする時間も設けました。

お昼は豪華にお寿司!
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満腹になったところで、続いて学習プログラムその2を行います。
2つ目の学習プログラムでは、海士町をフィールドにした研究計画を立てるグループワークを行いました。
調査グループ、実践グループ、開発グループに分かれ、真剣に研究案を考える山内研メンバー。
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発表の際には、隠岐國学習センターの豊田さんがゲストに来てくださり、研究計画に対しコメントをいただくことができました。
豊田さんのコメントから、研究として成り立つことと現場で役に立つことが必ずしも一致しないことに気がつき、大変勉強になりました。

そして夜は、隠岐國学習センターを訪問し、高校生との交流プログラムに参加しました。
学びの質を高める方法について、高校生の中に山内研メンバーも混じってディスカッションします。
自らの学びについて深く考え積極的に発言できる高校生たちに驚き、スタッフのみなさまの熱意が生徒にも伝わっていることを感じました。

そしてここでサプライズが・・・!
我らが青木さん(M2)が、ご自身の研究領域である「自己調整学習」と現在開発中のシステムについて説明することに。
学習の計画と実行を支援する青木さんのシステムに、高校生たちから「使いたい!」との声がたくさんあがっていました。
青木さん、大活躍でした!
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3日目

最終日は、隠岐の景色を堪能すべくハイキングに行きました。
崖を登る最中に、たくさんの馬や牛に遭遇!
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山内先生も楽しそうです。

高所からでも海の底が見え、隠岐の海の美しさを再認識しました。
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そしてお昼は有名なサザエ丼とサザエカレーを食べ、再びフェリーに乗って帰路へ。

海士町の方々のご善意、ご協力により、本当に有意義な合宿になりました。
ありがとうございました!

次回のブログは、ふたたび【学者紹介】に戻ります。
引き続きお楽しみに!

【M1一同】

2014.09.07

【学者紹介】Albert Bandura


みなさん、こんにちは。修士2年の池田です。
あっという間にもう9月!時の流れは早いですね。
学者紹介3回目の今日は、社会的学習理論や、自己効力感などで有名なアルバート・バンデューラについてご紹介したいと思います。

バンデューラは、カナダ出身の心理学者です。従来学びは学習者自身の経験を前提としていました。しかし彼は、人は自らの行動からだけではなく、他人の行動を観察する中でも学んでいるのではないかと考え、実験によりその事実を明らかにしています。

2014.09.01

【学者紹介】Etienne Wenger

みなさん、こんにちは。山内研M2の青木智寛です。
最近の山内研究室の様子ですが、夏恒例の合宿が行われようとしています。今年は島根県の海士町を訪問することになっていますが、その様子はまた別の記事でご紹介できたらと思います!

さて、今回のテーマ、学者紹介第2回では、コミュニティにおける学習理論で有名なエティエンヌ・ウェンガーについてご紹介したいと思います。

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エティエンヌ・ウェンガー(Etienne Wenger 1951~)教育理論家・実践家・コンサルタント

●生涯と著書
コミュニティや人々の集団における学習理論で有名なウェンガーですが、学士・修士は計算機科学を先行していました。大学を出た後はゼロックスのパロアルト学習研究所に所属し、2000年代からはCoPコンサルタントとしても活躍しています。
ウェンガーは単著、共著を含めると数冊の本を著しています。1987年に発表された最初の著作"Artificial Intelligence and Tutoring Systems"では、知的CAIシステムについて述べられています。その後、文化人類学者のジーン・レイヴとの共著"Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation"(1991)(邦訳: 状況に埋め込まれた学習 - 正統的周辺参加)によって、「正統的周辺参加」という状況に埋め込まれた学習の理論が生まれました。その後、その中でも触れられていた「実践共同体」という、共同体における学習に焦点を当てた、"Communities of Practice"(1998)が発表され、2002年にはその実践共同体を企業という組織社会に当てはめて具体的に論じた"Cultivating Communities of Practice"(邦訳:コミュニティ・オブ・プラクティス - ナレッジ社会の新たな知識形態の実践)が発表されました。さらに近年では、デジタル社会における組織内のメンバーの振る舞いについて述べた"Digital Habitats"(2009)を公開しています。

●正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation)
正統的周辺参加とは、1991年に文化人類学者のレイヴとの共著で書かれた「状況に埋め込まれた学習」にて発表された概念です。学習とは、従来の命題的な知識の獲得や認知構造の変化ではなく、実践共同体に参加することを通じてアイデンティティを形成していく過程であるということを述べたものです。実践共同体において、まず簡単な仕事・責任から始まり、だんだんと大きな仕事・責任を担っていくようになる過程こそが学習であり、その意味において学習は状況に埋め込まれているという特徴があります。

●実践共同体(Community of Practice)
実践共同体とは、上記の著作にて発表された概念ですが、その後のウェンガーの単著である"Communities of Practice"(1998)にて詳しく述べられています。この本では実践共同体を中心とした学習の定義や特徴、構成要素について詳しく述べられています。これをより企業社会に基づいた観点から捉え直した「コミュニティ・オブ・プラクティス」(2002)にある記述によれば、実践共同体の構造モデルは
・「領域」(グループで共有している問題や関心事の範囲を定義)
・「コミュニティ」(関心を抱く人々の社会的構造)
・「実践」(コミュニティのメンバーが共有する一連の枠組みやアイデア・ツール)
の三要素から成るとされています。

●テクノロジーステュワード(Technology Stewarding)
テクノロジーステュワードとは、上記"Digital Habitats"(2009)にて述べられている、テクノロジーの影響を大きく受けるようになってきている近年の社会において、共同体内の学びを促進するテクノロジーに精通した人物を説明する概念です。テクノロジーステュワードは、共同体内のテクノロジーに関する要求を理解できる十分な実務経験を持ち、要求に取り組む上でリーダーシップを十分に発揮できることなどのスキルが求められます。

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普段、何気なく様々なコミュニティで生活している私たちですが、そこにはさまざまな「実践」が行われており、「学習」が生起していることをウェンガーは気づかせてくれます。
他にもウェンガーの学習理論には重要なキーワードが登場しますが、紙面の都合上、この辺りで閉じさせていただきます。


それでは夏合宿、行ってまいります。


【青木智寛】

2014.08.23

【学者紹介】佐伯胖先生(東京大学名誉教授)

暑い日が続いておりますが,いかがお過ごしでしょうか.
こんにちは.M2の吉川遼です.

例年この時期の山内研究室では,ゼミ生が9月の夏合宿での学者紹介に向けてそれぞれが自分の担当の学者の人となりから理論,業績などをまとめる作業に追われています.

山内研究室に限らず,この学際情報学府に入学する人たちのバックグラウンドは非常に多様であるため,教育や学習に関心はあれど,それらの領域を専門としていなかった学生も多くいます.

教育工学,そして学習環境デザイン論の領域で研究を進めるにあたり,デューイやヴィゴツキー,ウェンガーやピアジェといった教育や学習,認知科学において多大な功績を残した大家の足跡を今一度踏みしめることで,現在の教育・学習に関する研究領域の趨勢に至る経緯やその連関,そして自身の研究との関連について押さえておくことの出来るこの夏合宿は,自身の研究に対する見識を広げる上でも非常に貴重な機会です.

今年でこの夏合宿に参加するのも3回目となり,僕にとってはややエキストラ色が強くなってしまいましたが,同じ学者であっても年度や学生によって発表の切り口が異なり,その分学者に対する認識がより広く,より深くなるので,今から夏合宿が楽しみです.

第1回目の今回は,これまで教育工学ならびに認知科学など幅広い分野でご活躍されている東京大学名誉教授・信濃教育会教育研究所長の佐伯胖(さえき・ゆたか)先生についてご紹介して参りたいと思います.

■10年単位の「変身」

今でこそ,近年のワークショップ研究の隆盛に伴い「まなびほぐし(アンラーン)」といった言葉が注目されがちではありますが,佐伯先生のご研究の変遷を辿っていくと非常に興味深い流れを見てとることができます.

◦1960年代... 教育にかかわる仕事をはじめる
◦1970年代... 「行動科学」や「意志決定論」の研究と教育
◦1980年代... 日本での認知科学研究振興に貢献
- 日本認知科学会設立
- 認知科学,教育研究への状況論の浸透と展開
- 翻訳『状況に埋め込まれた学習』,『プランと状況的行為』
◦1990年代...教育とコンピュータとの新しい関係性の模索
◦2000年代前半...日本の幼児教育史の統合的検討
◦2000年代後半...「まなびほぐし」ワークショップ研究・実践

佐伯先生ご自身が,研究対象の移ろいについて「10年単位の『変身』」と仰っているように,その当時の認知科学ならびに教育関係の動向にあわせ,ご自身の研究を進めていらしたことが,この年表からも伺うことができます.


■1980年代における状況的学習論と取り巻く環境

佐伯先生が翻訳されたLave, Wengerの『状況に埋め込まれた学習』は正統的周辺参加論(LPP)と実践共同体との関わりについて,具体的には実践共同体に参加することを通してアイデンティティを確立していく過程を学習のプロセスとして捉え,学習が状況に埋め込まれているとする状況論的学習観を日本に紹介された,という点においても,当時の日本の教育界の先頭に立ってご活躍なさっていたことが分かります.

佐伯先生の著書や関連する文献を読み解いていくと,この本が出版された1980年代当時の教育を取り巻く各学問の状況も明らかになります.

まず認知科学の分野においては1980年代よりヴィゴツキー心理学が「人は現実の社会の中で具体的な実践を通してどのように学習していくのか」という切り口から「学習や発達をもともと社会的な関係の中で生まれ,育まれるもの」と捉える社会構成主義的学習観が発展していきます.この中でヴィゴツキーは「最近接発達領域(ZPD:人は外界のさまざまな「媒介」(道具,記号)の資源を利用しており,それらの資源の活用を他人との社会的相互交渉によって内面化し,言語化することで高次の思考の手段にしている)」を提唱しており,この状況論的な学習観がレイヴ・ウェンガーの正統的周辺参加論へと繋がっていきます.

さらに当時はJ.ギブソンの生態心理学やエスノメソドロジーに代表される社会学そして文化人類学など多様な学問領域が認知科学との関連をみせており,状況論的学習観による研究はいわば,諸領域が結集した学際的な運動であったともいえます.


■状況論的学習観と学びのドーナッツ論

この社会構成主義的,状況論的学習観が広がっていく流れの中で佐伯先生は1990年代に学びのドーナッツ論を提唱しています.

この学びのドーナッツ論とは,

学び手(I)が外界(THEY世界:文化,理論,道徳,基準など)の認識を広げ,深めていくときに,必然的に二人称世界(YOU世界:人物,道具,言語,教材など) との関わりを経由する(佐伯 1995)

とするもので,従来の学習観,すなわち学習者個人が頭の中に特定のまとまりをもった知識や技能を獲得する過程を学習と捉える観点を諸悪の根源と見なし,批判するものでした.
この中で佐伯先生は,自身の周辺の世界である"YOU"とのかかわりや"THEY",さらには「文化的実践」への参加を通して子どもが学んでいく学習観を志向すべきだと主張しています.

この学びのドーナッツ論からも,学習が社会や人との関わりの中で学んでいく状況論的学習観を佐伯先生がいかに重要視していたかを伺い知ることができますが,では現代においてこのような学習観はどのような実践に落とし込むことができるのか,その実践の中で学習者は何を学ぶのか,といった問いに対して,近年佐伯先生が取り組まれてきた「まなびほぐし」「アンラーニング・ワークショップ」がキーワードになります.


■まなびほぐしとしての「ワークショップ」

佐伯先生は参加体験型学習方法としてのワークショップが本来目指すべきことは「"しがらみ"を解く」ことである,と主張し,状況論的学習,社会文化的学習としてのアンラーニング・ワークショップの重要性を著書で述べています.

ワークショップという普段とは「ちょっと違う」場所,人そして活動を通して,参加者は自身が普段無自覚のうちに身につけ,習慣化されてしまっている「当たり前」,すなわち文化的・社会的な「型」を参加者が互いにぶつけ合い,崩すことで,あたらしい「型」の可能性を模索し,組み替えていくことができる,と佐伯先生は「まなびほぐし」の場としてのワークショップの可能性について言及しています.

ある講演の中で佐伯先生は,

私が考える勉強と学びの定義とは
◦『勉強』=教えに従って『身につけるべきこと』を身につけること
◦『学び』=自分から『こうありたい』自分になること

と仰っています.この定義からも,佐伯先生が学習に対してヴィゴツキーのZPD,ウェンガーのLPP観に近い考え方を持っている事実が伝わってきます.


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研究対象は認知心理,コンピュータ教育,そしてワークショップと移りながらも,各時代の研究には状況論的学習観がしっかりと通底していることについて,佐伯先生の著書や講演の内容から感じ取ることができます.

佐伯先生のように自身の研究に軸をしっかりと持ちながらも,時代のニーズや問題点に素早く対応できるアンテナの高さ,そしてフットワークの軽さを併せつつ,研究を進めていく姿勢こそ,どの研究者にも求められる研究スタイルなのでは,と今回書き進めていく中でふと思った次第です.

そんな姿に少しでも近づけるよう,日々邁進していかなくてはなりません.

拙文失礼致しました.

吉川遼

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■参考文献
◦佐伯胖(1975)『「学び」の構造』. 東洋館
◦佐伯胖(1995)『「学ぶ」ということの意味』. 岩波書店
◦佐伯胖(2000)あゆみ--東京大学定年退官記念. 佐伯胖
◦佐伯胖(2003)『「学び」を問いつづけて: 授業改革の原点』. 小学館
◦佐伯胖(2004)『「わかり方」の探究 : 思索と行動の原点』. 小学館
◦柴田義松(2006)『ヴィゴツキー入門』. 子どもの未来社
◦佐伯胖(2007)『コレクション認知科学 2 - 理解とは何か』. 東京大学出版会
◦苅宿俊文, 佐伯胖, 高木光太郎(2012)『ワークショップと学び 1 - まなびを学ぶ』. 東京大学出版会
◦佐伯胖(2012)模倣から教育を再考する. 人間生命科学研究プロジェクト「ヒトの個体発生の特異性に関する総合的研究」公開講演会「子どもの好奇心は教育を超える」講演資料. http://www.blog.crn.or.jp/kodomogaku/m/pdf/26.pdf (2014年8月23日 閲覧)
◦青山学院大学(2012) 佐伯胖略歴および主要研究業績. 青山社会情報研究. 4, 58-61
◦阿部学(2012)「学びのドーナッツ論」は実践に活かされたか--理論と実践との乖離に関する一考察--. 授業実践開発研究, 5, 43-51
◦多元的共生社会におけるコミュニケーションシリーズ第2回「学びとアート」の関係を問い直す 講演資料. http://www.gllc.or.jp/project/seminar/image/201306_report1.pdf (2014年8月23日 閲覧)

2014.08.17

【助教の方々へインタビュー】一色さんにインタビュー


夏真っ盛りですね!世間はお盆ですが...研究あるのみですね(笑)
さて、今回のブログテーマ「助教の方々へインタビュー」も最終回! 今回は、M2の青木智寛が一色裕里さん にインタビューをさせていただきました!


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- 一色さんの今のお仕事を簡単に教えていただけますか?
 - 東京大学情報学環の特任助教としてMOOC、特に今秋から公開予定のedXの授業(吉見俊哉教授による" Visualizing Postwar Tokyo")の仕事をしています。

- 現職までの経歴を簡単に教えていただけますか?
 - 学部時代は慶応義塾大学SFCの環境情報学部で学んでいました。卒業してから3年ほどSEとしてシステム構築の業務をした後、テクノロジーを教育の現場に活かしたいと思い、ハーバード大学の大学院(教育学)に留学しました。そこで、一般的な教育学やテクノロジーを教育に活かす方法論などについて学ぶと同時に、途上国での教育についても学び、UNESCOのバンコクオフィスでインターン等もしました。1年で卒業した後、学位取得者のビザを利用して、スタンフォード大学のラーニングラボ(Stanford Learning Lab.:SLL)で1年ほど働きました。インターネットなどのテクノロジーを使った学習はまだ歴史が浅い頃でしたが、そこで遠隔地間の教育をネットワークを用いて実現することに関わっていました。そんな中、当時メディア教育開発センターで働いていらっしゃった東大の中原淳先生(現:東京大学大学総合センター)がSLLを見学にいらっしゃることがあり、情報学環・学際情報学府、そして山内先生の存在を知りました。SLLは1年の勤務と決まっていたので、その後の進路についてどうするか悩みましたが、最終的には学府の試験を受け、日本でもう一度修士号を取ることを決断しました。

- 学府ではどのような研究をされていたのですか?
 - インターネットを利用した遠隔地教育に文化の違いがどれだけ影響するかということに関して、実際にシステムを開発し、プロジェクトを実践する研究を行いました。もともと留学時に遠隔地教育に興味があったこともあり、研究テーマはすぐに決まりました。ちょうど修士1年で入学した当時、学環の須藤研のメンバーとAEN(アジア・e-ラーニング・ネットワークプロジェクト)に携わることになり、その流れで自身の研究テーマも自然と決定していきました。

- 修士研究では3カ国間(日本・中国・シンガポール)の3カ国の学生をつないで実践をされていますが、参加者を集めるのは大変でしたか?
 - そうですね、日本に帰る前にUNESCOに関わっていたので、そこで知り合った方々がプロジェクトに協力していただけるといったこともあり、ありがたいことに参加メンバーは集まりましたね。

- 修士研究で他に印象に残っていることはありますか
 - やはりプロジェクトには自分以外にも多くのメンバーが関わるので、そのような複数のメンバーでコンセンサスを取るためにミーティングを重ねなければならなかったことが印象に残っていますね。あと、研究の助成を国から受けていたので、プロジェクトが終わった後で大量の報告書を作成しなければならないことも大変でしたね。

- なるほど。そこから、現在の情報学環でのお仕事に至るまではどんな経緯があったんですか?
 - 一緒に実践に参加してくれたシンガポールの大学の教授の方の紹介で、シンガポールのe-Learningの開発をする企業の、日本支社の立ち上げに関わることになり、そこで2年前までずっと働いていました。そこでは主に企業のコンプライアンスを学ぶためのe-Learning教材の開発を行っていました。そこが2年前に日本から撤退することになったのですが、同タイミングで山内先生からオファーがかかり、現在の仕事へ転職して今に至ります。

- すごいつながりですね...^^ いろいろな場所を渡り歩いて、さまざまな経験をされていらっしゃるのですね。 今までの研究を含めたお仕事には、どのような思いで接していらっしゃいますか?
 - そうですね、いろいろな場所で働いてきていますが、地理的に離れた学習者をテクノロジーでつないで教育するという軸は、ありがたいことに一貫して持って仕事ができていると思います。そういう意味では、自分の関心に合致した場所で働けているので、やりがいを持って仕事に接することができていますね。

- なかなかできないことですよね! 最後に、山内研の修士生になにかメッセージがあればお願いします。
 - 月並みですが、今しかできないことをやってほしいと思います。社会に出れば、修士生だからこそできたことというものを実感することが多いです。研究はもちろんですが、他のことも含めて、今できることを精一杯取り組んでもらいたいです。


- ありがとうございます!修士生活精一杯頑張ります!

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普段、山内研の学生として、一色さんとお話をさせていただく機会があまりなかったので、どのようなお話をお聞きできるか楽しみにしていましたが、実際、非常にバラエティに富んだお話をお聞きできて、予定していた時間を大幅に延長してお話させていただきました(笑)個人的には、僕は修士生を終えた後は、社会人として歩んでいく予定なのですが、一色さんとのお話の中で、自分の今できることを見極めて、いろいろな方々とのつながりを大切にしながら、ときに大胆に行動していくことも必要なのではないかと感じました。 一色さん、お忙しい中お時間いただきありがとうございました!


来週からは新テーマ...です!

2014.08.10

【助教の方々へインタビュー】荒さんにインタビュー

みなさま、こんにちは。修士1年の逆瀬川です。

毎日うだるような暑さで、ついつい外出することもはばかられてしまい、研究室に籠もりっきりになってしまいそうです。
そろそろ思いっきり体を動かすことをしたいですね。山内研運動会の開催を期待します。

さて、かれこれ1ヶ月程「助教の方々へインタビュー」というテーマでブログをお送りしていますが、第5回目となる今回は、山内研のITまわりを担当しています、荒さんにインタビューをしてきました。
研究室内で、最も謎に包まれている荒さんに、今回は、お仕事から研究の道に進んだ経緯と、現在されている研究についてお聞きしてきました。


Q、荒さんについては、研究室内でも謎に包まれているという意見が多いので、簡単に経歴を教えてください。

学部生の時は、慶応の理工学部でテレビ会議の研究をしていました。卒業後、すぐには院に進学せずに、青年海外協力隊の理数科教師としてザンビアに2年間駐留し、その延長で、国際開発関連の仕事を請け負い、前職は、国際開発コンサルタントとして主にJICAの仕事に携わっていました。
30歳を過ぎてから、研究に関心が向くようになり、東工大学大学院に進学し、修士号を得て、現在、山内研で助教として働いています。


Q、長い間、お仕事をされていたようですが、研究の領域にはいろうと思ったきっかけは何ですか?

国際開発の仕事で、世界各地の開発途上国にある遠隔テレビ会議のネットワークを使って、遠隔で研修をするというプロジェクトの企画運営を行っていたのですが、どうもうまくいかない部分がありました。
遠隔システムを利用したことがない講師が、東京のスタジオから、テレビの先のインドネシアやアフリカといった開発途上国の人を想像し、講義をするということは、とてもスキルが必要なことなのですが、それをフォローする環境が充分ではなかったということが一番の原因でした。この問題を改善するためには、本格的に教育の方法を体系立てて学ぶ必要があると気づきました。
そんな中、ヨルダンで教員養成プロジェクトを行っていた際に、アドバイザーとして入った東工大の赤堀先生を通して、教育工学に出会い、この分野を学ぶことで自分のスキルを裏打ちできるのではないかと思い、そのまま赤堀先生に弟子入りした、という経緯です。


Q、修士時代はどんな研究をしていたのですか?

遠隔講義で一番困ることは、遠隔地の学習者の状況を把握しきれない、つまり、学習者がモニターに映ることで、雰囲気や一人一人の顔色などといった、様々な情報が削ぎ落とされてしまうということであり、それを解決する手段として、遠隔講義システムの中で、学習者の映像を、画像解析し、パターンを抽出して学習者の状況把握をサポートするという研究をしていました。
現在は、修士時代の知見を活用し、教員のリフレクションを促す仕組みづくりの研究を行っています。現状では、自らの授業を振り返る仕組みが確立されていません。
日本には、様々な人が集まり授業を批判的にみる、日本初で世界に広まった研究授業という良い文化があるのですが、頻繁に開くことは難しく、それを日常的に個人ベースで行う仕組みをつくれないかと思い、授業映像から、授業の要約を作りだし、簡単に振り返ることのできるシステムを開発しようとしています。

Q、山内研のお仕事と自身の研究で繋がる部分はありますか?

私は、MOOCの仕事をメインで行っているのですが、研究で扱っている遠隔講義は、遠隔地の人々が同時に交信をするという同期型のシステムであるのに対し、MOOCは非同期型であるという点で、今までに経験したことのない領域でもあります。ただ、遠隔講義という部分は共通しているので、自分の研究の延長線上にあるものだと考えています。
また、自分の研究関心が、教員の教育活動を技術で支援しようとするテクノロジー寄りのものであるのに対し、山内研には、人に焦点をあてた分野を扱う人が多いので勉強になります。


Q、問題関心のもととなっている部分はどんなことですか?

テクノロジーは人の活動を易しくし、助けるためにあると考えていますが、実際うまく機能していないシステムが多くあり、その一つが遠隔講義システムでした。遠くとつなぎやすくなったという意味では、便利になりましたが、教育という観点から見ると、まだまだ。
テクノロジーによって生じた問題は、テクノロジーで補い、解決するべきだと思うのですが、それに取り組んでいる人があまりいなかったので、研究をすることにしました。

Q、最後に、学府で勉強する学生や、これから研究をしたいと志している受験生へメッセージをお願いします!

研究のタネや、関心の方向は、自分が経験したことからではないと生まれてこないと思います。自分が経験してないことを研究しようと思うと、どうしても無理が生じてくるので、例えば、教育に関心があるのであれば、教育の現場に実際に入って何らかの経験を積んでみることが必要だということが1つです。
もう1つは、常に問題のタネを探す姿勢や態度を持ち、過ごしていないと気づかないということです。


Q、私は、まだまだ研究テーマが決定しておらず、問題関心のタネが本当にこれでいいのか迷う瞬間があるのですが・・・今でも自分の問題関心がこれで正しいのか正直迷っています。

タネを研究にすることは、また別のスキルが必要です。ただ、タネがないことには、なにも始まらないので、ただ研究がしたいからという理由で大学院にきてしまうと、1年くらいタネ探しで終わってしまいます。大学院はすごく短いので、進学しようとしているのであれば、入る前にタネを見つける努力は必要ですが、問題関心のタネから実際に研究という形にする過程は大学院で学ぶことなので、今は悩んでいいと思いますし、必要な悩みでもあると思います。

荒さん、お忙しい中、ご協力ありがとうございました。荒さんのことを少し知れた気がしてうれしいです。
世界15カ国以上をフィールドにお仕事をされてきた荒さんだからこそ、できる研究があるのだなとしみじみ感じました。
私も、問題関心のタネをうまく言語化してリサーチクエスチョンを立てられるように、研究室での学びを大切にしていきたいです。

次回のインタビューは、今年から山内研にいらっしゃった一色さんです。みなさんお楽しみに。

逆瀬川愛貴子

2014.07.31

【助教の方々へインタビュー】大浦弘樹さんに聞く~研究との向き合い方

みなさま、こんにちは。
修士2年の中村絵里です。

いよいよ明日から8月です。
授業もゼミもしばらくお休みとなり、修士の院生にとっては、夏を満喫する歓声を遠くに聞きながら、自身の研究と向き合う過酷な2ケ月の始まりです。

さて、助教インタビューシリーズ第4回は、昨年9月より東京大学大学院情報学環の特任助教に着任された大浦弘樹さんにご登場いただきます。

大浦さんは、安斎さん、伏木田さんと共に、FLIT(社会連携講座) の仕事に従事されながら、現在もワシントン大学大学院教育学部の博士課程に在籍し、研究活動を続けられています(大浦さんのプロフィールはFLITメンバー紹介をご参照ください)。昨年夏の帰国から、まもなく1年を迎える大浦さんですが、Ylab Blogに登場されるのは初めてということで、大浦さんのアメリカ留学中のことから、帰国後の研究活動のことまで幅広くお聞きしました。

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〇まず、大浦さんと山内研・山内先生との出会いについてお聞かせください。
2007年の春から1年半ぐらいMEET(東京大学 大学総合教育センター マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門)のリサーチフェロー・特任研究員をしていたのですが、MEETのフェローが山内先生でした。

〇その後、アメリカに留学されたのですね。
2008年の秋から2013年の9月まで、ちょうど5年間、米国ワシントン州のシアトルにあるワシントン大学(University of Washington)教育学部の学習科学プログラム(Learning Sciences Program)の博士課程に留学しました。現在は博士論文を書いているので、一応まだ在籍中です(笑)。

〇アメリカでは、実際に高校の授業にも入っておられたと聞きましたが、現地の高校の印象はいかがでしたか。
リサーチアシスタントとして、現地の高校と小学校の主に科学(日本の理科)の授業に関わりました。初めて訪問したのは、公立高校のgenetics(遺伝学)の授業でした。想像と大きく違っていたのが、授業スタイルでした。アメリカの高校は議論中心でインタラクティブというイメージを持っていたのが、実際に授業を見学してみると、先生が前に出て講義をする日本の多くの高校と全く同じ講義形式だったので衝撃を受けました。それだけでもびっくりでしたが、もっとショックだったのが、授業態度。生徒が授業中にお菓子を食べたり、イヤホンで何か聞いていたり、今でも忘れられないのが、僕の目の前にいた女の子が授業が退屈だったのか、突然ダンスを踊り始めたんですよ。もうびっくりして、これがアメリカかぁと思いました。もちろんこれが普通ではありませんし、たまたま最初に訪問した高校のクラスがそうだったということです。その後いくつか高校を訪問したら、日本と同じで、生徒も先生も学校も様々。日本にいてメディアを通して入ってくる情報というのは、良い面も悪い面も、極端なものに偏っているのだなと学びました。要するに、教育でいうと、 MITやハーバードなどの極端に良い事例か、日本と比べて極端に悪い例しか入ってこないのではないでしょうか。日本とアメリカを比較すると、確かに違いはあるけれど、同じようなところもあります。印象としては、初等中等教育では思ったより違わなかったです。一方で、学び方、教え方に対する根本的な考え方の違いがあるような気がしているのですが、うまく言葉にしにくいですね。

〇日本に帰ってこられて、アメリカでの研究と日本での研究スタイルに、何か違いは感じていますか。
そもそも研究で扱っていることが違いますよね。ワシントン大学では教育学だったけれど、ここ(東京大学)では情報学環なので教育学では扱わない研究もしています。ワシントン大学では、人種や文化を含む様々な社会背景を考慮したequity(公平性)や 多文化教育に焦点があり、(アメリカの方が日本より格差が大きく)不利な立場にある子ども達にも質の高い教育を、という問題に立ち向かっている研究者が周りに多いです。一方、現在のFLITの仕事では、次世代の教育に向けたデザインをしています。もちろんMOOCなどは、何らかの理由で高等教育を受けられない(なかった)人も対象には入っているとは思いますが。その国、地域、大学で取り扱っている問題が違いますので、単純な比較はできないですね。研究スタイルについても違うと思いますが、フェアな言い方をしようとすると、どういう違いがあるとかは、なかなか言うのが難しいところです。

〇違いに戸惑うことはありましたか。
日本に帰ってきてからよりも、アメリカに行ったときの方が、戸惑いは大きかったです。初めは言葉の問題もありましたし。帰国してからは、さほど逆カルチャーショックもなく、やっぱりご飯おいしいな、とか思いました。山内研で仕事をするメンバーのほとんどは、以前から知っていたということも関係しているかもしれませんが。

〇現在は、山内研でFLIT(社会連携講座) の仕事にメインで関わっておられますが、博論も執筆中ということで、ご自身の研究活動と仕事とのバランスはどのように取ってらっしゃいますか。
なるべく自分の研究はしたいけれど、仕事もちゃんとしなくてはいけないので。ただ、スタッフ室にいる間も自分の研究はできます。僕の場合は、朝早起きして駅前のファミレスなどで6時くらいから始めて、東大の門が開く7時ぐらいにスタッフ室に来て午前9時か10時までは自分の研究をします。そうすれば半日は自分の研究ができるじゃないですか。それからFLITの仕事をして夕方4時か5時にはもうへとへとになっていますね。体力には限界があるんだな、と思います。といっても、これは理想的な時間配分の例で、特に今年の3月から5月はgacco の仕事が集中していたので、思うように研究の時間は割けませんでした。でも、仕事はやりがいがあって楽しいですよ。山内先生には感謝しています。
夕方以降は、研究をしたくても疲れてなかなかできないので、夜、家で本や論文を読んで情報をインプットします。朝起きたときが、一番頭がすっきりしているので、分析とかアウトプットをします。あくまで理想ですが。それから、どうしても心が動かないとき、やる気がおきないときもありますよね。そんなときは、もう、できなかったらしょうがないですね、とりあえず寝て休む。それでパッと朝起きればまたできる。
博論は、今年中には提出はしたいと思っています。これが終わらないと次のステージに行けないので。仕事が休みになって、休めって言われても博論が終わらないと休めないですよね。この気持ちは、安斎くん、伏木田さんも同じだと思います。実は、帰国して仕事をすることについて、いろんな人から反対されたんですよ。まあ、実際は反対というよりもアドバイスに近いんですが、博論を書いてからにした方が良いと言われました。これまで、何人も仕事を始めて、博士号を取らないまま終わった人がいるからと。本当にその通りで、仕事をしながら博論を書くのは実際大変ですよね。

〇そうですね、誰に怒られるわけでもなく、自分との闘いですね。精神力が強くないと。
この世界は怒られることが少ないですからね。僕の場合は、精神論ではなくて、どうすれば自分が結果としてやるのかということを考えます。例えば、朝早く起きた方ができるから朝早く起きる、ちゃんと寝ないと集中できないからしっかり睡眠をとる等、行動と結果ベースで決めるようにしています。自分が強いとか弱いとかそういうことではなく。でも、人間だから思いますよ、どうしてできないんだろうって。そういうときは、どういう生活習慣をしたら、自分がイメージするように動けるかというのを基準にして考えます。要するに、うまくいくルールというか生活のパターンを作る工夫をしています。他人の話は聞くけれどそれが自分にうまくいくとは限らないので、トライしてみて、うまくいったらそれを続けます。気分の波もあるので、意欲が下がっているときはあまり自分を責めずにまた上がってくるのを待ちます。

〇最後に、山内研の助教としてもう1つの重要な仕事である修士の院生のファシリテーター役についてお聞きします。ファシリテーターを務める上で心掛けていることなどありますか。
ファシリテーターは人間関係が要ですよね。お互いにとって、うまくいくポイントをコミュニケーションを取りながら模索しています。こういうことを言った方が、この人には効くかなと考えながらアドバイスしたりしています。研究については、修士の人は研究をしたことがないから、どうやったらいいかわからないことが多いですよね。だから、研究の大枠を見せてあげて、細かい部分は自分で考えてもらうようにしています。また、最初の方は質問をオープンクエスチョン(なぜ?どんな?)にします。質問をすると活性化されていくので、答えながら本人が気づくようになります。その人の研究を頭の中でイメージして質問すると、研究の全体像マップの中に穴が出ますよね。そこをさらに聞いていくと、相手の気づきになるのかなと思います。そうなって欲しいなと思っています。

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大浦さん、この度は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

大浦さんは、山内ゼミでは、ムードメーカー役で、研究に行き詰っている人には明るく、方向を見失っている人には的確に、様々なアドバイスをしてくださる大変ありがたい存在です。今回、インタビューをさせていただき、改めて大浦さんの心の広さに触れることができました。また、研究と向き合う姿勢や時間の使い方など、大変参考になるお話が多く、私も少しでも大浦さんのように行動ベースで研究を進めていけるようにしたいと思いました。

なお、今回FLITのプロジェクトについて詳しくお聞きすることができませんでしたので、ご関心ある方は、2014年1月5日付YlabBlog(http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2014/01/)の山内研のプロジェクト紹介をご欄ください。

【中村絵里】

2014.07.27

【助教の方々へインタビュー】池尻さんの授業編


皆様こんにちは。修士2年の池田めぐみです。
猛暑が厳しくなってきましたね。「助教の方々へインタビュー」第3回目は2013年の春から特任助教に着任された池尻良平さんにインタビューさせて頂きました。
修士課程・博士課程と「歴史を現代に応用する学習方法の開発」というテーマで研究されていた池尻さん。研究のことや、なぜ博士課程に進まれたかについての記事は過去のYlab blog池尻さんのblogにありましたので、今回は意外に知らなかった、先生としての池尻さんに着目し、"池尻さんの授業の工夫"についてお話を聞かせて頂きました。

image.jpg

Q.今担当している授業について教えて下さい。
今担当している授業は3つで、
教育工学の方法を半期を通じて学ぶ、教育工学研究法
情報に関する知識や方法を入門的に学ぶ、情報科学研究法
あと、プログラミング入門を早稲田大学の人間科学部で行っています。

Q.授業をつくるときに気をつけていることは何ですか?
文脈つくりを大事にしていて、その授業に学生がのれるように工夫しています。
今期の、教育工学研究法だったら、「動画教材をつくって教育コンテンツか教育方法をつくる」っていう課題だったんですけど、ただオンデマンド授業を作るっていうの面白くないやん?(笑)その時に文脈にのせるっていうのがやっぱり重要だし、そこで学生のテンションがあがるようにしたいなって思ったんですよ。僕の修士研究の授業実践もそうだったんですけど、そのときも、最初に「労働問題を考えよう」って言うんじゃなくて、「君たちがこのまま日本にいたら非正規雇用の割合が増えて、みんなの給料も減りうる」という形で学生がのりやすい文脈を作ったりしていて。そういった授業の文脈作りに結構時間をかけていますね。
 それで、早稲田の授業では、受講者みんなが研究者志望なわけじゃないし、教育に興味がない子もいる。けれど、ここでやっていることは君たちに今後役に立つんですよっていうことを強烈に印象づけるために、下記のような伝え方で課題を伝えました。
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あなた達は科学に基づく教育教材の開発で有名なベンチャー企業の社員です。
昨今、MOOCや反転授業など動画を活用した教育ニーズが高まっており、
うちの会社にもそのような依頼が殺到しています。

ミッション
顧客にモデルケースとして提案できる新しい教育コンテンツを開発して下さい。

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こういう話をすると、教育工学に興味がない人も楽しそうってなったりリアルに感じてくれたりするんですよね。

でも、やっぱり教育工学を学んだ方が良いということに関しても説得性をもたせた方が良いなと思って、導入と一緒にそれをなしとげたらどうなるかのイメージも伝えられるようにしています。学校に作った教材を実際に導入してみるとか。今回はそれはできなかったんですけど、自分が教育工学を学んでどんな良いことがあったかを伝えるようにしました。これは、僕の応用するっていう研究の価値観にも似ているんですけど、役に立つということを授業の入り口と出口でしっかり担保するっていう工夫はすごいしているなって思います。

そういうのを考えられるのは、応用させる研究をやっている僕の強みでもあるし、アウトプットの時に色んな状況を想定できるのは色んなひとがいる学際情報学府に所属した強みでもあるし、授業にリアリティをもたらせるのは実践研究をやってきた強みでもあると思いますね。

Q.他に工夫していることはありますか?
グループ活動を導入する際は、個々人が活躍できるようにすること、特に、受講者それぞれが自分の創造性を発揮できるようにすることを意識しています。あらかじめ、自分は何タイプかを診断する自己分析のようなアンケートを行って、色んなタイプの人がグループにいるよう工夫したり、授業においても、「この課題は論理系の人に任せる!」とか「発表はリーダーの人がやって」とか、役割をもたせるように意識していますね。

後は、Javaだったら、数式だすだけの課題になってしまいがちなんですけど、(お酒が飲める歳になった)大学2年生が多かったりしたら、「コンビニのお酒の年齢認証に使えるプログラムを作ろう」といった課題を出してみたり、Siriやトロのような人工無能が多くなってきているから、それに準ずる物を作ってみましょうといった課題をだしてみたりしています。自分で作る人工無能はSiriなどに比べてレベルが落ちてしまうけど(笑)「最新の機能につながるものを作っているんですよ」、「今の世界とつながることをしているんですよ」っていうのを意識できるように工夫しています。

この効果はすごいあるなって気がしていて、「楽しかった」とか「他の物にも応用したいとおもいます」という声も聞くことができて、嬉しかったですね。

あと、プロジェクト型学習は雑多にやっている印象になってしまうこともあるので、ポイントを押さえる工夫もしています。
節目節目で学生にポイントをおさえてもらうようにしたり、段階ごとにやったことに対するスキルパックを提供するようにしています。でも、アイディアとかは自分からださないで、フレームだけ示して、コンテンツは自分達で考えてもらうようにしています。よく考えたら、僕の研究のカードゲームも、歴史をフレームワークにして、高校生が自分の観点で現代のものをいれていくから、そう考えると一緒かもしれないですね(笑)

あと、教えるタイミングはかなり意識していますね。
君たちに学んで欲しいことみたいなのを、タイミングをすごく重視して教えていて。体験してみた後に言われたらわかることは、体験後に言うとか、考えている方向性がわからなくなったときに方向性を言うとか。困る時に教えて、それまでは教えないっていうことをしていますね。自分のなかで、グループの進行を想定をしていて、あのチームはここでつまずきそうだなとか。その時に一言コメントできるように意識していますね。面白い物で、自主的にやっていると、助けを求めてくるタイミングがあるんですよ。そのタイミング、一番重みが出るタイミングでコメントできるよう意識していますね。

Q.授業をしていて大変なことはありますか?
大変なこと...状況把握ですかね。各自の進行をしっかり頭にたたきこまないと、重みのあるコメントができない。だから、ポートフォリオを渡して、授業後はSAとよみあって、つまるかもしれないポイントを掴むようにしています。後は、授業中も歩き回りながら、今どういうことをやっているかしっかりアップデートしているかな。人数が多いと、一人だとしんどいから、SAと協力しながらリアルタイムに状況が把握できるようにしています。

Q.印象的だった出来事はありますか?
今回彼らのやっている活動を教室にとじこめないことを目標としていたんですよ。コンテンツを作る時に、生協で動画をとるグループがあって、そのグループには、プロットを作るのが好きな子だとか、撮影が得意な子だとか、演技派の男の子とかいて、すごくこだわりながら楽しそうにやっていて、編集とかもかなりこだわってやっていて、もう1回動画を撮りに行ったりしていて。動画を作成する時に、各グループがすごい面白そうにやっていて、クォリティー的にはもうちょっとな部分もあったけど、すごい楽しそうに作っているのはやっぱ印象的やったなぁ..と思いますね!頭で考えるだけじゃなくて、型にはまらずにつくるっていうのは、教育工学の一番面白いところでもあるし、自分達の作品に段々愛情がうまれてくるのも印象的でしたね。

授業や教育プログラムを行う人に向けたメッセージをお願いします
まず、ひとつは、ワークショップや研究、あらゆることに通じることだと思うんですけど、対象者のことを考えて、対象者が学習できる状況をつくってあげることだと思います。彼らが求めていることにマッチした環境をがんばって作りこんであげることだと思いますね。大学生だったら卒業後社会人になる人、研究者になる人、独立する人、いっぱいいると思うんですけど、みんなにマッチするよう意識して授業をつくり、今からやることはみんなに役に立つということを伝えてあげる。そうしていくためには、大学生の現状を知る必要もあるだろうし、社会の情勢も知る必要があるだろうし、大学生の能力の現状や、若い人に価値があるものは何かも知らないといけない。今回も他の助教さんと2週間くらいずっと、そういったことを考えながら授業をつくっていましたね。

もうひとつは、グループについて。
グループってすごい簡単にくめるし、すごい簡単に課題も出せるんですよ。
でも、グループでひとりひとりがどういう風に貢献するかだとか、どういう会話するかだとか、最終的なパフォーマンスを最大にする為にはグループ構成がこれでいいかだとか、グループの中身をすごい意識していますね。
だから、そのために必要な情報があれば聞き出しているし、グループの組み方とかグループ課題も、ものすごく細かくシミュレーションして授業に望んでいますね。これを考えることは、学校の授業にも役立つだろうし、研究にも活きると思っていて、ワークショップをやるときとかにも役立つだろうなと思っています。

あとは自分自身がその授業を面白いと思っているかというのも、すごい大切ですね。そこの自信がないと、みんなついてこない。面白さに対して自分が責任をもつことが大切だなって思っています。その責任感というか、覚悟がみんなに電波する気がするんですよね。クールな開発研究じゃなくてロジックはクールだけど、自分が自信をもっておとどけする面白さを全面に出すことも大事だなって思いますね。

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池尻さんありがとうございました!!
お話を聞いていて何度も「池尻さんの授業うけたいなー」と思いました。
授業ではないですが、私も修士研究でワークショップを開発し実施します。
対象者のことやグループ編成をとことん考えて、対象者が学習できる状況をつくりあげること、面白さに対して自分が責任をもつこと、しっかり意識してワークショップ案を練って行こうと思いました。

次回の【助教の方々へインタビュー】は大浦先生編になります。お楽しみに!


【池田めぐみ】

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