2014.09.25

【学者紹介】John Dewey

こんにちは。

夏休みの終わりが刻一刻と近づいており、戦々恐々とした日々を過ごしております、
修士1年の逆瀬川です。

さて、1ヶ月前より、お送りしています【学者紹介】ですが、今回は、経験学習の生みの親であります、ジョン・デューイについて紹介したいと思います。

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ジョン・デューイは、アメリカを代表する哲学者であり、教育思想家です。
生徒が受け身の姿勢で学ぶ伝統的教育を、個性の表現と育成を阻止するものだと強く批判し、進歩主義教育運動を展開しました。
今回は代表的なデューイの思想を紹介したいと思います。

◆知性道具主義
全ての観念というものは、実践的に役にたたなければ意味がないとする「プラグマティズム」という19世紀後半から20世紀にかけて主にアメリカで発生した思想を発展させ、デューイは、自己の経験を推し進める過程において、だんだんに知性を発達させ、さらにその知性を道具としてあたらしい経験にたちむかう知性道具主義を確立しました。

◆経験主義
「学習者個人の成長」と「よりよい社会をつくる」という社会との目的を、達成するための教育は、経験によって基礎付けられなければならないという経験主義を提唱しました。
ここでは2つの代表的な原理が存在します。
①連続制
ある経験が、その後の経験に影響をおよぼし、その後の経験の質も変化するというものです。
②相互作用
正常な経験は、周囲の環境に代表される客観的条件と自己の変化という内的条件の相互作用によってなされるものということです。
この2つの原理は、互いに独立している訳ではなく2つセットとなっている経験こそ真の経験であるとデューイは説きます。


◆社会における学校の必要性
人間は、きまった期間しか生きることができないため、集団はその特異性を保つためには、未成熟な成員に、成熟した成員の関心や、知識、技術を教えなければなりません。
また、人は無関心な状態で生まれてくるため、積極的な関心を抱かせる必要があります。
人々が共同体、つまり社会を形成するために共通にもっていなければならないものは、目標、信仰、抱負、知識といったことへの共通理解でなのですが、文明が進歩するにつれて、子どもたちの能力と大人たちの仕事の間のギャップは拡大し、大人たちの仕事に直接参加することによる学習は難しくります。 
つまり、社会の伝統が非常に複雑になり、その社会的蓄積の大きな部分が文書として書き留められ、文字記号によって伝達されるようになるとき、フォーマルな学校の必要性がでてくるとデューイは説明します。

◆教育実践
1896年、シカゴ大学の附属小学校として「デューイ・スクール」を開講し、発達や学習についての心理学的原理と社会生活を通じての仲間づくりの原理とを、結びつけた実験ができる学校がほしいという願いを実現しました。
学校の課業の中に、技術・家庭を取り入れ、従来の社会において個人の創意工夫によって行われてきた作業に従事させるだけでなく、これらの作業が、人間社会に対してもっている本質的な意義を、現代において生かそうと考えました。


◆デューイへの批判
現代にいたるまで、教育界に大きな影響を与えているデューイの思想ですが、多大な貢献をしている一方で、批判も生じています。その中から代表的な2つを紹介したいと思います。
①這い回る経験主義
生活経験を重視するあまり、伝統的な学問体系の教授が軽視され、断片的な学習に終わって知識の積み重ねが不十分であったり、また、活動という手段が目的化された活動主義に陥りがちなどの批判が起きています。
②学校への過度の期待
教育を、社会の最高の機能と考え、複雑な民主的社会の成立を教育によって保障をするという考え方は楽観的であるとの批判もあります。

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 デューイが残した研究蓄積は、もちろん素晴らしいのですが、彼の生き様そのものも魅力的であり、知的好奇心にあふれたデューイは、教育にとどまらず、政治学、論理学、倫理学に至る、幅広い著作を晩年まで書き続けます。
私の研究関心である、協同学習の源流にもデューイの思想が息づいているように思います。
古典学者であるデューイの思想を深く学んでいく作業は、自らの研究だけに留まらず、意思とは何か、自由とは何か、という自分の人生に架かる思慮になったと感じています。

【学者紹介】も、残すところあと2回となりましたが、私もこのブログを通して、研究者の思想について学んでいきたいと思います。

【逆瀬川愛貴子】

デューイ著, 宮原誠一 訳 (1935) 「学校と社会」, 岩波文庫
デューイ著, 市村尚久 訳 (1938) 「経験と教育」, 講談社学術文庫
デューイ著, 松野安男 訳 (1975) 「民主主義と教育」, 岩波文庫
山田英世 (1966) 「J. デューイ」, 清水書院
笠原克博(1972) デューイの思想形成過程 : ヘーゲルとの関係を中心に, 九州工業大学研究報告. 人文・社会科学20, pp,1-19
光成研一郎(2000) デューイの探求(反省的思考)の教育的意義について思考力要請の観点から, 人文論究50(1):44-55

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