2014.08.10
みなさま、こんにちは。修士1年の逆瀬川です。
毎日うだるような暑さで、ついつい外出することもはばかられてしまい、研究室に籠もりっきりになってしまいそうです。
そろそろ思いっきり体を動かすことをしたいですね。山内研運動会の開催を期待します。
さて、かれこれ1ヶ月程「助教の方々へインタビュー」というテーマでブログをお送りしていますが、第5回目となる今回は、山内研のITまわりを担当しています、荒さんにインタビューをしてきました。
研究室内で、最も謎に包まれている荒さんに、今回は、お仕事から研究の道に進んだ経緯と、現在されている研究についてお聞きしてきました。
Q、荒さんについては、研究室内でも謎に包まれているという意見が多いので、簡単に経歴を教えてください。
学部生の時は、慶応の理工学部でテレビ会議の研究をしていました。卒業後、すぐには院に進学せずに、青年海外協力隊の理数科教師としてザンビアに2年間駐留し、その延長で、国際開発関連の仕事を請け負い、前職は、国際開発コンサルタントとして主にJICAの仕事に携わっていました。
30歳を過ぎてから、研究に関心が向くようになり、東工大学大学院に進学し、修士号を得て、現在、山内研で助教として働いています。
Q、長い間、お仕事をされていたようですが、研究の領域にはいろうと思ったきっかけは何ですか?
国際開発の仕事で、世界各地の開発途上国にある遠隔テレビ会議のネットワークを使って、遠隔で研修をするというプロジェクトの企画運営を行っていたのですが、どうもうまくいかない部分がありました。
遠隔システムを利用したことがない講師が、東京のスタジオから、テレビの先のインドネシアやアフリカといった開発途上国の人を想像し、講義をするということは、とてもスキルが必要なことなのですが、それをフォローする環境が充分ではなかったということが一番の原因でした。この問題を改善するためには、本格的に教育の方法を体系立てて学ぶ必要があると気づきました。
そんな中、ヨルダンで教員養成プロジェクトを行っていた際に、アドバイザーとして入った東工大の赤堀先生を通して、教育工学に出会い、この分野を学ぶことで自分のスキルを裏打ちできるのではないかと思い、そのまま赤堀先生に弟子入りした、という経緯です。
Q、修士時代はどんな研究をしていたのですか?
遠隔講義で一番困ることは、遠隔地の学習者の状況を把握しきれない、つまり、学習者がモニターに映ることで、雰囲気や一人一人の顔色などといった、様々な情報が削ぎ落とされてしまうということであり、それを解決する手段として、遠隔講義システムの中で、学習者の映像を、画像解析し、パターンを抽出して学習者の状況把握をサポートするという研究をしていました。
現在は、修士時代の知見を活用し、教員のリフレクションを促す仕組みづくりの研究を行っています。現状では、自らの授業を振り返る仕組みが確立されていません。
日本には、様々な人が集まり授業を批判的にみる、日本初で世界に広まった研究授業という良い文化があるのですが、頻繁に開くことは難しく、それを日常的に個人ベースで行う仕組みをつくれないかと思い、授業映像から、授業の要約を作りだし、簡単に振り返ることのできるシステムを開発しようとしています。
Q、山内研のお仕事と自身の研究で繋がる部分はありますか?
私は、MOOCの仕事をメインで行っているのですが、研究で扱っている遠隔講義は、遠隔地の人々が同時に交信をするという同期型のシステムであるのに対し、MOOCは非同期型であるという点で、今までに経験したことのない領域でもあります。ただ、遠隔講義という部分は共通しているので、自分の研究の延長線上にあるものだと考えています。
また、自分の研究関心が、教員の教育活動を技術で支援しようとするテクノロジー寄りのものであるのに対し、山内研には、人に焦点をあてた分野を扱う人が多いので勉強になります。
Q、問題関心のもととなっている部分はどんなことですか?
テクノロジーは人の活動を易しくし、助けるためにあると考えていますが、実際うまく機能していないシステムが多くあり、その一つが遠隔講義システムでした。遠くとつなぎやすくなったという意味では、便利になりましたが、教育という観点から見ると、まだまだ。
テクノロジーによって生じた問題は、テクノロジーで補い、解決するべきだと思うのですが、それに取り組んでいる人があまりいなかったので、研究をすることにしました。
Q、最後に、学府で勉強する学生や、これから研究をしたいと志している受験生へメッセージをお願いします!
研究のタネや、関心の方向は、自分が経験したことからではないと生まれてこないと思います。自分が経験してないことを研究しようと思うと、どうしても無理が生じてくるので、例えば、教育に関心があるのであれば、教育の現場に実際に入って何らかの経験を積んでみることが必要だということが1つです。
もう1つは、常に問題のタネを探す姿勢や態度を持ち、過ごしていないと気づかないということです。
Q、私は、まだまだ研究テーマが決定しておらず、問題関心のタネが本当にこれでいいのか迷う瞬間があるのですが・・・今でも自分の問題関心がこれで正しいのか正直迷っています。
タネを研究にすることは、また別のスキルが必要です。ただ、タネがないことには、なにも始まらないので、ただ研究がしたいからという理由で大学院にきてしまうと、1年くらいタネ探しで終わってしまいます。大学院はすごく短いので、進学しようとしているのであれば、入る前にタネを見つける努力は必要ですが、問題関心のタネから実際に研究という形にする過程は大学院で学ぶことなので、今は悩んでいいと思いますし、必要な悩みでもあると思います。
荒さん、お忙しい中、ご協力ありがとうございました。荒さんのことを少し知れた気がしてうれしいです。
世界15カ国以上をフィールドにお仕事をされてきた荒さんだからこそ、できる研究があるのだなとしみじみ感じました。
私も、問題関心のタネをうまく言語化してリサーチクエスチョンを立てられるように、研究室での学びを大切にしていきたいです。
次回のインタビューは、今年から山内研にいらっしゃった一色さんです。みなさんお楽しみに。
逆瀬川愛貴子