2010.06.26

【研究者の仕事術】椿本弥生 特任助教

みなさま,こんにちは。
M2の伏木田稚子です。
【研究者の仕事術】第4回は,特任助教をされている椿本さんにインタビューに伺いました。

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文章評価の研究で博士号をとられた椿本さん。
現在は,文章産出モデルの一部をもっと詳細に表すことはできないか?という視点から,そのプロセスにおける「寝かせ」による認知的な効果を,質問紙調査によって明らかにしようと試みられています。
分量があり,論理構成がしっかりしていて,頭と時間を使って書くような文章,例えば書籍の原稿や論文などを対象に,書き終わらずに寝かせている間,人々の認知過程では何が起こっているかを探っているとのこと。
寝かせた後,修正がはかどるのはなぜ?改編を思い切ってできるのはなぜ?という単純な疑問が研究の鍵となっているそうです。

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今回は,文章を書くこと,それを読むことに強い関心を持たれている椿本さんに,アイディアの書き留め方から情報の整理,そして研究に対する姿勢や頭と時間の使い方に至るまで,ざっくばらんにお話いただきました。
少々,記事が長くなっていますが,どうぞごゆっくりとお読みいただければと思います。

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●○紙とペンは必需品。アイディアを「書き留める」ことへのこだわりとは?

Q1. アイディアが浮かんだとき,そのアイディアを残しておきたいとき,どうされていますか?
ごはんを食べているとき,誰かと研究に関係ない話をしているとき,お風呂に入っているとき,ふっとアイディアが浮かぶことってありますよね。そういうとき,すぐにノートに書き留めます。相手に「ちょっと待って」と言ってね(笑)大学時代は,生協で売っている大学ノートを,今は少し小さめのノートをいつも持ち歩いています。

Q2. 「書く」ことがポイントなのでしょうか?
そうですね。書いているとアイディアがもっと思い浮かび,考えていることの整理もできます。アイディアを湧かせたり,深めたり,残しておいて後で見返したいときにノートは向いています。付箋に走り書きをしたメモも清書はしないで,そのままノートに貼ります。エッセンスが抜けないよう,生のまま残しておきたいのです。


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Q3. 例えば,どのように「書いて」おくのでしょうか?
研究をいくつか並行して進めているときは,どのネタがどの研究に使えるかわからないので,研究ごとにページを分けてただただ時系列に書いていきます。ときどき見返して,必要なときに必要な部分を使う。そのときの関心に使えるかどうかだけが大事なのです。ここにメモがある,ここにないメモはしていない。そうわかっているからこそ,何かネタがないかな,ちょっと詰まってきたなと思ったらこれを見ます。論文を読んでいて,大事だなと下線を引いたところもノートに書き留めます。本文を読み返したいときに迷子にならないよう,論文の出典(著者と年代)はしっかりと書いておきます。


●○思い出すヒントを未来の自分に。研究も情報もファイルごとに整理整頓。

Q4. 論文の話が出ましたが,研究に関連する文献はどのように管理されていますか?
これから読む論文は,リストを作ってPCに保存しておきます。すでに読んだ論文は,プロジェクトごとにファイルを作って,その中にどんどん入れていきます。今は,BEAT,自分が関わっている科研費プロジェクト,自分の研究の3つのファイルに分類しています。読んだ論文の表紙には,その論文のポイントをメモして貼っておく。そうすることで,思い出すヒントを未来の自分に与えられるのです。
ファイルの中は,特に整理をしていません。整理に時間を使い過ぎるのはもったいない。がさがさ触っているうちに,使えそうな論文は前の方に,今はまだ...というものは後ろの方に,自動的に分かれていくような気がします。

Q5. いつ頃から,今のようなスタイルで取り組まれているのでしょうか?
卒論のときは,それだけに集中すればよかったのですが,修士に入ってから仕事がぶわっと増えて混乱したのがきっかけです。後輩の研究の手伝いや,自分の研究,当時お世話になっていた赤堀先生のプロジェクトなど,自分の中にいくつかファイルがあるなぁと感じるようになっていきました。
頭の中が研究ごとに分かれている場合,論文の管理も同じようにしておくと,頭の中と現実世界の対応がつきます。迷う時間が少なくなるのです。そのため今では,複数の研究で必要な論文は,その数だけ印刷をしてすべてのファイルに入れておくようにしています。

Q6. 複数のファイルがあると,バランスを取るのが難しそうですが・・・?
たまにファイル間で情報を比べると,関係性が見えてくる気がしています。各ファイルは独立しているのではなく,その全体がわたしの研究なのです。各研究に取り組む時は,そのことだけを考えています。けれども,ちょっと離れて俯瞰して見ると,複数のファイルが自分の中にあることや,研究全体に対する自分の考え方に気づくことができます。
大学院の頃,「寝ても覚めても研究だ」と赤堀先生に言われ続けました。土日,正月,クリスマスはないんだ,と(笑)その頃は,先生の言葉の意味がよくわかっていませんでしたが,最近になってようやく,1000時間考えて一瞬ひらめいた,それが大事,それが命と感じるようになってきました。どれだけ考えても足りることはないんですね。


●○オンとオフの繰り返しを支えるのは「楽しい」という気持ち。

Q7. もう考えられない!というときはどうされていますか?
何も考えなくていい作業も研究には必要だと思っています。体調が悪い,お腹が空いている,嫌なことがあった,そういうときでも,仕事は進めなければいけません。そういうときのために,頭を使わなければいけない仕事と,頭を使わなくてもいい仕事の両方を持つようにしています。機械的にこなす仕事に無心で取り組んでいると,だんだん頭が活性化してきて,ちょっと頭を使う仕事もやるかという気持ちになります。実は,そういう手だけ動かす仕事も好き。進んだという達成感は重要ですね(笑)
基本的には,トータルで研究が進めばいいと思っているので,頭を使わなくてもいい仕事にはあまり時間をかけないように,なるべく早く頭を使う仕事に移れるようにしています。どうしようもないときは,何もしません。休むのも仕事,そう思ってひたすらスイッチをオフしていれば,またやりたくなるし,やらざるを得なくなるものです。そうしたらスイッチをオフする。その繰り返しです。

Q8. オンとオフの繰り返しの日々,研究が嫌になることはありませんか?
プロジェクトが忙しいときは,自分の研究の比重を少し落として,仕事に集中します。落ち着いたら,また自分の研究に戻ります。日々やることは違います。大変さや楽しさも微妙に違いますが,どれも楽しい。詰まるときも,逃避したくなるときもありますが,嫌にはなりません。つまらないと自分が思うことはやっていないからでしょう。調べることが退屈ということもありません。知りたい!と思ってやっているからです。
卒論の頃から,テーマを自分で自由に見つけて良い環境にいたので,好きなことをどんどんやらせてもらっていました。もちろん研究は1人ではできません。先輩や先生,ときには後輩に相談して進めていきました。一人だったら息詰まるときもあったはず,周りに恵まれていたので楽しく思えていたのでしょう。みんなが楽しんで研究できる環境と,自分が好きなテーマに取り組むことができる状況。ラッキーですね,その波にうまく乗れているような気がしています。


●○研究を支えているのは,人や時間の「グラデーション」

Q9. 大学院の頃も含めて今も,周りの人々の存在は大きいのでしょうか?
大学院時代に,研究の相談をさせていただいた先輩や先生は,今でも一緒に研究をしたり,飲み会をするなど,関係が続いています。それは財産ですね。学部時代,教育心理学を専攻していたので,修士に入ってから教育工学の考え方に馴染むのが大変でした。道筋が見えず,赤堀先生に言いたいことが通じなくて,ゼミの後に泣いたこともありました。初めての学会発表の前夜,「これは教育心理学のまとめ方だ」と言われて「前日にそんな・・・」と落ち込んでいたら,やさしくて面倒見のいい先輩たちが夜中の3時,4時まで付き合ってくださって。教育工学の話の運び方,つまり学問の背景に溶け込ませるということを徹底的に教えてもらいました。ほとんど寝ずに発表をしましたが,聞き手に話が通じて報われました。すごくうれしかったのを今でも覚えています。
その頃も今も,研究をめぐってプロジェクトメンバーと喧々諤々の議論をするのは変わりません。いい研究をしたい,こういうことを明らかにしたい,その気持ちがあるからこそ,なのです。「君違う!」「あなたこそ違う!」そういう議論もなくゆるい場合は,これで結果が出るのだろうかと不安になります(笑)。

Q10. みんなで研究を進めていく,そういうスタイルを大切にされているのでしょうか?
みんなで相談していいものをつくる,そういう考え方は院生時代も今も変わりません。情報学環で働き始めた年の6月に,スイッチをオフできないまま仕事をしていてダウンしました。そのときに考え方が変わりました。研究はみんなで一緒に進めるものだから,みんなのことを考えて休めるときには休まないと,と。1人でやる研究もありますが,みんなで話しながらいいものをつくるというスタイルが私にとっては普通になっています。そのやり方が好きだし,馴染んでいるのでしょう。
もちろん,自分で考える時間とのバランスも大切です。1人で集中する時間と,みんなで分担してアイディアを出す時間,そういうものがうまく分散されているといいのかなと感じています。その2つはきれいに分離せず,混ざっている部分もありつつ・・・そうですね,グラデーションみたいなものではないでしょうか。1日の中で,プロジェクトの期間ごとで,うっすらと分かれているグラデーション。理想としては,そのバランスを保ちながらやっていきたいですね。


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編集後記:
日頃わたしがうつうつと悩んでいることも織り交ぜながら,研究に必要な心構えや,時間と頭の使い方を伺ってまいりました。
自分に合うやり方を見つけるまで,何度となく向き合わなければいけない壁。
それをひとつひとつ乗り越えた先に,椿本さんが教えて下さったようなあり方を見つけることができればいいなと思いました。
お忙しいところ,ありがとうございました。

[伏木田稚子]

2010.06.21

【研究者の仕事術】佐倉 統 教授

【研究者の仕事術】第3回は、修士2年生程琳が
佐倉統先生へインタビューに行ってまいりました!
佐倉先生は進化生物学を中心に科学史、科学技術論と幅広い分野にわたり研究者の道を歩んでいます。科学技術というものを人間の長い進化の視点から位置づけていくことを、興味の根本として挙げています。
早速獅子座のA型の佐倉先生の仕事術を伺いましょう。

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(佐倉先生の机に向き合う姿)
1.研究者としての人生と会社に入るサラリーマンと、どう違うように捉えていますか?

佐倉先生:研究というのは、基本的に芸術に似ていて、自分のオリジナリティで勝負するものです。何か新しい理論や新しい知識を見つけたりするのが研究者の目標です。チームでやることもあるし、プロジェクトでやることもありますが、そのような場合でも自分の判断というのが大事になりますし、誰かに命令されてそのまま仕事をするというのとは違います。チームの中での仕事でも、やっぱり自分のオリジナリティが重視されると思います。
 一方、企業で働く人にとっては、企業という大きなシステム全体のゴールに向かって、利益をあげるとかシェアを増やすとか、共通の役目を果たすために、ある意味では命令されたことをやり遂げるのが仕事なんだと思います。
 こういう面で見ると、大学の研究者のほうは、作業する場所や時間についてはかなりの自由度を許されていますが、それだけの成果を挙げないといけないという個人の責任も大きいものがあります。


2.どうして研究者の道を志したんですか。
佐倉先生:好きでしたから。子供のときは星の話とかロケットとかが好きで、SFも大好きでした。宇宙飛行士にもなりたかったんですが、結局目が悪いため断念しましたが、科学者になりたい気持ちは子供のときからずっとありました。
 今は科学者ではなくて、むしろ科学社会学的なことをやっています。もちろん、昔ぼくが思っていたようには科学も科学者もピュアな存在ではなくて、もっといろいろな側面がありますよね。実験対象者の選抜や調査日程の調整、実験道具の作成など、実験のセッティングがものすごく大変で、最終的に論文になるのはほんの一部だけです。科学や学問のことを知ってもらうためには、そういった研究成果以外の部分を、もっと積極的に見せていくことも必要なんじゃないかと思います。


3.ご自分では、自己流というか、好んだ仕事術はなんでしょう。また、このほかに、社会との境目をどう乗り越えるか、あるいはどう行き交うのかを教えてください。
佐倉先生:時間的には、私は夜型です。静かな時間で、集中して考えたり、書いたりすることができるからです。でも、今の研究活動というのは基本的にチームで進めるものです。決して一人ではいい成果を出すことができないので、普段の情報収集から実際に調査研究を進める段階まで、チームワークがとても大事です。メンバー同士のディスカッションは欠かせません。
 私は、井戸を深く掘りさげるように研究をするタイプの人間ではなく、また、まったく新しいものを作り出すような素質もないのですが、自分のやり方としては、視野をできるだけ広げておいてさまざまなジャンルのことを知り、その異なったジャンルの間の関連を見出して、エディターとして結び付けていくというやり方をしています。その、今まで見えていなかったつながりを明らかにすることから、なにか社会に貢献できるようなことを研究したいですね。
 また、教員になって自分の研究室をもつようになると、自分のことだけ考えていればいいというわけにはいきませんよね。若いうちは自分の研究のことだけで頭がいっぱいでしたが、そのうち学生も増えてくるし、さらに歳を重ねると助教や研究員もついてくるので、研究室全体の維持や運営管理が大事になってきます。私は、どちらかというと、大きなチームを動かすのが苦手で、10人程度の目が届く範囲でのメンバーと一緒にがんばる方が好きです。

4.お仕事に愛用されている部品を見せていただきます。
佐倉先生:パソコン観境も大事ですが、筆記用具にもこだわりを持っています。もともとフィールドワークをしていたので、メモ用のノートが必須で、あとは四色のペンと蛍光ペンを常に持っていますね。思いついたことがあれば、すぐに書けるようにこういうものが必要です。後ではメモの書き写しはしないですが、ノートは書き終わるまでずっと一冊で、まとめるときは直接パソコンで作業します。メモでも、書籍でも、ほかの情報でも、ある程度まで分かれば、より細かい分類はしないタイプですね。基本的に書類の管理や整理はとても苦手で、おおざっぱにフォルダーに分けて管理しています。あと、よく忘れるので、大事なことは必ずアシスタントに覚えておいてもらうようお願いします。セカンドブレインですね。(笑)

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(二十年前からのメモを大切にしまった箱) (昔のメモ)
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(いま愛用している四色ペン) (必須三点物:ノート+四色ペン+メモ帳)
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(本に違う色のラベルでジャンルわけをする)

【程 琳】

2010.06.10

【研究者の仕事術】御園真史 特任助教

【研究者の仕事術】第2回は、修士2年生帯刀菜奈が
御園真史先生へインタビューに行ってまいりました!

御園真史先生は大学初年次教育や
リメディアル教育における数学の指導と学生の学び
を専門に研究なさっています。
予備校や高等学校での数学指導の傍ら、
e-ラーニングに関する会社経営などを経て、
研究者への道を志し、東京工業大学大学院にて博士(学術)を取得。
現在、専修大学兼任講師、東洋英和女学院大学、湘南工科大学の非常勤講師
でいらっしゃいます。
早速お仕事術を伺いましょう!


■研究室は生活の場!

Qなぜ研究者の道を目指されたのですか?


画像(リンク切れ)

もともと大学院には行きたいと思っていました。
進学を決定したきっかけは2つありました。
1つめは、大学の学生に対して高校の補習授業を通して、
高等教育にかかわるようになったこと。
2つめはインターネットを利用した教育システムを構築していて、
それを専門的に学べる分野は何だろうと検索していたら教育工学に出会ったことです。
研究室のホームページが充実していた東工大の赤堀研究室に惹かれ、入試説明会に行き、
入学志願をしたことが研究者の道への始まりですね。

Qどのような大学院時代を過ごされたのですか。

学費を稼ぐためにも仕事を続けていましたので、それは相当大変でした。
「研究室は生活の場。」というのが赤堀先生の方針でした。
一方で、研究室に行くことがゼミメンバーであることの証明といえますので、
仕事帰りに夜な夜な研究室に出没していたりしました。
そういう意味では、勤務日以外でも、今も東大に仕事帰りに寄ることがあるので
院生時代とあまりスタイルが変わっていないのかもしれませんね(笑)


■電車は集中型・お風呂は創出型の仕事術!

Q現在、研究者としての1日のスケジュールを教えてください。

いま毎週、8コマの授業を担当し、東大を含め4つの大学を回っています。
中には自宅から遠い大学もあり、往復4時間以上かかることもあります。
例えば、最も遠距離通勤である水曜日は片道100キロあります。
10時に家を出発し、13時から授業開始します。
3コマ授業をこなした後、18時ぐらいに授業が終わり、
その後21時ぐらいまではミーティング等があることも多く、
帰宅すると夜中0時を回ってしまいますね。
終電や深夜バスのお世話になることもしばしばあります。

Q移動時間は何に使いますか?

授業準備や論文の執筆に当てます。たいてい電車内では作業をすることが多いです。
例えば、「降りる駅まであと一時間しかない」というタイムリミットあり、集中できるのです。

Qアイディアも電車で生まれることが多いのでしょうか?

アイディアはお風呂でリラックスしているときのほうが浮かんできますね。
また、大事な意思決定もお風呂の中で決めることが多いです。
温泉が好きなので、露天で涼みながら1時間ほど源泉掛け流しの湯船に浸かります。
まさに,"Onsen Based Working"です(笑)


■論文書きは机の上より喫茶店!

Q1日のなかでホッとする瞬間はどんな時ですか?

仕事の合間に飲む一杯のコーヒーがとても好きで、生きがいです。
最近はコメダコーヒーという喫茶店を気に入っているので仕事を持って行きます。
おいしいコーヒーを飲みながら論文を書くとはかどります。

Qたくさん案件を抱えていらっしゃいますが、個々の仕事管理に工夫はありますか?

打ち合わせが基本の仕事では、次回報告することは何か、明確にするようにしています。
宿題が分かれば、半分終わったも同然!?


■通勤時間の仕事に役立つグッズを大公開!

Qいつも持ち歩くお仕事グッズを見せてください。

●鞄のなか編●

画像(リンク切れ)

3年ほど前に博士論文を書いたDELLのPC。お勧めは安いところ。

ネットにつなぐためのe-mobile。これがあるから電車で仕事ができる。

トレーディングカードケースに入っているのはトレカ...ではなく、ポイントカード群。
買い物カードとともに、良く行く温泉のカードを持ち歩いています。

学生の大福帳(学生が毎回コメントを書いて提出するシート)に押すスタンプ。
学生がいつレポートを提出したか一目でわかるための日付印。

書画カメラ用の赤青黒のpilotのサインペン。最近はあまりパワーポイントを使わないのです。

●ポケットのなか編●

画像(リンク切れ)

3本100円4色ボールペンを2本常備。
新しいe-mobileの携帯。Web、メールとtwitter用。
学部卒業時先生からいただいた思い出のキーケース。万歩計。

Q夢は何ですか。

ゼミ生は、仲良く協力して研究を進めていける研究室を作りたいですね。山内研がお手本です。そうすると、業績も後からついてくると思います。
ん、もっと他にですか? そうですね~、幸せな家庭をつくることでしょうか(笑)

Qずいぶん研究者は忙しそうですが、恋愛はできるのですか?

そりゃあ、もちろん。
工夫次第で何とでも例えば、仕事帰りに車で彼女を迎えに行ってご飯を食べに行ったりしますし、
休みが合う日は映画に行ったり、年に何回かディズニーランドにいったりしていますよ(笑)


■日常生活でもアンテナを張って情報収集を!

Q最後に御園先生にとって研究とは何ですか?

一言で言うと、

見えていなかったものを見えるようにすること

です。

その際に、主張を客観的に証明しなければなりませんが、難しいことです。
例えば、現場にいると、教員の主観で考えてしまうことが多いですよね。
しかし、研究として教育を見る際には

一歩引いた視点で授業や教育の場を見ること

が大切ではないでしょうか。
そのような視点で、教育の場で何が起こっているのかを可視化するのが我々のお仕事だと思います。

そのために、どこが問題なのかを見極めることが第一歩になりますが、
それは普段の授業などにヒントがたくさんあります。それを見逃さないことが重要です。
これを指導教員だった赤堀先生は

アンテナを張る

と表現しました。
私は「学生がどうしたらもっと成長できるか?」という観点でアンテナを張っているつもりです。
 
以上のことは、幸い実践的な場に巡り合えていたからできることだと思います。
その意味では、学部からそのまま修士課程に進学されたみなさんは、四苦八苦することも多いでしょう。
しかし、そのような視点だからこそできる研究があるはずです。がんばってください!


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編集後記:

「修士1年生では何をしたらいいか分からなくて、先輩の見よう見まねだった。
論文の読み方が分かってくると効率よく読めるようになったり、
後輩に教えるうち徐々に研究室にいること自体も楽しくなってきたのを覚えている。
締め切りが立て込むと正直つらいが、今の仕事は楽しい。」と語ってくださった御園先生。
お風呂でも電車でもコーヒーを飲みながらも研究のことを常に考えていらっしゃる先生から、
生活にいかに仕事時間を溶け込ませるかという技術と心意気を教わりました。

【帯刀 菜奈】

2010.06.04

【研究者の仕事術】山内祐平 准教授

みなさま、こんにちは。修士2年の安斎勇樹と申します。

今週から身近な研究者の仕事術や研究ノウハウを紹介する
新シリーズ【研究者の仕事術】をお送り致します!

第一回は、修士2年の安斎勇樹が山内祐平先生にインタビューしてきました!

今回は初回ということもあり、山内先生ということもあり、研究者がどのように仕事(キャリア)をつくっていくのか?研究テーマはどのように見つけるのか?という広い意味での「研究者の仕事術」を中心にインタビューしてきました。

※本記事は要約しています。要約無しのロングバージョンはこちら(リンク切れ)※


研究者としてキャリアをどうデザインするか

【安斎】
現在掲げている研究テーマ『学習環境デザイン論の体系化』に至った経緯を教えて下さい。

【山内先生】
現在の研究テーマを掲げたのは、10年くらい前からですね。もともと学習環境デザインの研究をやろうと思っていたか、と言われればNOです。修論でマルチメディア教材を開発していた時は、まさか自分が空間についてやるとは思ってもいませんでしたね(笑)

もちろん漠然と空間が学習環境に意味を持っていることは認識していましたが、空間について研究するようになったのは、やはり美馬のゆりさんが「はこだて未来大学」を作った影響が大きいです。自分と近い美馬さんが出来るということは「僕も出来るかも」と思ったのがきっかけですね。


偶然と選択がキャリアをつくる

【安斎】
それから徐々に研究対象をシフトしていったのですか?

【山内先生】
進化論的な話になるんですが、僕は空間の研究は確かにやりたいとは思っていたのだけど、そのために戦略的にものすごく努力をして...というわけではなくて、同時多発的に起きたいくつかの選択と仕事の積み上げが、自分の志向性と相まって、最終的に「福武ホール」に結晶したという感じです。

もう少し具体的に説明をすると...、まず、1990年代後半にフィールドワークで入った萱野小が、たまたまオープンスクールだったんですよ。そこでは空間が色々な使われ方をしていて、そこで空間に関する基礎的な知識が身につきました。

その後、2005年の3月にBEAT Seminarに来て頂いたセンベンさんのつてで、MITのTEALを見学したんです。その時に「なるほど、僕らがやってきた人工物の研究と、空間はこういう風にフュージョンするんだ。これなら僕でも出来る」と思ったんです。

丁度その頃に、空間に興味を持っていた丸善から共同研究の依頼があり、その頃に「福武ホール」の話も立ち上がった。それと同時に、駒場からKALSのデザインの案件の依頼が来たんです。2007年にKALSをデザインし、2008年に福武ホールが完成した。

つまり、戦略的に空間の研究をしていったというよりも、いくつかの仕事を、自分のやりたいことに基づいてセレクションしていった結果、今がある、という感じですね。

ノウハウも知名度もない領域で何か新しいことをやろうとしたら、自分が既にある程度持っているものをベースにして、それに近いものを手繰っていくのが合理的な方法ですよね。だから、偶然の出会いや偶然の仕事が流れていく中で、自分のやりたいことに関係するものをどうセレクションしていくか...というのがキャリアをつくっていく方法なのだと思います。


研究テーマの発見法

【安斎】
個別の研究テーマやアイデアはどのように見つけているのですか?

【山内先生】
これは研究領域によってかなり違うと思います。が、私は「この3年間で新たに立ち上がってくる研究領域はどこだろう?」ということを常に考えています。その為に、様々なニュースソースから、今まさに他の領域で起きつつあるパズルのピースを探すんですね。そして、3〜5年くらいで来るであろう領域、つまり「要注目領域」を常日頃からいくつか見つけておくようにしてるんです。その中から、自分が強い領域に隣接していて、かつ成長するであろう領域を研究テーマとして選びます。


大学院時代は関心を深め、「核」を見つけよ

【安斎】
なるほど。自分の関心の赴くままではなく、社会の動向に目を向けて研究の種を探すんですね。

【山内先生】
ただし、博士課程の大学院生は、社会的な動向に対して意識的であった方が良いとは思いますが、大学院時代は出来るだけ自分の興味関心を大事にして深めながら、一生使えるような「核」になる何かを1つ2つ小さく成功させたほうが良いでしょう。そして、それをその後の人生で水平展開したり垂直展開したりして、仕事をつくっていけば良いんです。


本はアウトプットの時に読む

【安斎】
先生の創造的な仕事の数々は、強力な知識基盤の上に成り立っていると感じます。先生は現在は書籍や文献はどれくらい読んでいるんですか?

【山内先生】
僕は本を沢山買っていますが、読まないんですよ。目次を見て、ざっと眺めて、本棚に入れてしまうんです。本を真剣に読むのは、アウトプットの時だけなんです。その代わり、アウトプットの時にどれを読めば良いのか、というインデックスだけいつも作るようにしてるんです。書く時にだけ集中して、関係する部分をいっぱい読む。そういう意味で、僕はまじめな研究者ではないかもしれない(笑)

【安斎】
それは、目次を読んだ時にある程度中身がわかるから出来ることなんですか?

【山内先生】
うん、それはあるかもしれないですね。目次と内容をパラパラ見ているだけで、だいたいどこを読めば良いかわかります。

その代わり、僕は中学生から大学生の間は、やたらめったら本を読んでいました。特に中学生の時に哲学書を沢山読んだのが役に立っています。正直、当時は全くわかっていなかったけど、ものの考え方や姿勢とか、難しい文章にどう格闘していけばいいのか、身体で身に付けていった。そうやって中高生の頃からまじめに本を読んでいた経験が、今の読書スタイルの基盤となっているかもしれない。


Twitterで最新の情報を収集する

【安斎】
現在はどのように情報収集されているのでしょうか?

【山内先生】
主にTwitterです。これまでブログやGoogle検索で見ていたものは、ほとんどTwitter経由に変わりましたね。ソースは僕のTwitterのリストを見て頂ければわかるけど、海外のニュースソースでリストを作っていて、毎朝それを確認しています。国内の情報は、僕がフォローしている国内の研究者の方から流れてくるので、意識的に海外のソースを見ていますね。

【安斎】
Twitterだけで十分な情報が集まっていますか?

【山内先生】
そうですね。この人に情報が集まってくるだろうという人をフォローしておくと、僕が欲しい情報は山のように入ってくる(笑)これは楽で良いですよね(笑)Googleでキーワード検索するとやたらめったら出て来てどれを拾えば良いかわからないけど、やはり人のフィルターは非常に強いですね。


【安斎】
最後に、先生のカバンの中身を見せて下さい!笑

【山内先生】
何もないよ(笑) 申し訳ないけど色気も何もない中身です(笑)

画像(リンク切れ)

MacBook、iPhone、ペン、emobile、名刺入れ、延長コード(無印良品)
※適宜これに手帳とか書類が加わる

【安斎】
お忙しいところどうもありがとうございました!

---
編集後記:
山内先生のキャリアや業績、そして現在の情報収集・管理の技術は、学生時代に培ったものが基盤となっているのだな、と感じました。博士進学、そしてその後もアカデミックポストを志望している学生として、現在山内研究室で過ごしている時間が、将来、研究者として仕事をしていく上での「核」をつくっている重要な時間なのだと実感しました。今回学んだ仕事術を参考にしながらも、気を引き締めて毎日の研究生活を過ごしたいと思います。


※本記事は要約しています。要約無しのロングバージョンはこちら(リンク切れ)※


[安斎 勇樹]

2010.05.31

【開催報告】電子書籍時代の教材:誰が作りどんな形になるのか

5月29日(土)にBEAT Seminar「電子書籍時代の教材・誰が作りどんな形になるのか」が開催されました。佐々木俊尚さん (ITジャーナリスト)、宇治橋祐之さん(NHK)、長谷川一さん(明治学院大学)のお話をうかがい、参加者のグループディスカッションから出された質問によって本質的な議論ができたと思います。登壇者と参加者のみなさまにお礼申し上げます。
(Togetterによるまとめはこちらからご覧になれます。近日中にセミナーレポートがBEATウェブサイトに公開される予定です。)

佐々木さんのお話から、歴史的に見て写本→紙→ネット配信と2回しか変わっていない情報コンテナの重要性を、宇治橋さんのお話から、マルチメディア教材における映像活用の可能性を、長谷川さんのお話から、主体的に技術とかかわることの大切さを学べました。
iPadの発売によりタブレットデバイスの学習利用は「祭り」状態になっていますが、技術決定論的な発想を打破する新しい学びの形について、近代の所産である学校や教科書というメタファーに縛られずデザインしていきたいと考えています。

[山内 祐平]

2010.05.28

【今年の研究計画】講義内容の理解を促進するデジタル・バックチャネルの利用方法の提案と評価

皆様、こんにちは。【今年の研究計画】シリーズ、今週はD1大城が担当させていただきます。

突然ですが、セミナーやイベントでTwitterを使ったことはありませんか?プレゼンテーションの内容を実況したり、プレゼンテーションと関係のある情報が載っているサイトのURLにリンクを貼ったりした経験がある方、あるいはフォローしている人がそのようなツイートをポストしているのを見かけたことがある方はいらっしゃるのではないかと思います。

これまでは、プレゼンターが話をしている間、オーディエンスは一方的に黙って聞くことしかできませんでした。それが、Twitter等のバックチャネル・ツールの登場によって、プレゼンテーションの間も情報交換し、議論を戦わせることが可能になったことは注目に値します。しかし、実況することやリンクを貼ることが、プレゼンテーションの内容の理解にどれほどつながっているかはよくわかっていません。

プレゼンテーションの内容の理解が問題になるのは、特にそれが教育的な性質を持つ場合、すなわち授業である場合です。企業の商品発表のプレゼンテーションや、テレビ番組の実況中継を行う場合には、その内容を細かく理解する必要はないかもしれませんが、授業ではそうはいきません。

そこで出てくるのがノートテイキングです。授業中にノートテイキングを行い、それを後から見直した場合、ノートテイキングを行い、それを見直さなかった場合よりも、講義内容の再生(講義で明示される内容の想起)と統合(講義で明示されない内容の推測)の両方が促進されることが示されています(Kiewra et al. 1991)。

バックチャネルという新しい形のコミュニケーションを、ノートテイキングを手がかりにして、授業内容の理解に結び付ける方法を目指し、今年度も研究を進めていきたいと思います。

(参考文献)
Kiewra, K. A., DuBois, N. F., Christian, D., McShane, A., Meyerhoffer, M., & Roskelley, D. (1991). Note-taking functions and techniques. Journal of Educational Psychology, 83(2): 240-245.

[大城 明緒]

2010.05.25

【エッセイ】因果と相関の取り違え

asahi.comに以下のような記事が掲載されました。

農薬摂取で「子の注意欠陥・多動性障害増える」 米研究

この研究は、Timeのサイトでも紹介されていますが、タイトルの差が気になりました。

Study: A Link Between Pesticides and ADHD

朝日新聞の表現「AでBが増える」は因果関係を意味しますが、Timeの"Link Between A and B"は、相関しか指し示していません。

小さいことにこだわっているようですが、この差は研究では重大な意味を持っています。相関(AとBが関係している)は因果(AのせいでBになる)を保証しません。Timeの記事では、メディア接触状況などの環境要因が複合的に関係している可能性も指摘されています。

今回の研究のような疫学的な方法では、直接的な因果関係を立証することはできません。このことは、Timeの記事にも以下のような記述があり、慎重に報道されています。

「論文の著者は、相関を明らかにしただけであり殺虫剤の残留と発達の状況に直接因果関係があることを明らかにしたものではないことを強調している。」

もちろん、今回のような重大な疑義に関しては、追加研究を待つだけではなく、リスクを考慮して農薬の摂取を減らすという行動は選択肢のひとつになりえます。それでも、その選択は正しい情報に基づいてなされるべきです。

この報道に限らず、日本のメディアには、因果と相関を取り違えているものが散見されます。あふれるほどの情報が流通する現代社会では、統計的な考え方を身につけずに批判的に考えることは難しくなっています。高校から大学にかけて、統計に関する教育の充実が必要になっていると思います。

[山内 祐平]

2010.05.23

【今年の研究計画】歴史的知識を現代的問題の解決に活かす思考力を育成する学習環境のデザイン


みなさま、こんにちは。
【今年の研究計画】シリーズもとうとう博士課程にまわってきました。

今年度は研究生を含めて学生が10名になり、
扱うテーマも多様になって僕自身、日々良い刺激を受けています。

さて今週は、歴史学習をテーマにしている、
博士課程1年の池尻良平が担当させていただきます。


「うわー、歴史って年号とか丸暗記させられた嫌な思い出しかないや」と感じられ方!
僕はあなたの味方ですので、戻るボタンを押さずにぜひちょっと読んでみて下さい(笑)


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●歴史=社会の経験知の結晶?

 2008年10月の『週刊ダイアモンド25号』「歴史を知れば経済がわかる!」を読まれた方はいますでしょうか?ここで面白い調査結果が出ているのでちょっと紹介します。

 同誌が25歳以上の男女500人を対象に行ったアンケートによると、「学生時代にもっと勉強しておけばよかったと思う科目は何ですか」のトップ3はこうだったそうです。

1位:英語(67.8%)
2位:歴史(33.2%)
3位:数学(21.6%)

なんと歴史が2位にランクインしているのです!私もびっくりしました。

 同誌によると、もともと経済やビジネス誌と歴史的なものは相性がよく、経営戦略や人材育成や組織作りについて歴史からヒントを学ぶ経営者は多いのだそうで、先行きが不透明な現代のビジネスパーソンにとって「歴史に学ぶ」姿勢は不可欠になっているそうです。

 このように、歴史からヒントを得て今後の判断材料にするのは別に不思議なことじゃなく、アメリカの政治家達が外交的な戦略を決定する際に、ベトナム戦争や第二次世界大戦の結果をヒントに議論していることも研究から明らかになっています。

 自分の経験や実験室で測定される知見だけでは解決できない、社会的な問題にぶつかった時、歴史は色んな「社会」の経験を知っているものとして頼られる傾向にあるのです。


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●歴史にまつわる5つの能力

 よく「歴史学習に必要なのはとにかく暗記力だ!」と誤解されていますが、歴史教育学者のwineburg(2001)によると、歴史学習に伴う能力は下の5つがあると言われています。

 1、過去の光を通して現代の出来事を理解する能力
 2、文書記録を行き来し、絡んだ情報をまっすぐに整え説明する能力
 3、歴史的な文脈を正しく認識する能力
 4、歴史の場面での思考的な質問に対して反省的で分別のある返答をする能力
 5、歴史人物や歴史的出来事についての事実的な質問に答える能力

ちょっとわかりにくいので、危険を承知で意訳するとこんな感じです。

 1、歴史を使って現代を見られる能力
 2、色んな史料を使ってちゃんと歴史を紡げる能力
 3、当時の背景をちゃんと考えられる能力
 4、「なんでこうなったの?」を考えられる能力
 5、年号や人名や事件名を覚えられる能力

実は「暗記力」というのはこのうちの5番目の能力だけなんです。最近、大学入試でも論述問題が多く見られてきましたが、それでも4番目や3番目の能力までなんです。ちなみに2番目の能力はまさに歴史家が持っている専門的な能力です。


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●今の歴史学習の問題点

最初に紹介したように、歴史学習の「うま味」は1番の能力にあります。

 ところが歴史学習の先行研究を見ると、2〜4番目の能力をつけさせる学習方法しか研究されていないのです。そこで、うま味たっぷりの1番の「歴史を現代に応用する能力」を育成する学習方法が必要だといえます。

 修士研究では歴史のマクロな因果構造を利用して、みんなで批判的に考えながら現代のものに換えていくカードゲーム型の学習教材をデザインしました。

 ただし、「歴史を現代に応用する」という分野はほとんど未開拓な分野なので、課題は一杯あります。例えば、修士研究では歴史の「枠組み」に焦点を当てたため、最初に話したような歴史の具体的な解決策をヒントに問題解決をすることはしませんでした。

 ところが、なんでもかんでも安易に歴史を利用しようとすると、過去の解決策を間違えて用いる危険性があることも指摘されており、この学習方法をキチンと確立することは歴史教育における重要な課題といえます。


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●今年の研究テーマと博士を通しての展望

そこで博士研究の1つとして、この問題に焦点を当て、
歴史をヒントとして適切に使える能力を育てる学習方法を作りたいと考えています。

 「この歴史は時代背景が違うからダメだな。
  あ、でもこの時代の歴史の特徴は今と似ているから使えるかも!
  ...おお!クリエイティブな解決案が思いついたぞ!」

このように適切な歴史を選んで、その解決策をヒントに今の良い解決方法を生み出す。
そんな一連の能力を高校生が身につけてくれればと考えています。

どういう学習方法が最適なのかは目下研究中ですが、
この研究は、財団法人科学技術融合振興財団の
「平成21年度シミュレーション&ゲーミングの先進的独創的な手法の研究」として、
助成金をいただいておりまして、その分頑張らないと!と思っております。

博士研究全体としては、高校生の普段の生活の中でもっと歴史にアクセスしやすくなるような総合的な学習環境を構築して、これらの学習方法が最大限に活かせてもらえるようにしたいと考えています。

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これから3年間、気を引き締めて新しい歴史教育を作っていきたいと思いますので、
みなさまこれからもどうぞよろしくお願い致します。

[池尻 良平]

2010.05.18

【エッセイ】Twitter=わたしニュース論

韓国の研究者によるTwitterの情報ネットワークに関する量的分析が話題になっています。(論文PDFはこちらから)

この論文では、4170万のユーザーと、1億以上のTweetを分析しています。その結果、Twitterの情報伝達構造は、一般のSNSよりもニュースメディアに近いことが明らかになりました。これは、Twitterのフォロー構造が対称でないところから起こっている現象と考えられています。

この研究の結果から、Twitterは単純なソーシャルメディアというよりも、人のつながりを活かした「わたしニュース」ととらえた方が現状をうまく説明できます。「わたし」の今をつぶやき、「わたし」が気になったことを広める。その情報が読者との思いがけない相互作用を生み出す。そういう民主的でインタラクティブなニュースメディアという意味では、Twitterは新しい時代のCNNであるという主張もうなずけます。

[山内 祐平]

2010.05.15

【今年の研究計画】映画・映像制作ワークショップにおける効果について

はじめまして、修士1年の土居由布子と申します。宜しくお願いします。
【今年の研究計画】シリーズの第7回目を担当します。

私の「研究テーマ」は「映像制作ワークショップを通した参加者への効果について」です。

日本の教育はまだ「暗記型」の教育にはない、参加者の映像における「創造力」が養われるのではないかと思い、このテーマを選びました。

最近ではFacebookやYou TubeやMixiなどで動画をアップロードし、web上で共有することが多くなってきました。
一人に一台の動画機能つきのカメラも普及し、動画を撮る習慣も増えてきたと思います。

そういった背景のもと、テレビ局のカメラマンじゃなくても、映像を撮る技術やセンスなど映像を考えつくりだす「創造力」が求められるのではないか、と思いました。

アメリカをはじめ世界で映画制作ワークショップが開催されています。
日本でも各地で映画制作ワークショップがあり、小学生から中学生が対象になっているものが多く、その種類としてはドキュメンタリーだったり、フィクションストーリーとしての短編・長編の映画制作をするものもあり、そのプログラムスタイルは様々でテーマが決まっていたり、いなかったり、進行役のファシリテーターがプロとして技術指導される場合と干渉しない場合など。大抵の場合、ワークショップ中の監督、カメラマン、音声、照明などの役割を参加者内でローテーションさせます。
このように映画(映像)制作ワークショップは協調学習として協調性を身につけることにも有効だと期待されています。

参加者の感想としては、ワークショップに参加したあと、映画を観るときに今まで意識しなかったカメラワーク(ねずみの視点から物語が始まっていたり)、場面の切り替わりの方法や頻度などを意識するようになり、「自分だったらどう撮りたいか」もイメージするようになったそうです。

また長野にある小学校の映画制作活動では、「いじめ」をテーマにした映画を制作しているとき、主人公が悩んでいるシーンについて「悩んでる時ってうずくまったり、つったっていたり、とにかく止まっているよね」「でも止まっているものを映像で撮るのってつまらない」「じゃあアニメーションを使ってバックを暗いマーブル模様で動かして、主人公の心を表現するっていうのはどう?」などと(先輩の研究ワードを使って恐縮ですが)創発的な現象も起きています。

このように様々な効果が期待されるのですが、私自身どこの焦点をしぼるかにまだ迷っているところがあります。

アメリカと日本の映画・映像制作ワークショップの事例を調べ、比較するなどして、問題や魅力を抽出し、テーマを絞っていけたらと思っています。

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