2017.07.06

【今年度の研究計画】幼児のNarrative Skill習得のための物語行為支援システムに関する研究(D4佐藤朝美)

 たて続けですが、今回のブログ、D4佐藤が担当します。
 早いもので博士課程に再入学し、3年目に突入してしまいましたが、進捗は亀の歩みの如くです。今回のブログテーマ「今年度の研究計画」は、昨年のブログから殆ど進捗が無いことを改めて確認し、愕然としてしまいました・・・

 2016年7月7日【今年度の研究計画】(D3佐藤朝美)

 が、何もしていなかった訳では決してありません!上手く表現できないのですが、博論の骨子となる理論を探す旅を続けてきたという感触です。私の研究はICTを用いて支援を行う開発研究です。この「支援」というキーワードと格闘しながら、ヴィゴツキーの最近接発達領域からブルーナーの足場かけ、学習科学における足場かけのデザインに関わる研究の旅をして参りました。

 効果的な「足場かけ」とは、学習者が自分の力で理解するための助けとなるようなヒントやきっかけを与えることを意味します[1]。

 支援方法のメカニズムを考える時に学習科学の「足場かけをデザインする」という視点は、これまで見えなかった仕組みに気づきをもたらせてくれます。例えば、ブルーナーが示した積み木課題の足場掛けでは、言葉かけから思考を促し、1つ1つの動作を制御しながら支援を行うチューターの役割に着目しています[2]が、学習科学ではブルーナーの理論を拡張し、「いかにして、スキャフォルディングは学習環境に埋め込まれるか?」という視点で、教示だけでなく、活動や人工物・道具にも分散していく手法で検討しています[3]。

 このような学習科学研究における学校教育現場での学習に関する知見は、インフォーマルな場での、教員ではなく親の立場での、子どもの支援にも有効と考えます。

 以下、これまでの変更点を意識しながら研究計画を書いてみようと思います。


【タイトル】
幼児のNarrative Skill習得のための物語行為の足場かけデザインに関する研究

【研究の背景】
 人にとって「物語」を伝える事、読む事、語ることは重要な営みである。発達途上にある幼児にとっての物語行為にも、いくつかの重要な意味がある。発達心理学の領域で着目されているNarrative Skill(話す力)は、言葉をうまく使う力にとどまらず、体験や自分の考えを一連のまとまった物語として他者に伝える力であり、幼児期に著しく発達するという。そして、幼児期の物語る行為は、Narrative Skill(話す力)の習得のための活動として重要な役割を果たしている。いっぽう、これらの習得は、思考の道具、自己の確立、文化への参入方法の理解等の要素があり、支援の意義は大きいものの、語彙習得や文法獲得の支援など従来の支援方法では難しい。さらに、「語り」は社会・文化・歴史的な状況を反映するもので、物語を導く大人の役割が大きく、その関係性を保ちながら支援する道具を検討していく必要がある。「子ども」・「親」・「道具」の3点を踏まえたNarrative Skill(話す力)習得のための物語行為の支援を検討することが求められている。

【目的】
 本研究では、「物語る行為」の発達が著しい段階にある幼児を対象に、Narrative Skill(話す力)習得のための物語行為支援システムを開発する。物語行為を支援するために、足場かけをデザインするという観点で、「言葉(教示)」、「活動」や「道具」などの足場がけを埋め込む方法を検討する。開発した支援システムを評価実践し、検証により得られた知見から、物語行為を通したNarrative Skill習得のための足場かけデザインの原則を導き出すことを目的とする。

【方法】
 「研究の背景」で物語行為の支援要素として導き出した「子ども」・「親」・「道具」の3点に対し、足場がけを埋め込む方法として、ミクロ(即時的な支援)的・マクロ(長期的な支援)的視点で支援方法を検討する。ミクロ的には子どもが直接操作しながら物語産出を促されるよう、物語スキーマや登場人物の目標・感情の足場かけとなる絵情報の要素を埋め込み、デザインを行う。マクロ的には、子どものNarrativeSkillの発達につながるよう長期的な視点で、親の「言葉」による引き出しが向上されるよう足場かけのデザインを行う。以上により、2つの支援形態(開発研究1と2)が導出される。

■開発研究1:
 「幼児の物語行為を支援するソフトウェアの開発」

 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006792153/

■開発研究2:
 「幼児のNarrative Skill 習得を促す親の語りの引き出しの向上を支援するシステムの開発.」
 
 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007520570/

【進捗状況と予測される結果】
 2つの支援形態である開発研究1・2は、開発・実践・評価が完了しており、効果は検証されている。足場かけがデザインされたシステムを用いた実践により即時的な支援だけでなく、長期的な環境要因である親の支援が可能であることが示唆され、子どもの「Narrative Skill」習得の足場かけのデザインが有効であることが明らかとなった。一方で、定義された目標以外の教育効果やいくつかの課題も残されている。それらも考慮した上で知見をまとめ、幼児のNarrative Skill習得のための物語行為を支援する足場かけの要件を整理し、デザイン原則を導き出す予定である。

【研究の意義】
 幼児期において、社会や文化への参入方法を理解する上で、物語は重要な役割を果たすとともに、物語の産出の過程で大人のやり取りを通じで意味形成を行っていくことも重要な活動である。そのような背景を踏まえ、物語の産出スキルであるNarrative Skillについて、その発達段階やメカニズムの解明を試みる数多くの研究が行われている。いっぽう、言語獲得の支援を超えた学習の支援原理が要求されるNarrative Skill向上の支援に関する先行研究は少ない。
 本研究では、発達段階やメカニズムに関する発達心理学、認知心理学の研究の知見をもとに、教育工学的なアプローチでシステムを開発している。支援方法として、ミクロ(即時的な支援)的・マクロ(長期的な支援)的視点で足場かけのデザインを検討し、新たなテクノロジーを用いてこれまでにない支援方法を実現している点で意義があると考える。

[1] Wood, D., Bruner, J. S., & Ross, G. (1976). The role of tutoring in problem solving. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 17, 89-100.
[2] Sawyer Keith (ed)-The Cambridge Handbook of the Learning Sciences-Cambridge University Press (2014)
[3] Guzdial, M. (1994). Software-realized scaffolding to facilitate programming for science learning. Interactive Learning Environments, 4(1), 1-44.

佐藤朝美

2017.07.03

【研究計画】中学生の作文活動を題材とした自己調整学習支援システムの開発(M1 宮川 輝)

はじめまして。山内研M1の宮川です。
この4月に大学院生となってから3ヶ月が経過しました。
ようやくいろいろなことが落ち着き、研究に集中できる状態になりつつあります。

突然ですが、皆さまには「計画性」はありますか?
たとえば試験勉強やレポートなどの課題に対して「ついつい先延ばしをしてしまう」というのは多かれ少なかれ経験のあることだと思います。
そして私自身、人に比べて計画性がないと感じることが多くあります。

計画的に物事をこなせる人とこなせない人の違いは何なのか、そもそもどうして計画的にこなしていくことは困難なのか。
そのような素朴な疑問に対して、教育心理学における「自己調整学習」という分野の研究が対応していると知り、修論のテーマとして取り扱いたいと考えました。

以下が現状の研究計画です。

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テーマ
 中学生の作文活動を題材とした自己調整学習支援システムの開発

社会的背景
 文部科学省による2017年3月の学習指導要領の改訂にあたっては「主体的・対話的で深い学び」という観点が重視されているように、教育における主体的・自律的な学習といった考え方は、今後より広く一般的に認知されていくことが予測される。

先行研究
 学習の主体性に関する理論として、教育心理学における「自己調整学習理論」が挙げられる。その代表的な定義の一つは「学習者が自分の学習の目標を設定し、その目標に役立つように自分の認知、動機付け、行動をモニターし、制御し、コントロールして、個人的な特徴と環境の文脈的な特徴の両者によってガイドされ制約される、能動的で構成的なプロセス」(Pintrich, 2006) というものである。
 自己調整学習を支援するシステム開発の試みはすでに多く行われており、一定の成果を上げている。それらの研究は高校生以上を対象としているものがほとんどであるが、一方でStoeger(2011)は小学生への宿題遂行のトレーニングによる自己調整学習スキルの獲得を報告しており、従来より年齢の低い学習者における主体的な学習スキルの獲得可能性も示唆されている。

研究方法
 中学生を対象として、自己調整学習スキルが求められるような課題を実施する。支援システムを使用する実験群とシステムを使用しない統制群を設け、得点の比較による量的な検討と質問紙への回答による質的な検討の両側面からシステムを評価する。

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自己調整学習における最新の知見に追いつくため、先行研究のレビューを進めている状態です。もしも近い興味をお持ちの方がいればぜひお話をしてみたく思います。
どうぞよろしくお願いします。

【宮川 輝】

2017.07.02

【今年度の研究計画】準正課の集団活動における 制度的な側面とキャリアレジリエンスの関連

みなさんこんにちは。D2の池田です。
暑い日が続き、すっかり夏めいてきましたね。
現在、私は「準正課の集団活動における制度的な側面とキャリアレジリエンスの関連」について研究しようとしており、研究計画のブラッシュアップを行っています。
具体的な研究計画は以下の通りです。
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1.背景と目的
 企業寿命の短縮や, 若者の離転職の可能性の増加とともにキャリアレジリエンスという概念に注目が集まっている. キャリアレジリエンスとは"環境の変化に適応し、ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力(Noe et al. 1990)"である. この力は, これから社会に出て行き様々な変化に対応しなくてはならない, また, 進路選択という大きな課題に直面する大学生にとって重要な力であり, その育成が求められている (児美川2013:児玉 2016).
キャリアレジリエンスを育む環境については, 主に社会人を対象に研究が行われている (e.g.London and Mone 1987). 一方, 働く前の段階におけるキャリアレジリエンスの獲得方法に関しては, 研究の不足が課題である (Beltman et al.2011). キャリアレジリエンスがどのように獲得されていくかについては実証されていないが, 過去に同じような状況をどのように乗り越えたかということが, 大人の立ち直りにとって重要だという言及(平野 2016)が示唆的である. 即ち, キャリアレジリエンスの育成には, 環境の変化に適応し, ネガティブな仕事状況に対処するのと似た経験が有効であると言えよう.
 正課外活動に目を向けると, キャリアレジリエンスという単語そのものは登場しないが, 正課外において大学生は, キャリアレジリエンスの構成要素の一部である, 問題解決能力や適応力, チャレンジ精神などを獲得していることが示されている(e.g. 河井 2015).
近年では, 運動活動を通じたレジリエンスの獲得や, サークルや部活動などの活動にどのように参加することがキャリアレジリエンスの獲得実感に影響するのといったことが検討されている(池田ほか 2016).
2.問題と目的
 しかしながら, 先行研究において, 準正課の活動を包括的に扱って, アウトカムとの関連を明らかにした研究はない. また, 準正課の活動における, 教職員が設計可能な面を扱って, キャリアレジリエンスに当たる能力との関係を明らかにした研究は少ない. そこで, 本研究では準正課の集団活動におけるどのような側面が学生のキャリアレジリエンスの獲得実感と関連するのか明らかにすることを目的とした.3.方法
3.1調査の枠組み
 準正課の活動については, まだまだ研究の不足が課題である(河井 2015). そのため, 個別の準正課活動においては, アウトカムにつながるモデルが提唱されているが(e.g. 木村・河井 2012), 広く包括的に準正課の活動を対象に, それらの活動はどのような側面を持っているか, どのような要素があり,何がアウトカムの獲得につながるのか考慮したモデルは提唱されていない.
そこで, 本研究では, 高等教育経験が学生の価値観, パーソナリティに及ぼす影響について検討している, カレッジ・インパクト研究から参考にする枠組みをかりてくることにした. カレッジ・インパクト研究の文脈において, Kuh et al.(2006)は学生の成功(アウトカムの獲得や就職)を促す要因について明らかにする際に, 大学の制度的な側面が学生の成功に影響することを考慮したモデルを提唱している. 具体的には, 学生の成功には, 学生のエンゲージメント(質的, 量的な努力の量)が最も重要だと述べ, それを促す上で, 大学の制度的な側面にも焦点を当てることが重要だとしている. そして, エンゲージメントを促すような具体的な制度的な側面として, ①構造的・組織的な特徴, ②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチ, ④学生中心の大学文化の4つを挙げている.
本研究ではこの枠組みにおける大学の制度的な側面を, それぞれの準正課活動における様々な側面として捉え, 準正課の活動に合うように修正を加え, 独立変数として用いる. その上で, 準正課活動における様々な側面と学生のエンゲージメント, キャリアレジリエンスの関連について明らかにしていく.
3.2.仮説
先述のように, 活動の制度的な側面は学生のエンゲージメントを促す. また, 正課外活動へのエンゲージメントはキャリアレジリエンスの全ての構成要素に正の影響を与える(池田 2016). 以上から, 仮説1:正課外活動の組織の状態の4つの要素は学生の正課外活動へのエンゲージメントを促し, 間接的にキャリアレジリエンスに影響する(図1:点線矢印).
②プログラムと実践に含まれるソーシャル・サポートはレジリエンスの規定要因であるとされている(石毛・無藤 2005). また, ③教授・学習アプローチに含まれる学生の自律性の支援などの教授活動は, レジリエンスに影響することが示されている(久保ほか 2015)他, キャリアレジリエンスの構成要素の問題解決能力などは活動の設計(問題解決活動を含むか等)に影響されることが予想される. 以上から, 仮説2:②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチは直接的にキャリアレジリエンスに影響する(図1:実線矢印).
スクリーンショット 2017-07-02 15.44.47.png
図1:本研究の仮説
3.3. 本調査
大学1〜4年生を対象に, 15分程度で回答可能な質問紙調査を行う. なお, 質問紙はKuh et al.(2006)の提唱する制度的な側面(①構造的・組織的な特徴, ②プログラムと実践, ③教授・学習アプローチ, ④学生中心の大学文化)の4分類を元に, 先行研究の尺度を用い作成する.
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本調査に向けて、課題もいろいろありますが、頑張らねばねば。
今年度もどうぞ宜しくお願いします。

2017.06.27

【Research Proposal】Facilitation in large-scale online learning environment: a MOOC-based research (M1 ZHOU Qiaochu)

Hi everyone! This is Qiaochu. I just narrowed down and adjusted the focus of my research from community to facilitation in MOOCs. And here is how it develops.

1. Introduction
Online learning has become increasingly important in educating a wide variety of learners. The approaches include, first, MOOC (massive open online course) which integrates social networking, seasoned experts, and course-specific learning materials that are readily available to students. However, with the prosperity of MOOCs since 2012, many practices have indicated the necessity of effective facilitation in the context of large-scale online learning environment. Key factors as massive number of learners, highly asynchronous nature and community learning context all challenge the conventional instruments from the facilitator's side. While the practice of MOOCs has already achieved huge innovation in education field with the ever-updated technology and platform support, there are much white space left to be done as for the facilitation in MOOCs. This research, then, will discuss the facilitation in large-scale online learning environment from the perspective of MOOCs.

2. Literature review
Regarding the emergence of MOOCs, there used to be the division of cMOOCs and xMOOCs, the former underpinned by connectivist principles (Comier, 2008) and the latter by behaviorism. The importance of teacher or facilitation is considered differently in this categorization. However, it appears that the development of MOOCs has been influence by a combination of theoretical perspectives such as constructivism, connectivism, and concept of CoP (Community of Practice, Wenger, 1998; Hrastinski, 2008).

While pedagogies may vary in the design of MOOCs, many scholars support strengthening the initiative of MOOCs participants. Learning issues like identity, interaction, community learning, technological support, and efficiency of online learning are put forward in succession. Holmberg (1989), first sought to understand the role of emotional support and connection in online learning by espousing the empathy theory, while Cheng (2014) also confirmed the importance of social connection and empathy among online learners. Ryberg and Christiansen (2008) researched community and social network sites as technology enhanced the learning environment. Kop, Fournier, and Mak (2011) examined the mutual support among learners by creating Facebook and Twitter groups outside of the MOOC classroom as a means of peer support.

After the initial boom of MOOCs, researchers began to reflect on the role of facilitation in this kind of large-scale online learning environment. One crucial point made by Yang et al. (2013) is that in MOOCs the learner participation in social activities is intermittent. Meanwhile, Brinton et al. (2013) early interactions can amass to a level of chaos which may impede an individual's propensity for developing relationships. From those researches, it is evident that the social engagement and technological advancement can not guarantee the sustainability of MOOCs. While emphasizing the learner-focused pedagogy, the teacher's role, here the facilitation in large-scale online learning environment, is indispensable. Problems always come as "what will happen to students who are not self-determined and skilled? what if students lack in participatory literacy?" etc. Focusing on the facilitation issue, Beaven et al. (2014) explored the balance between facilitation and self-determination of MOOCs learners from a MOOC OT12. Later, Poquet, Dawson, and Dowell (2017) discussed the effectiveness of facilitation in MOOC forums from the view of group-level analysis. On the other hand, research of Ross et al. (2014) views the issue of facilitation from the stance of teacher by exploring their experience and academic identity in MOOCs.

3. Research questions
In view of this background, the research questions are as follows and will focus on the focus one:
RQ1: What kind of presence of facilitation will possibly feature a more appropriate form for MOOCs to promote learning?
RQ2: Where is the balance between facilitation and self-determination/ self-directed learning?
RQ3: How to promote facilitation regarding the discrepancies in nature of different MOOCs? For example, the knowledge-oriented and information-oriented MOOCs.

4. Methods
Mixed research methods of both quantitative and qualitative will be used for the research. Based on case study, two representative MOOC courses will be selected, the knowledge-oriented and information-oriented ones. The current facilitation and output in learning of each type will be analyzed and made comparison ultimately.

First, the MOOC course of "Studying at Japanese Universities" by the University of Tokyo on Coursera will be researched as the information-oriented case with the permission of administrators. For the quantitative research part, facilitations mainly in forms of discussion forum and Facebook page will be observed and made content analysis. Also, backstage data of users' activeness and interaction in MOOC community will give insights about learning efficiency. For the qualitative research part, the research plans to conduct interviews with facilitators of the MOOC mentioned above and retrieve information from their comments on the discussion forum.

Later, another MOOC course representing the knowledge-oriented type will be chosen to make further comparison. Meanwhile, participant observation will be adopted along all the research process. This means to participate in the researched MOOCs myself and observe participants' behavior and the facilitation offered.

5. Significance of research
Large-scale online learning environments as MOOCs have numerous advantages and potential, especially if the weaknesses that accompany them can be appropriately addressed. By reflecting and repositioning the role of facilitation in MOOCs, improved pedagogical approaches are expected to refresh the education landscape.

2017.06.19

【研究計画】美術鑑賞における協調学習のデザインに関する研究(D1平野智紀)

みなさま、こんにちは。今年度より山内研D1としてお世話になっております平野と申します。

近年、学校や美術館において、美術史などの知識だけでなく「あなたはどう思うか」を起点に、ナビゲイター(ファシリテーター)のリードのもと複数名で対話しながらアート作品を鑑賞する「対話型鑑賞」が広く取り入れられてきています。一方で、作品についての知識は与えるべきでない(Yenawine 2013)とか、たとえば中世の西洋美術を鑑賞するときに美術史は重要なファクターだ(長井 2009)とか、様々なことが語られています。対話型鑑賞が個人の鑑賞能力発達に力点を置いており、対話の協調的な側面を見落としている(奥本 2006)という指摘もあります。

私は「美術鑑賞における協調学習のデザインに関する研究」というタイトルで研究に取り組んでいます。

実は、私は山内研で修士課程を修了しており、社会人院生として久しぶりに山内研に"戻ってきた"形になります。2008年に提出した修士論文「ミュージアムにおけるリテラシー概念の意義と領域越境に関する研究」では、美術館・博物館の来館者が持つリテラシー(ミュージアムを使いこなす能力)に着目し、すでにリテラシーを獲得していると想定される美術館・博物館のボランティア/友の会会員に東京大学総合研究博物館の展示を観覧してもらい、その様子を分析することでミュージアムにおけるリテラシーのありようを探索的に明らかにすることを試みました。

修士課程修了後は、内田洋行教育総合研究所で学力調査の集計・分析に関する仕事をしながら、京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターと連携して、対話型鑑賞の企業研修への導入、ミュゼオバトル・ワークショップの開発、ロボットと一緒に美術鑑賞、など、いくつかの実践・研究を行ってきました。

2015年に美術科教育学会誌に採録された論文「対話型鑑賞における鑑賞者同士の学習支援に関する研究」平野・三宅 2015)では、対話型鑑賞における鑑賞者の成長とナビゲイターの学習支援について、ヴィゴツキー以降の学習理論と実証データをもとに考察することを試みました。その結果、経験を積んだ鑑賞者同士による鑑賞セッションでは、ナビゲイターによる学習支援の発話が減少し、同時に鑑賞者による相互学習支援の発話が増加していること(ナビゲイターのフェーディング)、また、そうした学習支援は複数の鑑賞者の間に"わかちもたれて"いることがわかりました。

ミュージアム研究から美術鑑賞教育研究へ、多少テーマが変わっているように見えますが、教育学・美術史学・博物館学等、単一のディシプリンではなく学際的にアプローチする必要性のあるテーマであること、情報の「受け手の能動性」への着目、といった点は修士からの関心を引き継いでいると考えています。

現在は、博士課程で取り組むもう一本の研究について、2015年の論文で明らかにできたこと、できなかったことを整理して、方向性を検討しているところです(重要な先行研究として、自由な対話型鑑賞に美的・教育的な意味生成の文脈を導入する「半開きの対話」(北野 2013)を引用するつもりです)。ほとんどの博士課程院生が修士論文を「1本目の研究」として使う一方で、私は修士論文ではなく、2015年の論文を「修士論文に代わるもの」として使うことになります。従前から、博士論文は「合体ロボ」(あるいは「ねぎま」)だとよく聞いていました。ロボの腕がとれたり、串に刺さった白ねぎがぐらついたりしないように、まずは構造をしっかりと固める必要があります。みなさまご指導よろしくお願いします。

追伸:
今年度、東京藝術学舎(京都造形芸術大学外苑キャンパス)にて「対話型鑑賞術」という講座を担当しています。もし対話型鑑賞に関心を持たれている方がいらっしゃいましたらぜひお申込みいただければと思います。
対話型鑑賞術~夏・基礎~鑑賞の技術(問いかけ・言い換え・焦点化)

平野智紀

2017.06.15

【今年度の研究計画】成人による趣味の追求を支える学習環境の解明(D1 杉山昂平)

 D1の杉山です.昨年度修士論文(「アマチュア・オーケストラ団員たちの興味の深まり――余暇における追求と学習環境」)を提出しました.修論は情報学環・学際情報学府専攻長賞をいただくことができ,公刊に向けて現在投稿作業を進めています.今年度は修論の成果をふまえつつ,博士論文を完成させるための次なる研究を計画することになります.

 大人が趣味を追求することを環境はいかに支えるのだろうか,という問題が私の基本的な研究関心です.誰でもすぐにできる一過的な気晴らしとしての余暇活動とは異なり,趣味(hobby)にはオーケストラならオーケストラ,サッカーならサッカー独自の専門性を実践していくことに特徴があります.それゆえ,趣味を継続して追求するには,必然的にその活動自体を深めていく「学習」が含まれるわけです.演奏スキルや音楽理論の知識も求められるし,何より活動に対する「興味(interest)」が深まらなければ,わざわざ自発的に行う活動である趣味の面白さを味わうことはできないでしょう.そこで,趣味における学習のプロセス(私の研究では「興味の深まり」)を環境(学習環境)はいかに支えるのかを問うことが,意味をもつのです.

 博士論文として「大人が行う趣味における興味の深まりを学習環境はいかに支えるのか」という問題を考えるうえで,「個と共同性」に着目することが有効ではないかと現在見通しをつけています.この視点は,もともとはテキサス大学オースティン校の学習科学者であるFlavio Azevedo氏によって提起されたものです.彼はアマチュア天文学やモデルロケットリーといった趣味のフィールドワークを行っていました.教育心理学では「興味」は個々人に特有な(idiosyncratic)ものであると考えられています.興味は人それぞれであって,だからこそ興味は個人差の源泉であるというわけです.しかし一方で,人間の学習一般に妥当するように,興味もまた環境との相互作用のなかで発展し,深まるものです.そして,学習に関する社会・文化的アプローチの研究は,学習は人々がつくりあげる共同体によって何らかの方向づけを受けていることを指摘してきました(古典的な研究がLave&Wengerの正統的周辺参加論です).そうすると,次のような疑問が沸いてきます.「個人的で多様であろうとする興味と,変化を一定に方向づけようとする共同体は,結局のところどのような関係性を結んでいるのだろうか」ということです.全くもって共同体から自由に興味が深まることも考えにくいし,しかし共同体によって興味の深まりがすべて規定されているというのも非現実的です.では,興味をめぐる「個と共同性」の関係は大人の趣味活動においてどのような姿をとっているのか.それを博士課程では考えたいと思います.

 実は「個と共同性」という問題は,19世紀から20世紀にかけて近代的で都市的な余暇活動が生まれてくる際にも存在していました.オーケストラにせよスポーツにせよ,個人的な興味をもった余暇活動をするというスタイルは伝統的な農村にはほとんどありません.多様な興味をもった民衆が都市に居住し,自由な移動手段で集うことができるからこそ,アソシエーションを組織して自分の興味のある活動をすることができるのです.そこには,「個人的興味を実践するには共同体が必要だ」という関係性が見られます.とはいえ,ソシアビリテの社会史を研究してきた二宮宏之氏が言うように,共同性は絆にもなるし,しがらみにもなる.自分が「本当にやりたいこと」と共同体のあいだで齟齬が生じることもあるでしょう.余暇活動をめぐる「個と共同性」は,学習環境の問題にとどまらない広がりをもっているようです.

 修論で扱ったアマチュア・オーケストラが「団体活動」だったことの重要性を念頭におきつつ,比較対象としてどのような趣味を扱うかを考えながら研究を進めていこうと思います.

杉山昂平

2017.06.03

【研究計画】非認知能力の育成に効果的な教育環境に関する研究 −日本における青年期〜成人を対象として−(M1 中野生子)

皆さん、初めまして。M1の中野です。私は社会人学生で、International School of Asia, Karuiawaという2014年夏に開校した全寮制のインターナショナルスクールで働いており、この4月から学生との二足のわらじを履いています。

経歴を簡単に説明すると、経済学部を卒業した後、新卒で鉄道会社に入社し、高速鉄道に関する投資・工事計画の予実管理にはじまり、新卒採用業務、新しいサービスシステムの開発、テレビ・新聞・雑誌・Webサイトでの広報宣伝など様々な仕事を経験しました。分野の異なる経験をさせてもらった中で「今後は一人一人の個性や多様性がより必要とされる時代になる」「企業における人材育成はもちろん、大学生までの学校教育も大幅に変わっていかなくては」という危機感を感じ、開校まで1年を切ったISAKへの転職を決意しました。多種多様なバックグラウンドを持つ生徒を受け入れ(現時点で39ヶ国から国籍のみならず社会・経済的に多様な生徒達を受け入れています)、日本から新しい世代を切り開くチェンジメーカーを育てるというミッションに強く共感したからです。

ISAKは良い大学に入るための進学校ではありません。従来の知識詰め込み型の教育ではなく、チェンジメーカー(世界の様々な分野で仲間を巻き込み、新たな価値を生み出せる人)を育てる3つの力として、①多様性を活かす力、②問いを立てる力、③困難に挑む力を大切にしています。大変有り難いことに開校前から、これからの時代を生きる人材を育てる新しい学校として国内外から関心をお寄せいただいております。裏を返せば、従来型の教育システムから新しい学びのかたちに変わらなくては!というニーズが大きいということです。つまり、多少大雑把な解釈かもしれませんが、認知能力(IQ)ではなく非認知能力への関心が高まっているということです。
日本でも非認知能力に関する書籍が続々と発売されており、ノーベル経済学賞受賞者であり近年は教育政策の分析にも力を入れているジェームズ・ヘックマン米シカゴ大学経済学部特別教授の「幼児教育の経済学」、成功の鍵はやり抜く力であるとして「グリット」に着目したペンシルバニア大学心理学教授アンジェラ・リー・ダックワース氏の「やり抜く力 GRIT(グリット)」などはベストセラーとなっています。またOECDもSocial Emotional Skills(Non-cognitive Skills)に関する研究に力を入れています。

上記のような背景から、そもそも非認知能力とは何なのか、どうアセスメントするのか、どのような経験・環境を経て強化されるのか、また年齢によって影響を強く与える要素が異なるのか、などに強い関心が湧き、山内研究室の門を叩きました。
欧米と比較して日本では、カリキュラム/プログラム・アセスメントをしっかり行いエビデンス・ベースドで教育政策・教育方針に反映させていく方法が浸透していません。小さく試行して実際に成果が出たプログラムを全国展開するのではなく、乱暴な言い方をすると、日本の教育システム全体で壮大な社会実験をしているような状態です。
良さそうだと言われている能力・スキル・教育プログラム等をしっかりとアセスメントし、効果的な学習環境を再現する、自身の研究が少しでもこれに貢献できればと思っています。

と、私の教育に対する情熱を語ってみましたが、入ったばかりの素人研究者です。今は先行研究とその課題を洗い出しているところです。
「非認知能力」とは教育経済学者であるジェームズ・ヘックマン教授が使ったことで一気に世界的な注目を浴びました。認知能力(主にはIQ)以外の全てをざっくり指す「非認知能力」は、教育分野では「Social Emotional Skills」とほぼ同義です。アメリカ等では以前より研究が進められ、Social Emotional Learningとして当該スキルを育てる知見も溜まっています。しかしSocial Emotional Skillsは幼児や児童に対する研究が圧倒的に多く、青年期〜成人にかけての研究はあまりありません。ヘックマン氏が指摘する通り、投資対効果が低いというのが研究が進められていない一つの原因と推察されます。一方で、人生100年時代とされる中、学校教育だけでなく、大人になってからも学ぶ必要性が高まってきています。児童期までにどう上手くSocial Emotional Skillsを育てるかは他の研究者に譲り、私は敢えて効果が低いと言われている青年期〜成人にこだわりたいと思っています。現実社会では企業が人材育成に大きなお金を投じています。大人になってからも、認知能力へも影響を与えるとされる非認知能力を効果的に育てることができたら、私達の人生はもっと(経済的な意味だけでなく)豊かになる、とワクワクしませんか?
ちなみに心理学の分野では、パーソナリティ特性(ビッグ・ファイブ)も含めたSocial Emotional Skillsの研究がされています。しかし「具体的にどう育てるか」という視点ではなく、これらのSkillの有無がどう影響を及ぼすかに注目している研究が中心です。一方で教育経済学者の研究は、経済効果と照らし合わせながら教育の重要性を訴えるものですが、育成するスキルを「認知能力以外の能力」とばっくり捉えており、非認知能力を構成する要素とその特徴について細かく語られていません。その意味で、教育分野のSELをまだ馴染みのない日本で広めていくことに大きな意義と面白みを感じています。
また、対象年齢以外にも課題はあります。先行研究の多くは、貧困層に対する介入研究が多く、これらの研究が指す「非認知能力の育成効果」とは、標準よりも低水準である環境を標準に近づける中で得られる「追いつき」効果であり、ごく一般的な子供における「上乗せ」効果が見込まれるということの直接的論拠になり得ないと指摘されています(遠藤 2017)。では日本のような義務教育システムがしっかりしており、世界的に見ても特に小学校の教育(児童教育)は水準が高いとされる国の子どもを対象にした介入で「上乗せ」効果が見込まれるのか?という疑問はまだ解明されていません。

まだまだぼんやりとした研究計画ですが、「非認知能力(Social Emotional Skills)育成プログラムを実施している教育現場や団体を知っている」「海外でSEL学んできた」などなど、私の関心分野に対するコメントありましたら,ぜひメール頂けたら幸いです。引き続きどうぞよろしくお願いします。

【中野生子(Seiko NAKANO)】

2017.05.11

[Research Plan] GIS in Education (M1 Tetsuya Hasegawa)

Hi, my name is Tetsuya Hasegawa. I'm very excited to join the Ylab! As an undergraduate, I studied philosophy at Komaba. However, an extracurricular project that I joined in those days made me more and more interested in Media Art as a way to represent thoughts. I was immersed in how IT and design could be utilized to awaken deep thinking and sharpen our sensibility. I hope researching at Ylab and Graduate School of Interdisciplinary Information Studies will be an opportunity to make the foundations for developing medias that could make our life more flavorful.


The aim of the project that I took part in my undergrad days, was to make the map of the 21st century so as to revolutionize the way we see the world. Looking back at the history of maps, we could see how maps worked as a media to represent the modern understanding of the world and how those visualizations have struck the worldview of the people. Nowadays, as the information revolution progresses, technologies such as satellite observation, world-wide sensor networks, and supercomputer simulations are making it possible for us to see the world in such dpi than any previous generation could have dreamed of. My passion is to design media platforms that interface this rich information to a human sensibility.


From these backgrounds, I am now focusing research on GIS in education. GIS stands for, Geographical Information System and is defined as "A set of integrated software programs designed to store, retrieve, manipulate, analyze, and display geographical data-information" (Fitzpatrick and Maguire 2000). Unfortunately, the current global landscape of GIS learning remains small (Kerski, Demirci, Milson 2013). However, previous research has revealed how GIS learning has various educational benefits which hold significant importance in the modern society. Such examples are, spatial thinking (Huynh 2009; Lee and Bednarz 2009; Bednarz 2004), constructivist problem-based learning (Audet and Paris 1997; Bednarz and Ludwig 1997), field research (Huynh et al. 2012), multi-disciplinary learning (Broda and Baxter 2003; Rød, Larsen, and Nilsen 2010; Lateh and Muniandy 2011), combining time-scale analysis (Science Council of Japan, 2014), and obtaining technical skills (Forster, Burikoko, and Nsengiyumva 2012, 213).


As like this, I am now conducting a broad literature review on "GIS in education" to develop a general understanding of the landscape.


[Tetsuya Hasegawa]

2017.05.04

【今年度の研究計画】学習者の自己評価の変容を促す実践の開発とその評価(M2 根本)

新年度が始まってはや1ヶ月が経ちました。
一般的には所属するコミュニティが変わったり引っ越しをしたりと、新年度が始まったなーという気分を感じる出来事が多いと思うのですが、こと学際情報学府の修士2年となるとそのような気配は全くありません。(新入生の方もいらっしゃるのですが、その方たちも1月からゼミに参加したり、3月には一緒に春合宿に行ったりとすっかり顔見知りになっています)

修士新2年生にとって4月の大きな節目は「研究構想発表会」です。1年間何をやってきたのか、これから1年間でどのような研究をやっていこうと思っているのかを修士2年生がまとめ、先生や同級生、新しく入学した修士1年生の方に向けて発表し、コメントをいただくというイベントです。
これが4月の頭にあり、3月末から4月頭にかけてはその準備にかかりきりでした。終わった後はその結果を振り返ってこれから1年間の研究方針を考える...とやっている間に4月も終わりに差し掛かっていて「そういえば新年度始まっているのか」と思いながらブログを今書いている、そんな感じです。

新年度始まった感は薄いのですが、一方で修士論文を書く時期が近づいてきたな...という実感は増すばかり。気を引き締めて今年も頑張っていきたいと思います。ということで、抱負も含めて現在の研究計画をご紹介します。

昨年時点の研究計画は「学び方」についてだったのですが、1年を経て現在は「評価」について研究をしようと考えています。「評価」に関する研究と言うと多くの場合は「成績評価」や「人事評価」など、他者に対する評価が注目されますが、私の研究では学習者自身が自分のことを評価する「自己評価」について扱う予定です。


【研究タイトル】
学習者の自己評価の変容を促す実践の開発と評価


【背景】
学校を出た後も学び続ける生涯学習の重要性が増す中、学校教育において学び方を学び、上手い学習者になることが必要だと言われます(Stringher et al., 2014)。上手い学習者になるためには自身の学習成果や学習内容を自分で評価する「自己評価」を行うことが重要とされています(Boud, 1995)。
実際、自己評価が適切に出来る人は学習の仕方も上手いと言われており(Panadero & Alonso-Tapia, 2013)、学習者が適切な自己評価が出来るように支援をすることは重要と言えます。


【先行研究とその課題】
適切な自己評価ができるようにするためにはどうすれば良いか?という観点からこれまで多くの研究がされて来ました。まず取り組まれたのが「先生(などの熟達者)と生徒(などの学習者)の評価が揃うためにはどうすれば良いか?」というテーマでした。例えば英作文を10点満点で採点する時に先生が6点をつけたのに生徒が8点をつける、ということが度々起こります。こうしたずれをどのように解消していくかという問いに対し、ルーブリックと呼ばれる評価ツールを使って採点をさせる方法や、良い答案例と悪い答案例を見せて良い英作文を考えさせる方法など(Lin et al., 2015)が提案されています。

一方で「先生と生徒の評価のずれはなぜ起きるのか?」という点に着目した研究もあります。一つの理由として、「先生と生徒ではそもそも見ているものが異なる」ということがあります。医師教育のケースですが、医師の診療行為を評価する際に熟練の医師は医師の認知的側面(例:どのような症例を検討したか)に着目するのに対し、研修医などキャリアの浅い医師は情動的側面(例:どれだけ患者に真摯に向き合ったか)に着目する、という違いがあることが指摘されました(Arnold et al., 1985)。

ここから、適切な自己評価ができるようにするためには評価項目に着目した支援が有効であるという仮説が考えられます。つまり、「何について評価するか」という観点を変化させることで自己評価が適切になるのではないか、という仮説です(Ward et al., 2002; Tan, 2012)。こうした仮説や、そのモデルは提案されてきましたが、実際にどのような支援を行えば良いかという研究はこれまであまり行われてきませんでした(Panadero et al., 2016)。そこで、本研究ではこの点に着目した実践を実施し、自己評価の項目に変化が起きるかを調査します。


【実践の方法】
現在、どのような実践が効果がありそうかを文献調査やフィールド・ワークなどをしながら検討しているところです。授業やワークショップの後に自己の取り組みを評価してもらい、その中身を見ながら「どういうことをすると自己評価が変わりそうか?」ということを考えたりしています。


【関心を持ってくださる方とお話してみたいこと】
「同じことをやっていても評価のされ方が全然違った」「自分に対する評価の仕方が変わった」という経験があれば、ぜひお伺いしてみたいです。例えば、同じ計算問題を解いていても「丁寧にやっていて良いね」と言われる一方で「もっと早く解きなさい」と言われたり、英会話で「文法を丁寧に」と言われる一方で「とにかく伝わるようにしなさい」と言われたり...そうした経験に対して考えたこと、感じたことなどあれば、ぜひお聞かせください。


【根本紘志】

2017.04.27

[Research Plan] A Case Study of Assessing ICT Integration in Provincial Philippine Public Schools (M2 Lian)

Hi, everyone!

My last entry was written in the field, and I have gathered (hopefully) sufficient data to analyze for my discussion. It was tiring, but also extremely fun. I always love going home in Davao and this was the longest I have been back since perhaps 5 years ago.

As an October entrant, I only have a semester left and roughly only 2 months to write my master's thesis. Hence, my research plan for this time is simple and clean: write, write, write! I plan on following the basic thesis form I am used to, being: [1] Background of the Study, [2] Review of Related Literature, [3] Methodology, [4] Results, Analysis and Discussion, [5] Conclusion, Limitations, and Recommendations. As of writing, I have finished the first chapter, although should time allow, I would like to polish it even further.

I always find myself having the hardest time writing because I had never liked doing it to reach a word count- which is what most essays require. But the past 1.5 years of taking all these history and media studies definitely trained me to write not only fast, but with great depth and essence. I find myself writing at ease now, and with even better quality compared to what I may have produced prior with twice as much time. Writing is definitely an art, regardless it be prose or poetry. BUT-! Academic Thesis Writing has its own rules and twists, therefore, I enrolled in a course made especially for it. I didn't need further credit, but might as well. After day 1, I had zero regrets- I perhaps saved myself 1-2 weeks just by knowing this reference managing application. It was definitely a great opener.

Regardless how comfortable I am with writing nowadays, literature review has always been my bane. I dedicated 2 full weeks of my time for it, almost as long as the analysis and discussion bit. I plan on organizing my thesis essay like this:

I. Background of the Study
  a. Globalization
      i. ASEAN Integration
  b. K-12 Policy Reform
      i. Technical and Livelihood Education
  c. Philippine Regional Differences
     i. Mindanao and San Isidro
  d. Research Problem and Questions
II. Review of Related Literature
  a. ICT Integration in Elementary Schools
  b. Developing Country Cases with ICT
  c. Philippine Culture in Education
  d. School-based Policy Planning
  e. Teacher and Administrator Motivation
III. Methodology
  a. Theoretical Framework
  b. Mixed Methods Research
      i. Quantitative Survey
      ii. Qualitative Interview
IV. Results, Analysis, and Discussion
  a. San Isidro Elementary Schools Survey Results
  b. Interview Analyses and Interpretation
  c. Participant and Environmental Observations
V. Conclusion, Limitations, and Recommendations

These are all tentative, for sure, and are subject to change as we go along the writing process. I hope to follow through with my very strict schedule, in line with my extra credit {fun} course:

Revised Schedule.PNGThat is all for now, I hope I write a good paper! 頑張ります!
Lian Sabella Castillo

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