2017.10.01
現代における大学の重要な役割は、
それが"人生の実験室"として機能するという点にあるように思う
私にとっての「印象に残っている本の一節は、「大学生論-戦後大学生論の系譜をふまえて-」という本の第六章「人生の実験室としての大学を考える-ある大学生の心の風景をまじえて-」の中に書かれた、この一節です。
この一節は、橋本広信先生が書かれたものです。中学校や高校とは違い、決まりごとが少ない大学という場所で、どう過ごすことが正解なのか、どう過ごしたら楽しく、かつ、自分の過ごした時間に胸を張れるのかということを考えていた時にこの一節と出会いました。
大学の入り口に至るまでに、気の遠くなるような時間とお金をかけたとしても、ただ何となく漂流したとしても、君たちの思いにかかわらず、四年という制約された時間は、着々と終わりに向かう。大学という大幅な自由が許された特殊な空間と、"大学生"という名のかりそめのアイデンティティを、学生証とともに受け取った君たち。君たちがそこでとった行動というものは、どういうものか。それが、大学の出口で試されることになるかもしれない。試されるというのは、けっして会社に就職するとか、仕事を持てるかどうか、ということだけではない。もちろん、そこでの試練が大きいのは事実だ。ただ、より本質的には、自分に対する自信、世の中に出て何かをできるという有能感。そんな目に見えないものも試される"自分"が試される。
橋本先生は、自分に対する自信や世の中に出て何かをできるという有能感などのような、大学の出口で試されるものを「人としての付加価値」と呼んでいます。そして、何かを経験(実験)するだけではなく、そのことによって、大きくなっていく自分自身を感じ取るとき(自己変容)、初めて、人としての付加価値(実験結果)がついたと言えると、述べています。
ここでのアウトプットは、"人としての付加価値"となっていますが、何かを選択する際の基準を作ることや自分にとって最適な学習方略の模索などもアウトプット(実験結果)や目的として含めたとしたならば、"人生の実験"は、大学以外の様々な場面でも行われていることだと思います。
臆病な私は、"人生の実験"をすることに抵抗がありました。けれども、この本を読んで、何か停滞していることが逆に怖いことだと感じるようになりました。科学が、様々な実験の積み重ねの中で発展してきたように、きっと私の人生も様々な実験を行っていくことで、もっと豊かなものへと発展していくんだろうなと思うようになりました。大学以降の人生に、きっと与えられた実験は少ない。自分自身で、実験計画を作り、検証していく必要があります。それを楽しんでやっていきたい、そして、昔の私と同じように、"人生の実験"を行うのが怖い大学生がいたなら、その子の気持ちに寄り添いたい。今はまだ、うまく言語化できませんが、自分が今大学生の課外活動の研究をしているのも、キャリアレジリエンスという概念を従属変数として扱っているところにも、この本やこの本を読んで感じたことと強く繋がっている気がします。
こんな感じで、うまくまとめることはできませんでしたが(笑)次の人にブログの担当を回したいと思います。
【池田めぐみ】