2018.02.08
こんにちは。 いよいよ終盤【教えて!山内研究室】シリーズ。
今回は下記質問に、博士課程の佐藤が回答させて頂きます。
Q. どのようなスキルを身につけることができる研究室ですか?
A. 山内研には多様な「学び」が散りばめられています。
研究手法については定例のゼミや合宿、勉強会から学ぶことができます。
ですが、研究室ならではの学びの一例として、今回はプロジェクトへの参加について紹介したいと思います。
私が修士課程に入学する頃は、BEATという寄付講座が行われていました。
最初は、Webでのメルマガ配信関連の雑用をお手伝いすることから始まりましたが、そのうち、記事執筆、編集、企画まで携わることができました。また、いつも聴講者として楽しみにしていたセミナーは、レポート担当になり、そのうちセミナー企画に登壇させてもらうこともありました。
さらに研究では、小論文作成のためのソーシャルリーディングシステムSCSS(Structured Chat & Social Stamp)も開発の部分を担当させて頂きました。
まさに、正統的周辺参加ですね!
博士課程に進学した頃は、MEET(MEET:Microsoft chair of Educational Environment and Technology)が始まり、 eJournal Plusという読解力育成支援ソフトウェアの開発研究のお手伝いもさせて頂きました。
先輩研究者らが先行研究の知見や実践等の知識を総動員して、開発チームと連携を取りながらソフトウェアを作りあげていくプロセスは本当に刺激的でした。
現在研究室周辺で行われているプロジェクトが下記にまとめられています。
とても盛り沢山で、全てを把握できていないのが残念ですが、研究室出身者が主要メンバーになっていたり、学生もお手伝い等様々な形式で携わっていることと思います。
Q. スキルを生かしてどのような仕事に就く人が多いですか?
A. 企業やNPO法人、大学職員への就職にも役立つスキルが身につきます。
これらのプロジェクト参加は、浮世離れしがちな院生が、社会人としての常識(納期・責任・コスト意識・書類作成等々)を身につける貴重な機会になっていると思います。
また、産学連携をすすめていくコツのようなもの、どちらもWin-Winになる関係性であったり、成果を残す重要性であったり、トラブル対応等々を学ぶことができました。
これらのプロジェクトで出入りしていた先生方、企業の方々は、今でも各領域で活躍されている素晴らしい方々です。自身のスキルだけでなく、そこで得られた人脈はかけがえの無いものになっているかと思います。
企業への就職だけでなく、NPOを立ち上げたり、大学に就職したりと卒業生の進路は様々ですが、これらのスキルは働く基盤になっていることと確信しています。
そして・・・
個人的にはミサワホーム・ミサワホーム総合研究所とのプロジェクトが、自身の研究領域「幼児教育」を確固たるものにしてくれました。毎週保育園に通い、録画を分析し、園の先生方と勉強会を開いたりと、得難い貴重な体験でした。何よりも「まち遊びキット」の開発は楽しかったです。
以上、Ylab関連プロジェクト参加を通して身に付くスキルの紹介をさせて頂きました。
早いもので、2017年度の終わりがみえ、別れを寂しく感じる季節となりました。
ですが、アメーバーのようにくっついたり離れたり、プロジェクトが生まれていくことを想像すると、これまでご一緒したYlabの人も、これから巣立っていくYlabの人も、強い味方であると感じます。
皆さま、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
[D4 佐藤朝美]
2018.01.23
D1の杉山です.
山内研について紹介するシリーズ「教えて!山内研究室」,今回は「合宿」がテーマです.
Q.春と夏に合宿があるようですが、その合宿はどういったことをやるのですか?その目的は?
A.春と夏で合宿の趣旨が異なります!端的にいうと...
夏合宿:教育・学習に関する古典的な思想家について学ぶ + 学びのフィールドに出会う
春合宿:修士論文を完成させるための研究方法について学ぶ
夏合宿
山内研には,もともと教育・学習に関するアカデミックなバックグラウンドのない人が多く所属しています.ふだんから自分の研究テーマに関わる先行研究は各自でレビューするとして,もっと根源的なところで教育・学習の研究分野を形づくってきた古典を読む機会はあまりありません.そこで,夏休み中にそうした古典的な思想家について調べ,夏合宿でその思想家の概念を自分の言葉で説明・発表するという学びの機会が設けられています.例年,学生は
春合宿
夏合宿と打って変わって,3月に開かれる春合宿は,修士論文を書き上げたM2からこれから本格的に論文を書くM1に向けて,研究方法を伝授することを目的としています.「研究方法」には,統計や言語データの分析やシステム開発の技術に加え,いかにスケジュールをマネジメントしてくかなど,研究を進めていく様々なやり方が含まれています.教科書には書いていない豆知識って結構あったりしますよね.春合宿ではM2が自分が研究を進めてきた2年間を振り返りながら,修士論文を書くうえで重要だったことや役に立ったこと,失敗したことなどを後輩たちに伝えていきます.私が去年発表したときは,「自分の研究について日常のなかで人と話すこと」を強調しました.ゼミと関係なく仲間と日々研究の話できることが大学院の醍醐味だと思っていて,実際に会話を通して重要な先行研究に出会ったからです.
そして...懇親会
夏合宿・春合宿ともに夜は懇親会が開かれます.これも大事な時間.一緒に飲み食いすることでコミュニティが生まれていくのは研究の世界も変わりません.研究の話も,研究とは全く関係ない話もいろいろします.山内先生から昔話を聞くのも面白いんですよね.この前の夏合宿では本を出したときのことをうかがいました.「人間」としての研究者の世界に最も近づけるのは懇親会の場だと思っています.
山内研の合宿は毎年M1が企画し,手配などもすべてこなします(いつも本当にありがとう!).合宿を開くのは大変ですが,山内研の合宿はその分たくさんの学びが得られる場だと思います.
【D1 杉山昂平】
2018.01.22
Konnichiwa! This is M2 Zhou. Following the theme of「教えて!山内研究室」, this time I am happy to share my experience as a foreign student here in Ylab. Hope it can be of any help to you. Okay, let's go!
Q: How can I study at the University of Tokyo and Ylab as a foreign student?
A: As Lin-san mentioned, there are both Japanese and English courses at the University of Tokyo. I am in ITASIA program (アジア情報社会コース), which is an English-taught program beginning in September. For the admission and curriculum, every detail is posted on the official website here. Please pay attention to the application deadline (around December or January each year) and prepare the materials early if you want to apply for it.
By the way, for us foreign students, unfamiliarity to the application process to Japanese universities and information access may be a problem. So if you have any worries, here I do recommend an online course, Studying at Japanese Universities, where former applicants and current students at UTokyo shared their thoughts and can be a good reference for you.
In my case, I spent one year to finish the required credits (30 credits, thesis included), selecting courses both in and outside our department. Also, I tried some Japanese courses, which were informative and interesting enough to challenge myself. From this semester, I can focus on my own research. And till last month, the interview part was almost finished with everyone's kind help.
To write it here last for this question, whether to enroll in Japanese or English program lies in your target and planning. For example, you get to consider your language ability, duration of the program, and curriculum etc.
Q: What if I have no background in education? And how will the research life be as a master student in Ylab?
A: It will definitely not be a big problem because people here do different research and are actually from varied backgrounds. As long as you have passion and thoughts for your future research, your background will add diversity to Ylab.
For myself, I majored in Literature in undergraduate years, partly related to education. But I got interested in MOOCs years ago, a new field that I didn't have much knowledge at that time. I tried to do the research plan myself and was lucky enough to be here. One of the greatest merits I found in Ylab is that everyone will have a research facilitator, whether it be your senpai or sensei from Ylab. IT REALLY HELPS. And as Harada-san said, each week's semi is a long and informative afternoon. I do my research in English and do appreciate all the advice for my research after every presentation.
Q: Any other learning opportunities and features about Ylab?
A: The learning opportunities and environment are really attracting. Last year, I participated in Spring and Summer camp of our laboratory. It was my first time to experience Japanese gasshuku, both of which were intensive learning trip. And in September, the conference of JSET in Shimane University inspired me with the latest works in the educational field.
Personally, to give one word for Ylab, it would be "connection". Connections among Yamauchi-sensei and students, seniors and juniors, inside and outside Ylab, Japanese students and foreign students, research and application. And right now, the blog here and you.
Will these words be of any help to you? And let's look forward to the next blog post!
期待我们在山内研的遇见 :)
【ZHOU Qiaochu】
2018.01.01
皆さま、明けましておめでとうございます!!M1の中野生子です。
2017年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか?2018年の抱負は決めましたか?
今回も引き続き「教えて!山内研究室」というテーマでお送りします。
大学院入学を検討されている社会人の皆さまに向けて、社会人学生の中野が疑問にお答えしたいと思います!
Q: 社会人が入ってもやっていけるような状況ですか?
A: 仕事と掛け持ちで学生生活を考えていらっしゃる方は、授業が日中にありますので、かなり柔軟な職場の理解が必要です!
社会人を経て大学での研究を検討されている方は、比較的明確な目的意識を持っていらっしゃる方が多いように感じています。授業をはじめ大学で提供される機会を十分活用し、学びを得るためにも、職場の理解を十分に得ておくことをオススメします。
その上で、仕事と研究を両立させるために有効な方法を2つご紹介したいと思います。1つ目はオンラインで授業を履修できるCanvas iiionlineの利用です。学際情報学府にはオンラインで履修できる授業が3つ(学際情報学概論Ⅰ・学際情報学概論Ⅱ・研究倫理)あります。2017年度の概論Ⅱはグループワークがありましたが、メンバーの理解を得て、Skypeで参加させてもらったり、打合せは仕事後の時間帯に設定させてもらったりしました。
2つ目は集中講義の履修です。私は有難いことに職場の理解があり、自分の関心にあわせてかなり自由に日中の授業を受けていましたが、それが出来ない方は集中講義を履修すると良いと思います。3〜4日間終日で集中講義を受けることで、週1半期の授業をとるのと同じ単位数を取得することができます。通常授業と比較すると講義数が少ないため、テーマの選択肢が狭まるというデメリットはありますが、一方で他大学の教授方の集中講義が企画される場合もあり、私も2つの集中講義を履修しました。
Q: ストレートで大学院に入るのと、社会人を経験してから大学院に入るという選択を考えるときのメリットとデメリットをそれぞれ教えてください。
A: メリットは「社会人経験と研究の接続」、デメリットは「両立の難しさ」。
ストレートで大学院に入っていないので笑、この部分は他の学生に譲り、社会人を経験してから大学院で研究するメリット・デメリットについて、私の意見をご紹介したいと思います。
メリットは、社会人経験の中で生まれた疑問などがそのまま研究テーマになっている方が多いため、比較的スムーズに研究テーマが絞られていくように思います。一方で、特に修士の場合は2年間で出来る研究内容に制限が生じるため、関心のある大きなテーマをどのように細分化してどの部分をこの2年で研究するのかの絞り込みの方に苦労するケースが多いのかなという印象を受けます。また、現場を持っているケース(私の場合はインターナショナルスクール勤務)が多かったり、すでに関心分野とネットワークがあるケースが多いため、実験や調査の対象探しがスムーズに進むのはメリットだと思います。さらに、基礎的なことですが、仕事で鍛えられてきたスキルを使って、スケジュール管理やTo Do管理をスムーズに進められているのも社会人学生の特徴に思います。
社会人学生のデメリットというよりは、仕事と掛け持ちする場合のデメリットになってしまいますが、やはり「両立の難しさ」でしょうか。私は仕事でファンドレイズ(資金集め)やイベント企画、プロジェクトマネジメント等を担っていますが、仕事で使う頭と研究で使う頭は全く違います。まとまった時間を研究に費やせず、毎日仕事と研究の両方を進めなければいけない中でこの切り替えがなかなかうまくいかず、今も苦労しています笑。
以上、いかがでしたでしょうか。
山内研には他にも社会人学生がいますので、彼らのQAもぜひ参考にしてみてください!
それでは、2018年もどうぞよろしくお願いいたします。
【M1 中野生子】
2017.11.18
こんにちは。修士1年の長谷川です。日本語で書きます!
今回のブログテーマは「教えて!山内研究室」。
来年から山内研のメンバーになるM0の皆さんからいただいた質問に答えるコーナーです。
冬入試を受験される方、来年度の夏入試を考えている方、必見です。
今回は、山内研M1の私から、M1の研究生活のスケジュールに関する疑問に答えたいと思います。
Q: M1はどれくらい授業取るんですか?
A: 週2~3日で6コマ前後取ります。するとM2では単位を取る必要なく、修論に集中できます!
春学期(4月~7月)では、火曜の学際情報学概論と木曜の学習環境デザイン論(山内先生)が定番です。前者は、情報学環の全体像を講義形式で俯瞰した上で、グループワークを通じて学際的な情報学研究の立場や方法論を実践するものです。後者は、前半で空間・活動・共同体という視点から学習環境を考察した上で、その知識を活用し現実のデザイン課題に取り組みます。
秋学期(9月~1月)では、文化・人間情報学研究法と研究倫理が必修です。前者は、さまざまな研究法を少しずつ知れるものもあれば、文献研究あるいはデザイン研究に絞って深く研究の方法を学べるものもあります。後者は、研究者としての倫理規範を様々な分野の教授の視点から知ることができます。
もちろん、これら以外の講義の取り方は自由で、他学部の講義も全然問題ありません。私自身は今学期、文学部の博物館展示論と工学部の技術経営の講義を取っています!
Q: M1の研究はどう進んで行くのですか?
A: 4月~9月は研究テーマ分野の幅広い論文レビュー、10月~3月は研究計画の策定、になります。
入試で出す研究計画の時点で、かなり焦点を絞られている方もいますが、一旦それだけに囚われず、より広い文脈で自分の関心を捉えることを目的として、ひたすら広くレビューします。たとえば、僕はデジタル地球儀の研究がしたい!と言って入ってきましたが、まずはGISを用いた教育について見ることになりました。
そうして、自分の研究が位置づく大きな文脈を把握した上で、いよいよ後半ではRQを決めていきます。特に年内までは案出しをして行き、1月に方針を決め、3月までに完成させる、というような流れになります。
以上、いかがでしたでしょうか。
これ以外にも、M1は夏合宿と春合宿の企画運営を任されたりと、意外と色々ありますので、
また続く投稿たちでより詳しく山内研を知っていただけると幸いです。
【長谷川哲也】
2017.11.06
こんにちは。修士2年の林です。
先月は調査のために台湾に行ってきましたが、半袖しか持っていなかったので戻ってきた時は日本の寒さにやられました。
皆さんも風邪をひかないようお気をつけください。
さて、今回のブログテーマは「教えて!山内研究室」ということで、
来年から山内研のメンバーになるM0の皆さんからいただいた質問を答えるコーナーです。
今回は、外国人でありながら日本語で修論を執筆する予定の私から、語学力から研究室の特徴まで幅広く疑問を答えていきたいと思います。
ーー
Q:山内研に入るにあたり、語学力(英語)はどのくらいあれば良いのか教えてください。
A:英語に関しては、入試にはそれほど求められてはいないですが、研究には必要だと思います。
先生に海外の論文をレビューするようにアサインされることもあるし、学習科学などの分野はやはり英語の文献が多いから、ある程度の英語リーディングスキルが必須です。ゼミの文献購読も英語の本を読むことが多いです。
英語の文献を読むって、決して簡単なことではないですが、読まなければいけない時は読めるようになるらしいから安心してください。
Q:英語のスピーキングに関しては?
A:スピーキングは人それぞれですが、研究室に留学生が入る場合もあるので、
英語ができればより円滑なコミュニケーションを取れるのではないかと思います。
Q:外国人留学生ですが、山内研では外国人特別選考という制度がありますか?
A:山内研が所属している「学際情報学府 文化・人間情報コース」では、外国人特別選考がありません。外国人であっても、日本人学生と同じ試験を受けることになります。
また、ITAISAという英語のプログラムもありますが、詳細はITASIAの周さんにお答えしていただけたらと思います。
Q:外国人留学生の日本語能力はどのくらいあればいいのか教えてください。
A:文化・人間情報コースの場合は、出願する際に「日本語学力証明書」という書類を提出しなければならないですから、ある程度の日本語能力が求められると思われます。
Q:山内研がほかの研究室が違うな〜と思うことは何ですか?
A:やはり、研究室を(物理的に)持っていることではないかと思います。台湾にいる時、いわゆる文系の研究室には院生の席がないのが普通でした。
山内研では、研究室を構えていることで横のつながり(同期同士)と縦のつながり(先輩と後輩)が強くなり、コミュニケーションが活発になっています。
先輩たちが研究室でお互いの研究について熱く語り合うのはよくある光景です。外国人である私が日本の生活に慣れることができ、先輩たちからたくさん学べたのも研究室があったおかげだと思います。
ーー
いかがでしたでしょうか。
次はどんな疑問が出てくるのでしょうか。お楽しみに。
【林怡廷】
2017.10.26
山内研究室ってどんな研究室なんだろう...
何を普段はしてるのかな...
こんにちは、修士2年の原田 悠我です。
今回から新しいテーマ「教えて!山内研究室」になります。
ブログを読んでくださっている皆さん。
気になるあの研究室や有名なあの研究室、普段どんなことをしているか知っていますか?
なかなか、自分が所属している以外の研究室について知る機会ってないですよね。
そして、山内研究室。けっこう気になっていますよね。
というわけで、数回に渡って様々な疑問に答えて行きたいと思います。
研究運営から食事まで幅広い疑問を考えてくれたのは、
新しく山内研究室のメンバーになる(予定の)M0の皆さんです。
それではさっそく、はじめていきます。
第1回目となる今回のテーマは「ゼミ」です。
Q : 山内研究室にはゼミってあるんですか?どのぐらいのペースで進めているのですか?
A : はい、毎週木曜日の14:00〜17:00に実施されています。
基本的には大学のスケジュールに従い(夏休みや冬休みは休み)福武ホールで実施されています。学部時代には情報工学部にいたのですが、その頃のゼミとは雰囲気も形式も異なっています。学際情報学府の中でも研究室毎にけっこう異なっています。とはいえ、私の場合、研究を進める上でさらには大学生活全体を見ても、かなりのウェイトを占めている重要な学びの機会という位置づけは変わっていないですね。学部時代から一週間がゼミを中心に回っている気すらします。
Q : どんなことをしているんですか?
A : 研究報告と文献報告が実施されています。
今学期の場合、前半が3名の研究報告で後半が1名の文献報告という型式で進められています。それぞれ順番に担当が変わっていき、研究報告はだいたい1ヶ月に1回で担当になります。研究報告では、修士研究や博士研究の進捗報告を前半に実施し、後半はそれを踏まえての質疑応答を行います。担当者にとっては1ヶ月間から半年の過ごし方が決まる重要な時間です。後半の文献発表では、輪読している本を1章ずつ呼んでいきます。夏学期は「Contemporary Theories of Learning」で冬学期は「The ABCs of How We Learn」です。まとめると、前半の研究報告が個人個人の研究を知る機会、後半が研究室に共通した幅広い学習について知る重要な機会となってます。
Q : どのような人が参加されていますか?
A : (基本的には)山内先生と研究室の院生および助教の先生です。
だいたい15名から20名が参加しています。山内先生、大学院生(約12名)、そして山内研究室に関係のある助教の先生(約5名)、そしてたまにゲストの先生という感じです。
Q : 疲れますか?
A : はい。木曜日の夜はぐったりで、金曜日は休日気分です。
いかがでしょう。
なんとなく山内研究室のゼミの様子が伝わりましたか?
次回は台湾に修士研究の調査に出かけている林さんです。
どんな疑問にこたえてくれるのでしょうか。お楽しみに。
【原田 悠我】
2017.10.02
D4の佐藤朝美です。今回は、灰谷健次郎さんの「天の瞳」幼年編 (角川文庫) の一節を紹介したいと思います。
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「どう答えたの?倫太郎ちゃんは」
「ハナクソって」
あんちゃんが机をたたいた。大声で、うれしそうに笑った。
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このシーンは、主人公倫太郎が通う保育園における職員会で、「らくがき」が話題になった時のことです。子どもの自発的な遊び心をどこまで許容すべきか激しい議論が繰り広げられた後、園長の園子さんが倫太郎の作品を持ってきました。
ピンポン玉くらいの真っ黒な紙の球を見せながら、
と、園子さんは言いました。
倫太郎はそのお題を受けて、和紙を色々折って染料に浸けて、工夫して、試行錯誤して、熱中して、出来上がったのがこの作品。その過程を見ていないユミコ先生は、作品を持ってきた倫太郎に、
私がこの書籍を読んだのは息子が生まれてすぐの二十代最後の歳でした。男の子の子育てがに想像がつかず、半ば途方に暮れていた状態でしたが、夫に手渡され、夢中で読んでしまいました。理解しがたいヤンチャな倫太郎のような男の子は、同級生にいたら一番キライなタイプです。新卒のエリ先生の半べそかきながら倫太郎とやり合う姿が自分と重なりました。が、倫太郎の一見理解しがたい不思議な行動が、あんちゃんとのやり取りや園子さんの鋭い観察、関わる人達との対話を通して、すごく納得し、倫太郎ならではの、ちょっと素直ではなく、型破りな反応が愛しく、頼もしく思うようになりました。男の子を育てることへのワクワク感とともに、幼児教育というものに魅力を感じたのもこの頃からだったかもしれません。
下記は今でも新鮮に素敵だなと感じる園子さんのセリフです。
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「誰かが倫太郎ちゃんを台風みたいな子だっていってたけど、うまいことをいうと思った。台風には眼があって、その眼が大きくてきれいなほど台風のエネルギーはすごいのでしょう。子どもにはどの子にもそんな天の眼があって、生命の成長を暗示しているような気がするわ。子どもって不思議さをいっぱい持っている人間の原型だなって、子どもと暮らしてみて、つくづく思ったのね。わたしはそれを大事にしてあげたい」
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いまだに現場に行く度に圧倒されるばかりですが、子どもの不思議さ、エネルギーのすごさを大切にしていきたいと強く感じます。そして、不思議さを言語化し、エネルギーを上手くアウトプットにつなげていけるよう、日々精進していきたいと思います。
【佐藤朝美】
2017.10.01
現代における大学の重要な役割は、
それが"人生の実験室"として機能するという点にあるように思う
私にとっての「印象に残っている本の一節は、「大学生論-戦後大学生論の系譜をふまえて-」という本の第六章「人生の実験室としての大学を考える-ある大学生の心の風景をまじえて-」の中に書かれた、この一節です。
この一節は、橋本広信先生が書かれたものです。中学校や高校とは違い、決まりごとが少ない大学という場所で、どう過ごすことが正解なのか、どう過ごしたら楽しく、かつ、自分の過ごした時間に胸を張れるのかということを考えていた時にこの一節と出会いました。
大学の入り口に至るまでに、気の遠くなるような時間とお金をかけたとしても、ただ何となく漂流したとしても、君たちの思いにかかわらず、四年という制約された時間は、着々と終わりに向かう。大学という大幅な自由が許された特殊な空間と、"大学生"という名のかりそめのアイデンティティを、学生証とともに受け取った君たち。君たちがそこでとった行動というものは、どういうものか。それが、大学の出口で試されることになるかもしれない。試されるというのは、けっして会社に就職するとか、仕事を持てるかどうか、ということだけではない。もちろん、そこでの試練が大きいのは事実だ。ただ、より本質的には、自分に対する自信、世の中に出て何かをできるという有能感。そんな目に見えないものも試される"自分"が試される。
橋本先生は、自分に対する自信や世の中に出て何かをできるという有能感などのような、大学の出口で試されるものを「人としての付加価値」と呼んでいます。そして、何かを経験(実験)するだけではなく、そのことによって、大きくなっていく自分自身を感じ取るとき(自己変容)、初めて、人としての付加価値(実験結果)がついたと言えると、述べています。
ここでのアウトプットは、"人としての付加価値"となっていますが、何かを選択する際の基準を作ることや自分にとって最適な学習方略の模索などもアウトプット(実験結果)や目的として含めたとしたならば、"人生の実験"は、大学以外の様々な場面でも行われていることだと思います。
臆病な私は、"人生の実験"をすることに抵抗がありました。けれども、この本を読んで、何か停滞していることが逆に怖いことだと感じるようになりました。科学が、様々な実験の積み重ねの中で発展してきたように、きっと私の人生も様々な実験を行っていくことで、もっと豊かなものへと発展していくんだろうなと思うようになりました。大学以降の人生に、きっと与えられた実験は少ない。自分自身で、実験計画を作り、検証していく必要があります。それを楽しんでやっていきたい、そして、昔の私と同じように、"人生の実験"を行うのが怖い大学生がいたなら、その子の気持ちに寄り添いたい。今はまだ、うまく言語化できませんが、自分が今大学生の課外活動の研究をしているのも、キャリアレジリエンスという概念を従属変数として扱っているところにも、この本やこの本を読んで感じたことと強く繋がっている気がします。
こんな感じで、うまくまとめることはできませんでしたが(笑)次の人にブログの担当を回したいと思います。
【池田めぐみ】
2017.09.25
「宿泊センターが自動覚醒機とかいう最新装置を買うらしいよ。おれたちお払い箱になるかもしれない」
D1/内田洋行教育総合研究所の平野です。今回のブログテーマは「印象に残っている本の一節」ということで、ジャーナリストで小説家の辺見庸さんによる芥川賞受賞作『自動起床装置』(1991年)を取り上げたいと思います。
通信社の宿泊センターで、仮眠する社員を指定された時間に起こす「起こし屋」のアルバイトをはじめた大学生の「ぼく」。アルバイト歴が長く、起こしの名人と呼ばれている同僚の聡は、法学部生だが睡眠や樹木に関する本ばかり読んでいる変わり者。そんなある日、自動起床装置が導入されることになり...。
「起こし屋」という仕事のユニークさもありつつ、自動起床装置に象徴される現代社会への批判的まなざしも垣間見えるのが興味深いところです。今回ご紹介するのは、自動起床装置の導入を非難する聡の台詞です。
「ところがさ、産業革命期をへて目覚まし時計というものが発達していくよね。眠りと覚醒を機械的に、強制的に区別しようという考え方が勢いづいていくんだ。おそらく、最初に目覚まし時計をつかったひとは、心臓をちぢめただろうな。......それからだんだんに覚醒時の方が睡眠時より大事という考え方、睡眠を覚醒に従属させる発想が普通になっていくんだ。......まちがっているかもしれないのにね。(略)......このへんでやめといたほうがいいんだ。無理がきているんだから」
学習研究に引きつけると、「授業と授業外」「学校と学校外」など、学習がおきている時間とおきていない時間を明確に区別しようとする思想、あるいは「学習がおきていること」を「学習がおきていないこと」よりも「よい」ものとする考え方があるとは言えないでしょうか。こうした思想を自動起床装置のような形で具現化し、睡眠を支配しようとする考え方はある意味で教育工学的とも言えるでしょう。しかし、その思想はほんとうに正しいものでしょうか。自動起床装置によって、失われるものはないのでしょうか。
眠りと覚醒を区別する思想、学習とそうでないものを区別する思想を超えて、人間そのものをもう一度、連続性の中で捉えなおすことが必要なのかもしれません。学習でないものの中に学習のタネがあるかもしれず、学習している時間が学習していない時間に生きてくるということがあるかもしれないですから。
「(略)......眠りの世界ではいろいろなことが起きる。辛くて、狂おしくて、他愛なくて、突飛で、情けなくて......もう、すべてなんて言葉でおおえないほどすべてのことが起きる」
追伸:辺見庸さんはこれを書かれたとき46歳、芥川賞を取られてからも数年間は共同通信社にて働かれていました。この作品にも通信社での経験が強く反映されています。社会人大学院生である私には、その「二足のわらじ」ぶりも印象的なのです。
【平野智紀】