BLOG & NEWS

2011.04.09

【今年の研究計画】小学生のデジタル英語学習教材使用時における親のフィードバックに関する研究

みなさま、こんにちは。修士2年の菊池裕史です。
今年度も昨年度と同様に【あるテーマ】を設定し、そのテーマに沿って研究室のメンバーが順番に記事を書いていく形式でblogの更新を行っていきます。第1回目のテーマは例年通り【今年の研究計画】です。各学生が現時点で考えている研究計画をご紹介いたします。

研究テーマ
「小学生のデジタル英語学習教材使用時における親のフィードバックに関する研究」

研究の背景
既にご存じの方も多いと思われますが、小学校学習指導要領の改訂が2008年に告示され、公立小学校に「外国語活動」科目が新設されることになりました。小学校「外国語活動」の目標にはコミュニケーション能力の素地を養うことが明記されています。
また、第二言語習得の分野において、様々なICTを活用した研究・実践が行われています。たとえばマルチメディア教材を含むデジタル教材を利用した研究や、携帯電話やスマートフォンといったモバイル機器を利用した研究などが挙げられます。また、今後情報化が進むに連れ、多様なデジタル教材を利用した、家庭での英語学習の機会が増えることも予想されます。そのような家庭学習の場では、教材を利用して英語学習を行う子どもを支援する立場としての親の役割が重要になってくることが考えられます。

研究の着眼点
このような背景を踏まえ、本研究では家庭学習の場における親のフィードバックに注目します。今までに行われたフィードバックに着目した研究としては、授業の場面で教師が児童に行うフィードバックを観察した研究などがありますが、それらの研究は当然教師と児童という一対多の関係の中で行われるフィードバックに着目した研究となります。親と子という一対一の関係の中で行われているフィードバックに注目している研究は数多くありません。

研究の目的
そこで本研究では、児童がデジタル教材を利用して英語学習を行う場面での親のフィードバックを観察し、そこで行われる親のフィードバックの傾向を明らかにしたいと考えています。また、それらのフィードバックが子どもの情意面に与える影響を明らかにしたいと考えています。

研究の方法
親子でデジタル教材を利用して英語学習を行う際の発話や行為を(ほとんど介入無しで)観察したいと考えています。また、子どもと親の両方に対して質問紙調査を行う予定です。具体的な調査対象やスケジュールについては現在検討中です。

今後に向けて
まだまだ研究方法や期待される結果には不明瞭なところが数多くありますが、一歩一歩着実に研究を進め、子どもの英語学習のために貢献できるような、価値ある研究にしていきたいと思います。
今年度も引き続き、よろしくお願いいたします。

2011.04.05

【エッセイ】Google before you retweet

東日本大震災および福島第一原子力発電所事故に関して様々な情報があふれています。多くの人が奔流のような情報に流されないようにしたいと願っているのではないでしょうか。
2003年に「デジタル社会のリテラシー」という本を書きました。その中では、情報を評価することを重視したリテラシーとして、情報リテラシーとメディアリテラシーをとりあげています。

情報リテラシーでは、情報の出所を確認することや情報発信者の信頼性を評価することが重視されています。また、メディアリテラシーでは、発信者のおかれた社会的状況と発信内容の関係を批判的に読み解く必要性が主張されてきました。

今回のような状況でも、これらの考え方は有用性を失っていません。ただ、情報の流れが速くなってきたために、情報を吟味する時間が少なくなっていることを危惧しています。Twitterで公式RTができるようになってから、その傾向が加速しているように思います。

RTする前に発言者の名前で検索し、発信者が今までどのような立場にたって何を主張してきたのかを調べるだけでも、情報を吟味することにつながります。その際に重要なのは、その情報が嘘か本当かという二分法を捨てることです。この二分法は往々にして思考停止を招きます。ほとんどの情報は、嘘と本当の間にある「発言者にとっての真実」を反映しており、それを読み解くことが情報の評価の要だからです。

RTする前に発言者の名前で検索する文化を広めてください。過去の言動は情報を評価する鍵になります。

[山内 祐平]

2011.04.04

【1年間を振り返る】誰に向けての研究なのか

皆様、こんにちは。博士課程2年の大城明緒です。

まず初めに、この度の東日本大震災により被災された多くの方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

新年度も始まりましたが、山内研のメンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】最終回をお送りいたします。


■英語の授業と学会発表

2010年度は、博士課程に進学して最初の1年でした。印象に残っているのは、英語でのプレゼンテーションの仕方、論文の書き方を学ぶ、博士課程向けの授業(Academic Communication in EnglishとAcademic Writing Exercise)です。

学術的なコミュニケーションにふさわしい語彙や表現を選びながら、緻密に論理展開を組み立てて話す・書くということは、英語に限らず、日本語の場合でも十分注意する必要があることを感じました。また、昨年12月には初めて国際会議で口頭発表を行いました(発表論文)。


■予備実験と足踏み

博士課程では、修士研究とは違った切り口でのバックチャネルの授業活用を研究しようとしているのですが、なかなかこれがうまくいきません。ゼミの皆様や先生方に相談に乗っていただきながら、何度か予備実験の形でlinoTwitterを使った映像講義の受講方法を検証していますが、研究の次の段階に進めるような方法をまだ見つけられていません。

誰に、どんな学習者であって欲しいのか。その根本的な目的と目標を明確にしない限り、前に進めないことを感じて悩んでいます。


■2011年3月11日

そんな中、本郷キャンパスで3月11日の地震を経験しました。生まれて初めて体験する大きさの揺れでした。そして、「大きな地震だった。怖かった。」と思いながらも、後からそのように振り返ることができて、怪我もなく無事に生きていられることは、本当に幸せなことだと思いました。

あの一瞬で命を奪われてしまった方がどれだけいたことか、命を奪われてしまった方の家族や友人が今どんな思いでいるのかを思うと、目の前が真っ暗になって頭がパンクしそうになります。どんなに想像したとしても、自分ではその悲しみや怒りを到底理解することはできないと思うとまた悲しくなります。

今、自分は直接的な形で被災されている方の支援に関わることはできませんが、今までしてきたことやこれからすべきことに淡々と取り組むしかないのだと思います。

そして、色々な場所で「支援」という言葉を耳にするたびに、それは「誰に向けての、何のための、どんな支援なのか?」という疑問が頭をよぎります。それは自分にも返って来る言葉でもあります。

それは、誰に向けての、何のための、どんな研究なのか?

引き続き淡々と、しかし以前よりも覚悟を持って研究に取り組まなければと感じています。

【大城 明緒】

2011.04.01

【1年間を振り返る】山内先生との2つの約束

みなさん、こんにちは。
4月よりD2になる池尻良平です。

この度の東北地方太平洋地震や原発事故の影響で被災された皆様に、早く平穏な日々が戻ることを強く願っております。私自身、日常を取り戻す意味でもこの1年を振り返り、今後に向けての1歩にしたいと思います。

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 博士課程に進学した当時、山内先生に強くアドバイスいただいたことが2つありました。それは、「研究を進める上での仲間を作ること」と「教師を体験すること」の2つでした。ちょっと長くなりますが、今回はこの2つを振り返りたいと思います。


(1)研究を進める上での仲間を作ること
 この1年で3つの勉強会を開催し、その分野の知見だけでなく皆で勉強を進めていくノウハウもたくさん学びました。1つずつ簡単に紹介していきます。


【HAL勉強会】
 この勉強会はアクティブな歴史学習(Historical Active Learning)を勉強する会です。2009年の秋から1つ下の学年の帯刀さんと2人でスタートし、現在で第4期目を終えています。詳細は帯刀さんが以前に【私の学びの場 Historical Active Learning】できれいにまとめてくれているので上のリンクからご参照下さい。

 僕が山内研に入ったばかりの頃は周りに歴史学習を研究している方はおらず、ちょっと寂しく思いつつも一人で歴史学習の文献を読み進めていました。その後、後輩の帯刀さんが入学し、1年間は2人で勉強会を進めました。最初の方は手探りながらも、主に海外の歴史学習に関するレビュー論文を読んだり、海外の特定の学会誌を10年分読んだりし、「あぁ、同じ専門の仲間がいるとお互いにチェックしながら文献を読めるし、知識も倍のスピードで増えていくし、良いことづくめだなぁ」としみじみ思いました。帯刀さんには心から感謝しています。

 また4月からは、新M1の末さんや他大学で歴史学を専攻し、社会科の教員を目指している新M1の方2人、それから僕の4人が中心になって第5期目のHAL勉強会を開催する予定です。今後もどんどん歴史学習の輪を広げていけたらいいなと思っています。


【DST勉強会】
 この勉強会は、Digital Story Tellingについて勉強する会です。2010年の冬からスタートし、主に山内研の先輩の佐藤さんがデジタル・ストーリーテリングの最新の動向をレビューし、僕が理論的な面からストーリーテリングの学習効果についてレビューを行っていました。

 この勉強会でとても面白かったのは、山内研周りの約10名の研究者が興味を持ってくださったことです。その結果、第二言語学習、組織学習、歴史学習、家庭内学習、ゲーム学習、CSCLなど色々な研究分野において、ストーリーテリングはどんな教育的効果をもたらせるのかを発表してもらうことが可能になり、デジタル・ストーリーテリングの各教育分野の利用可能性を具体的に掘り下げて議論できました。

 直接的には僕の研究分野ではないものの、カラーの違う研究者が一同に集まって一つの分野を勉強することで、その分野の可能性を多面的・具体的に理解できたり、思いもよらず自分の研究へのヒントになったりするなど、色々な人を呼び込んで研究を進めていくことのパワーを感じました。


【Game-based-Learning勉強会】
 この勉強会は心理学的な立場からゲ―ムの学習利用を考える会です。2010年の夏頃から中原研の福山くんと2人でスタートし、最初のうちはゲームと学習についての海外の論文を調べるところから始まりました。現在はゲーム学習を研究している浅見さんという方を加え、3人で進めている勉強会です。

 最初こそ論文のレビューに徹していましたが、この分野はまだあまり知見が蓄積されていないことがわかり、2人でゲームならではの効果は何かを議論したり、実際に友達を呼んで実験をして仮説を確かめることへ活動がシフトしていきました。また、もっと教育へのゲーム利用の裾野を広げようということで「Game Learning ???」というワークショップを開催することを決め、2011年2月下旬に約20名の方と環境教育におけるゲームの導入効果を考える「Game Learning Eco」というワークショップも開きました。詳細は、上のリンクからご覧下さい。

 この勉強会の面白い点は、他の2つの勉強会と違って「行動すること」を重視した勉強会に成長したことです。毎回刺激あふれる議論をし、仮説ができれば実験して確かめ、ゲームと学習について興味のある方へどんどん発信していく。この勉強会ではそんなアカデミックな空気感を生み出せ、それを味わえるという貴重な体験ができました。ちなみにこの勉強会も来期以降継続し、ワークショプを続けていくことが決まっています。


 山内先生にアドバイスされた「研究を進める上での仲間を作ること」がこれらに該当するかはわかりません。もっと歴史学習系の仲間を増やさないといけないなぁとも感じています。新年度以降はもっとアクティブに行動し、生涯を通してアカデミックな実践・議論を共有できるような仲間を作っていきたいと思っています。


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(2)教師を体験すること
 もう1つの山内先生との約束は、博士課程の間に「教師を体験すること」でした。僕の専門が高校生を対象にした歴史学習であること、それから元々教師になろうと思っていたことも考えると、僕自身ぜひ教壇に立ちたいなと思っていました。

 山内研の先輩である森さんのご紹介で、ここ2年間継続的に学芸大附属高校に授業見学に伺っていたのですが、(詳細は以前書いた【私の学びの場 高校という文化】のブログをご覧下さい)、お世話になっていた先生が一時的に休職されるということで2011年1月から3月の間に非常勤講師をしてみないかというお話をいただき、「何て嬉しいお話だろう」と思い、すぐにお引き受けすることにしました。

 ところが見るのとやるのでは大違い。研究で習ったことが役立つ面もあれば、思ったより役に立たないこともあったり、今まで教師目線で考えていたつもりが、実は全然その目線になってなかったり、何より実際に教壇に立つことの難しさと喜びを体験できました。この体験を最大限吸収しようと毎回授業後にリフレクションを行いました。トゥギャッターにまとめましたので、詳細はこちらからご覧下さい。


 3ヶ月と短期間ではあったものの、実際に教師をして得たことが3つあります。
1つ目は、生徒の顔を思い浮かべながら研究に取り組めるようになったこと。
2つ目は、自分の研究と高校教育の融合ポイントを発見できたこと。
3つ目は、もっと教師を体験しないと自分の研究は独りよがりになると気付けたこと。

 自分はなぜ研究をしているのか、誰のために研究をしているのか、どうやったら社会的・文化的に受け入れられるようになるのか。非常勤を通して、この先の長い研究者人生に向けての1つの信念基盤を築くことができました。非常勤のチャンスを与えてくれた先生、並びに教師を体験することをアドバイスしてくれた山内先生に感謝致します。


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 ちなみに今年度は山内先生に「海外に出ること」を強く薦められています。僕自身、日本の中だけで研究を発信することにもったいなさを感じたり、海外の歴史学習の動向や授業の様子などもっと広く見聞を深めないといけないと痛感してきています。

 今年度の山内先生との約束もきっちり守り、また1つステップアップしたいと思っています。(もし守れなければ、エイプリルフールネタということでご勘弁下さい苦笑)

[池尻 良平]

2011.03.29

【原稿掲載】東大教師が新入生にすすめる本

UP4月号(東京大学出版会・第40巻第4号)の「東大教師が新入生にすすめる本」に4冊の本を推薦させていただきました。編集部より許可をいただきましたので、転載します。

① 私の読書から――印象に残っている本
凡才の集団は孤高の天才に勝る』キース・ソーヤー/金子宣子訳(ダイヤモンド社、二〇〇九)
我々は孤高の天才に宿る神秘的なアイデアが世界を一変させるというイメージに惹かれている。しかし、創造性とイノベーションの科学的分析を専門とするソーヤーは、画期的な変化を生み出すのは孤高の天才ではなく、集団ゆえに生まれる天才的発想「グループ・ジーニアス」であると主張する。情報革命によって人々のつながりが世界を変えつつある時代をとらえる上で、重要な示唆を与える一冊である。

② これだけは読んでおこう――研究者の立場から
未来の学びをデザインする』美馬のゆり・山内祐平共著(東京大学出版会、二〇〇五)
情報化社会では、ワークショップや学習コミュニティなど、学校教育以外の学びの場が増えてきている。学習環境をどうデザインすれば、人々の学びを支援することができるのか、教育工学や学習科学の知見から検討した入門書である。

③ 私がすすめる東京大学出版会の本
理解とはなにか』佐伯胖編(東京大学出版会、一九八五)
学習について考える上で最も本質的な「理解とは何か」という問いに対する格闘をまとめた本である。二十五年前の議論であるにもかかわらず、本質を見つめる視座はみずみずしさを失っていない。三章「理解におけるインターラクションとは何か」は、情報技術を用いた協調学習について考える際に必読である。

④ 私の著書(近刊も含む)
デジタル教材の教育学』山内祐平編(東京大学出版会、二〇一〇)
オンライン上の学習が広まるなか、デジタル教材に何が求められているのか。これまでのデジタル教材の歴史と思想を辿り、近年における活用の動向も考察。さらに設計・評価の実際を教育学の観点を背景にして解説している。

[山内 祐平]

2011.03.28

【1年間を振り返る】土居由布子

皆様、こんにちは。4月より修士課程2年目になります土居由布子です。

3月末になってもひどく寒い日が続いています。
東北地方太平洋地震、津波や原発事故の影響で被災された皆様にひと時でも早く心休まれますよう、強く願います。
そして深刻な事態が続く中、懸命に復旧作業に取り組まれている皆様に常に熱いエールを送り続けたいと思います。
私自身も少しでもお役に立てればと考え、できることを実践していく次第です。

【1年間を振り返る】
私にとってこの1年は本当にたくさんのことを悩みながらたくさんのことを学べた1年だったと思っています。学際情報学府、そして山内研究室という実践的で様々な機会にめぐまれた環境の中で研究に取り組み、とても刺激的な1年となりました。

ゼミや研究室の中で先生方や、先輩、そして同期、そして研究室外でも様々な人にお会いし参考となるアドバイスやお話をたくさん頂きました。

また研究の基礎を日々学ばせて頂きましたが、これからも強化していかなければならないと強く思うばかりです。この1年を通して自身の何が足りないのか、何を学ぶべきか等の課題が次々と明らかになってきました。

なかなか研究の新規性を見出せず、時間ばかり過ぎてしまい、2年目を迎えることになった今もまだまだ悩みがつきませんが、だからこそ「Hard-Fun」を感じてきました。

この1年は時間との勝負が深刻となり、私にとってこれまで以上に「勝負の年」となること間違いありません。皆様の期待を裏切らぬ様、日々精進して研究を進め、1年後には、皆様にお見せして恥じない論文を仕上げたいと思っております。

どうかこれからも宜しくお願い致します。

【土居由布子】

2011.03.26

【お知らせ】BEATSeminar延期

今回の地震で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。

地震発生後、状況の推移を慎重に検討して参りましたが、停電による交通機関の混乱や原子力発電所事故の状況を考慮し、より多くの方にご参加いただけるよう、3月26日に開催予定であったBEAT Seminar「ソーシャルメディアによって変わる学びのかたち」の日程を6月4日(土)に延期することにいたしました。

6月4日のBEAT Seminarは、同じタイトルと趣旨で行われますが、登壇者やプログラムに一部変更がある可能性がございます。

詳細は、4月末にご連絡させていただきます。今回の2010年度第4回BEAT Seminar申し込みいただいた方は、一般申し込みに先立ち、優先的に受付させていただきます。

ご了解いただきますよう、なにとぞよろしくお願いいたします。

2011.03.25

【1年間を振り返る】次のステップへ

 みなさま,こんにちは。
修士課程1年の柴田アドリアーナです。

 東北地方太平洋沖地震から2週間たちました。まだ余震も続いてとても心配ですが、被災された皆様に一日も早い復旧•復興を心よりお祈り申し上げます。

 それでは、メンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】,第6回をお送りいたします。

 修士課程の一年間

 修士に入ってからの一年間はあっという間に過ぎてしまいました。

 研究生として山内研究室に入ってから「HardFun - 苦楽しい」という言葉をよく耳にしてきました。今年を振り返ると「HardFun」はこの一年間に一番ぴったりの言葉だと思います。

 前回のシリーズ、【私の学びの場】で紹介したBEATのメールマガジンの執筆、授業の課題やゼミでの研究発表と英語文献でとても忙しくて「Hard」でした。特に前学期にはグループワークが多くてスケジュールはミーティングでいっぱいでした。

 しかし、課題の中で実際にワークショップや学習環境のデザインをしながら「Fun」な時間も沢山ありました。そして、授業では他の研究室の方々とグループワークをしながら、幅広い分野からの視点を通してコミュニケーションすることができました。多様な意見を聞きながら、とても魅力的な学習環境だったと思います。

研究の進み具合

 こんな忙しい毎日の中で学習し、研究も進んできました。この一年間は研究に関する内容を沢山レビューしました。放課後学習やFifth Dimension、さまざまな事例を見てきました。そして、在日ブラジル人に関する状況やその子どもたちの教育に関する活動にも注目しました。

 こんな沢山の情報の中で、今の自分の研究に必要な情報をまとめるのがとても大変でした。毎回のゼミ発表で皆から頂くコメントを大事に聞いて、研究の方向性を決めてきます。そして、定期的にファシリテータの佐藤朝美さんと研究相談をしながら研究を進んできました。いつも貴重なアドバイスを頂いて本当に感謝しています。

 4月になると修士2年になります。去年の今頃を思い出すと、先輩達の研究発表をみながら修士課程に進みました。この一年間、彼らの頑張っている姿を見て感動しました。(修了生の皆さま、おめでとうございます!)

 ここからの一年間を想像することはとても難しいが、これからも自分としっかり向き合って改善しながら研究して行きたいと思います。

【柴田 アドリアーナ】

2011.03.16

【エッセイ】きちんと生活、しっかり募金

このたびの大規模な地震により被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。

地震発生当時、私はCSK株式会社との共同研究発表シンポジウム「子どもワークショップの持続と発展」で話をしていました。すぐおさまるかと思い話を続けていましたが、断続的に地震が続き、大学から建物より外に出るように命令が来ましたので、合格発表の会場前に退避し、安全確認を行った上で解散しました。
その後、交通機関が復旧しなかったため、一部のお客様と帰宅困難になった教職員・学生など約100名が福武ホールで夜を明かすことになりました。福武ホールの運営責任者として食料の手配などを行い、日曜日になって全員帰宅しました。都心の大学には帰宅困難を想定した食料や寝袋などの備蓄が必要だと痛感しました。

あれから6日たちましたが、停電や余震、原発事故などで疲れがピークに近づいているようです。当初は元気だった人も、緊張が続くと疲れてきていらいらするようになります。Twitterでも心配や怒りのTweetが増えてきているようです。

私は阪神大震災の時に宝塚に住んでいましたが、そのときも1週間ぐらいで人々が同じような状態になった記憶があります。最初は非常事態のため気分が高揚しますが、そのペースを長期間維持することはできません。当たり前だと思っていた前提が失われ想定外のことが起き続ける中、被災地の映像に感情移入することによって気分が落ち込むのは人間として自然な反応だと思います。

今必要なのは、少しずつでも足を地につけた日常を取り戻すことではないでしょうか。自分がやるはずだった仕事をゆっくり始め、食事をきちんととり、知り合いと談笑し、娯楽でリラックスする時間を持つこと ー地震がなければあったはずの世界ー を作りなおすことです。

東北地方にいらっしゃる被災者のことを思うと、それが悪いことのように思えるという「気分」はよくわかります。また、原発事故の動向について「不安」があるのは私も同じです。しかし、支援しなければいけない我々が参ってしまっては、長い時間がかかる復興に望むことはできません。

被災地になにかしたいという思いを少しでも形にすることができるのが「募金」です。阪神大震災の時もそうでしたが、インフラの整っていない被災地に専門性のないボランティアが行くことは、かえって現地の状況を悪化させます。また、物資も置き場に困ったり配送できなかったりします。今我々ができる最善の選択は、楽しみながら節約し、それを募金にまわすことです。

「きちんと生活、しっかり募金。」そういう日々を過ごしていきたいと思います。

※さまざまな募金が始まっていますが、日本赤十字社のリンクをあげておきます。
【日本赤十字社】東北関東大震災義援金を受け付けます

※コンビニエンスストアでもレジ横で募金しているところが多いようです。おつりを寄付するだけでも、人数が集まれば大きな金額になります。

※3月17日追記:物資を配給する自治体が消滅しているため、NPO経由の物資送付が必要という情報があります。詳しくはこのページをご覧下さい。

[山内 祐平]

2011.03.14

【1年間を振り返る】ジェネラリストとスペシャリスト

みなさま、こんにちは。修士課程1年の菊池裕史です。

まず、このたびの東北地方太平洋沖地震により被災された多くの方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。被害を受けられた皆様の生活が、一刻も早く回復することをお祈りいたしております。また、今回の地震により、関東地方に住まわれている皆様にも多大な影響が及ぼされていることを、僕自身が経験することにより実感しております。今、自分自身ができることを1つ1つ積み上げていくことにより、少しでも早く、いつも通りの生活を取り戻せるようにと願っております。

さて、それでは山内研のメンバーがそれぞれの目線で4月からの1年間を振り返るシリーズ【1年間を振り返る】、第5回をお送りいたします。

一年間を振り返る
僕が大学院に進学してから、約1年が経過しました。驚くべき速さで過ぎていった1年間を、今ようやく振り返っています。びっしりと書きこまれたスケジュール帳を過去に向かって遡っていくと、様々な記憶が蘇ってきます。参加した授業もプロジェクトも、今までに経験したことがないようなものばかりでした。例えばワークショップの開催や共同研究への参加、BEATのセミナーレポートを書いたり、福武ホールのテクニカルスタッフをしました。また、2回の合宿への参加や毎月の研究発表、山内研のメンバーとして受験希望者の相談にものりました。濃密で充実した日々だったからこそ、「驚くべき速さ」で日々が過ぎていったのだいうことを、今になって実感しております。

ジェネラリストは、よりジェネラリストへ
話は変わりますが、つい先週の木曜日に、山内研・中原研(東京大学大学院学際情報学府 中原淳研究室)での合同合宿から帰ってきました。合宿初日の食事のときに、中原研博士2年の舘野泰一さんと話した、自身の成長に対する振り返りを促す面白い話題がありましたので、それについて書いてみたいと思います。「ジェネラリストとスペシャリスト」についてです。

僕が大学院に進学した理由はいくつかあります。もちろん進学を決意した1番の理由は、「研究が面白いからもっとやってみたい!」というものでしたが、それと並ぶほどのもので、「(自分だけがもつような)専門性を高めたい!」という思いもありました。今までの人生において、「なんでもそこそこできる」キャラクターであった僕は、自身の専門性を確立し、その専門性を軸として様々な活動ができる人になりたいと考えておりました。そのような思いをもちながら、この1年間を過ごしてきました。

実際の大学院での1年間がどのようなものであったかと言うと、「教育」という専門領域を軸として、様々な活動を行った1年間であったと言うことができると思います。古典と呼ばれる書籍から、最先端の論文にまでに目を通し、ラーニングコモンズやワークショップのデザインといった実践的なグループワークを行い、複数の企業との共同プロジェクトなども行いました。しかし、今自分自身に「スペシャリストになれた?」と問いかけてみても、自信をもって「なれた!」と答えることはできません。「教育分野」という桁で自分の能力を捉えたときに、専門性を高めることができた、と言うことはできると思いますが、より細かく専門性を捉えたときに、「○○についてはキクチに任せておけ!」と言われるような分野は確立できなかったかな、と思います。「なんでもそこそこできる」僕は、様々な種類の活動を経験することにより、「よりなんでもそこそこできる」人間に成長したのかな、と思っています。

ジェネラリストからスペシャリストへ
さて、4月から僕の修士生活も後半戦です。様々な活動に手を出し、「よりなんでもそこそこできる」人間に成長した僕は、今年こそ専門性を確立したいと考えています。先日の合宿の際に、中原研の舘野さんとは、「扱える範囲が広いというのも一種のスペシャリティーだよね」といったような話をしましたが、果たして僕は、今後どのような専門性を確立するのでしょうか・・。今の僕にはまだまだ1年後の自分を想像することはできませんが、日々の努力を積み重ねることにより、何らかの専門性を高めることができていればいいなと思います。また1年後に、僕がどのような専門性を確立することができたのかということを、このブログを通して報告できたらいいなと思っています。来年度も、今年度以上に積極的な態度で学問・研究に打ち込んでいきたいと思います。

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