2011.03.29

【原稿掲載】東大教師が新入生にすすめる本

UP4月号(東京大学出版会・第40巻第4号)の「東大教師が新入生にすすめる本」に4冊の本を推薦させていただきました。編集部より許可をいただきましたので、転載します。

① 私の読書から――印象に残っている本
凡才の集団は孤高の天才に勝る』キース・ソーヤー/金子宣子訳(ダイヤモンド社、二〇〇九)
我々は孤高の天才に宿る神秘的なアイデアが世界を一変させるというイメージに惹かれている。しかし、創造性とイノベーションの科学的分析を専門とするソーヤーは、画期的な変化を生み出すのは孤高の天才ではなく、集団ゆえに生まれる天才的発想「グループ・ジーニアス」であると主張する。情報革命によって人々のつながりが世界を変えつつある時代をとらえる上で、重要な示唆を与える一冊である。

② これだけは読んでおこう――研究者の立場から
未来の学びをデザインする』美馬のゆり・山内祐平共著(東京大学出版会、二〇〇五)
情報化社会では、ワークショップや学習コミュニティなど、学校教育以外の学びの場が増えてきている。学習環境をどうデザインすれば、人々の学びを支援することができるのか、教育工学や学習科学の知見から検討した入門書である。

③ 私がすすめる東京大学出版会の本
理解とはなにか』佐伯胖編(東京大学出版会、一九八五)
学習について考える上で最も本質的な「理解とは何か」という問いに対する格闘をまとめた本である。二十五年前の議論であるにもかかわらず、本質を見つめる視座はみずみずしさを失っていない。三章「理解におけるインターラクションとは何か」は、情報技術を用いた協調学習について考える際に必読である。

④ 私の著書(近刊も含む)
デジタル教材の教育学』山内祐平編(東京大学出版会、二〇一〇)
オンライン上の学習が広まるなか、デジタル教材に何が求められているのか。これまでのデジタル教材の歴史と思想を辿り、近年における活用の動向も考察。さらに設計・評価の実際を教育学の観点を背景にして解説している。

[山内 祐平]

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