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2011.05.14

【今年の研究計画】オーラル・ヒストリー構築体験を通した価値観の変容

はじめまして。
今年度から山内研で学ばせていただいている修士1年の末 橘花(すえきっか)です。
今週の【今年の研究計画】を担当させていただきます。

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【研究テーマ】

オーラル・ヒストリーの構築体験を通した価値観の変容

【研究の背景】

■歴史教育の現状と問題
 みなさんは、中高生の頃どのような歴史の授業を受けましたか?テスト前に必死に教科書を暗記したり、先生の呪文のような講義についうとうとしたり...なんてことはなかったでしょうか?それもそのはず、現状の歴史教育の問題点として、教師の一方的な講義や教科書の無批判な理解(加藤1996)があげられます。
 一方、歴史を理解する上で、生徒の生活世界での経験に基づいて歴史のイメージ形成がなされるにもかかわらず、現状では、日常と切り離された抽象的言語レベルで歴史知識を学んでいるため、表面的な理解に陥りやすくなっています(宮崎1995)。

 上記の問題を解決するためにこれまでたくさんの新しい歴史学習の方法が検討されてきました。例えば、教科書の補助資料としての図説や文字史料や、山内先生の開発されたウェアラブルコンピュータでの歴史学習(中杉ら2002)もその一つです。

 しかし、それでもなお解決できない点もあります。それは史資料から得た情報から当時の人々の考えや心情を知ること、教科書の記述に対して実際にはどうだったのかという細かい視点で見ること、自分のもった疑問に対して深く掘り下げることができません。また、名もなき一般市民の記録は文字史料として残っていることは少なく、戦争時の史資料など戦禍に巻き込まれて物理的に残せなかったものもあります。
 
 以上から、現存の史資料を使った歴史学習は、歴史の抽象的な全体像が見えても、日常知に結び付けて歴史をイメージすることが難しいのが現状です。


【研究目的】

■歴史に「声」を取り入れるオーラル・ヒストリー
 史資料のみを用いた学習ではなく、具体的なイメージ形成からより深い歴史の理解を促す「オーラル・ヒストリー」を用いた歴史学習方法をデザインします。そして、深い歴史の理解を通して、学習者の歴史観・人生観といった価値観の変容する過程をはかります。


【研究方法】

■オーラル・ヒストリーとは?
 日本では第一人者の御厨(2002)が、公人の専門家による万人のための口述記録と定義しています。しかし、2005年には、近年オーラル・ヒストリーが急速に市民権を得たことから、公的体験を有する人のみならず、いわゆる庶民や名もなき人にまで改めて対象とする人々の背景を広げてよいと述べています(御厨2005)。また清水(2003)は、ある個人にその体験を口述してもらい、これを記録、分析する一連の作業を総称したものと定義しています。要するに、人の声(個々の人生や体験した出来事の語り)を取り入れることによって歴史を再構成していくプロセスです。

■ストーリーから学ぶ、対話から学ぶ
オーラル・ヒストリーを用いて学習すると、一般的な授業では得がたい「ストーリーによる学び」が可能になります(中川2009)。先行研究でも、聞き手である学生はインタビュアーの個々のストーリー、人生哲学を学び、高齢者に対する固定観念が外れ、変容的学習が行われています(中川2009)。
 
 一方、広島長崎、沖縄などの修学旅行のプログラムにある語り部の体験談の語りはこれまでも教育の一環として活用されていました。そのほとんどがインタビューというよりむしろ講演、講義といった体験者による一方向的な語りが中心になっています。しかしながら、桜井(2005)は語り手の人生を解釈するのは、聞き手の「自己」の人生であり、オーラル・ヒストリーを用いて有効的に学習するには、聞き手と語り手の相互作用をもって語られることが必要と述べています。そのためにも「語り手と聞き手の相互行為」としてインタビューを行い、対話的構築を行うことが重要になります。


【今後に向けて】

 今年一年間はとにかくたくさんの文献にあたって広く深く掘り下げる一年にしたいと思っています。欧米ではオーラル・ヒストリー・プロジェクトと表される歴史学習が盛んに行われているので、毛嫌いしていた英語文献のレビューにも励みたいです。また、オーラル・ヒストリーに関連する概念に、ストーリーテリング、ライフ・ストーリー、ライフ・ヒストリー、ナラティブ・アプローチなどがあります。これらは様々な学問領域で発達しましたが、うまく整理しつつ、多方面からこの研究を捉えていきたいと思います。


[末 橘花]

2011.05.10

【お知らせ】ソーシャルメディアによって変わる学びのかたち

▼残席わずかです。おはやめにお申し込み下さい。

BEAT Seminar 2011年度 第1回 BEAT公開研究会
「ソーシャルメディアによって変わる学びのかたち」

BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
震災の影響で延期になっていたBEAT Seminar「ソーシャルメディアによって
変わる学びのかたち」を6月4日(土曜日)に開催致します。

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、人と人のつながりを変
えるインフラストラクチャになりつつあります。学習が本質的に社会的なもの
であることを考えれば、人のつながりを変える力のあるメディアは、学びの形
を変える力も持っているはずです。

この公開研究会では、BEATで2010年度展開したソーシャルメディアに
よって高校生と大学生・社会人をつなぐ「Socla」プロジェクトを中心に、
ソーシャルメディアによって変わる学びのかたちについて議論を深めたいと
考えています。

尚、3月にお申し込みをされた方には、4月末からメールにて優先的に
ご案内させていただきました。一般の方には5月9日(月)からBEATのHPにて
受付を開始いたします。

みなさまのご参加をお待ちしております。

■主催:東京大学 大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座

■日時:2011年 6月4日(土)午後1時より午後5時まで

■場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>>http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map45.pdf

■内容:

1. 講演 13:00-13:40
「ソーシャルメディアが変える社会」
津田 大介(ジャーナリスト)

▼ 休憩

2.報告1 14:00-14:40
「Twitterを利用して高校生と大学生・社会人が進路と学ぶ意味について
考える"Soclaプロジェクト"」
山内 祐平(東京大学 准教授)
北村 智 (東京経済大学 専任講師)

3.報告2 14:40-15:20
「グループで小論文を相互添削するシステム"Re:"(アール・イー)」
椿本 弥生(公立はこだて未来大学 特任講師)
高橋 薫 (東京大学 特任助教)

▼ 休憩

4.参加者によるグループディスカッション 15:35-16:00

5.パネルディスカッション 16:00-17:00
「ソーシャルメディアによって変わる学びのかたち」
司  会:藤本 徹 (東京大学 特任助教)
パネリスト:今村 久美(NPOカタリバ 代表理事)
椿本 弥生(公立はこだて未来大学 特任講師)
高橋 薫 (東京大学 特任助教)
山内 祐平(東京大学 准教授)

(※報告者、パネリストは一部変更になることがあります。)

■定員:180名

申込ページ:http://www.beatiii.jp/seminar/index.html

■参加費:無料

■懇親会
セミナー終了後1F UTCafeにて
参加希望者(¥3,000)

2011.05.05

【今年の研究計画】情報化した学びを支援する学校家具に関する研究

皆様はじめまして。今年度から山内研で学ばさせていただいている、M1の呉重恩です。
今週の【今年の研究計画】シリーズを担当させていただきます。

研究のテーマ:
  情報化に対応するキャンパス・ファニチャー
情報化した学びを支援する学校家具に関する研究

       
研究の背景 :
学習環境論の発展に伴い、学校、特に大学に設置されたキャンパス・ファニチャーのデザインと運用に着目する研究が増加しています。キャンパス・ファニチャーとは、椅子や机、照明設備までの学校に設置されていて、主に学習のための家具です(Mayer・Frederick・W,1976)。今までのキャンパス・ファニチャーについての研究は、学習用机・椅子の寸法と学生の身体の適合性など人間工学に着目するのが多いです。一方、インターネットとマルチメディア技術が盛んに使われた中で、大学における学習環境はますます情報化している姿勢が見られ、学びの形式、状態と仕組みも大いに変わったと言えよう。そういう背景の中で、情報化が主な原因で変わった学習環境に対応するようなキャンパス・ファニチャーの開発が要求されると見られています。しかし、今までのキャンパス・ファニチャーの研究は、人間工学に関するものが多く、情報化時代の学習者の動機付け、学習形式に配慮して学びそのものを支援するようなキャンパス・ファニチャーに関する研究が少ないです。
研究の目的
研究背景を踏まえ、学習環境に重要な位置づけとなるインターネットとマルチメディアの利用の諸問題に取り組む場合、学習者の学習の形式、動機付け、活動、人工物の依頼度、キャンパス・ファニチャーでの需要等の項目を考察しながら、それらの学習を支援し、学習の効果を向上させることを実現させるようなキャンパス・ファニチャーの研究を試みます。

研究の方法
文献のレビューと現場の調査などを行う予定です。まだ研究の具体的な課題が決まっていないですので、研究方法についてこれから詳しく考えようと思います。

今後に向けて
 空間・家具などの人工物を含める物理的な学習環境が支えるのは、学習活動なので、まず支援したい学習活動の点で絞りたいと思います。学習活動は、形式によって様々がありますが、今興味を持っているのはPBL(project- based- learning)で、まずそれについて調べると考えています。

2011.05.02

【原稿掲載】仕事をより面白くするオフィス

京都工芸繊維大学 新世代オフィス研究センターから出版予定のNEOBOOK3に「仕事をより面白くするオフィス」というテーマで執筆しました。許可をいただきましたのでブログに転載します。

(1.あなたにとって「仕事が面白い」とはどういうことか 2.「仕事を面白くする」ためにはどうすればよいか を1000字程度でコラム風に書くという指示で執筆)

発見があるから仕事は面白い
「面白い」というのは個人的な感覚なので人によって違うのだろうが、研究者には「発見」におもしろさを感じる人が多いように思う。
発見は中世から使われている言葉だが、もともとはハツゲンと読み、見えないものが見えるようになるという意味で使われてきた。現在のように、今までにないものを見つけるという意味で使われるようになったのは明治時代以降であり、翻訳の中で生まれた用法である。
研究者は新しいことを生み出すことを生業にしているが、画期的な業績を出すのはごく一部の人であり、普通の研究者でも発見を論文として発表するのは年に数回である。ただ、それ以外はつまらない日々なのかといえば、そんなことはない。昔の人はこんなことを考えていたのかという発見もあれば、現場に出て自分の仮説と全く違う要因を発見することもある。学生の成長を発見することもあれば、自分自身の至らなさを発見することもある。見えないことが見えるようになるという意味では、毎日が発見の連続なのである。

発見を楽しむ文化を醸成する
研究職というのは、今はやりの言葉でいうとイノベーションを常に求められる仕事である。イノベーションというと多様な人々が集まって今までにない画期的なアイデアを生み出すことを想像するが、その前に考えておくべき大事なことがあるように思う。
MIT(マサチューセッツ工科大学)には夕方から開く教員向けのバーがある。ここでは専門領域が違う研究者が集い、日々の気づきを報告し合って談笑する光景が繰り広げられている。ほとんどはたわいのない話だが、重要なのは内容よりも発見そのものを楽しんでいることである。
発見を楽しむ文化から、異質な気づきの交差と集積が生まれるのだろう。そのような「ため」がないままイノベーションを人為的に起こそうとしても長続きしない。
新しいことを生み出し続けている組織の空間にはそれぞれに独特の雰囲気がある。その雰囲気は、日々の発見を楽しむ営みの積み重ねから生まれているのだろう。

山内 祐平(東京大学 准教授・学習環境デザイン論)

2011.04.28

【今年の研究計画】子育てをめぐる、メディアと親の関係についての研究

皆様はじめまして。今年度から山内研で学ばさせていただいている、M1の河田承子です。
今週の【今年の研究計画】シリーズを担当させていただきます。

【研究テーマ】
  「子育てをめぐる、メディアと親の関係についての研究」

【研究の背景】
1960年代以降、核家族化の進行に伴い、育児に関する情報を得たり、身近に相談できる人が存在した地域コミュニティが衰退していきました。都市化の中で、孤立した子育てに直面しなければいけなくなった親たちは、育児に関する情報を提供してくれるメディアを必要とするようになりました。例えば育児雑誌は、出生数が減少しているにも関わらず発行部数が増加しており、相談相手を得られにくい親にとって貴重な情報源となっています。またテレビでも乳幼児の親を対象とした視聴者参加型の番組を放映しています。これらの子育に関する情報は、親が抱えている悩みを緩和させる効果がある一方、子育て体験談が多く含まれていることから、必ずしも正しい育児情報とは限らないことも指摘されています。さらに21世紀に入って急速に普及したインターネットの登場により、親は情報を受け取るだけではなく、自らも発信して双方向コミュニケーションを行えるようになりました。このように、多様な媒体から多くの情報が発信されていることから、良くも悪くもメディアから様々な影響を受けている親が存在すると考えられます。

【研究の目的】
このような背景を踏まえ、本研究では子育てに関する情報をめぐり、メディアと親の間でどのような相互作用が起こり、それによって親のどの部分が変容するのかを明らかにします。

【研究の方法】
親への調査から、子育ての現場で機能するメディアについて内容分析を行ったり、問題点・課題などを明らかにしたいと考えています。まだまだ未定な内容ばかりですので、具体的な研究方法についてはこれから検討していく予定です。

【今後に向けて】
今後の課題としては、親が親となる過程で、メディアを含めた子育ての情報がどのように関わってきたのかを調べていきたいと考えています。
研究目的や研究方法など分からないことは数多くありますが、日々精進しながら形にしていきたいと思っております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

M1 河田承子

2011.04.26

【授業情報】学習環境デザイン論(大学院学際情報学府)

地震の影響で開講が遅れましたが、4月27日(水)より東京大学大学院学際情報学府の授業「学習環境デザイン論」を開講します。東京大学に所属する大学院生の方はどなたでも履修することができます。

【授業概要】
学習環境のデザイン原則について、事例研究・理論研究・企画立案を通じて検討する。

【授業計画】
(10時15分〜11時45分:情報学環・福武ホール 地下2F 福武ラーニングスタジオ3)
4月27日 オリエンテーション 授業の内容と進め方
5月11日 事例研究:活動ーCAMP クリケットワークショップ
5月18日 理論研究:活動ーフロー理論
5月25日 事例研究:共同体ー湧源サイエンスネットワーク
6月1日 理論研究:共同体ー実践共同体論
6月8日 事例研究:空間ー駒場アクティブラーニングスタジオ
6月15日 理論研究:空間ーアフォーダンス論
6月22日 デザイン課題(グループワーク)
6月29日 デザイン課題(グループワーク)
7月6日 デザイン課題(グループワーク)
7月13日 発表
(地震の影響で減った回は文部科学省の通達に従いレポートで補う)

【授業の進行】
▼事例研究・理論研究
1) 担当者が事例や理論について発表する。
2) グループで議論し、デザインの特徴と課題について検討する。
3) 議論から出た疑問を報告グループに投げかけ、問いを深める。
4) 教育・学習研究の概念との接続について教員が解説する。
▼デザイン課題
大学における現実の問題状況を解決するための学習環境を事例研究や理論研究の知見を援用しながらデザインする。(課題は6月22日に提示する。)

【評価】
出席 25%
事例研究・理論研究報告 25%
デザイン課題 25%
レポート 25%

【教科書】
山内祐平編「学びの空間が大学を変える」ボイックス出版, 2010
美馬のゆり・山内祐平著「未来の学びをデザインする」東京大学出版会, 2005

山内 祐平

2011.04.25

【今年の研究計画】動画共有サイトの投稿者の編集と素材選択能力獲得に関する研究

皆様こんにちは。

【今年の研究計画】シリーズ、今週は修士2年になりました、土居が担当します。

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【研究テーマ】
  動画共有サイトの投稿者の編集と素材選択能力獲得に関する研究

【背景】
近年,動画共有サイト「YouTube」などユーザーが作るコンテンツUGC:User-Generated Content)が普及を遂げています。簡易化する編集ツールが映像制作のハードルを下げる手法として期待されるが良い作品を作るには題材にあう素材を選ぶ力,構成力,演出力が必要だと言われています。(安田2008)UGCに関する研究は多いものの、一般ユーザー(特に作品評価が高いもの)の映像編集(素材を選んで意図的な順番で並べる)能力について評価したものやその能力獲得の条件、過程についての研究は見当たたりません。映像を作ってネット上に投稿するサービスは様々なものがありますが、映像リテラシーの向上を目的とし、「映像の選択」と「編集」に焦点をあてた「NHKクリエイティブライブラリー」というものがあります。

【目的】
NHKクリエイティブライブラリーを使って映像を作り、投稿したユーザークリエイターのメディアリテラシーのうち、映像リテラシー(特に表現能力に焦点をあて、素材探しと編集能力)をはかるとともに、それらの能力が高く、作品の評価が高い者がどういったインフォーマルラーニングをふみ、どういった意識のもと映像作りをしているのか等そのバックグラウンドを探ることです。

【課題】
一番の課題としては作品を評価する評価軸と、映像リテラシー特に表現能力に焦点をあて、素材探しと編集能力)をはかるための評価軸をクリアにすることです。
今のところ、Dogan, B (2009) によるDigital Storyteling評価尺度をベースに作品を評価し、高野(2004)によるVisual Literacy学習目標構造図、そしてHerry Jenkins(2009)による新しいメディアリテラシーをベースに具体的な評価項目を作成して質問紙、インタビューに使える様検討していこうと考えております。

【今後にむけて】
NHKクリエイティブライブラリーを使ったワークショップを毎月開催しています。その中で人々がどのように編集していくのかといった過程を見ることも映像リテラシーの評価尺度を具体化していくことに繋がると考えています。

自身の研究が映像文化の向上に繋がる様、今後も努力してまいりたいと思いますので、今年度も宜しくお願い致します。

M2 土居由布子

2011.04.19

【お知らせ】Educe Fledge 4期メンバー募集

山内が代表理事を務めているNPO Educe Technologiesの勉強会「Fledge」のメンバーを募集します。
FLEDGE は「これからの社会のために、よりよい学びとは何かを考え、学びの場を自ら創りだし、増やしていく」というコンセプトのもと、理論と実践を行き来しながら進む大学生向けの勉強会です。 
第4期では、ワークショップという新しい学びの場について考えます。魅力的なワークショップをデザインできるようになるために、プレ実践や専門家からのレクチャーを経て、最終的にメンバー自身でワークショップを企画・実践することを目標としています。

詳しい情報とお申し込みは、こちらからどうぞ。

[山内 祐平]

2011.04.15

【今年の研究計画】在日ブラジル人児童のための日本語学習教材の開発

みなさま,こんにちは。


【今年の研究計画】シリーズ,今週はM2の柴田アドリアーナが担当いたします。


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研究テーマ

「在日ブラジル人児童のための日本語学習教材の開発」


研究の背景

在日ブラジル人児童の現在 - 近年、日本に居住する外国人の子どもに対する教育問題が浮上しています。その外国人の中でブラジル人の割合はかなり高いです。文部科学省の調査によると日本語指導が必要な外国人児童生徒数を母語別で見ると、ポルトガル語が最も多いです。さらには、日本にいても、帰国しても不適応な状態で不就学の問題も大きくなっています。不就学の理由の一つとして、「日本語の難しさ」があげられています。
本研究はポルトガル語がメインで、日本のブラジル人学校で勉強している小学校一年生のブラジル人児童を対象としています。今までに作られてきた日本語教材はブラジル児童の文化と日本の文化の違いを前提とした日本語学習教材は作られていない。


研究の目的

本研究では、在日ブラジル人の子どもに異文化への気付きを生かした日本語学習教材を提案し、子どもが母国の文化と日本の文化の違いを理解した上で、言葉の意味を学べるようにするにしたい。そのためにブラジル人児童の日常的シーンからブラジルの文化と日本の文化の違いを踏まえて日本語を学べる教材を開発することが目的です。


研究の課題

先行研究によると在日した子どもは日本社会での生活を通して、複言語・複文化主義から新しいコミュニケーションの能力を作り上げる。そのためには日本社会に参加するために必要な日本語を学ぶ機会を保障することが必要だといわれています。
また、Cumminsの「二言語相互依存の原則」では、高度な認知的活動に必要な能力は2つの言語の間で共有されていると示し、母語保持教育•継承語教育の必要性に理論的根拠を与えています。

本研究で提案したいのは:

「イメージ」「音」「モーション」を組み合わせるデジタルな日本語教材。

→ 在日ブラジル人の子どもの生活を通して、日常的なシーンから日本語の使いやすい場面の例を上げる。
→ そこで、言葉の意味や文化的要素を説明していく・・・まずは簡単な挨拶から!
→ ストーリーを通して、デジタル教材のインタラクティブ性を楽しく探る。


今後の課題

まだはっきりとしない部分が多くあります・・・
まずは、デザイン原理をクリアに整理して、実現方法を具体化する必要があります。これを達成すると評価方法、分析方法を含めて次のステップへ進みます。
最初から子どもを対象にした一つの理由は「楽しい教材を作りたい!」でした。いろいろな面で日本とブラジルの絆を深まり、教育的に価値のあるものを作っていけたらと思います。
これからも頑張って研究を進めていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

[柴田アドリアーナ]

2011.04.12

【授業情報】学習環境のデザイン(教育学部)

地震の影響で開講が遅れましたが、4月19日(火)より東京大学教育学部の授業「学習環境のデザイン」を開講します。学部横断型教育プログラム・メディアコンテンツの一コマとしてデジタル教材を中心とした構成になります。東京大学に所属する学部生の方はどなたでも履修することができます。

【授業概要】
デジタル教材、ワークショップ、サイエンスカフェ、アクティブラーニングスタジオなどのデザイン原則について、事例研究を通じて検討する。

【授業計画】
(13時10分〜14時40分:情報学環・福武ホール 地下2F 福武ラーニングスタジオ3)
4.19 オリエンテーション 授業の概説
4.26 学習環境デザイン論 研究の概説
5.10 映像による学習 セサミストリート
5.17 マルチメディアと能動学習 ミミ号の航海
5.24 ゲストトーク「教材開発の現場」 ベネッセ・大辻氏
5.31 初等中等教育での展開 Time to Know
6.7  高等教育での展開 MIT TEAL
6.14 幼児教育での展開 親子de物語
6.21 シリアスゲーム FoodForce
7.5  ゲストトーク「ワークショップの現場」京都大学・塩瀬氏
7.12 ワークショップ CAMP
7.19 カフェでの対話と学び UTalk
(地震の影響で減った回は文部科学省の通達に従いレポートで補う)

【授業の進行】
1) 担当グループが事例研究を行い発表する。
2) 事例についてグループで議論し、デザインの特徴と課題について検討する。
3) 議論から出た疑問を報告グループに投げかけ、問いを深める。
4) 教育・学習研究の概念との接続について教員が解説する。

【評価】
出席 25%
事例研究報告 25%
議論における貢献 25%
レポート 25%

【教科書】
山内祐平編「デジタル教材の教育学」東京大学出版会, 2010
美馬のゆり・山内祐平著「未来の学びをデザインする」東京大学出版会, 2005

山内 祐平

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