2011.04.01

【1年間を振り返る】山内先生との2つの約束

みなさん、こんにちは。
4月よりD2になる池尻良平です。

この度の東北地方太平洋地震や原発事故の影響で被災された皆様に、早く平穏な日々が戻ることを強く願っております。私自身、日常を取り戻す意味でもこの1年を振り返り、今後に向けての1歩にしたいと思います。

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 博士課程に進学した当時、山内先生に強くアドバイスいただいたことが2つありました。それは、「研究を進める上での仲間を作ること」と「教師を体験すること」の2つでした。ちょっと長くなりますが、今回はこの2つを振り返りたいと思います。


(1)研究を進める上での仲間を作ること
 この1年で3つの勉強会を開催し、その分野の知見だけでなく皆で勉強を進めていくノウハウもたくさん学びました。1つずつ簡単に紹介していきます。


【HAL勉強会】
 この勉強会はアクティブな歴史学習(Historical Active Learning)を勉強する会です。2009年の秋から1つ下の学年の帯刀さんと2人でスタートし、現在で第4期目を終えています。詳細は帯刀さんが以前に【私の学びの場 Historical Active Learning】できれいにまとめてくれているので上のリンクからご参照下さい。

 僕が山内研に入ったばかりの頃は周りに歴史学習を研究している方はおらず、ちょっと寂しく思いつつも一人で歴史学習の文献を読み進めていました。その後、後輩の帯刀さんが入学し、1年間は2人で勉強会を進めました。最初の方は手探りながらも、主に海外の歴史学習に関するレビュー論文を読んだり、海外の特定の学会誌を10年分読んだりし、「あぁ、同じ専門の仲間がいるとお互いにチェックしながら文献を読めるし、知識も倍のスピードで増えていくし、良いことづくめだなぁ」としみじみ思いました。帯刀さんには心から感謝しています。

 また4月からは、新M1の末さんや他大学で歴史学を専攻し、社会科の教員を目指している新M1の方2人、それから僕の4人が中心になって第5期目のHAL勉強会を開催する予定です。今後もどんどん歴史学習の輪を広げていけたらいいなと思っています。


【DST勉強会】
 この勉強会は、Digital Story Tellingについて勉強する会です。2010年の冬からスタートし、主に山内研の先輩の佐藤さんがデジタル・ストーリーテリングの最新の動向をレビューし、僕が理論的な面からストーリーテリングの学習効果についてレビューを行っていました。

 この勉強会でとても面白かったのは、山内研周りの約10名の研究者が興味を持ってくださったことです。その結果、第二言語学習、組織学習、歴史学習、家庭内学習、ゲーム学習、CSCLなど色々な研究分野において、ストーリーテリングはどんな教育的効果をもたらせるのかを発表してもらうことが可能になり、デジタル・ストーリーテリングの各教育分野の利用可能性を具体的に掘り下げて議論できました。

 直接的には僕の研究分野ではないものの、カラーの違う研究者が一同に集まって一つの分野を勉強することで、その分野の可能性を多面的・具体的に理解できたり、思いもよらず自分の研究へのヒントになったりするなど、色々な人を呼び込んで研究を進めていくことのパワーを感じました。


【Game-based-Learning勉強会】
 この勉強会は心理学的な立場からゲ―ムの学習利用を考える会です。2010年の夏頃から中原研の福山くんと2人でスタートし、最初のうちはゲームと学習についての海外の論文を調べるところから始まりました。現在はゲーム学習を研究している浅見さんという方を加え、3人で進めている勉強会です。

 最初こそ論文のレビューに徹していましたが、この分野はまだあまり知見が蓄積されていないことがわかり、2人でゲームならではの効果は何かを議論したり、実際に友達を呼んで実験をして仮説を確かめることへ活動がシフトしていきました。また、もっと教育へのゲーム利用の裾野を広げようということで「Game Learning ???」というワークショップを開催することを決め、2011年2月下旬に約20名の方と環境教育におけるゲームの導入効果を考える「Game Learning Eco」というワークショップも開きました。詳細は、上のリンクからご覧下さい。

 この勉強会の面白い点は、他の2つの勉強会と違って「行動すること」を重視した勉強会に成長したことです。毎回刺激あふれる議論をし、仮説ができれば実験して確かめ、ゲームと学習について興味のある方へどんどん発信していく。この勉強会ではそんなアカデミックな空気感を生み出せ、それを味わえるという貴重な体験ができました。ちなみにこの勉強会も来期以降継続し、ワークショプを続けていくことが決まっています。


 山内先生にアドバイスされた「研究を進める上での仲間を作ること」がこれらに該当するかはわかりません。もっと歴史学習系の仲間を増やさないといけないなぁとも感じています。新年度以降はもっとアクティブに行動し、生涯を通してアカデミックな実践・議論を共有できるような仲間を作っていきたいと思っています。


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(2)教師を体験すること
 もう1つの山内先生との約束は、博士課程の間に「教師を体験すること」でした。僕の専門が高校生を対象にした歴史学習であること、それから元々教師になろうと思っていたことも考えると、僕自身ぜひ教壇に立ちたいなと思っていました。

 山内研の先輩である森さんのご紹介で、ここ2年間継続的に学芸大附属高校に授業見学に伺っていたのですが、(詳細は以前書いた【私の学びの場 高校という文化】のブログをご覧下さい)、お世話になっていた先生が一時的に休職されるということで2011年1月から3月の間に非常勤講師をしてみないかというお話をいただき、「何て嬉しいお話だろう」と思い、すぐにお引き受けすることにしました。

 ところが見るのとやるのでは大違い。研究で習ったことが役立つ面もあれば、思ったより役に立たないこともあったり、今まで教師目線で考えていたつもりが、実は全然その目線になってなかったり、何より実際に教壇に立つことの難しさと喜びを体験できました。この体験を最大限吸収しようと毎回授業後にリフレクションを行いました。トゥギャッターにまとめましたので、詳細はこちらからご覧下さい。


 3ヶ月と短期間ではあったものの、実際に教師をして得たことが3つあります。
1つ目は、生徒の顔を思い浮かべながら研究に取り組めるようになったこと。
2つ目は、自分の研究と高校教育の融合ポイントを発見できたこと。
3つ目は、もっと教師を体験しないと自分の研究は独りよがりになると気付けたこと。

 自分はなぜ研究をしているのか、誰のために研究をしているのか、どうやったら社会的・文化的に受け入れられるようになるのか。非常勤を通して、この先の長い研究者人生に向けての1つの信念基盤を築くことができました。非常勤のチャンスを与えてくれた先生、並びに教師を体験することをアドバイスしてくれた山内先生に感謝致します。


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 ちなみに今年度は山内先生に「海外に出ること」を強く薦められています。僕自身、日本の中だけで研究を発信することにもったいなさを感じたり、海外の歴史学習の動向や授業の様子などもっと広く見聞を深めないといけないと痛感してきています。

 今年度の山内先生との約束もきっちり守り、また1つステップアップしたいと思っています。(もし守れなければ、エイプリルフールネタということでご勘弁下さい苦笑)

[池尻 良平]

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