2008.11.14

【みんなの授業】「デジタル教材のクリティーク」

「みんなの授業」第5回はM1大城がお送り致します。
今回は、今年度冬学期、まさに今開講されている
「文化・人間情報学特論Ⅹ デジタル教材のクリティーク」をご紹介いたします。

「デジタル教材のクリティーク」は、山内祐平先生と望月俊男先生が担当されている演習形式の授業です。

近年様々な場面で活用されているデジタル教材:

①Goal Based Scenario: TARA-REBA eラーニング
②シリアスゲーム: Virtual U
③協調学習環境: Knowledge Forum
④構築主義的学習環境: PicoCricket

について、

・教材を実際に体験すること
・教材の背後にある支援理論を理解すること
・その教材を改善するにはどうすれば良いかを皆で考えること

を通じ、その理論・設計・評価を深く理解することが目的とされています。

各教材は、3~4名の受講者で担当し、
それぞれのテーマを3週にわたり、以上のような流れで扱います。


1つ1つのデジタル教材をじっくりと時間をかけて味わい、批評するという
魅力的な授業内容もさることながら、さらに面白いのが、その「方法」です。

この授業、なんとプレゼンテーションがインタラクティブに行われるのです!

授業では、受講者一人一人がタブレットPCを使います。
ここで登場するのがソフトウェア「MEET Borderless Canvas」です。

受講者は、自分のPCの画面上で発表者のスライドをリアルタイムで見て、
さらに、それにペンで直接コメントを書き込むことができます。
その書き込みがまた教室前面のスクリーン、そして受講者の全てのPCに同時に反映されます。
つまり、受講者は、プレゼンテーションを聞きながら「つっこみ」を入れることができ、
それを皆で共有することができるのです。

私は最初の教材の発表担当だったため、他の受講者よりも一足早く、
"リアルタイムで「つっこみ」を入れられるプレゼンテーション"
というものを体験しました。

その結果、普段のPowerPointを使った普段のプレゼンテーションよりも
はるかに緊張すると同時に、ワクワクしました。

スライドに「?」マークが描かれると、
「あ、今の説明、まずかったかな?」
「そこは発表の準備をしながら、自分でも自信がないところだった、図星だわ...。」
と思ったり、

はたまた「にこにこ笑顔」のマークが描かれると、
「今のところ、うまく説明できたかな?」
「この部分の理論は、みんなも面白いと思ったんだな!やっぱり!」
と安心したりすることができました。

リアルタイムのつっこみに対応しつつプレゼンテーションを進められればよいのですが、
用意したスライドを先に進めるので精一杯で、なかなかそうもいかず...。

それにしても、リアルタイムで皆でつっこみを入れると、
小さな質問から大きな質問まで、その「つっこみ」がどんどん画面上に貯まって行きます。
プレゼテーション終了後に、その書き込まれたスライドを振り返りながら
みんなで行う質疑応答のなんと弾むこと!

新しい技術を導入すると、それを使う人間の側にも新しいスキルが求められる、
ということを改めて実感するとともに、
それによって可能になる新しい活動に対するワクワク感の方が、
不安や戸惑いを上回ることを感じています。

残りの授業も楽しみです!

[大城 明緒]

2008.11.12

【エッセイ】英語コンテンツの価格破壊

大統領選のときに主要TVネットワークのサイトをチェックしていて気がついたのですが、CBSのイブニングニュースがオンラインで見れるようになっています。(選挙の際には生放送のストリーミングまでしていました。)

http://www.cbsnews.com/video/eveningnews/

他にも硬派のドキュメント番組として有名な60minutesもまるごと配信されています。

http://www.cbsnews.com/video/60minutes/

ちょっと前までABCの有料サービスを使っていたのですが、映像情報が無料になっていくスピードには驚くべきものがあります。

昔英語を学習する際は、素材としてのこの手の映像を手に入れるだけで相当な出費が必要でした。それを考えればずいぶん敷居が下がっているのではないかと思います。
もちろん素材を見ているだけで学習が完結するわけではないので、このプロセスを加速する仕組みは必要です。ただ、ネットの普及によって、外国語学習の焦点が、コンテンツからプロセスのサポートに移っていくのは時代の必然でしょう。

[山内 祐平]

2008.11.07

【みんなの授業】「学際情報学概論」

「みんなの授業」第4回目はM1の池尻がお送りいたします。
今回は、情報学環の各教員が担当する「学際情報学概論」について紹介させていただきます。

この授業は学際情報学府の全学生が受ける唯一の必修科目で、1年間続きます。形式としてはパワーポイントを使った一斉講義形式なのですが、特筆すべきは教員の専門の多様性です。

普通、大学の授業というと一人の教員が一つの専門的な内容を教えていく形が主流で、複数の教員で行われる授業でも同じ分野内の話をすることが多いと思います。ところが、この講義では分野に際限はありません。教員は、理系、文系が混ざっており、取り扱う内容も様々です。

では実際に、2008年の夏学期に行われた授業の内容を順に見てみましょう。
(私が講義内容から自分でタイトルを付けています。)
①学際情報学府とは何か
②新世代ネットワークインフラストラクチャー
③ユビキタス情報社会基盤の形成
④ユビキタス空間情報基盤
⑤学際とは?学環とは?ある生物学者のライフヒストリー
⑥身体運動と脳の相互作用
⑦メディアの歴史
⑧循環系システム(主に血管)とシミュレーション
⑨情感的な立体造形の創作技術
⑩地球温暖化を止める切り札 風車
⑪テレビゲームの子どもへの影響
⑫情報環境の変化と知的財産権
⑬映像社会学の招待

さて、どうでしょうか?一応どの授業も「情報」がキーワードにはなっていますが、システムの話もあれば、最新の技術の話、社会学的な話、文系的な話まで幅広く扱われていることがわかると思います。これは、情報学環という組織自体が「百学連携」「文理融合」を理念に掲げ、様々な教員が全国から集結しているがゆえにできることだと思います。その意味では、もっとも情報学環らしい授業、「文理融合」を具現化した授業だと言えると思います。

でも実際のところ、私は歴史学と教育学が専門なので、最初は理系の話についていけるかなと心配していました。ところが、教員の方は色々な専門の生徒が集まっていることを理解した上で、システムの仕組みから社会学的な影響、さらには生の人間との関わり方まで幅広く説明をしてくれるので、「へえ、こんな技術があるんだ。ほう、社会ではこう活かせるのか。使う人間のこともこういう風に考えてるのか!」と非常に興味深く聞けました。

不思議なのは、歴史学と教育学を専門にしている私からすれば、例えばユビキタス技術なんて全く別の世界だったのに、講義を受けてみると頭の中でユビキタスと歴史学と教育学が混ざり合っていくような感覚になることころです。そして、ユビキタス技術を用いた歴史教育の在り方が、教材レベルから博物館のような社会的な空間のレベルまでぼんやりと見えるようになるのです。まさに、頭の中で「文理融合」が起こっているのです。

普通、大学院は自分の専門をより深く掘っていく場所なのですが、学際情報学府では深い専門同士を混ぜあって新しい境地を掘っていくという特徴があるのかもしれません。

なお、この講義はe-learningによる受講も可能で、一部は一般の方でも情報学環のサイト内にあるiii-onlineから閲覧することができます。是非、一度見てもらって、みなさんの頭の中でも「文理融合」が起こる瞬間を楽しんでみて下さい。

[池尻 良平]

2008.11.04

【エッセイ】ネットで集めてリアルを動かす

アメリカ大統領選挙の投票が始まりました。選挙結果の如何に関わらず、この選挙は歴史に残る選挙になるでしょう。オバマ陣営にネットを通じたクレジットカード小口献金を中心に621億円という史上空前の選挙資金が集まったからです。この巨額の資金によって、主要テレビネットワークに30分CMを流したり、ネットを通じて集まったボランティアの組織化を行うことが可能になりました。
ネットは今までお金が集まりにくいメディアだと思われてきました。テレビなどのマスメディアとの相乗効果があったとはいえ、これだけの金銭的価値が動いたことは、今後の社会変革的なプロジェクトに大きな影響を与えるでしょう。
ネットで集めた価値をリアルな人を動かすことに転化させる新しい方程式は、今後様々な領域で使われそうです。

[山内 祐平]

2008.10.30

【みんなの授業】「アーカイブの世界」

 私たちが受講している/していた授業をご紹介するシリーズ「みんなの授業」第3回は,M2の林向達がお届けします。
 今回は,小川千代子先生による「アーカイブの世界」(文化・人間情報学基礎4)をご紹介いたします。

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 情報学環・学際情報学府に限らず,組織はアーカイブと無縁ではありません。組織活動をすれば,記録書類が発生し,それを利用したり保管したりする必要があります。

 利用されなくなった記録をいつまで残すのかは,組織によっても,記録内容によっても異なりますが,残すと決まれば,様々な処理を施されて「アーカイブ」されるわけです。

 ところが,私たちは情報の発生や利用,流通,影響効果などには比較的強い興味を抱きますが,情報の消滅や記録の永続的保存といった事柄にはあまり注意を払ってきたとはいえません。

 この授業では,記録を残すことの意味から実際に記録を残す現場へと足を運ぶなど,アーカイブの世界への扉を開き,理解を深めていきます。

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 情報の記録を残していく「アーカイブ」。この世界で活躍されているのが小川千代子先生です。小川先生は組織の文書管理から始められて,大学史編集,公文書館のような組織への関わりを深められています。日本のアーカイブ界の重鎮といってもよいでしょう。

 私自身は「記録」に対する関心から小川先生の著書など触れたことがありましたが,先生が学際情報学府で授業をしていることを入学してから知り,迷わず受講することにしました。

 授業では,組織の中で文書がどのように生成され,どのように管理され,どのように利用され,そして使い終わった文書はどのような処理を経て処分或いは保管されるのか。そのような文書のライフサイクルについて学びつつ,記録された情報を残すとはどういうことなのかを,根本にまで戻って考え学びます。

 そして実際に,アーカイブと呼ばれる現場へ出掛け,様々な記録保存を知ります。安田講堂内にある東京大学大学史史料室を皮切りに,国立公文書館,松本市文書館,板橋区公文書館などにお邪魔しました。

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 この授業で「記録を残す」ということの重要性を認識し始めると,いかに私たちの日常でそのことへの意識が薄いかを思い知ります。

 いちいち記録を残すことに何の意味があるのか,知られたくない情報を記録保存することへの抵抗感もあるでしょう。すでに膨大な情報が流通しているというのに,あれこれ記録を残しても,ゴミを増やすだけじゃないかと思うのも無理はなのかも知れません。

 しかし日本という国は,つい最近まで,公文書というレベルにおいてさえ,記録を残して保管し,あとで参照できるようにするということに無頓着でした。ある意味では自分たち自身で歴史を刻む責任を曖昧にしていたともいえます。

 また,記録に対するそうした関心の薄さが,ひいては学問研究の蓄積ということへの理解にも影響を与えてしまっているのかも知れません。

 記録を残すということへ理解を深めるということは,研究に携わる人びとはもちろんのこと,今を生きる私たち全員が必要としていることだと思います。

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 最後には,授業で学んだ成果や自分たちの関心につなげた原稿を書いて,本として出版しようという計画が進められたりします。これも1つのアーカイブというわけです。

 皆さんも是非,アーカイブの世界に触れてみてください。

[林 向達]

2008.10.24

【みんなの授業】「組織学習システム論」

「みんなの授業」第二回目はM2の牧村がお送りします。
中原淳准教授による『組織学習システム論』についてご紹介させていただきます。

この授業では、学校以外で行われる学習、具体的には「企業・組織での学習」に関連した文献講読を行いました。
熟達化と経験、経験による成長、成人教育学という思想、組織と物語、コミュニティと学習、組織学習と転移、組織学習論、組織開発手法の実際、知識創造経営論、組織文化の中での学習、ネットワークと学習、アクターネットワーク・ワークプレイス研究、という風に、各回にテーマがあります。

主に受験生の方が見てくださっているブログということなので、詳しい内容については入学後のお楽しみということにして、今回は、私たち学生がどんな風に授業に「参加」しているのかということについて書いてみたいと思います。

授業の形式は、以下のようになっています。
まず、二人の学生が一つのテーマを担当し、文献を読んで発表します。
その後に参加者でディスカッションをします。
テーブルごとに4,5名ずつで話し、その後全体で共有するというスタイルで行われました。
発表は、そのディスカッションテーマの提案まで含めたものになります。

中原先生は
・組織における知識共有、学習に関心のある学生
・組織のおける人材育成、人間の成長に関心のある学生
・組織変革や文化の構築等に関心のある学生
という履修者を想定していたようですが、これらのことに関心を持って集まったとは言え、文系の人もいれば理系の人もいます。
もちろん、研究領域も異なります。
それぞれの参加者が、自分の研究関心という「戻るところ」を持っていて、その上で同じテーマについて議論しているからこそおもしろいのかなということを感じました。

また、中原先生はディスカッションの中で、ご自身もこれについては悩んでいる、ということを時々おっしゃいました。
授業というと、何かを「教わる」というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
でも、この授業は、先生も頭を悩ませて、まさに現在進行形で研究していらっしゃるテーマについて、一緒になってディスカッションすることができるのです。
そうか、私たちは「わからないこと」を探求したくて研究をしているんだ、ということ、そして、それは「先生」と呼ばれる人であっても同じなんだ、ということを改めて実感した授業でした。

話は少しそれますが、私達は、「学際情報学府」という「学際的」な場所で、学生や先生が研究室や研究領域を越えて日常的に話ができるような場を作るため、福武ホールでHappy Hourというイベントをしています。
今年5月にスタートし、現在既に8回開催しています。

授業でも再三このイベントの宣伝をさせていただいたせいか、中原先生が、「組織学習システム論」の最終回に、私たちのHappy Hourという場を使ってくださいました。
各回のテーマを印刷したカードを用意し、大きな模造紙を広げてその上で並べ替えたり、線でつないだりしながら、皆でディスカッションをし、それぞれの関係性を考えました。

P1010826.JPG

また、今回の授業の中で、「ネットワーク分析」について紹介する部分を担当した人が、その手法を使い、関係を可視化するプログラムを書き、お披露目してくれました。
この授業の履修者の「ネットワーク」を分析したものです。

P1010851.jpg

こんな風に、教室という空間を離れた場所にも学びが飛び火した授業でした。
福武ホールというパブリックな場所で行っているため、履修者以外の人がやってきて、話に加わってくれることもありました。
回の終わりには、できあがった模造紙を広げて記念撮影。

P1010911.jpg

「授業」にはこんなかたちもあるということを、少しでも想像していただけたら嬉しいです。

2008.10.17

【みんなの授業】「協調的知識統合論」(教育学研究科)

シリーズ【突撃!隣の研究者】も一回りし、また新たなシリーズが始まります。
新しいシリーズは、題して【みんなの授業】。
学環・学際情報学府や周辺の学部・研究科にはどんな授業があるのか。山内研の学生は、いったいどんな授業を受けているのか。山内研のみんなが今受講している授業や、過去に受講したお気に入りの授業を紹介してもらいます。
山内研の学生は、どんな分野に興味を持っているのか、どんな知識を最低限持っていないといけないと思っているのか、少しでもその鱗片がご紹介できればと思います。

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というわけで、M2坂本がご紹介する授業は、昨年の夏に行われた、教育学研究科の集中講義「協調的知識統合論」です。
講義自体は「教育創発学特殊研究」という、教育学研究科の秋田喜代美先生の講義なのですが、講師として中京大学の三宅なほみ先生が4日間にわたりレクチャーを進めてくださいました。

この授業は、駒場に新設された教室、KALSで行われました。
昨年、山内先生もエッセイにてその様子を紹介しています。

「協調的--」というその講義名の通り、講義内容はすべて、学生がいくつかのグループを組んだ状態で進んでいきました。
具体的には、グループで作業がしやすいまがたまテーブルや、4面を囲うプロジェクタ・スクリーン、一人一台のタブレットPCといった、すてきな学習環境が整ったKALSの特長を活かして、ジグソーメソッドという学習方法や、ReCoNoteという協調学習用ソフトウェアをふんだんに用いて学んでいきました。

講義内容としては、「知識統合」「建設的相互作用論」「熟達化」などといった学習科学でHOTな分野を扱いました。
その領域の有名な論文をA4一枚程度にまとめた資料が用意され、ジグソー形式でグループを組み替えながら、ああでもないこうでもないと議論を進めます。

この授業のおもしろいところは、どれも今現在研究が進んでいて、分からないことだらけの分野であるということです。
ReCoNoteに、自分たちのグループが考えた様々な概念の関係をコンセプトマップとしてまとめていくのですが、こういった媒介物がさらに議論を刺激し、「それはこっちだろう」「いやこことつながってるでしょ」「え、なんでそうなるの?」などといった会話が教室中の至る所から聞こえてきます。

僕の個人的な感想としては、「分かれば分かるほど分からないことが多くなっていった」授業でした。
たとえば熟達化に関しては、「"adaptive expertise"とは何か?"routine expertise"とはどう違うのか?」といった議論に始まり、「"adaptive"とはすなわち転移のことなのか?」、「そもそも転移って何なの?」、「それは学習とどう違うの?」、「熟達化は学習とはどう違うの?」などと、それぞれのグループの中で議論が白熱していきます。
いろんなところですでに話を聞いて、分かった気になっていたことが、考えれば考えるほどどんどんわからなくなり、謎は深まっていきました。

非常に頭を使い、"脳みそに汗をかいた"4日間でした。
毎回、授業が終わる時間になると学生は皆ぐったりしていました。
1日中続いた、分からないことを分かろうとする積極的な議論は、アタマの疲労感とともに、「分からないことを考えるのっておもしろい」という快感のようなものを与えてくれました。

そして、最後の授業が終わっても、三宅先生はご自身が持っている考えはおっしゃいませんでした。
中には「すっきりしないから先生の"答え"を教えてほしい」という声もあがりましたが、それはされませんでした。
きっとそれは意味のないことなんだと思います。
今僕らが進めている研究も、どこかに答えが用意されているものではないのですから。

[坂本篤郎]

2008.10.15

【エッセイ】多様化する開発研究

10月11日から13日まで、上越教育大学で開催された日本教育工学会に参加しました。
BEAT客員助教の松河さんが論文賞を、修了生の酒井さん、博士課程の森さんが研究奨励賞を受賞され、うれしいニュースが続いた学会になりました。
教育工学会は、名前が示すとおり、開発研究の多い学会です。新しい教育に関するアイデアを形にし、実践現場の中でその役割を確かめるという発表がこの学会の研究の典型といえるでしょう。
今年、プログラムを眺めながら気がついたのは、開発研究の対象が多様化しているということです。従来は、コンピュータを用いた教育システムの開発がほとんどだったのですが、それ以外にコンテンツや教育プログラムから人と人のつながりまで、さまざまなものが開発の対象になっています。
開発研究の対象の多様化は、教育や学習の支援対象が広がるということですので、実践に有用な研究が増えることになるでしょう。ただ、研究の方法は、従来のシステム開発研究を下敷きににしているものが多いので、若干無理がでているように思います。やわらかい対象をデザインする場合にも妥当性を担保できる方法の検討が必要になっています。
来年度の教育工学会は、9月19日(土)20日(日)21日(月)の日程で、東京大学本郷キャンパスで開催されます。ぜひご参加ください。

[山内 祐平]

2008.10.09

【突撃!隣の研究者】中原淳 准教授

第8回の【突撃!隣の研究者】は、D2の森玲奈が担当いたします。


山内研究室のお隣・・
そう考えて、まず頭に浮かんだのが<中原研究室>です。

<山内研>メンバーは関心のある部分が近いこともあり<中原研>との交流が密です。
私も、中原 准教授には、日頃から大変お世話になっています。
先日も、某企業の新入社員用研修の見学にお誘いいただき、同行させていただきました。


■個人的、「中原さん」との出会い
中原淳 准教授にお会いしたのは、私が大学院に入学する年の春でした。
当時はまだ研究室をお持ちではなかったのですが、
東京大学に勤務されている方として春合宿に参加されていました。
お会いした日、その強烈なキャラクターに圧倒されたことを覚えています。
実家の母に、その夜、こう電話しました。
「なんか、今日、すごい人に会ったよ」と。


中原さんは、大学の研究者というイメージから遠い、"かっこよい兄貴"です。
スピーチやプレゼンは企業人顔負けのうまさです。
さらに、根気よくブログを書きため、自分の意見や感覚を外部に発信しています。

こういう在り方は、下手すれば誤解すら招きかねず、
普通はなかなかできないのではないかと思います。
でも、なかなかできないことであっても、
やってのけてしまうのが中原淳さんです。
中原さんには、そんな芯の強さがあります。


■経歴
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授。
東京大学大学院 学際情報学府准教授(兼任)。
北海道旭川市生まれ。
東京大学教育学部、大阪大学大学院 人間科学研究科をへて、
文部科学省メディア教育開発センター助手、
米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、
東京大学 大学総合教育研究センター講師、2006年より現職。
2003年、大阪大学より博士号取得。


■研究など
専門は教育学(教育工学)。
「大人の学びを科学する」をテーマに、教育学の観点から、企業・組織における人々の学習・成長について研究しています。
共編著・共著に「企業内人材育成入門」(ダイアモンド社)など多数あります。

研究の詳細は、
Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)
に日々綴られています。


■夢を語る/未来を創る
HPにはこんなことが書いてありました。
http://www.nakahara-lab.net/info.html

ーーーーーーーー
僕は「教育学」の研究者です。
より細かい研究分野でいうと、「教育工学」「学習科学」とよばれる研究領域です。
  ここ数年は、特に「大人の学びを科学する」を合い言葉に、大人が快く学べる教育環境のあり方を研究しています。
(中略)
「今まで教育や学習の研究対象だと思われてこなかったフィールドに、教育工学や学習科学の視点を導入していくこと」、そして「その場をより教育的で、人間が快く学べる場所にすること」が、僕のめざしていることです。

 そういういくつもの研究プロジェクトを繰り返し行っていくことで、いつの日か、「教育学や学習科学を学んだ人たちって、実践的だし、感度がいいし、かっこいいよねぇ」と言われるきっかけになるような研究を生み出していきたい。これが僕の夢です。

ーーーーーーーー
夢を語れる研究者、あなたはどのくらいそういう人を知っていますか?
さらにその中に、夢を実現させるべく、手足を動かせる人はどのくらいいるでしょうか・・

知的体力にあふれる研究者に出会えたことが、
私の大学院生活の刺激になったことはいうまでもありません。
修士研究の中間発表の際、コメントシートにEnjoy!と書いてあったこと、
とても励みになりました。
この場を借りて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
これからもどんどん刺激的な研究をしてください。


■こんな中原淳 准教授に会いたい人に・・
昨年に引き続き、10月31日には安田講堂にて
ワークプレイスラーニング2008というシンポジウムを開催されるとのこと。
http://www.educetech.org/wpl2008/
残席少ないようですが、ご関心のある方はぜひ!!


[森 玲奈]

2008.10.08

【お知らせ】グッドデザイン賞受賞

山内がデザインディレクションを行った情報学環・福武ホールが、2008年度グッドデザイン賞を受賞しました。

http://www.g-mark.org/search/Detail?id=34556&sheet=outline&lang=ja

大月さん、八重樫さん、加藤さんをはじめ、多くのデザイナーの方々にお世話になりました。お礼を申し上げるとともに、この場がコンセプト通り「学びと創造の交差路」でありつづけるように、運営に関して努力していきたいと思っております。

[山内 祐平]

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