2008.10.30
私たちが受講している/していた授業をご紹介するシリーズ「みんなの授業」第3回は,M2の林向達がお届けします。
今回は,小川千代子先生による「アーカイブの世界」(文化・人間情報学基礎4)をご紹介いたします。
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情報学環・学際情報学府に限らず,組織はアーカイブと無縁ではありません。組織活動をすれば,記録書類が発生し,それを利用したり保管したりする必要があります。
利用されなくなった記録をいつまで残すのかは,組織によっても,記録内容によっても異なりますが,残すと決まれば,様々な処理を施されて「アーカイブ」されるわけです。
ところが,私たちは情報の発生や利用,流通,影響効果などには比較的強い興味を抱きますが,情報の消滅や記録の永続的保存といった事柄にはあまり注意を払ってきたとはいえません。
この授業では,記録を残すことの意味から実際に記録を残す現場へと足を運ぶなど,アーカイブの世界への扉を開き,理解を深めていきます。
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情報の記録を残していく「アーカイブ」。この世界で活躍されているのが小川千代子先生です。小川先生は組織の文書管理から始められて,大学史編集,公文書館のような組織への関わりを深められています。日本のアーカイブ界の重鎮といってもよいでしょう。
私自身は「記録」に対する関心から小川先生の著書など触れたことがありましたが,先生が学際情報学府で授業をしていることを入学してから知り,迷わず受講することにしました。
授業では,組織の中で文書がどのように生成され,どのように管理され,どのように利用され,そして使い終わった文書はどのような処理を経て処分或いは保管されるのか。そのような文書のライフサイクルについて学びつつ,記録された情報を残すとはどういうことなのかを,根本にまで戻って考え学びます。
そして実際に,アーカイブと呼ばれる現場へ出掛け,様々な記録保存を知ります。安田講堂内にある東京大学大学史史料室を皮切りに,国立公文書館,松本市文書館,板橋区公文書館などにお邪魔しました。
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この授業で「記録を残す」ということの重要性を認識し始めると,いかに私たちの日常でそのことへの意識が薄いかを思い知ります。
いちいち記録を残すことに何の意味があるのか,知られたくない情報を記録保存することへの抵抗感もあるでしょう。すでに膨大な情報が流通しているというのに,あれこれ記録を残しても,ゴミを増やすだけじゃないかと思うのも無理はなのかも知れません。
しかし日本という国は,つい最近まで,公文書というレベルにおいてさえ,記録を残して保管し,あとで参照できるようにするということに無頓着でした。ある意味では自分たち自身で歴史を刻む責任を曖昧にしていたともいえます。
また,記録に対するそうした関心の薄さが,ひいては学問研究の蓄積ということへの理解にも影響を与えてしまっているのかも知れません。
記録を残すということへ理解を深めるということは,研究に携わる人びとはもちろんのこと,今を生きる私たち全員が必要としていることだと思います。
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最後には,授業で学んだ成果や自分たちの関心につなげた原稿を書いて,本として出版しようという計画が進められたりします。これも1つのアーカイブというわけです。
皆さんも是非,アーカイブの世界に触れてみてください。
[林 向達]