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2026.06.12

研究計画書で意識したこと・学部時代の過ごし方(M1藤堂祥太朗)

皆さんはじめまして。M1の藤堂祥太朗です。

大学院夏季入試の出願まで残り約1ヶ月となりました。私からは、記憶が新しいうちに、研究計画書を書く際に特に意識したことと、大学院進学を控えた学部時代の過ごし方について共有させていただければと思います。特に大学院受験生の方々にとって参考になれれば幸いです。

※「これをやれば受かる!」という保証はできません。ご留意ください。


【研究計画書について】 
かなり前になりますが、山内先生が研究計画書の書き方についてコメントをされています。
【エッセイ】 人をうならせる研究計画書
これを踏まえつつ、具体的に私が大切にしたことやAIの使い方についても意見をお伝えします。

まず、研究計画書を書く際に意識すべきことは大きく2つあると思います。

①研究意義
研究には、学術的価値と社会的価値があります。

学術的価値については、先行研究で検討されていない新規性が重要になります。これを見つけるには、多くの文献から傾向や課題を分析した「レビュー論文」と呼ばれるものを参照する、また論文を沢山読む中で共通して挙げられている課題に注目することが大切です。加えて、私はESD(持続可能な開発のための教育)と教育工学の2つを掛け合わせた研究をしているのですが、それぞれの学問分野にどのように寄与するかも考えました。具体的には、教育工学が「SDGs」という社会課題とも接続するという点、ESD研究ではあまりされてこなかった効果検証を取り扱えるという点を強調しました。

そして、社会的価値をしっかり考えられるかどうかが、専門外の人に対する研究の意義の説得力に直結します。統計的に示されている現状と結びつけられると良いと思います。

②実現可能性
どれだけ新規性があって夢のあることを書いても、それが現実的である必要があります。特に、修士課程の2年間で出来ることは限られているはずです。意識したのは、研究で実践フィールドを用意することについてです。実践対象を具体的にリストアップし、どのように協力を要請するかを綿密に練ると良いです。加えて、私は研究技法に関する書籍も複数読み、反映させました。自分のテーマに関する論文ばかり読みがちですが、研究のガイドライン、進め方に関するものにも忘れず目を通すことで、抽象的なビジョンを具体化できます。

加えて、行きたい研究室の志向との整合性も重要です。極端な話、農学に関する完璧な研究計画書を作っても、教育工学系の研究室には入れません。アドミッションポリシーや希望指導教員の先生の研究にはしっかり目を通しておきましょう。

AIとの向き合い方
研究計画書の中身に関して、可能な限り自分の言葉で枝葉を描いていくことが望ましいです。研究計画書の核になってくるのは、自分自身の課題意識や原体験になってくると思います。これは、AIが作れるものではありません。その為、根気強く言葉を紡ぐことで研究計画に一貫性をもたらせ、その上で熱意を持つことができます。

しかし、人に伝わる文章を書く必要があります。そこでAIが活躍します。私は主にAIには、言葉の言い回しや、冗長な表現を直してもらっていました。また、研究意義に関して自分では思いつかないアイデアを出すためにAIを活用しました。ただ、これは鵜呑みにせず、現実世界の状況にきちんと即しているかを自分で吟味する必要があります。

※情報漏洩、AIモデルの学習への利用に関する設定には気をつけてください!

(研究計画書作成に役立った文献)
高野・岡『心理学研究法:心を見つめる科学のまなざし 第3版』
大島・千代西尾『主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック』


【大学院進学を控えた学部時代の過ごし方】
大学院進学に向けて学部時代にすべきことは、一言でまとめるなら「卒論を人一倍頑張る」ということです。学部の時から凄いプロダクトを開発したり、長期に渡る参与観察をしたり、複雑な実験を行えればそれに超したことはありませんが、大概は難しいと思います。私もそうでした。

その中で私は文献調査による理論研究に精を尽くしました。安易に孫引きせず、一次文献に徹底的にあたりました。複数の図書館を行ったり来たりして大変でしたが、その分、質の高い整理と分析ができたと実感しています。文献整理にあたっては、Zoteroという管理ツールを活用していました。修士に入ると莫大な量の文献にあたらないといけないません。学部時代に培った文献と向き合う姿勢が、現在では非常に役立っています。

役に立ったかは分かりませんが、私は卒論でExcelを活用した簡単な教育支援ツールのプロトタイプを作成しました。正直出来映えはひどく、卒論の一貫性も少し失われてしまったのですが、0からアイデアを形にする経験は良かったです。モノを作る一連の流れを把握できたのは自分にとって大きかったです。けど無理に卒論に組み込まなくてもよかったなと、今になって思います。欲張らないことも時には大切ですね(笑)。


【最後に】
研究には息抜きも大事です。私は好きな音楽を聴きながら散歩したり、少ない時間ですがアルバイトをしたりして、研究のことを忘れる瞬間を作っていました。そうすると、フレッシュな頭から良い発想が得られることがあります。院試が終わっても卒論、そして修士の2年間が続くわけなので、無理なく研究を続けられる生活リズムを模索しましょう。健康第一です。


最後までお目通しいただきありがとうございます。
皆様のご活躍をお祈りしております。

2026.06.02

苦手な言語の文献と向き合うとき、AIに頼っていいのか (M1 押山匠)

皆さんこんにちは。M1の押山匠です。

修士課程も後半に差し掛かり、入学からの1年を振り返ると、思っていた以上に「言語」と格闘してきた時間が多かったと感じています。
私は帰国子女として育ちました。日本語での読み書き、とりわけ大学院レベルの学術的な議論においては、ずっと私の「天敵」でした。入学前から、この点への不安は正直ありました。
しかし実際に研究を進めてみると、苦手なのは日本語だけではありませんでした。私の研究テーマは、日本とタイ・バンコクの学校のデジタル環境における教師の知識習得を比較するものです。当然、参照すべき文献は日本語・英語・タイ語、時にはそれ以上の言語にまたがります。苦手な言語の文献を読むことは、「避けたい問題」ではなく「乗り越えるべき課題」でした。
そこで私がとってきたのは、AIツールを使ったさまざまな実験です。今回は、読む・探す・聴く話す・理解を深めるという4つの場面で試してきたことを、できるだけ言語化して書いてみます。

1. 読む:NotebookLMで基礎的な理解をつくる
苦手な言語の論文を読む際にまず試したのが、NotebookLMです。
このツールの特徴は、アップロードした資料の内容だけをもとに回答する点にあります。他の生成AIと比べ、ハルシネーション(事実と異なる情報の生成)が少ないと感じています。また、日本語の論文に英語で質問する、といった多言語での使い方が可能です。さらに、ポッドキャストや動画形式で論文の概要を説明してくれる機能もあり、テキストだけでは掴みきれない内容を別のフォーマットで理解する助けになっています。

2. 探す:日本語文献のための検索パイプライン
英語文献の検索では、ResearchRabbitやLitMapsが役立っています。論文同士の引用関係を可視化してくれるため、分野の全体像を俯瞰しやすくなります。
ただし、これらのツールは主に英語文献向けです。日本語論文については、別のアプローチを試みました。CiNiiなどのデータベースからタイトル・アブストラクト・リンク・PDFを一括取得するスクリプトをAIに書いてもらい、取得した論文群をNotebookLMのMCPコネクターと連携させて大量にセッションにかける、というパイプラインです。これにより、日本語文献のリサーチを英語文献に近い感覚でこなせるようになりました。この方法は今も実験中ですが、今のところ一番しっくりきています。

3. 聴く・話す:授業とゼミのなかで
授業中の発言やゼミのディスカッションも、私には大きなチャレンジです。聞き取れなかった内容のために、Notta.aiやOtter.aiといったリアルタイム文字起こしツールを活用しています。ウェアラブル型のEven G2も試してみました。眼鏡型のデバイスで字幕を表示させるという体験は、なかなか新鮮でした。
発言や文章を書く際には、まず得意な言語で考えを整理し、AIに翻訳・校正してもらってから日本語でアウトプットする、という流れをとることもあります。授業のレポートやゼミでの発言など、書き言葉でも話し言葉でも、この方法は応用できます。ゆっくりですが、こうした積み重ねが少しずつ日本語での思考力を鍛えている実感もあります。

なお、このブログは英語で執筆し、AIの力を借りて日本語に翻訳したうえで、自分で読み返して校正したものです。このブログ自体が、上でご紹介した方法の実践例でもあります。

4. 理解を深める:AIをソクラテス的な壁打ち相手として
最後に、私が特に気に入っている使い方があります。ClaudeやGeminiなど主要な生成AIサービスには、直接答えを返すのではなく、問いかけを通じて自分自身で概念を理解するよう促すモードがあります。
論文の内容について「自分はこう理解した」と入力すると、AIが問い返してくれる。この対話形式を通じて、認知的な主体性をAIに丸ごと委ねることなく、自分の理解を確かめながら深めることができます。特に、慣れない言語で読んだ内容の「本当に理解できているか」を確認する用途に向いていると感じています。

では、AIに頼っていいのか?
ここまで様々な実験を紹介してきましたが、生成AIの出力は、往々にして一般的すぎると個人的に感じました。
得た情報は必ず自分で確認し、論文そのものを読む作業は省略できないと思いますし、AIが言っていることの信頼性は、常に自分でチェックする必要があると思います。その意味で、AIはゴールに連れていってくれるものではなく、あくまで「入口を広げてくれるもの」だと思っています。
その経験から、私は今こう考えています。
問うべきは「AIに頼っていいか」ではなく、「AIに何を担わせるか」だ、と。
生成AIは、検索・整理・翻訳といった反復的な作業においては大きな力を発揮します。しかしその出力の質は、与える「問い」の質に完全に依存します。AIにすべてを委ねれば、返ってくるのは平均的な答えです。独自の問いを立て、新しい知識を生み出すためには、「どう問うか」という技術こそが、今もっとも鍛える価値のあるスキルなのかもしれません。

M1の二学期になった今、苦手な言語の文献は、今もまだ私の天敵です。
でも、「向き合えない壁」から「工夫しながら越えていける課題」に変わると感じました。それだけで、研究生活はずいぶん違って見え、毎日が楽しく感じます。
今回ご紹介したのは、あくまで私個人の実験の記録でので、すべての人に有効とは言えませんし、私自身もまだ試行錯誤の途中にいます。ただ、語学力でも技術力でも、必要なスキルがすべて最初から揃っていなくても、試しながら進める余地が、少なくとも今の時代にはあると思います。そのことが、これから山内研を志す方の参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

押山匠 6月2日

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