2026.06.25

書籍を研究に活かすための文献管理(M2 松原正典)

皆さんこんにちは。M2の松原正典です。
本年度もよろしくお願いいたします。

今回は文献管理の中でも「論文」の管理ではなく、「書籍」の管理について皆さんと考えていけたらと思います。
過去のブログでも文献管理、整理についての紹介がされている記事がありました。こちらも併せてご覧ください。

https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2025/07/m1-12.html

研究というと成果として発表されるのは「論文」だとイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、「書籍」として発表されることも少なくありません。私はメディア研究の一部も先行研究で整理する必要があるので、論文だけでなく、書籍を読むこともあります。

【論文と書籍とで文献整理は違うのか?】
では「論文」と「書籍」で文献整理の点で何が異なるのか?というところですが、つまるところ「概要把握のスピード」の違いだと私は考えています。

論文は要旨、背景、方法、結果、考察、結論のように構成の型がある程度決まっているので、目的やもたらされた結果などまとめやすくなっています。また、生成AIの発達によって要約も容易になっていて、例えばNotebookLMに論文をアップロードすれば、概要説明のスクリプトを作成することもできますし、チャットで質問をすることもできます。「ざっと見る」ことに関しては飛躍的に行いやすくなりました。

一方で、書籍は論文のように型が決まっているわけではありません。序章や終章に全体の構造を説明されていることもありますが、各章で議論が積み重ねられていたり、章をまたいで主張が展開されていたりするため、短時間で全体像をつかむことが難しくもあります。また、論文はウェブ上にオープンアクセスで載せられていることがしばしばありますが、書籍に関しては現状オープンアクセスとなっていない場合が多いです。
書籍は「ざっとみる」ことをしたい場合でも論文と比較して時間をかけて読み、整理する必要があるという点で違いがあります。

【書籍の文献整理の方法:松原の場合】
ここからは私の模索中の文献整理の方法を共有しますので、他に良い方法があればぜひご教授いただきたいです。

①Googledriveでの管理
Googledriveでは、主にGoogle スプレッドシートとGoogle ドキュメントを使って管理をしています。
まず、スプレッドシートでは書誌情報を一覧でまとめています。具体的には書籍名、著者名、出版年などの基本情報に加えて、その書籍の全体に目を通したのか、あるいは特定の章だけ読んだのかを記録しています。書籍は最初から最後まで目を通すとは限らないので、私の研究においてどこの章が重要で目を通したのかをまとめていると後に見返す際にも便利です。また、スプレッドシートには、その書籍についてまとめたGoogle ドキュメントのリンクと、一言まとめも記入しています。一言まとめには、「この本は何について論じているのか」「自分の研究にどのように関係しそうか」を簡単に書いています。こうしておくことで、後から文献を見返すときに、どの本がどの議論に使えそうかを素早く確認できます。

一方で、Google ドキュメントでは書籍の内容をより詳しくまとめていきます。全体の要約や章ごとのメモ、気になった概念、自分の研究との接続を書き残すようにしています。スプレッドシートは文献を一覧で把握するためのもの、Google ドキュメントは内容を深く整理するためのものとして使い分けています。

②読書メモアプリの活用
最近は山内研の方に紹介していただいた「KokuDoku」というアプリを使って書籍の整理を試みています。KokuDokuはスマホで撮影すると瞬時にテキスト化をすることが出来るので、紙の書籍を読みながら気になった箇所を記録、メモをする際に非常に便利です。

これまでは、書籍の中で重要な箇所や一文を見つけると、付箋を使ったり、購入した書籍であれば線を引いたりするなどの方法を使ってきました。しかし、その方法だと、後から見返す際に付箋の箇所を手あたり次第確認する必要があります。また、線を引いた箇所についても、そのときは重要だと思っていても、時間が経つと「なぜここに線を引いたのか」が分からなくなることがあります。

それらを解決するために気になった箇所をマーク出来る機能とマークした箇所にメモ書きが出来る機能を活用します。気になった箇所には「なぜこの箇所が気になったのか」「自分の研究のどこに関係しそうか」を短く添えるようにしています。 もちろん電子書籍にも同様の機能があるのですが、読む時には紙媒体が良い方にとってはいいとこどりが出来るようになったと言えるでしょう。

②生成AIの活用
生成AIは主にGoogle ドキュメントにまとめる際の補助として活用しています。

例えば書籍を最初から最後まで目を通す場合は要約を章ごとに行うのですが、その要約をGeminiに投げて理解できない箇所や不足していると思われる情報の指摘をしてもらいます。指摘から修正が必要だと思われる場合はもう一度読み直しを行います。また理解できない箇所があれば、共有をして一緒に考えることもあります。

書籍を読み進めていく中で、要約や理解出来ない箇所を共有することで、初めて読んだ際の違和感や理解度がある程度反映されたまとめを作成することが出来るので、ただ読むだけではなく考えながら読む良い補助として生成AIは機能しています。

ただし、生成AIはあくまで補助的に使うようにしています。書籍の場合、著者の議論の流れや章同士の関係が重要になるため、生成AIによる要約だけで内容を理解したつもりにならないように注意しています。むしろ、自分が作成した要約やメモをもとに、理解の穴を確認したり、別の整理の仕方を提案してもらったりする使い方がよいのではないかと感じています。

【書籍管理で意識していること】
ここまで、Google Drive、読書メモアプリ、生成AIの活用について紹介してきましたが、書籍の文献整理で一貫して意識していることは「後から使える状態にしておくこと」です。
書籍は文量が多く、読み終わった直後には理解したつもりでも、時間が経つと内容を忘れてしまいます。特に研究計画や論文を書くときには、「たしかあの本に関連する議論があったはず」と思っても、どの章のどのあたりに書かれていたのかを探し直すのに時間がかかることがあります。
そのため、書籍を読む際には、次の3点をできるだけ残すようにしています。

1つ目:その本は何を論じているのか
2つ目:自分の研究に関係している箇所がどこか
3つ目:その箇所がなぜ自分の研究に関係しているのか

特に3つ目は個人的には重要です。引用したい箇所や気になった箇所を保存していても、後から見返したときに「なぜここをメモしたのだろう」と思うことがあります。そこで、「先行研究の背景として使えそう」「概念整理に関係しそう」「自分の研究対象を説明する際に参考になりそう」といった一言を残しておくと、文献レビューや研究計画を書くときに使いやすくなります。

【おわりに】
今回は論文ではなく、書籍の文献管理で私が試している方法を紹介しました。

論文は構成が比較的決まっているため整理がしやすいですが、書籍は章立ても様々で特定の章だけ読むこともあるので、決まった型でまとめていくのは研究に活かす上で大事な部分を取りこぼしてしまうのではないかと危惧しています。

だからこそ、書籍の文献管理では、単に内容を要約するだけでなく、「どこを読んだのか」「何が書かれていたのか」「自分の研究とどのように関係するのか」を残しておくことが重要なのではないかと感じています。私自身もまだ試行錯誤の途中ですが、スプレッドシートで文献全体を見渡し、Google ドキュメントで内容を整理し、読書メモアプリや生成AIを補助的に使うことで、少しずつ後から使いやすい形になるよう工夫しています。

文献整理の方法に正解があるわけではありませんし、研究分野やテーマ、読む文献の種類によって整理の仕方も変わっていきます。今回紹介した方法も一例に過ぎませんが、書籍の文献管理に困っている方の参考になれば幸いです。

皆さんはどのように文献管理をしているでしょうか。おすすめの方法やツールがあれば、ぜひ教えてください!

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