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2010.08.31

【お知らせ】子どもがワクワクする遊びの環境をデザインする

第3回保育環境デザイン研究会「子どもがワクワクする遊びの環境をデザインする」のご案内

人間形成における重要な時期に、子どもが長時間過ごす保育園。どのような保育環境を提供することが質の確保につながるのでしょうか。生活の場としての役割が大切な保育空間に、学びという視点をどう取り入れていけばよいのでしょうか。

この研究会では、これらの問題について、保育[Child Care]、子どもの発達[Child Development]、子どもの遊び[Children's Play]、学習環境[Learning Environments]、空間デザイン[Architectural Design]という多様な視点(CDPLA)を切り口に、保育・幼児教育関係者、建築関係者、研究者等多様なバックグラウンドの皆さまとともに考えていきたいと思います。

第3回は桑原淳司先生をお招きし、子どもの遊び環境や遊具開発にまつわる研究、さらに先生が長年取り組まれている遊具デザインの授業について紹介して頂きます。

下記に詳細をご案内申し上げます。
皆さまのご参加をお待ちしております

-----------------------【第3回研究会】-----------------------
■日 時:9月16日(木)16:00-18:00

■場 所:東京大学本郷キャンパス
 東京大学 情報学環・福武ホール B2F ラーニングスタジオ1
 http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html

 都営大江戸線 本郷三丁目駅 (徒歩7分)
 東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅 (徒歩8分)
 東京メトロ千代田線 湯島駅 (徒歩20分)
 東京メトロ南北線 東大前駅 (徒歩10分)

■定 員:20名

■テーマ:子どもがワクワクする遊びの環境をデザインする

■講 師:桑原淳司 (日本大学芸術学部デザイン学科 教授)

■参加費:無料

■参加方法:
ccd.pla【アットマーク】gmail.com までメールにてご連絡ください。
(お手数ですが【アットマーク】を@に変換お願いいたします。)

〆ココカラ============================================
参加申し込みフォーム
9月12日(日)までにお申し込み下さい。
人数が多数の場合は先着順とさせていただきます。

第3回保育環境デザイン研究会 に申し込みます。
氏名:
フリガナ:
所属:
メールアドレス:
この情報をお知りになったきっかけ:
(                         )
ご興味をもたれた理由などありましたらお願いします
(                         )
〆ココマデ============================================

■主催:東京大学 情報学環・福武ホール アフィリエイトプログラム
■共催:(株)ミサワホーム
■企画担当:佐藤朝美(東京大学大学院 情報学環 助教)

2010.08.28

【学びのキーワード】ディスカッション・議論


みなさまこんにちは,修士2年の伏木田稚子です。
猛暑を通り越して酷暑にうだる日々,涼しげな朝顔に和みますね。

学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】,第4回は<ディスカッション・議論>を取り上げたいと思います。


■ディスカッション・議論が表すこと

ディスカッションと議論,ともに誰もが馴染みのある言葉ですね。
語源を辿ってみると,discussusというラテン語は,dis-(分離)と-cus(ゆさぶる)が合わさってできた言葉とされています。
「言葉をゆさぶって粉々にする」という本来の意味が,後に,「話しあう」「議論する」という意味に発展したようです。
議論という日本語は,「互いに自分の説を述べあい,論じ合うこと,意見を戦わせること」と定義されており,暗黙のうちに,自分以外の他者が必要な存在として想定されています。
一般的には,ディスカッションの訳語として議論が用いられています。


■自分と他者の相互作用が鍵

あたり前のように感じるかもしれませんが,ディスカッションを1人で行うことはできません。
自分の意見を述べたところで,それに誰かが応答してくれなければ,論じ合うことは成り立たないでしょう。
---
ディスカッション場面とは,協同構成による創造的な問題解決場面である(丸野・生田・掘 2001)
---
"人は他者と相互作用する中で自らの考えや知識を新たに構成していく"という知の生成過程を浮き彫りにする状況のひとつとして,ディスカッション場面を捉えることができるという考えが述べられています。


■ディスカッション・議論を支える質疑応答

論じ合う場面に欠かせない要素のひとつに,質問とそれに対する応答があります。
---
質疑応答の場合は,議論の噛み合いを強く意識する必要がある(福澤 2002)
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質問する側は,相手の考えを引きだす努力をする必要があり,応答する側は,相手の質問意図を的確に捉える必要があるという,議論の流れに注意を払う重要性が述べられています。

では具体的に,どのようなスキルが求められるのでしょうか?
質疑応答を中心とする議論について,福澤(2002)は5つのポイントを指摘しています。
---
①発言者の主張が明示されているか
②発言者の主張がなぜ主張として成り立つかを示す根拠なり証拠なりを提示しているか
③隠された根拠に関する言及があるか
④主張への飛躍のしすぎはないか(論証が正しく行われているか)
⑤質疑応答において,聞かれていることに答えているか
---


■ディスカッション・議論を促進する質問

先にあげた5つのポイントに沿って,あなたが質問をする場面を思い浮かべてください。
どのような質問をすれば,相手はより的確に答えることができ,論じ合うことが盛り上がるでしょうか?

単純な質問から考える必要のある質問まで,種類はさまざまですが,質疑応答を中心とする議論を促進するのは,バランスのとれた質問だと言われています。
最後に,よりよいディスカッション・議論を進める際に役立つであろう,質問の類型と役割を紹介します。
それぞれのパターンにどのような質問が該当するのか,気になる方はぜひ『授業の道具箱』をお読みになってみてください。

---
調査的質問:事実や基本的な知識を調べる
挑戦的な質問:仮説,結論,解釈を検証する
関係的質問:主題,考え方,問題の比較を求める
診断的質問:動機や原因を検証する
行動的質問:結論や行動を引き出す
因果関係的質問:複数の考え方,行動や事象の間の因果関係を問う
拡張的質問:議論を広げる
仮説的質問:事実や問題に変化を与える
優先を問う質問:最も重要な問題を探求する
総括を問う質問:まとめを引きだす
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■参考文献
福澤一吉(2002) 議論のレッスン 日本放送出版協会
丸野俊一・生田淳一・掘憲一郎(2001) 目標の違いによって,ディスカッションの過程や内容がいかに異なるか 九州大学心理学研究; 2, 11-13.
バーバラ・グロス・デイビス(著) 香取草之助(監訳)(2002) 授業の道具箱 東海大学出版会


[伏木田稚子]

2010.08.25

【エッセイ】講義と宿題が逆転する

The Chronicle for Higher Educationの記事「Killing the Lecture With Technology, Part II」に講義と宿題を逆転させた授業の事例が紹介されていました。以下に記事の該当部分を訳します。

"ウィスコンシン大学マディソン校のグレゴリー・モーセ教授は、コンピュータ科学の授業で「講義ー宿題パラダイム」を逆転させる試みを行っている。講義を見た後で宿題をするというやり方の代わりに、学生は授業外の時間でオンラインで講義を視聴し、授業は教員の監督下において学生が問題解決を行う「研究室」として位置づけている。"

オープンコースウェアに始まったOpen Educationl Resourcesのムーブメントは、様々な形で展開されています。Appleの8月24日のプレスリリースによれば、「iTunes Uのダウンロードが3億回を超え、世界中の800もの大学がiTunes Uにサイトを開設している」そうです。

従来、講義の公開は、大学外の学習に寄与するものとして考えられてきました。モーセ教授の試みは、オンライン講義のアーカイブを大学の授業に戻す形態の1つとしてとらえることができるでしょう。

5年前はオンライン学習は対面学習と対立するものとしてとらえられていましたが、今では多くの授業でインターネット上の学習資源を使うことが常態化しており、ブレンド学習とよばれるオンラインと対面の組み合わせ学習のパターンや割合の差としてとらえる方が現実的になってきています。

本日づけで、東京大学の講義と公開講座がiTunesUで公開されています。従来通り、UTOCWおよびTodai.TVでもご覧いただけます。

これらの教育リソースが、宿題などの形で大学の学びでも活用されることを期待しています。

[山内 祐平]

2010.08.22

【学びのキーワード】目標設定理論

みなさま,こんにちは。修士2年の程琳と申します。
学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】シリーズ!
第三回目のキーワードは「目標設定理論」です。

■目標設定理論
目標設定理論とは、目標という要因に着目して、モチベーションに及ぼす効果を探ることを目指した理論のことを言います。1968年にアメリカの心理学者ロックが提唱したのです。目標設定理論では、モチベーションの違いは目標設定の違いによってもたらされると考えられ、そして、本人が納得している目標については、曖昧な目標より、明確な目標のほうが、また難易度の低い目標より、難易度の高い目標のほうが、結果としての業績は高い、ということが確認されています。

■目標とはなにか?立てられる目標が行動への影響は?
さて、研究の源をさかのぼれば、英語文献のなかでgoal(目的/目標)とobjective(目標/対象)と分けて訳されることもありますが、ロックの目標設定理論(goal-setting theory)を論じるとき、この二つの言葉を区別しないことにしましょう。
ところで、目標の対応する英語ではなく、その定義とは何でしょうか。
目標は、人の価値が状況に特化した形態であるとロックが定義しました。
ある状況における人の行動を予測するには、その人が価値をどのように特定の目標に転化するかを知ることが必要です。このように、目標は、行動の直前の先行要因となります。目標が行動に与える影響には三通りあります。
第一に、目標は、人が働きかける事実に影響を与えます。注意と行動を、価値と目標に関連する行動に集中させ、目標と関連のない行動を排除することによって、働きかける方向性を調整します。
第二に、価値と目標は、その人にとっての目標の重要度によって決まる行動の強さと、それに付随する情緒に影響を与えます。価値の高い目標が難しいほど、それを達成するための努力は強度を増します。
第三に、価値の高い目標は持続性に影響を与えます。
さらに、ロック(2000)は、二十世紀の目標設定理論の文献展望を行った結果、すべての目標効果は、必須課題を遂行するための知識と能力に仲介されると結論をつけました。


■ロックが目標設定理論への貢献
ロックの博士論文は、ライアンによる意図の効果の仮説を検証する一連の実験室実験に基づいていました。この実験のすばらしい成果は、1990年に発表される目標設定理論の土台となる三つの仮説に結びつきました。
1.具体的で困難な目標があると、目標がない場合や、あったとしても「ベストを尽くせ」をいう抽象的な目標の場合より、高い業績が得られる。
2.目標にコミットメントがあると、その目標が高いほど高い業績が得られる。
3.金銭的インセンティブ、意思決定への参加、フィードバック、またはその結果の把握といった変数は、具体的で困難な目標の設定そのコミットメントにつながる場合にのみ、業績に影響を及ぼす。
要するに、目標は、その達成に向けて関心と行動を方向づけ(選択)、活力をかきたて(努力)、努力する時間を引き延ばし(持続)、適切な戦略を立てるよう個人を動機付けする(認知)ことに効果があるのだ。【ロック・ショウー・サーリ・レイサム1987】

■学習における目標設定の意義
学習活動にロックの目標設定理論を導いてくると、適切な方法に従って学習目標を立てることにより、学習効果の向上も期待できます。
1)困難な目標の効果
目標の困難度は個人のパフォーマンス水準と比例します。
実現する上で多くの工夫と努力を要する、あるいは短時間で達成しなくてはならない、という意味で困難度の高い目標を追求する個人ほど、より高いパフォーマンスを上げる(したがって当然、学習意欲も高い)ということになります。
2)明確な目標の効果
明確で具体性を持った目標は、曖昧な目標よりも高いモチベーション(動機づけ)効果を持ちます。
何のために学習をするのか、そして、勉強の最終受益者はだれなのか、その意味はなんなのか、これらの疑問を明確にした場合と、何も知らされずにただ言われた通りに勉強を遂行させられた場合と、明らかに意味を明確した学習者のほうは高いモチベーションを持つことができます。更に、「精一杯がんばれ」「できるだけよい出来具合を見せ」というような抽象的で曖昧な目標よりも、具体的に「次回のテストで10点アップさせよう」「今日は二時間英会話をしよう」などのはっきりした目標を設定して初めて、それを目指す個人の意欲と行動が喚起されます。
3)フィードバックの効果
目標設定にフィードバックが組み合わされた場合には、モチベーション効果はより高くなります。
達成された成果は、通常フィードバックされ目標達成に向けてのサポートが行われることによって、目標設定の効果を高めます。また、目標達成に向けての進捗度合いの遅いものに対して、特にパフォーマンス改善効果が高いです。フィードバックはその回数よりも、早い時期にフィードバックを与えられる方が、遅い時期にフィードバックを与えられる場合に比べて最終的な学習効果は向上します。

■学習活動における学習目標設定のステップ
具体的な学習活動において、いかにして適切な統合した学習目標を立てられるかが問われやすいです。参考として、以下のステップを踏まえたほうがよいかもしれません。
1)自己分析を行う。
このステップは自分の学習に対するモチベーションをはっきりさせる第一歩でもある。
2)長期的な大きな目標を立てる。
たとえば、大学生が卒業時自分のなりたい姿を入学時に試しに描いてみるとか。そして、その際に関わるコミュニティ、キャンパス資源、自分の位置づけなども全体像から把握するとよいであろう。
3)学期レベルの中期的目標を立てる。
大学生の場合は各学期、独学を行う学習者の場合は、一つ一つの小段階自分のなすべき進捗を予測する。そこにある価値を今の自分の目で一度見出し、そして、まもなく到来する将来の各時点でまた振り返りと見直しを行う。
4)具体化してきた目標の達成要素を考える。
だんだん具現化してくる学習目標に必要なスキルと、能力、資源はなにかを今度考えなければならない。基本的に、それらの必用要素を如何にして身につけられるかも課題となるであろう。
5)障害物はあるのか?
課題があれば、そこには解決しなければならない障害物があると考えられる。そのバリアーをクリアするには、どのようなストラテジーが運用できるのか。
6)学習ストラテジーを発達させる。
鎖のチェーンのように、とうとう道具が見えてきた。すなわち、ゴール⇔バリアー⇔ストラテジーの連鎖関連である。ここまでたどれば、力を入れる押さえどころが自然と分かろう。
7)統合させよう。
学習に限り話ではないないが、どの目標も定められては再度調整を要する。そこで、最初からのステップを統合し、学習活動を進めつつ、達成度に対する自己評価と今度の学習目標の再修正も大切である。

以上で、目標設定に関して、ご一報させていただきます。

[程 琳]

2010.08.17

【お知らせ】東京FM「Timeline」に出演します

高校生と大学生・社会人をTwitterでつなぐ、Soclaプロジェクトは、進路や就職について調べる一般プログラムを無事終了し、大学や企業のプロジェクトマネージャーの鞄持ちをしながら、働くことについて考えレポートをまとめる特別プログラムに進んでいます。

このSoclaプロジェクトについて、8月18日(水)19:10分から、東京FMの「Timeline」というコーナーで10分ほど報告させていただくことになりました。高校生の学びの実際について、カフェグローブ代表取締役の矢野貴久子さんとお話しさせていただきます。よろしければぜひお聞きください。

首都圏の方は、インターネットでradiko.jp経由でもお楽しみいただけます。

[山内 祐平]

2010.08.12

【学びのキーワード】デジタルストーリーテリング

みなさま,こんにちは。修士2年の帯刀菜奈と申します。
学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】シリーズ!
第2回のキーワードは「デジタルストーリーテリング」です。

■デジタルストーリテリング=デジタル版紙芝居
デジタルストーリー(Digital Story) とは,制作者がコンピュータなどの
デジタル機器を利用し,画像(デジカメ画像,スキャナで取り込んだ写真や絵,マウスで書いた画像など) を,制作者自身が録音した語り(ナレーション,英語では「語り」はnarrative) でつなげていく「お話」です。
そのストーリーを制作・発表することを,デジタルストーリーテリング(Digital Storytelling) といいます。

■学習科目への導入:日本史編
Elizabeth Anne Yeager and Frans H.Doppen2001によると,一般的な歴史教科書で歴史を学ぶ生徒は,教科書の記載事実をそのまま受け入れ歴史上の人物の気持ちや行動要因について考慮しないと規定されています。
これまでの我が国の教育では,一斉指導型授業が主流で,知識が身に付いたかどうかはペーパーテストで,「単語レベル」での正誤判定が行われてきました。
(例えば,歴史の授業で,「江戸幕府が開かれたのは何年?」→「1603年」といった具合。) 
教育,特に歴史教育においては,このような単語レベルでの知識の発信ではなく,「文章レベル」「文脈・背景レベル」での幅広く奥深い発信型知識が必要であり,それを育成しなくてはいけません。(須曽野ら2006)
ストーリーテリングは,単語レベルでの知識の発信と組み合わせることでそれを可能にすると考えています。

「文章レベル」「文脈・背景レベル」での幅広く奥深い発信型知識を考察するにあたって,歴史的共感(contextual historical empathy)が必要だと考えます。
歴史的共感は,Berti, Baldina and Toneattia,2009によると,彼ら(歴史上の人物)の価値観や考え方を身につけることで,過去の人や社会的慣習を理解することである,となります。そして,それは次のような発展段階をたどります。

第1段階 Divi(愚かな)過去  過去の制度や行動を知的なものとして
とらえられない
第2段階 一般的なステレオタイプ  人の行動原理をステレオタイプに当て
はめて判断している
第3段階 日 常 的 共 感    過去の出来事や個人の動向を自分自身
の価値観に当てはめる
第4段階 限定的な歴史的共感    過去の人の価値観や信条,目標が我々
と異なっていた視点を持てる
第5段階 文脈上の歴史的共感    人物を取り巻く社会を理解することが
できる

デジタルストーリーテリングの制作は学習者の日本史への共感段階を高める可能性を持っているのです。

■デジタルストーリーテリングの効果

・ストーリーテリングにより構成主義の学習能力を得る。
  さらにグループ(班)化することで,協働作業や協調活動を重視
する社会的構成主義の学習論が展開される。
・デジタルストーリーテリングの多様な制作によって,個人やグル
ープ(班)の,設定に対するストーリーの理想像を具体化させる。
・昔の写真,デジカメ画像,手描きの絵などの静止画をつなぎ合わ
せ,ストーリーを作ることで,個人やグループ(班)のオリジナ
ルな意見の表現につながる。
・同一設定における複数グループの制作発表で,それぞれのストー
リー文脈を比較し,他者(グループ)との相違を認識させる。
 ・Webにアップすることで,他者の意見や考え方を受け止め,制作が
よりステップアップされるシステムが構築される。

■デジタルストーリーテリングの作り方
1.テーマに対してリサーチ(調査)を行う
2.その結果からストーリーを絵コンテという形におこす
3.写真や絵といった資料をスキャニングしてデジタル化する
4.絵コンテにそってナレーションを録音し,デジタル化されたデータ(写真や絵)と合わせる

こうして,1つのテーマに対して1-2分の作品,デジタルストーリーテリングが完成します。
それぞれの発想やリサーチ結果によって,まったく違った作品が出来ることが予測されます。
世界でひとつあなただけの物語が映像に残るのです。

■続きは制作体験で
研究の一環として,10月にワークショップを開催いたします。
デジタルストーリーテリングに興味をもたれた方
(もっとも高校生に限るのですが)は,是非ご参加ください。
お待ちしております。

■おススメ図書
やまだようこ『人生を物語るー生成のライフストーリー』ミネルヴァ書房,2000.

[帯刀菜奈]

2010.08.11

【エッセイ】Twitterと「よい質問」

現在、BEAT(ベネッセ先端教育技術学講座)で高校生と大学生・社会人をTwitterでつなぐソーシャルラーニングプログラム「Socla(ソクラ)」の実証実験を行っています。

http://blog.beatiii.jp/information/post_18.html

高校生たちは大学生・社会人の人たちのサポートを受けながら、働くことや大学で学ぶことについてWebやTwitterを使って調べています。色々な発見があって興味深いですが、まだプロジェクトの途中なので、結果については落ち着いてから報告したいと思います。

このプロジェクトでは、サポーターが経由する形で一般ユーザーに質問をRetweet(転送)する機会も多いのですが、よいコメントが帰ってくる場合とそうでない場合があります。転送する人の特性や人数にもよるのでしょうが、その差の背景には、質問のよしあしも関係しているようです。答える人に「それは面白い問いだ」と思わせるような質問には、有用なコメントがたくさん帰ってきます。背景がよくわからなかったり、一見しただけでは意味がとりにくい質問にはあまり回答が来ません。

考えてみれば、よい質問をすることはとても難しい活動です。よい質問をするためには、その領域をある程度理解した上で、魅力的かつ本質的な問いをたてる必要があります。また、答えてほしい相手の状況を想像して、その人たちに理解しやすい文章にすることも重要です。さらに、Twitterだと140字という制約の中で表現しなければなりません。

これらのスキルのうち、問いをたてる部分は情報検索と重なっていますが、この活動には狭義の情報リテラシーとしては認識されていなかったコミュニケーションスキルも含まれています。ソーシャルメディアの登場によって、情報リテラシーの位置づけも考え直すべき時期にきているのかもしれません。

よい質問から有用な答えを数多く得られる人たちは、そのやりとりの中で人間関係を広げ、最終的により豊かな社会関係資本を持つことも考えられます。ソーシャルメディアが当たり前になる時代の学習者のことを考えると、「よい質問」ができるようになるための学習支援は、ますます必要になってくるのではないかと思います。

[山内 祐平]

2010.08.06

【学びのキーワード】フロー理論

みなさま、こんにちは。修士2年の安斎勇樹と申します。

今週から、学習や教育に関連するキーワードを解説する
新シリーズ【学びのキーワード】をお送り致します!

第1回のキーワードは「フロー理論」です。


■フロー=没入状態
皆さんは、気付かないうちに目の前の作業や活動に集中し、時間を忘れてのめり込んでしまった経験はありませんか??例えば、工作をしている時、絵を描いている時、スポーツをしている時、ゲームをしている時など...楽しくて無我夢中になってしまった経験があると思います。

このように、活動に没入し、楽しさを感じている状態のことを、心理学者チクセントミハイは「フロー(flow)」と名付けました。


■フロー状態とその条件
チクセントミハイは、様々な分野の活動を調査した結果、どの分野においても「楽しい!」と感じているフロー状態の時は、「時間を忘れるほど活動に極度に集中している状態」「環境と自分が一体化している感覚」「行動を調節しながら次々に新たな状況に対応できている状態」などの特徴があることを明らかにしました。

チクセントミハイは、こうしたフロー状態に入るためには個人の「能力」と活動の「難易度」が重要であると考え、その条件を以下の図にまとめました。

画像(リンク切れ)

縦軸は「活動が自分にとってどのくらいの難易度か」を示しており、横軸は「自分の能力が標準状態に比べてどのくらい発揮出来ているか」を示しています。円の中心が、難易度も発揮している能力も平均的な状態ということです。

例えば、
すごく簡単な課題で、能力はほどほどに発揮している場合は「退屈」状態、
すごく難しい課題で、自分の能力が全然発揮できない場合は「不安」状態、
となっていますね。直感的にもイメージが出来ると思います。

そして、右上に位置している肝心の「フロー」は、いつもよりもやや難易度が高く、能力を普段以上に発揮する必要がある活動、つまり、「ちょっとした背伸び」が必要な場合に起きていることがわかります。


■グループフロー
フローは、個人作業だけでなく、集団によるコラボレーションにおいても発生します。例えば、成功している音楽のセッションや、チームスポーツなどを想像するとわかりやすいでしょう。

チクセントミハイの弟子、キース・ソーヤーは、こうしたコラボレーションにおけるフローを「グループフロー」と呼び、その条件を10挙げています。

1.適切な目標:明確だが、多様な解釈を生む自由度の高い目標
2.深い傾聴:自分が聴き取ったことに対して純粋に反応する
3.完全な集中:現在の活動とそれ意外の活動を切り離す境界線を引く
4.自主性:柔軟性を持ちながらも、自分がすべてを管理している感覚を持つ
5.エゴの融合:自分のエゴを抑え、グループ全員と協調する
6.全員が同等:すべての参加者が同等な役割を担う
7.適度な親密さ:惰性にならない程度の親密さを持ち、文化を共有する
8.不断のコミュニケーション:インフォーマルな会話を大切にする
9.先へ先へと進める:他人の意見を受け入れながら即興的に対応する
10.失敗のリスク:失敗へのリスクや恐怖感を推進力として利用する

こうした集団によるグループフローは、創造的なコラボレーションやイノベーションにとっても重要な要素であることがわかっています。


■学習をもっと楽しいものに!
以上、まだまだ完成された理論ではありませんが、フローについてわかっている基本知識を紹介してきました。

チクセントミハイは、地位やお金等の外発的動機付けに支配された現代に憤りを感じ、現代にもっと「楽しさ」を増やすために、フローの研究を開始しました。

フローは教育や学習の理論ではありませんが、あらゆる学習活動においても「楽しさ」や「活動への没頭」は重要です。

学びをより楽しい営みにするために、学習環境をデザインするための知見として、あるいは実践を評価する枠組みとして、フロー理論は私たちに有用はヒントをくれるはずです。

  


[安斎 勇樹]

2010.08.04

【プレスリリース】高校生と大学生・社会人をソーシャルメディアでつなぐ学習支援プログラム

▼7月30日付で以下のプレスリリースを出しました。現在、実践の真っ最中です。

2010年7月30日

【報道関係各位】
国立大学法人東京大学
株式会社ベネッセコーポレーション

東京大学とベネッセコーポレーション、高校生と大学生・社会人をソーシャルメディアで接続する学習支援プログラムについて共同研究を開始


 国立大学法人東京大学と株式会社ベネッセコーポレーションは2010年8月より高校生と大学生・社会人をソーシャルメディアでつなぎ、高校生の学習を支援するための共同研究を開始いたします。

 この共同研究で展開されるソーシャルラーニングプログラム「Socla(ソクラ)」では、高校生が一人一台iPadを持ち、Twitterを利用して大学生や社会人のサポートを受けます。Soclaは①プロジェクト学習②基礎学習の、2つのステージに分かれています。プロジェクト学習においては、働くことや大学進学の意味について学び、基礎学習においては読解・作文など基本的な学習スキルを身につけることを目標にしています。2010年度は、高校生約20名、大学生・社会人約10名によるプロジェクト学習に関する実証実験を行います。さらに2011年度にプロジェクト学習と基礎学習を統合するための研究を行い、学習成果を評価する予定です。「Socla(ソクラ)」は、TwitterとiPadを利用した学校外学習プログラムとして日本初の取り組みになります。
 このたびの共同研究は東京大学大学院情報学環に設置された寄付講座「ベネッセ先端教育技術学講座 (BEAT)」を拠点として行われ、東京大学は学習プログラムの開発と評価を担当します。ベネッセコーポレーションは基礎学習における学習支援に関する知見を提供する予定です。
 東京大学とベネッセコーポレーションは今回の共同研究において、双方の強みを最大限に活かして、普及が見込まれるタブレット型端末とソーシャルメディアを利用した今までにない学習モデルの構築を目指します。


【本件に関する報道関係からの問い合わせ先】

東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座
准教授 山内 祐平
Tel 03-5841-2663
Email: contact@beatiii.jp
株式会社ベネッセコーポレーション
広報部 坂本
Tel 042-356-0657

<参考資料> 

■プロジェクト学習のスケジュール
8月2日(月)〜13日(金) [一般プログラム]
約20名の高校生が、大学生活、就職、進路・キャリアの3グループに分かれ、Twitterで大学生・社会人のサポーターと議論しながら自らの将来を考える調査学習を行います。最終日の13日には発表会が行われます。

8月16日(月)〜21日(土)[特別プログラム]
一般プログラム参加者の中から数名の希望者が、下記の有識者の鞄持ち体験を行い、Twitterで大学生・社会人のサポートを受けながら働くことの意味についてレポートを作成します。最終日の21日には発表会が行われます。
※13日、21日の発表会の日はご取材いただくことが可能です。
取材をご希望の場合は、お問い合わせ先に事前にご連絡下さい。

■ご協力いただく有識者
大堀 真 (株式会社SRAプロフェッショナルサービス 代表取締役)
酒匂 信匡(信州大学電気電子工学科准教授)
白木 夏子(株式会社HASUNA 代表取締役)

■ご協力いただく高等学校
湘南工科大学附属高等学校
聖学院中学校・高等学校
文京学院大学女子高等学校
安田学園高等学校

■ベネッセ先端教育技術学講座
2004年度に東京大学に株式会社ベネッセコーポレーションの寄附によって設置された寄付講座。モバイル・ユビキタス技術を利用した学習環境の構築、学習文脈情報を利用した教育システムの構築、教育コンテンツの動的生成・集合知を用いた学習環境の構築などについて研究を進めている。(http://beatiii.jp/)

■Twitter
日本で約1000万人が利用するソーシャルメディアサービス。日常起こったことなどを140字以内でつぶやく簡易型ブログサービスとして急成長している。

■iPad
Apple社から2010年4月に発売されたタブレット型情報デバイス。キーボードがなく画面を指で操作する直感的なインターフェイスを備え、既存のPCが十分浸透しなかった教育利用や高齢者の利用などが期待されている。

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