2010.08.28

【学びのキーワード】ディスカッション・議論


みなさまこんにちは,修士2年の伏木田稚子です。
猛暑を通り越して酷暑にうだる日々,涼しげな朝顔に和みますね。

学習や教育に関連するキーワードを解説する【学びのキーワード】,第4回は<ディスカッション・議論>を取り上げたいと思います。


■ディスカッション・議論が表すこと

ディスカッションと議論,ともに誰もが馴染みのある言葉ですね。
語源を辿ってみると,discussusというラテン語は,dis-(分離)と-cus(ゆさぶる)が合わさってできた言葉とされています。
「言葉をゆさぶって粉々にする」という本来の意味が,後に,「話しあう」「議論する」という意味に発展したようです。
議論という日本語は,「互いに自分の説を述べあい,論じ合うこと,意見を戦わせること」と定義されており,暗黙のうちに,自分以外の他者が必要な存在として想定されています。
一般的には,ディスカッションの訳語として議論が用いられています。


■自分と他者の相互作用が鍵

あたり前のように感じるかもしれませんが,ディスカッションを1人で行うことはできません。
自分の意見を述べたところで,それに誰かが応答してくれなければ,論じ合うことは成り立たないでしょう。
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ディスカッション場面とは,協同構成による創造的な問題解決場面である(丸野・生田・掘 2001)
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"人は他者と相互作用する中で自らの考えや知識を新たに構成していく"という知の生成過程を浮き彫りにする状況のひとつとして,ディスカッション場面を捉えることができるという考えが述べられています。


■ディスカッション・議論を支える質疑応答

論じ合う場面に欠かせない要素のひとつに,質問とそれに対する応答があります。
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質疑応答の場合は,議論の噛み合いを強く意識する必要がある(福澤 2002)
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質問する側は,相手の考えを引きだす努力をする必要があり,応答する側は,相手の質問意図を的確に捉える必要があるという,議論の流れに注意を払う重要性が述べられています。

では具体的に,どのようなスキルが求められるのでしょうか?
質疑応答を中心とする議論について,福澤(2002)は5つのポイントを指摘しています。
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①発言者の主張が明示されているか
②発言者の主張がなぜ主張として成り立つかを示す根拠なり証拠なりを提示しているか
③隠された根拠に関する言及があるか
④主張への飛躍のしすぎはないか(論証が正しく行われているか)
⑤質疑応答において,聞かれていることに答えているか
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■ディスカッション・議論を促進する質問

先にあげた5つのポイントに沿って,あなたが質問をする場面を思い浮かべてください。
どのような質問をすれば,相手はより的確に答えることができ,論じ合うことが盛り上がるでしょうか?

単純な質問から考える必要のある質問まで,種類はさまざまですが,質疑応答を中心とする議論を促進するのは,バランスのとれた質問だと言われています。
最後に,よりよいディスカッション・議論を進める際に役立つであろう,質問の類型と役割を紹介します。
それぞれのパターンにどのような質問が該当するのか,気になる方はぜひ『授業の道具箱』をお読みになってみてください。

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調査的質問:事実や基本的な知識を調べる
挑戦的な質問:仮説,結論,解釈を検証する
関係的質問:主題,考え方,問題の比較を求める
診断的質問:動機や原因を検証する
行動的質問:結論や行動を引き出す
因果関係的質問:複数の考え方,行動や事象の間の因果関係を問う
拡張的質問:議論を広げる
仮説的質問:事実や問題に変化を与える
優先を問う質問:最も重要な問題を探求する
総括を問う質問:まとめを引きだす
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■参考文献
福澤一吉(2002) 議論のレッスン 日本放送出版協会
丸野俊一・生田淳一・掘憲一郎(2001) 目標の違いによって,ディスカッションの過程や内容がいかに異なるか 九州大学心理学研究; 2, 11-13.
バーバラ・グロス・デイビス(著) 香取草之助(監訳)(2002) 授業の道具箱 東海大学出版会


[伏木田稚子]

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