2008.09.16
デューイは、あまり知られていませんが、体系的に学習空間の機能について検討したはじめての教育研究者です。主著のひとつである「学校と社会」には、次のような図があります。
http://www.brocku.ca/MeadProject/Dewey/Dewey_1907/Dewey_1907c.html
より引用(日本語版は岩波文庫で出版されている)
この図は、デューイが考えた学校が持つべき学習空間を模式的にあらわしたものです。中央に図書室があり、工作室・裁縫室・食堂・厨房がそれにつながっています。この構成は、社会で行われている労働と学習活動を切り離さないためのものです。工作室で大工仕事をしながら、構造に関する物理的な問題について考えるために図書室で調べるということが想定されています。社会とのつながりが強調された図ですが、本文中では子どもの表現や内省に関してもふれられており、社会と内面のバランスが重要だと述べられています。
この本が出版されたのは1907年であり、複雑化した現代社会ではこのモデルをそのまま適用することはできないでしょう。しかしながら、学習空間デザインの原理を考えるための素材という観点で読めば、何回読み直しても発見がある古典的作品だと思います。
[山内 祐平]
2008.09.12
第四回目の【突撃!隣の研究者】は、M1の池尻が担当致します。
今回ご紹介する方は、東京大学の情報学環と史料編纂所で准教授をなさっている本郷和人先生です。
■経歴
本郷先生は、1988年に東京大学の東京大学大学院人文科学研究科博士課程を経た後、同年東京大学の史料編纂所で助手をされ、『大日本史料』の第5編の編纂をされました。その後、史料編纂所で助教授になり、2007年には東京大学大学院情報学環の准教授をされています。
専門は日本中世史で、主に政治史や古文書学の分野でご活躍されています。ちなみに奥様の本郷恵子さんも史料編纂所准教授をされており、ご夫婦揃って日本の歴史学を担っています。同じく歴史学を専攻している私としては、何とも羨ましい環境です。
■お人柄
歴史学の先生というと、物静かで小難しい顔をしていると思っている方もいらっしゃると思いますが、本郷先生は、ホームページを見ていただいたらわかるように、とても明るくユーモアに富んだ方です。
一方で歴史学には熱く、「何とか普通の人にも歴史に興味を持ってもらいたい」「引いては歴史を好きになってもらい」という考えの下、研究に精を出されているそうです。現在は、歴史に興味を示してくれない女性の学生に対して、どう興味を持ってもらおうかという点に苦悩しているそうで、少女マンガを読みつつ女性の感性を勉強しているそうです。
■研究活動
中世の政治史を中心に、朝廷における訴訟の研究や、中世の王権についての研究等、幅広く業績をあげています。歴史学の本というのは元々あまり売れないのですが、本郷先生の『吾妻鏡』は通例の20倍近く売れています。これも一般の人を意識している本郷先生ゆえの結果なのだろうと思います。ただ本郷先生は、「なんとか売れる本を書いてみたいと念願しているが、いまのところ実現のめどはたっていません」と笑っていました。
また、最近は人物を中心にして日本中世史を再構成するという新しい試みもされています。今年の4月には、福武ホールで開催しているUTalkで、豊臣秀吉と織田信長の女性関係から、当時の身分の違いを明らかにするというお話もしていただきました。学校の歴史科と違い、人間味あふれる歴史の見方を展開していて非常に面白く聞かせてもらいました。
■今後やっていきたい活動は?
本郷先生は、現在『吾妻鏡』全16巻の現代語訳をされているのですが、ゆくゆくは英語訳や中国語訳も行い、世界に日本の歴史を広めていきたいと思っているそうです。そして、『吾妻鏡』をもとに一般の読者を集い、カフェのような形で、みんなで歴史を語り合う。そんな活動をしていきたいと思っているそうです。
僕も歴史教育を志す者として、本郷先生のように一般の人々の視点を忘れないようにしつつ、歴史の面白みを現代に伝えていきたいと思います。今後も色々とお世話になると思いますが、よろしくお願いします。
[池尻良平]
関連リンク
本郷先生のホームページ
http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/personal/kazuto/index.html
UTカフェでの本郷先生の様子
http://online.iii.u-tokyo.ac.jp/fukutake/2008/04/
著書
『人物を読む日本中世史―頼朝から信長へ』講談社選書メチエ、2006
『新・中世王権論―武門の覇者の系譜』新人物往来社、2004
『武士から王へ―お上の物語』ちくま新書、2007
2008.09.09
日曜日から火曜日まで、偉大な業績をあげた研究者についてレビューする毎年恒例の夏合宿でした。今年の人選は、Skinner, Piaget, Vygotsky, Dewey, Ann Brownです。
Ann Brownは今年はじめてとりあげました。この方は、AERA (American Educational Research Association)の会長もつとめた有名な教育心理学者ですが、教育業界以外にはあまり知られていないかもしれません。幅広く学際的な活躍をしたDeweyやBrunerに比べ、教育を変えるビジョンのような大きな主張をしなかったからでしょうか。
しかしながら、業績を追うと、たくさんの実践的な知見をベースにした学習方法の提案をしています。有名なものとしては、相互教授法やジグソーメソッドなどがあります。
経験・探索・発見を基盤にした学習の重要性は、多くの研究者が指摘しています。しかしながら、それを安定して実現するための方法の確立は、いまだ道半ばです。
惜しいことに1999年に56歳の若さで亡くなりましたが、大きな言説で方向性を示すよりも、再現性のある有用な学習方法の確立を目指したAnn Brownの業績の数々に、職人のような静かな情熱が見えました。
[山内 祐平]
2008.09.04
山内研に近しい研究者の先生方をご紹介する【突撃!隣の研究者】の第3回。
いつもの3番手,林向達がお送りいたします。今回は,メディア教育開発センター教授である中川一史先生をご紹介します。
■どんなことをされてる先生?
もともと小学校現場の教諭であった先生は,当時はまだ珍しかった教室へのパソコン導入を先駆け,とても魅力的な実践を展開されました。教室にやってきたパソコンは,アップル社のマッキントッシュ。教室で子ども達がマックと過ごす日々の実践は,先駆的なメディア実践として,パソコン雑誌等の連載にもなり有名となりました。
その後も,「メディア」という視点はぶれることなく,実践と研究を積み重ね,教育委員会の職を経て,1999年には金沢大学教育学部の助教授に就任されます。
金沢大学着任後も,その勢いは留まるところを知らず,地域の現職の先生方を巻き込んで様々な研究会やプロジェクトを推進し,常に現場志向の取り組みを重視してきたのは,ご承知の通りです。
現在はメディア教育開発センター教授として所属を移され,いわば全国区でメディア教育を盛り立てていく役目を担われています。ちなみに,メディア教育開発センターには,第1回で登場した堀田先生もいらっしゃり,日本の初等中等教育における情報・メディア教育の取り組みを強力に後押しています。
■どんな先生?
たくさんのプロジェクト,たくさんの教育現場との関わりからもわかるように,バイタリティに溢れ,周りの人々のチャレンジ精神を鼓舞して場を作っていける先生です。当然,周りからの信頼も厚く,大変親しみやすい関係を築いてくださいます。
最近,お腹がポニョみたいになったことを(金沢大学の)教え子からからかわれても,ちっとも怒らないので,とてもお腹…じゃなかった…器の大きい先生だと再確認しました。
飲みに行くのもお好きです。特にワインはお気に入りのようで,ワインバーにお誘いいただいたことが何度かあります。山内研究室のお隣の研究者の先生方は,みんなグルメかお酒大好きな先生が多いです。
そして,先生は古くからのマックユーザーです。ホームページにも「こよなくリンゴを愛スル。」と宣言されております。この部分は私も同じです。
■「お隣」具合
メディアや情報に関する教育を研究するという側面で,山内先生ともお仕事をご一緒されることがあります。実際,私が初めてナマ中川先生やナマ山内先生を見たのも,ご一緒にパネルディスカッションをされたときでした。そのとき,中川先生のご著書を持っていたので,ミーハーな私は先生のサインをもらったことがあります。
サインをもらったときには想像もしませんでしたが,中川先生にお声掛けいただき,いまでは一緒に学校現場への助言活動などのお仕事をさせていただいたり,プロジェクトをお手伝いさせてもらうようになりました。また,私の修士論文の調査について,ご助言いただいたりしています。本当にいろいろとお世話になっています。
■関連リンク
Hitoshiの部屋
http://www.hitorin.com/
中川先生のひとりごと
http://www.hitorin.com/column/
メディア教育開発センター
http://www.nime.ac.jp/
というわけで,第3回はメディア教育開発センターの中川一史先生でした。中川先生,また美味しいもの食べに行きましょうね。
[林 向達]
p.s. 受験生の皆様,お疲れ様でした。それぞれの結果はあったかも知れませんが,今後も頑張っていきましょう!
2008.08.29
公開研究会「BEAT Seminar」2008年度第2回
プロジェクト学習が大学を変える
〜2008年9月6日(土)開催!〜
BEAT(東京大学情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座)では、
BEAT Seminar「プロジェクト学習が大学を変える」を開催いたします。
近年、大学卒の人材は、専門的知識や思考力に加え、実践的な能力(コミ
ュニケーション能力やプロジェクト遂行能力)も求められるようになって
きています。大学でこれらの能力を育てるためには、どうすればよいので
しょうか。
その答えの一つとして、プロジェクト学習が注目されています。プロジェ
クト学習はグループで課題について議論を行い、その解決策を提案する作
業を通じて、学習内容について理解を深めると同時に実践的な能力を育成
する方法であり、ここ数年日本でも取り組みが増えてきました。
今回のBEAT Seminarでは社会で活躍できる人材を育成するためにプロジ
ェクト学習を行っている大学の教員をお招きし、プロジェクト学習の成功
の鍵について議論したいと考えています。
みなさまのご参加をお待ちしております。
—————————【2008年度 第2回 BEAT Seminar概要】———————
■主催
東京大学 大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座
■日時
2008年 9月6日(土)午後2時より午後5時まで
■場所
東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map35.pdf
■定員
180名(お早めにお申し込みください)
■参加方法
参加希望の方は、BEAT Webサイト
http://www.beatiii.jp/seminar/?rf=bt_m051-1
にて、ご登録をお願いいたします。
■参加費
無料
■内容
1.趣旨説明 14:00-14:05
山内祐平 (東京大学大学院 情報学環 准教授(BEAT併任))
2.講演 14:05-16:15(休憩適宜含む)
●基調講演:工学教育におけるプロジェクト学習の実践事例:
『行動する技術者』を育成する~金沢工業大学の取り組み(仮題)
久保猛志氏(金沢工業大学 環境・建築学部 建築都市デザイン学科 教授)
●事例紹介1:看護教育プロジェクト学習の実践事例:
聖路加看護大学の取り組み(仮題)
森明子氏(聖路加看護大学 看護実践開発研究センター 教授)
●事例紹介2:プロジェクト学習を支援する概念とツール
~デザイン系プロジェクト学習実践事例からの提案
八重樫文氏(立命館大学 経営学部
環境・デザインインスティテュート 准教授)
3.参加者によるグループディスカッション 16:15-16:30
4.パネルディスカッション 16:30-17:00
『大学におけるプロジェクト学習・その成功の鍵は?』
司会:山内祐平
パネラー:久保猛志氏(金沢工業大学 環境・建築学部
建築都市デザイン学科 教授)
森明子氏(聖路加看護大学 看護実践開発研究センター 教授)
八重樫文氏(立命館大学 経営学部
環境・デザインインスティテュート 准教授)
2008.08.28
第二回目の【突撃!隣の研究者】は、M2牧村が担当致します。
国立歴史民俗博物館で助教を、情報学環で特任助教をなさっている佐藤優香さんをご紹介させていただきます。
いつお会いしても柔らかい雰囲気の素敵な佐藤優香さんに10個の質問をさせていただきました。
■どんなお仕事をなさっていますか?
■小さい頃の夢は何でしたか?
小さい頃は小学校の先生と絵本作家が夢だったという優香さん。
現在の博物館のお仕事は、その両方を味わえる仕事だそうです。博物館では、共同研究のコーディネートや、学校の先生と一緒に博物館教育のプログラムデザインをされたり、教員研修や博物館実習などで「博物館における学び」についてワークショップスタイルで講義をされたり雑誌の編集をされたりと、多岐に渡っています。
■どんな研究をなさっていますか?
「博物館の学び」について、「歴史」と「実践」の二側面から取り組んでこられました。
研究のスタイルは、「研究者」と聞いて想像するようなものとは少し違うかもしれません。博物館で実際に教育プログラムづくりをされながら、実践的に研究をなさっています。
現在の関心は、博物館におけるコミュニケーションや、研究を社会にひらくことだそうです。その言葉通り、東大では研究と社会をつなぐUTalkと呼ばれるカフェトークのコーディネートをされています。
■東大ではどんなお仕事をなさっていますか?
情報学環・福武ホールにあるUT caf BERTHOLLET Rougeで月に一度行われるUTalk。東大の研究者と参加者の方々が、カフェでお茶をする感覚で気軽に会話できる場です。優香さんは、このUTalkの企画と当日のモデレーターをなさっています。
このお仕事は山内先生と一緒にされているということで、「隣の研究者」とお呼びしていいのではないでしょうか。
■山内先生との出会いは?
学部4年生の頃、学会での山内先生の発表と、シンポジウムでの質問を聞いたのが最初の出会いなのだそうです。話をされるようになったのは、その後少し時間が経ってから。山内研究室で、ワークショップにおけるスタッフの動きと情報の共有についてプレゼンテーションをされてからだということです。
未来の「隣の研究者」になる人に、学生時代に出会っていたのですね。
■経歴について
では、学生時代から現在に至るまで、どんな道筋をたどっていらしたのでしょうか。
学部卒業後3年間働いた後、「博物館の学び」を研究するため大学院に戻られました。まずは博物館について徹底的に研究しなさい、という先生の助言に従い、修士課程、博士課程を通じて日本の博物館教育史について研究されました。
同時に、修士1年の頃から国立民族学博物館でのアルバイトを通して実践に関わっていらっしゃいました。その後国立民族学博物館で機関研究員をされていた3年間は、ワークショップのデザインやアウトリーチキットの開発、学校連携を担当されました。そして、国立歴史民俗博物館に就職され、館内の教育サービスに関する業務に携わっていらっしゃいます。
■研究者になろうと思ったきっかけは?
修士1年の頃からアルバイトをされていた国立民族学博物館で、たくさんの研究者に囲まれていた優香さんは、自然と研究者になりたいという思いを持つようになったそうです。それに加え、周りの研究者の方々と仕事をしていく上で、対等に議論する必要性を感じ、その力をつけ、博士の学位を取得しようと考えられたそうです。
学部の頃から「どうすれば楽しい学びが可能になるのか」ということに関心があった優香さんにとって、研究者という立ち位置が、最も自分が好きなことができるものだと感じたそうです。
■研究をしていてよかったと思うことは?
では、実際はどうだったのでしょうか。
研究をしていてよかったなぁ、と思う瞬間がどんな時か、伺ってみました。
いい実践ができたとき、ちゃんと文章でまとめられたとき、研究していたことを背景に自分の思いを人に伝えられたとき、という3つのお答えをいただきました。
実践的に研究をされ、研究を社会にひらくことに関心を持たれている優香さんならではのお答えをいただいたように感じました。
■実践と研究のつながりについて
では、優香さんにとって、実践と研究はどのような関わりを持っているのでしょうか。
ワークショップをデザインする際には、現場で参加者から発信される言葉や雰囲気から、瞬時の判断で場を作りあげていきます。その緊張感が実践の楽しさであると同時に、自分を成長させてくれるものでもあるのだそうです。
優香さんにとって実践とは、理論を確かめるための仮説検証の場というよりも、理論や仮説を生み出すための場としての性質を持っているそうです。実践を通して得られる参加者の反応が、優香さんの研究へとつながっていくのです。
■どこに行けば会えますか?
そんな佐藤優香さんには、毎月第二土曜日、東京大学 情報学環・福武ホールのUT caf BERTHOLLET Rougeで行われているUTalkで、普段は国立歴史民俗博物館で、会うことができます!
[牧村真帆]
2008.08.25
情報学環・福武ホールがグッドデザイン賞にノミネートされているため、8月22日、23日、24日と、グッドデザインエキスポ2008に出展しました。
犬を散歩させている人までいるリアルな100分の1模型も展示しました。
うれしいことに、森田昌嗣氏に、2008年度賞審査委員「私の選んだ一品」に選んでいただけました。2009年3月出版の私の選んだ一品・グッドデザイン賞審査委員コメント集8に掲載されます。ありがたいことです。
他のデザインも見て回りましたが、とにかくすごい数とバリエーションでした。デザインの力を感じるとともに、ここまで広がると、「デザインとは何か」ということについての議論は避けられないだろうと思いました。これについては、考えがまとまったら何か書いてみたいと考えています。
[山内 祐平]
2008.08.21
山内研に来るまでの軌跡を振り返る【山内研と私】も一回りし、
今週から新しいシリーズが始まります。
新シリーズは、題して【突撃!隣の研究者】。
研究領域がお隣だったり、実際に物理的にお隣だったりと、
山内研究室のまわりでいつもお世話になっている方々を紹介していきます。
「山内研ってこんな人とつながっていたんだ」
「こんな領域にも関わっているんだ」などなど、
新たな発見が見えてきたらおもしろそうですね。
第1回目は、いつもの通りM2の坂本が担当いたします。
坂本がご紹介させていただく方はメディア教育開発センターの 堀田龍也先生 です。
(堀田先生のブログ:「メディアと教育を考える」http://horitan.net/)
堀田先生は、多くの小中学校の先生方や企業の方々とご一緒に初等中等学校の教育の情報化にご尽力されており、現場の先生方のファンもとても多い実践的な研究者です。
先生のご経歴や研究分野はすでに多くの媒体で紹介されていますので、簡単に触れる程度にして、堀田先生が山内先生を初めとした研究室のメンバーとどのように「隣り合っている」のかについて、ご紹介していきたいと思います。
■ご経歴
堀田先生は、もともとは都内で小学校の先生をされていました。
5年間ほどの教員生活の後、西東京科学大学理工学部の助手になられ、社会人学生として電気通信大学で修士号を取得され、富山大学教育学部、静岡大学情報学部などを経て、現在に至ります。
ご自身が小学校の先生をされていた頃からコンピュータの教育への可能性を感じて実践を進めていらして、多くの先生方のサポートするという立場から、ICTを使って教育をより良くしていこうと志し、研究者の道に進まれたそうです。
■研究分野
研究の分野は多岐にわたり、実物投影機やフラッシュ型教材とプロジェクタを使って教材を大きく写しながら確かな学力の定着をはかったり授業の効率化をはかるといった、授業でのICT活用に関する研究や、テレビやインターネット、携帯電話などの「メディアとのつきあい方学習」や情報モラル教育など、情報教育に関する研究にも携わっていらっしゃいます。
文部科学省でお仕事をされるようになってからは、学習指導要領の改訂に携わったり、それを現場の先生方にわかりやすく解説するため多くの講演をされていらっしゃったりもします。
■山内研との「お隣」具合
堀田先生は、山内先生や大阪教育大学の木原先生、奈良教育大学の小柳先生とご一緒に教師教育や授業研究、メディア・リテラシーに関する共同研究をされています。
また、情報学環ベネッセ先端教育技術学講座BEATのフェローをされていたり、山内先生が代表を務めるNPO法人 Educe Technologiesの理事をされていたりと、非常に山内研と接点の多い先生です。一昨年まではBEATの客員助教授として東京大学で教壇に立たれていたこともありました。
堀田先生ご自身、教師だったこともあり、人を育てることに関して非常に強いこだわりと熱い想いを持っていらっしゃいます。また、教育現場に根ざした視点やコトバも持ち合わていらっしゃるので、山内研の学生も堀田先生には様々なアドバイスをいただいています。博士課程の佐藤さんや森さんも修士論文を書く際に多くのご助言をいただいたそうです。
教育の情報化や教師教育、メディア・リテラシーなどの研究分野はもちろん、情報学環の組織や学生とも、多くの点で「お隣り」の先生です。
僕が堀田先生と出会ったのは、静岡大学情報学部の3年生の時でした。僕は、静岡大学堀田研の最後の学生の一人でもあります。当時から、本当なら重なることのない先輩方と交流する機会をいただいたり、現場の先生方や企業の方々から学ぶ機会をいただいたりと、研究はもちろんのこと、様々な場面で支えていただいています。僕にとって堀田先生は、山内先生や中原先生、静岡大学の大島律子先生・大島純先生と同じく、感謝してもしきれない偉大な先生の一人なのです。
関連リンク
メディアと教育を考える
http://horitan.net/
メディア教育開発センター
http://act.nime.ac.jp/activedb/program/researcherhp.php?disp_user_id=146
東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 BEAT メンバーページ
http://www.beatiii.jp/members.html
著書
『メディアとのつきあい方学習―「情報」と共に生きる子どもたちのために』,2004,ジャストシステム
http://www.amazon.co.jp/dp/4883092623/
『わかる・できる授業のための教室のICT環境』,2008,三省堂
http://www.amazon.co.jp/dp/4385363617
『情報化時代の学校変革力 オピニオンリーダーからの提言』,2008,高陵社書店
http://www.amazon.co.jp/dp/4771108684/
ほか多数。
2008.08.18
▼重いテーマですが、参加して損はありません!ぜひお申し込みください。
UTalkは、さまざまな領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして迎え、毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場となっています。
9月のゲストは、緩和ケアの専門 医師として千の死と向き合ってきた岩瀬哲さん(医学部附属病院)。不治の病に侵されている患者さんが、満足して死と向き合うことができるための答えを、進化論をたよりに探ります。みなさまのご参加をお待ちしています。
日時: 9月13日(土)午後2:00 - 3:00
場所:UT Cafe BERTHOLLET Rouge
(東京大学 本郷キャン パス 赤門横)
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html
料金:500円(要予約)
定員:18名
申し込み方法:(1)お名前 (2)ご所属 (3)ご連絡先 (メール/電話) (4)イベントをお知りになったきっかけ、をご記入の上、
utalk2008@ylab.jp までご連絡ください。
※申し込みの締め切りは 9月4日(木)までとします。
なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。ご了承ください。
2008.08.15
山内研に至るまでの軌跡【山内研と私】。
第8回は博士課程の森が担当します。
今回は、「山内研究室への」道のりということで、
研究者を志してから「山内研究室」を選ぶまでを中心に書いてみたいと思います。
**
そうは言っても、ごく簡単に前置きを。
私は大学院に進学する以前、ワークショップや広報活動など、美術館の教育普及に関心を持っていました。そのテーマで卒論も書きました。
その一方で大学3年の時、東京大学人工物工学研究センターにて開催されていた有限設計ワークショップに参加し「制約の中でデザインする」という考え方を学びました。
終了後、このワークショップに参加したメンバーの中から有志で集まり実践を開始しました。そして、人がつながる場のデザインや、人がつながるための道具のデザインを考えていく活動を行いました。その後、周囲は就職や進学で一人減り二人減り、徐々にワークショップはしなくなっていきましたが、私は一人で活動を続け国内各地を転々とし実践を続けながら過ごしてきました。
ですが・・25歳の時、「研究をしたい」と考えるような転機が訪れるわけです。(その経緯はかなり深く長い話になりますので、機会があればまた。)
**
研究をしたいと考えるようになってからは、幾人かの先生に関心あるテーマについてお話しし、研究室訪問やゼミ参加などをさせていただきました。
そういった中で、山内研究室に決めようと思った理由は「環境」です。
「どうせ学ぶならば、自分に足りない部分を刺激してくれるような環境に背伸びしてでも身を置くことで、自分はもっと成長できるのではないか」
このように考えて山内研を選択したことを、今でもはっきり覚えています。
当時自分に合っている環境だとは、正直なところみじんも思いませんでした。
でも、今の自分ではなく将来なりたい自分のイメージを、そこに “見る” ことができました。
私は、山内研でどのような物語が繰り広げられるのかを予想することはできませんでしたが、その物語が面白そうであることはわかりました。
そして、そこで振る舞う自分を、とても見てみたいと思ったのです。
「在りたい自分をイメージできる環境を選ぶこと」
これが私の現時点でのセオリーです。
そのためには、どう在りたいかについて思索をめぐらす必要があると同時に、
いろいろな環境に身を置くという実経験を通じ、比較の中で居心地の良い環境を探していくことも重要です。
**
予測がつかない物語を感じさせる環境に身を置いたことで、この4年間、自分の軌跡をとても楽しめたように思っています。
そして、余談ではありますが・・
軌跡こそが学習そのものであるということを、今、改めて実感しています。
[森 玲奈]