2007.12.27
今回紹介したいのは、学者が運営しているブログサイトのリンク集です。これは「はてな」で、「学者が運営しているサイト教えて!」という質問があって、その回答がたくさんついているページです。
質問:学者の方が運営している個人サイト・個人ブログを挙げられるだけ挙げて下さい。
http://q.hatena.ne.jp/1159083318
このサイト自体は去年見つけて、私自身もいくつかブログを紹介していたりします。このサイトの中で読んでいるblogだと例えば、茂木先生、内田先生などでしょうか。もちろん、それ以外にも読んでいるblogはたくさんあります。
研究者のブログを読むと、
・いまどんなことが熱いのか
・研究者の心得とは
・どんな感性を持って生活をしているのか
・自分が次にどんな本を読んだらよいか
などについて示唆を得ることができます。
個人的に面白いなと思っているのは、世の中で話題になっているニュースなどに対する反応ですね。同じ問題に対してどのように捉え、どのように論を展開するのかを比較して見ることができるのはとても面白いですし、参考になる部分も多いかと思います。
このリンク集はいろいろな分野の人がいて、整理がされていませんがそれはそれでよい部分があります。違う分野の研究者がどんなことを考えているのかということは普通あまり知ることができません。
それをブログで見ると、「あの分野ではこんなことが言われているのなら、こっちでも使えそう」だとか、「分野は違っても考えていることは似ているな」などということが理解できます。また、普段どんなことを主張しているかなどを見ていると、論文や本などの主張がすんなり理解できることもあります。
このようにブログは、出版された本や論文には得られない情報を得ることができるという意味で研究に役立つと言えるでしょう。
梅田望夫さんは「ウェブ時代をゆく」の中で、日本の研究者はまだまだブログなどを使って論文の背景となる考え方などをアウトプットしている人が少ないと指摘しています。そういった状況の中で、いち早くブログを使って情報発信している人たちのリンク集というのは貴重なものではないかと思います。
もちろん、本当に自分の研究に役立てるという意味ではたくさんのブログを読むだけではなく、自分も同じように外に向けてアウトプットをしていくことが大切です。
個人的な話ですが、来年からは私も外に向けたブログを開設しようと思っています。研究をよりよいものとしていくには、広い世界の情報を集めながらも、自らもそのコミュニティの一員となり、考えをアウトプットしていくことが重要かもしれませんね。
[舘野泰一]
2007.12.25
12月20日に、BEAT客員教授でカーネギー財団 上級研究員でいらっしゃる飯吉透先生に、ご自身の研究の歴史を聞く会を持ちました。
おもしろかったのは、博士研究になった日本を代表するマルチメディア教材「マルチメディア人体」と、今やっていらっしゃる教師向けの授業リフレクション・シェアツールである「KEEP Toolkit」をつなぐキーワードとして、"Cognitive Tools"という言葉が出てきたことです。
"Cognitive Tools" は、認知的道具と訳されることもありますが、人間が概念的な操作を行う際に有用な役割を果たす道具です。
マルチメディア人体は、NHKスペシャル「人体」をそのままデータベース化したもののように見えますが、文脈の中で知識を獲得できるようにゲームが用意されていたり、履歴やレポート作成ができるようになっていたり、各種の「仕掛け」が組み込まれています。それが"Cognitive Tools"として機能して、学習を支援しているわけです。
飯吉先生は、最近Open Educationにも積極的に関わっていますが、リソースを公開するだけではだめで、それが教育に役に立つことが重要だと一貫して主張していらっしゃいます。単なる「コンテンツ」でなく、「教材」である条件として"Cognitive Tools"が必要なのだということを再認識することができました。飯吉先生、ありがとうございました。
[山内 祐平]
2007.12.20
私は、とても本が好きです。
壁が一面本棚、という家庭で育ったというのも理由の一つだと思います。
しかしながら、おそらく私の読書好きを支えている大きなものとして、小学校で受けた教育があったように思います。
私は私立の小学校に通っていました。
その学校にはかなり充実した図書室があり、そこには専属の司書の先生がいらっしゃいました。
彼女はもう定年直前というベテランでした。
私は、その方に小1から小5まで、週に1回、「読書」という授業をしていただいていました。
国語の授業と同じように、本を読んで感想文を書くなどということもしていましたが、根本に、図書館の使い方、という内容があったのが印象的でした。
なぜ、目録が存在するのか、ですとか、なぜ、貸し出しの記録をとるのかといったことから、本の扱い方、出版のしくみなども習いました。
今、学習環境のデザインに関する研究をしていく中で、当時の授業に関する教育的な意味が少し理解できるようになってきました。目録は、今日でのインターネットをはじめとする検索、情報リテラシーにつながりますし、個人の貸し出し記録はポートフォリオという考え方と符合します。
そんな風に思いながら、大学院入学以来ご無沙汰していた公立図書館や専門図書館なども利用するようになっている今日この頃です。
Jcross
http://www.jcross.com/
Jcrossではインターネットに公開されている図書館サイト・古本サイト等の蔵書検索(OPAC等)を、館種・システムを問わず(どのメーカーのものでも)同時に横断して検索することができます(無料公開)。
リアルタイムに公開OPAC等に対して検索をかけているので、検索実行時点での各図書館サイト・古本サイトの公開された書誌・所蔵情報を知る事ができます。
図書館の蔵書検索や古書情報の検索など、本の検索を一度にやってしまいたい、といった時に非常に便利です。
私はよくこれを使って絶版本を探しています。
また、私は自分の専門である本を探すとき美術図書館横断検索も利用します。
美術図書館横断検索
http://alc.opac.jp/
特殊な環境にいる人だけではなく、全ての人に本が身近なものになるため、様々な図書館活動がなされていいます。
これらは研究にも多いに利用できると思います。
【森 玲奈】
2007.12.18
12月9日に、同志社女子大学の上田先生とゼミのみなさんがいらっしゃって、研究発表をしてもらいました。NHKの教育番組に関するFormative Researchのグループと、キッズデザインのグループの発表を聞きました。
Formative Researchは、セサミストリートが制作される際に行われた、事前に入念な予備調査をして、教材の質の向上を図る研究です。詳しくは、以下のBeatingの記事をご覧ください。
http://www.beatiii.jp/beating/036.html
Formative Researchにおいて一番難しいのは、子どもたちの行動をデザインにフィードバックする部分です。子どもたちは実に多様で興味深い反応を示します。教材開発において質の向上につながる重要なデータであるのは間違いありません。
しかしながら、そのデータが豊かであればあるほど、教材を変えていく方向性に関して、様々なバリエーションが考えられることになります。すばらしいデザインのアイデアがでなくては、いくらデータをとっても、教材の改善に結びつきません。
Formative Researchがなかなか普及しない理由のひとつとして、評価結果をどのようにデザインに反映させていくかということに関して、方法論が確立されていなかったことがあるように思います。
ネットで流通する教材が日常的に作られる今だからこそ、データがあるからこそ生まれる新しいデザインの創出を支援するシステムを確立すべき時期にきているのではないでしょうか。
[山内 祐平]
2007.12.16
大学院を出た後のことを考えたことはありますか?
近年、大学院へ入学し、研究することを希望する人は、多彩な動機を持っているようです。
昨今、既に様々なメディアを通じて語られているように、大学院で学ぶことの意義、大学院の位置づけそのものにまつわる言説も、また多様です。あらゆる視点から様々な問いが投げかけられています。
実際、様々な人々が大学院に在籍しています。もはや大学院とは、学部から進学した人だけが「学究の徒」を目指し、研究に邁進し続けるというだけの場所では、最早無くなりつつあると言っても過言ではないかと思います。
働きながら学ぶ人、仕事を辞めて学び直したいと思う人、仕事と家庭を持ちながら学ぶ人等々が集まり、散じて、また繋がる場として機能し始めています。
そのように集う人々の動機も様々であれば、その後の進路選択も様々です。
特に修士課程で大学院を修了せず、博士課程に進学し、高等教育機関・他研究機関への就職を希望されたり、検討されたりしている方には、「修士・博士論文を如何にして書くか」という問題が何よりも切実に感じられることでしょう。
しかし、一方で、それと同時に「大学院をどう去るか?(=その後のキャリア形成)」を常に考えておくことが、非常に大切なことであると思うのです(自戒を込めて)。
このデータベースは、所謂、研究者のための「求人情報サイト」です。
研究者が就職活動を行う際に、どのような基準・業績を満たしていれば、就職活動をすることができるかの諸条件、つまり「公募情報(=応募資格の情報)」が各大学から示されています。
毎日、全国津々浦々、どこかの大学で、「誰か」を求める公募情報がアップロードされています。
このサイトを注意深くチェックすることが、自己の純粋な研究動機、純粋な問題関心から見えてくるものとは、また違った研究活動の現実的側面を知らせてくれるかもしれません。
修士・博士の学位論文を書く意味とは何か。研究者にとっての業績とは何か。学会誌に論文を投稿する意味とは何か。本を書くとはどういうことか。研究者にとっての教授経験とはどのような価値を持つのか。研究者として生きるには何が必要か。何を、どのように積み重ねていくべきなのか。研究活動を続けるとは何を意味するのか-。
早い段階で、これらの情報を知り、そこから考え新たに見えてくるもの、大学院で学んだ先に見える世界の片鱗にふれることが、よりよい研究活動、または、個人にとってより相応しいキャリア形成を考える上での一助となると思われます。
[酒井 俊典]
2007.12.12
先週の金曜日に、研究室でEduce Cafe (主催:NPO法人Educe Technologies)が開催されました。
UDCKから北澤先生、丹羽さん、砂川さんにおいでいただき、柏の葉地域のまちづくりとその中にうめこまれたつながりの場についてお話をしていただきました。Spiralの松田さんにも飛び入りで子ども向けの楽しいワークショップについてプレゼンしてもらいました。
先端研からは、高澤さんに研究所の知的交流を深めるためのカフェについて紹介していただきました。福武ホールにも同様のものがほしいと思っていたので、とても参考になりました。
カフェももりあがりました。教育に関係している人と他の業界の人が話す機会はあまりないので、お互いに刺激的な時間だったと思います。
お忙しい中かけつけていただいたゲストの方々、おいでいただいたみなさま、企画をたててくださった森さん、空間をしつらえてくれた牧村さん、本当にありがとうございました。
いろいろな発見があっておもしろかったのですが、都市計画の領域だからこそ培われた実践共同体(COP)の位置づけがかいま見えたのが最大の収穫でした。都市計画は数十年単位で続くため、計画のリファインと実行をささえるために持続的な仕組みを用意する必要があります。普通だとCOPの寿命を延ばすことを考えると思うのですが、北澤先生はあえてその方法をとらず、COPそのものはプロジェクトの寿命に近い数年単位で切り替えていき、その間を「プラン」という人工物でつないでいくという形をとっているようです。(私なりの理解ですが。)
この方法を使うと、COPが一定期間ごとに再生されるため、活動が停滞せず常に新しいことにチャレンジできます。ただし、実践するためには、COPを走らせるためのプロジェクトを展開し続けなければならないため、常に新しいアイデアを出し、お金を取ってきつづける必要があります。
最近「サステイナブル」というのははやりですが、(サステイナブルという言葉が持続しないのではないかと思うときがあります。)本質を持続させるためにあえて形を積極的に変えるという方法は、他領域でも積極的に考えるべきアイデアではないかと感じました。
[山内 祐平]
2007.12.06
私は4月から博士課程に所属しています。
博士課程に入ったら、まずは修士論文執筆の疲れを癒し、視野を広げ、社会を見つめなおし・・・。そんな密かな期待をしていたのですが、博士課程というものはそんなに甘くはありませんでした。入学早々やらなければならない大きな課題に直面しました。それは、”博士論文の目次構成”の作成です。
修士論文で行った研究をどのようなポジションに位置づけ、論文をどのような方向性にもっていくかを明確化することでようやく次に今後行う研究が決まるわけで、その作業は早々に行わなければならないわけです。
五里霧中・暗中模索の状況の中、東京大学付属図書館のWebサイトの中で”学位論文データベース”なるものを見つけました。
◆学位論文データベース
東京大学で授与された新制の課程博士論文、論文博士論文を探せるサイト
http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi/BookMain.cgi?CHK_FILE=BOOK_DTL_SEARCH.htm
◆東京大学付属図書館
東京大学付属図書館のWebサイト
http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/index.html
咄嗟に私は自身の研究でもある”幼児”を対象にした博士の研究が、東京大学においてどの位行われてきたのか、あるいは、どういう内容で行われてきたのか検索しました。小児科医学系の論文をはじめ、教育学部でも結構書かれていることに心強く感じました。そして、現在教諭として登壇されている諸先生方のお名前もチラホラ見え、強い興味を覚えて夢中でチェックしてしまいました。
年代や学部により収録フォーマットが多少異なりますが、なんと、内容の要旨だけでなく、審査要旨まで閲覧可能となっています!しかも、そのコメントを行った論文審査委員の名も連ねているわけです。他人の成績表を覗き見するようなちょっとしたワクワク感!?いや、それだけではなく、当時の先生方の研究がどういう意味・価値があったのか、どういう評価で博士の学位に相当するのかが明確に書かれ、大変参考になりました。
いつか私もこの論文データベースに掲載されることを夢見て日々精進していきたいと思います。
[佐藤朝美]
2007.12.04
現在、東京大学130周年記念事業として、研究室の裏手にある懐徳館庭園が一般公開されています。
懐徳館は、旧前田侯爵邸で、総長が海外からの賓客を接待するために使われています。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1997Avantgarde/21.html
一般公開は、平日の午前10時〜午後3時です。
(3月7日まで 年末年始を除く)
場所は春日門を入ってすぐ左手です。
http://www.ut-life.net/guide/info/mon_hongo/
本郷キャンパスの銀杏は今週末が見頃です。
[山内 祐平]