2025.10.30
こんにちは。M2の山﨑聡一郎です。
今回はちょっとした「研究の小ネタ」として、私が研究時に愛用しているガジェットを紹介したいと思います。
研究活動といえば論文執筆やデータ分析など、長時間パソコンに向かう作業が避けられません。そんな日々の中で、作業環境を少しでも快適にするために導入したガジェットたちが、今では研究生活に欠かせない相棒となっています。もしかしたら同じような環境で研究されている方の参考になるかもしれませんので、恥ずかしながらご紹介させていただきます。
多ボタントラックボールマウス:狭いデスクの救世主
まず紹介したいのが、中指で操作する多ボタントラックボールマウスです。人差し指や中指でボールを転がしてカーソルを動かすタイプで、一つの指に負担が集中しにくいのが特徴です。
私の場合、手の負担を減らせるように外側に傾けて使っています。ショートカットの利用はあまりできていないのですが、長時間にわたってパソコンに向かう上では結構楽になります。手首や腕にかかる負担を軽減できるのも素晴らしいのですが、一番気に入っているのは、マウスを振るスペースが不要なので狭いデスクでも快適な点。研究室のデスクは広々としていますが、自宅のデスクは論文や資料で埋まってしまいがち。そんな状況でも、トラックボールなら本体を動かさずに使えるので、資料に囲まれながらでも作業ができます。
ボールが大きいほどテコの原理が効くので、細かい操作をするときにゆっくりボールを動かすという操作がやりやすくなります。そのため、ボールは大きければ大きいほど良いと感じています。もっとボールの大きい製品に買い換えようかと思っているところです。もうすぐブラックフライデーかあ・・・
スマートグラス:未来感溢れるモバイルワークスペース
次に紹介するのが、サングラスをかけると目の前に大きなディスプレイが広がるという未来感溢れるガジェット、スマートグラスです。
メガネ型のウェアラブルデバイスで、目の前にディスプレイを配置することで、数メートル先に大画面スクリーンが表示されているような迫力のある映像を楽しめます。研究室や新幹線移動中といった、自宅デスク外でそれなりの時間作業をするときにはこれを使って、ワイドディスプレイ+ノートパソコンのディスプレイで作業を行っています。
まだ外部ディスプレイに比べれば目が疲れますし、若干重さは感じるので、長時間の使用には向かないかもしれません。しかし、場所を問わずに大画面で作業できるのは最高です。移動中でも論文の推敲や資料の整理がはかどりますし、研究室でもわざわざ重たい外部ディスプレイを持って行ったり設置したりする必要がないので、大活躍してくれます。
欠点は、サングラスをかけて宙を仰ぐ変質者として周囲から冷たい目線を浴びることですかね。でも、作業効率のためなら多少の恥ずかしさは我慢です。あ、あとディスプレイをのぞき見される心配がないので、研究倫理の観点からも安心です←
キーボード:止まらない探求の日々
最後に紹介するのがキーボードです。論文は長時間にわたって文章を打ち込むので、今年に入ってからキーボードの沼にハマってしまいました。
自宅:メカニカルキーボード
自宅で使用しているのは、コトコトとした打鍵感が気持ちいいメカニカルキーボードです。アルミ筐体で重さが2kg近くあるので持ち運びは無理ですが、その高い質感のボディから響く音がとにかく気持ちいいので、ずっと打っていたくなる。執筆のモチベーションを上げるには最高の相棒です。
外出時:静電容量無接点方式キーボード
外出時には静電容量無接点方式のキーボードを使っています。物理的な接点を持たないため耐久性に優れており、打鍵感がよく、長時間タイピングしていても疲れにくいのが特徴です。静音性があり、メカニカル式と比較すると打鍵感は静かで、「スコスコ」という感じの打鍵音がします。カフェなどで作業するときに周りに迷惑をかけにくいのも良いポイントですね。
研究室:左右分割キーボード
研究室には左右分割キーボードを置いています。左右が分離しているので、肩を開いた姿勢でタイピングができ、体への負担が少ないんです。長時間のデスクワークでは姿勢が本当に大切だと実感しています。
最近、新しいメカニカルキーボードのクラウドファンディングに出資したり、更に小さくて持ち運びもできる左右分割キーボードを追加で購入予約したりと、完全にキーボード沼にズブズブです。
音声入力という新たな地平
そんなキーボード沼にズブズブになった昨今ですが、AIの進化に伴って音声入力ソフトが進化してきたとのことで使ってみたところ、これまた精度が高くて感動しました。
これを使ってどこまで論文を執筆するかは、書きながら記憶を整理していきたい自分にとっては未知数です。でも、大学学部時代に指導教員の先生が「最近はもう音声入力ばかり使って論文を書いていて、殆どキーボードを使わない」と言っていたことを思い出します。それを聞いたのは気づけばもう10年も前・・・最先端のはるか先を行っていた先生だなと今更ながら感じています。
キーボード沼に散財した直後に音声入力の精度向上という現実に直面して、少し複雑な気持ちですが(笑)、それでもキーボードを打つ心地よさは何物にも代え難いものがあります。用途に応じて使い分けていくのが、これからの研究スタイルなのかもしれませんね。
おわりに
以上、私が愛用している研究ガジェットの紹介でした。ちなみに今はAIボイスレコーダーと3Dプリンターが気になっています←
研究環境の改善は、小さな工夫の積み重ねだと思います。トラックボールで手首の負担を減らし、スマートグラスで場所を選ばず作業し、お気に入りのキーボードで快適に執筆する。そして、最新技術である音声入力も取り入れながら、効率的に研究を進めていく。山内研は学習環境デザインをテーマにしているだけのことはあって、結構気になるガジェットで自分の研究環境を整えている人が多い印象があります。もちろん、これらのガジェットが研究の本質を変えるわけではありません。でも、日々の作業を少しでも快適にすることで、研究そのものに集中できる時間が増えるのは確かです。
皆さんも、自分なりの研究環境を整えてみてはいかがでしょうか。意外なガジェットが、研究生活を大きく変えてくれるかもしれませんよ。
2025.10.26
みなさんこんにちは。M2の松谷春花です。
夏が終わったと思ったら、急に寒くなってきましたね。
体調に気をつけて修論を無事に書き上げることが、個人的には目下の目標です🔥
せっかくなので、修論に取り組む中での出来事や気づきについて今回は書いてみようと思います。
【学びの場にいるとき、私は研究者でいられるのか】
私の研究では、もともと実践者として関わってきた教育プログラムを対象に、その効果や、どのような要素が影響を与えているのかを調査する形で研究を進めています。
この夏は、高校生を対象としたサマープログラムに研究者として関わりながら、同時に運営スタッフとして現場に立っていました。
学部時代からプログラムの設計やメンターとして運営に携わってきたこともあり、研究者として参加者の学びを観察し、データを収集するという立場をどう取るべきかは大きな悩みでした。
一方で、それはこれまでにない新鮮な体験でもありました。
「観察する側」と「関わる側」を同時に行うことの難しさと面白さを、日々実感していました。
【実践者かつ研究者としてどう関わるか?】
研究的な視点を持ちながら実践に関わるとは、どういうことなのでしょうか。
個人的にはその切り分けがとても難しく、今年あらためて考えさせられた大きな問いでした。
研究として参加者の行動や発言を注意深く観察し、記録を取りながら、
「今、目の前にいる生徒にはどのような学びのプロセスが生まれているのか」を捉えようとしました。
ですが、目の前の高校生たちが本気で議論し、迷いながらも自分の考えを形にしていく姿を見ていると、
ただ観察するだけではいられないという思いも次第に強くなっていきました。
私はこれまで、チームに入り議論をサポートしたり、
ファシリテーターとして介入やフィードバックのあり方を探ったりしながら、
「どうすればより良い学びの場をつくれるか」という実践的な問いを中心に活動してきたように思います。
ですので、今回は“入らないようにする”ことを意識しながら、
同時に“入りたい”という気持ちの間で大きく揺れていました。
「最高の学びの体験を届けたい」という思いと、
「研究者として距離を保ちながら現象を理解したい」という思いの間で、
心の中ではずっと綱引きをしていたように思います。
そのジレンマは正直、少し苦しかったです。
でも同時に、その緊張の中にこそ、研究と実践が交わる瞬間があるようにも感じました。
私は、実践現場を研究的なまなざしで見たい、
そして実践だけではなく、そこで何が起きているのかを明らかにしたいという思いから山内研での研究を志しました。
今回の経験を通して、ようやく実感を伴ってその難しさを知るとともに、
M2になってやっとそのスタートラインに立ったのかなという気がしました。
山内研では、教育や学習の現場で実践を行いながら、そのプロセスや効果を研究する方が多く在籍しています。
それぞれが異なるテーマや方法を通じて各々のスタイルで探究しているというのは研究室の特徴である気がします。
私自身も、その一人として実践と研究の両立に挑みながら、自分のスタンスを模索していけたらと思います!
【まとめ】
データを整理していると、あのときの参加者の表情や言葉が何度も思い出されます。
表情の変化や沈黙の時間、そしてチームの中で交わされた何気ないやりとりの一つひとつが、
今になってあらためて「学び」という現象の奥深さを教えてくれているように感じます。
ですが、それと同時に研究としての分析を進めるほどに、
現場で感じた熱量や空気を言葉にすることの難しさにも直面しています。
数値やテキストデータの背後には、
その場でしか生まれなかった関係性や感情の流れがありました。
あの時の生徒が、その瞬間にどんな表情をしていたのか、どんな感情を持っていたのか、
どんな言葉を選んで発言していたのか。
自分の記憶には鮮明に残っているけれど、データとしては残せていないことがたくさんあります。
それをどう扱い、どう伝えていくのか。
この経験を通して、改めて「教育を研究する」ということの責任と奥行きを感じています。
学びの場にいるとき、私は本当に研究という視点を持てているのか。
その問いには、山内研に応募した時から少し解像度は上がりましたが、未だ明確な答えを持てていません。
けれど、その曖昧さや揺らぎを抱えながらも、
研究でしか明らかにできないことや、果たせない社会的な意義もあると思います。
そして、研究と実践が互いに影響し合うことで生まれる相乗効果も、確かにあるのではないかと感じます。
これからも、研究者としてのまなざしと、実践者としての関わりのあいだを往復しながら、
自分なりにどのような関わり方や意義があるのかを考えていけたらと思います。
とりあえずは、修士論文として第一歩を踏み出すことに集中します!
みなさまも体調にお気をつけてこれから来る寒い冬を乗り切りましょう⛄️
2025.09.22
D2の田中です。
この春〜夏にかけて、新たな学習支援システムを開発し、最近そのシステムの評価実験を行いました。
ここ最近は開発に時間をかけることが多かったので、今回はそれについて書こうと思います。
今回の開発から、本格的に開発補助として生成AIを利用し始めました。
しかし不思議なことに、AIの補助が入って自分がコードを書くコストは減っているはずなのに、開発にかかる時間や労力は一向に減らず、むしろたぶん相当増えたような気がします(AI補助を使わなかった2023年の前回の開発と比べて)。
何が起きていたのかを考えたのですが、AIにいろいろやらせてみても、結局自分が「映画監督みたいな仕事」をしないといけないので、より大変になってるんじゃないか、という気がしています。
映画監督の仕事をちゃんと知らないのでイメージでものを言いますが、一番最後にYes / Noを言う仕事というイメージがあります。
撮影や脚本を担当するスタッフがいても、最後にそれが全体の設計と矛盾しないかについてYes / Noを言う監督という仕事は別で存在する世界観なんだろうと想像します。
私はAI補助を使う開発で、何回か回答を生成したり、同時並列に複数のスレッドをつくってその返答を比較したりして、その複数のサンプルを自分が参考にして、自分が判断する、ということをやっています。
開発だろうと文章執筆だろうと、自分の研究に関わるもので、AIの出してきたものがそっくりそのまま自分のお眼鏡にかなうということはなかなか少なく、AIの出してきたものに細かくNoを説明することになります。
全体の設計と矛盾しないか、研究の意図するデザインに合致しているか、結局最終判断でYes / Noを言うのは私であり、仮に補助AIやスタッフがどんなに優秀であっても、その監督業的な仕事がなくなるわけではないようです。
むしろ、自分1人でコードを書いている時よりも、補助を入れた時の方が、その判断をする瞬間は爆発的に増えるので、だからこんなに大変だったのかもしれません。
ちなみに、開発に使った(と記録していた)GPTとのやり取りのターン数を、履歴データからカウントアップしてみたところ、7719回とのことでした。
何千回と判断し続けることは、どうしようもなく大変ではありますが、しかし少なくとも自分は、この何千回もの判断のループ無しにモノをつくれる自信はありません。
というのも、この細かいループの中で、自分が自分のつくりたいもの、もしくはつくりたくないものに気づいていくことがたくさんあるためです。
これも不思議なことですが、出来てみると、目の前で動く状態になってみると、その瞬間に、それが自分のつくりたいものではないことがわかる、ということがよくあります。
目の前に出てくるまでは、それがダメであるという視点を持たないのですが、目の前に出てきてみると一瞬でダメだとわかることがあります。
つまり、先に注文書を完全に書き切ってしまえるのであれば、AIやスタッフや業者に完全に一任し、監督業は不要になりますが、その「注文書を先に書き切る」ということが私にとっては難しく、AIにNoを説明し続ける中で自分が自分の注文(何をつくりたいのか)をわかっていくという作業が必要でした。
作りながらでないと注文書を書いていけないので、本当の意味で一任するということはできず、結局自分が全体の設計やデザインの意図を考え続け、そうでないものを判断し続けるという仕事は私に残り、この4ヶ月ほど私はそれをやっていたんじゃないかと思うようになってきました。
まとめると、AIを使った方が、使う前よりたくさん考え、判断することになるので、より時間がかかったし疲れた、というオチでした。
2025.07.07
はじめまして。山内研究室M1の松田紀子です。
今回は「山内ゼミにはどんな人が集まっているか」について書きたいと思います。ひとことで言うなら、「プロテウス」的な人が集まっています。
毎回ではありませんが、ゼミでは山内先生が事前に出してくださる文献講読課題について、皆でディスカッションする時間が設けられています。先日、その文献講読課題の中に、「プロティアンキャリア」という言葉が出てきました。1976年にアメリカの心理学者、ダグラス・ホールによって提唱された言葉で、「組織的な報酬よりも個人的な価値観に突き動かされ、その人自身、家族、そして『人生の目的』に貢献する自己決定型のキャリア」と定義づけられています(Hall, 2004, p. 2)。英語のproteanには「変幻自在な」「多才な」といった意味がありますが、語源は姿を変幻自在に変えることができるギリシャ神話の海神プロテウス(Proteus)に由来しているそうです(Oxford University Press, n.d.)。
現代社会では、どのような職業に就いていても、時代の変化に応じて柔軟かつ継続的に学び、自らスキルを磨いて主体的にキャリアを築いていく「プロティアンキャリア」が求められていると感じます。山内先生の寛容さと多様性を尊重されるお人柄を反映して、山内ゼミにはさまざまなバックグラウンドをもつ学生が集まっています。社会人の割合も高く、キャリアの多様性や各々の自律性を大切にする風土が醸成されていると感じます。
私自身も社会人学生なのですが、教育実践者でもありますので、このゼミでの様々な学びは、私にとって特別な時間となっています。残念ながら遠距離通学のため、体力的に辛い時もありますが、ここでの出会いに感謝しながら、「プロテウス」的な人を目指していきたいと思っています。
Hall, D. T. (2004). The protean career: A quarter-century journey. Journal of vocational behavior, 65(1), 1-13.
Oxford University Press. (n.d.). Protean. In Oxford Learner's Dictionaries. Retrieved July 7, 2025, from https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/protean?q=protean
2025.07.07
皆様はじめまして、山内研M1の飯島洋輔です。
今年の春より山内研究室に加わりまして、「学校教育で学んだ内容を学校以外の文脈でも使用できるようになることを補助するシリアスゲームの開発」というテーマで研究をしています。
今回は「研究小ネタ」として、文献整理に役立つツールをいくつかご紹介します。
山内研究室ではM1の間は基本的には文献レビューに注力します。山内研究室では、比較的自由に自身の研究テーマを探求できる一方で、その分野の先行研究を網羅的に把握することが求められます。先行研究レビューを丁寧に行うことで、適切な研究手法の選定や、自らの研究の新規性・独創性を示すことが可能になるため、これは研究計画を立てる上で不可欠なステップです。
私自身、学部生の頃は文献整理をしっかりしていなかったのですが、研究室の先輩方がきれいに文献を整理しているのを見てその考えを改めました。今回ご紹介するのは、大学院に入学してから私自身が耳にしたり、実際に試したりしたツールです。あくまで個人の使用感に基づいた紹介ですので、ご自身の研究スタイルに合うツールを見つけるための一助としてご覧ください。
1. Google スプレッドシート (Google Sheets)
Google WorkspaceやGoogle for Educationを導入している大学に所属している方にとって、最も手軽なツールでしょう。論文のタイトル、著者、発表年といった基本的な情報に加え、タグやメモを書き込むことで、簡易的なデータベースとして活用できます。最大の利点は、他の研究室メンバーや指導教員との共有が非常に簡単な点です。共同研究や研究相談の際に、同じリストを見ながら議論を進めることができます。
2. RefWorks
文献データベースで知られるProQuest社が提供する、高機能な文献管理ツールです。学生の場合は大学図書館を通して無料で利用できる場合があります。PDFファイルをアップロードして管理できるほか、フォルダやタグでの整理も直感的に行えます。特筆すべきは、参考文献リストの自動生成機能です。APAをはじめ主要な引用スタイルに対応しており、論文執筆の手間を大幅に削減してくれます。
3. Paperpile
このリストの中では唯一の有料ツールですが、研究室内外で利用を推奨されることが多い、非常に評判の高いツールです。私自身はまだ試せていませんが、Google Scholarや各種データベースからワンクリックで文献情報を取り込める機能や、Google Docs上でシームレスに引用・参考文献リストを作成できる連携機能など、その利便性は研究の効率を格段に上げてくれると評判です。
4. Notion
近年、情報整理の定番ツールとなりつつあるNotionも、文献管理に非常に有効です。その魅力は、何と言ってもカスタマイズ性の高さにあります。データベース機能を使えば、スプレッドシートのように一覧表を作成し、タグ付けやステータス管理(例:未読、精読中、読了)が可能です。また、各文献ページに詳細なメモを残せるのも大きな利点です。Markdown記法はもちろん、Mermaid記法で図を挿入したり、関連する論文ページへリンクを張ったりと、思考を整理しながら知識を体系化できます。
5. Obsidian
ローカル環境で動作する、Notionと似た使用感のメモ・知識管理ツールです。Notionとの大きな違いは、オフラインで快適に利用できることと、「グラフビュー」機能でノート間の繋がりを視覚的に表示できる点です。各論文のノートを作成し、引用・被引用関係をリンクで繋いでいくことで、研究分野の全体像や論文同士の関連性を直感的に把握できます。研究領域を俯瞰的に理解したい場合に特に力を発揮します。ただし、複数人での共有機能は有料プランでの提供となります。
6. FigJam
これは文献管理ツールではありませんが、Figma社が提供するオンラインホワイトボードツール「FigJam」も、使い方次第で強力な味方になります。特に、複数の研究潮流がある分野で、論文間の関係性をマインドマップのように可視化したい場合に便利です。論文を付箋のように貼り付け、引用関係を線で結び、時系列に並べることで、どのような研究が行われてきたのかを可視化できます。ただし、手作業がメインになるため時間と労力がかかる点、そしてあくまでホワイトボードツールであるため、より詳細なメモも残すために他の文献管理ツールとの併用が推奨される点には注意が必要です。
今回紹介した以外にも、便利なツールはたくさんあります。研究室の先輩方が紹介している他のツールなども参考に、ぜひご自身に合ったものを見つけてみてください。
この情報が、皆さんの研究生活の一助となれば幸いです。
2025.07.04
こんにちは。D1の入澤です。
修士論文をなんとか無事に書き上げ、博士課程に進学することができました。一つ研究をやり終えたことで、また一歩研究者として成長できたように感じています。より良い研究ができるように、博士課程でも頑張っていきたいと思います。
さて、自分が修士課程に所属している間にもAIがメキメキと進化を遂げ、より一層社会の中に浸透しているのを感じます。少し前になりますが、DeNA会長の南場さんの企業におけるAI活用についての以下の記事がX上などでも頻繁に流れていました。
https://fullswing.dena.com/archives/100153/
研究の世界でもAI利用が当たり前になりつつある
研究の世界でもAI利用が当たり前になりつつあることを感じます。
以下の記事にある通り、OpenAI社はキャンペーンとして北米の大学生へのChat GPTplusの無償提供を行っているようです。
https://newscape-lab.com/news/20250406/
また、GoogleのGeminiも最近大学生向け無料キャンペーンを行っていました。
大学生レベルからAIを使うことがより一層当然になっていく流れは不可逆なものでしょう。
AIを使うことが当然となっていく研究の世界でAIを使わずにいること自体が、自分の生産性を低いままにしてしまうリスクになると最近よく感じます。私自身もAIを活用して論文をより短時間で読めるように工夫しています。以下の記事は参考になります。
https://compass.readable.jp/2024/04/17/post-26/
とはいえ、AIを研究に「どう使うか」については、まだまだ模索が必要だと感じています。便利なのは間違いない。でも、「楽をするため」ではなく、「より深く考えるため」にどう使えるかを考えることが重要なのではないでしょうか。
AIは研究のどこで使えるのか?
まず、研究のプロセスを大まかに分けてみると、以下のようなステップがあります。
・問いを立てる
・先行研究を調べる
・調査設計をする
・データを集める
・分析する
・論文としてまとめる
この中でAIが使える場面を見てみると、意外と多くあります。
・文献調査: ChatGPTやElicitを使って関連文献の概要を把握したり、レビューの構造を整理したりできます。
・分析: RやPythonのコードのサンプルを生成させたり、エラーの原因を見つけたりといった「壁打ち」として非常に有用です。
・文章作成: 英語で論文を書く際には、自然で読みやすい言い回しを提案してくれるAIツールが役立ちます。
また、データ整理や表の作成、パワポ資料のたたき台など、ちょっとした作業の時短にもかなり助けられています。
それでもAIに「全部任せる」のは危ない
一方で、リスクももちろんあります。AIは万能ではありません。
・間違った情報をそれっぽく言う問題(ハルシネーション)
→ あくまで「参考意見」くらいに捉えるのが大事。うのみにしない。
・考えを代行してしまう問題
→ 自分で悩んで考え抜くプロセスを、AIにショートカットさせすぎると、研究者としての「思考の筋肉」が落ちてしまう。
・倫理やオリジナリティの問題
→ AIをどこまで使ったかが不透明になると、論文の独自性や倫理性が問われます。
AIの特性を理解し、その上で我々は活用する必要があります。
AIは「道具」であり、「共創の相手」
個人的には、AIはただのツールというより、アイデアを広げたり反論をくれたりする“壁打ちの相手”のような存在だと感じています。ある意味、共同研究者と対話しているような感覚になることすらあります。もちろん、最終的に責任を持って考え、判断するのは人間。だからこそ、「問いを研ぎ澄ますためにAIを使う」という姿勢が大切なのだと思います。
パラダイムシフトの只中にいる
今、私たちは間違いなく、研究のやり方そのものが変わるパラダイムシフトの真っ只中にいます。タイプライターからワープロになったとき、電卓からExcelになったときと同じように、AIによって研究のリズムや思考のスタイルが変わっていく。
でも、それは「機械に研究を任せる」という話ではありません。むしろ、「人間が人間らしい問いを立て続けるために、AIの力を借りる」──そんな未来の研究スタイルを、今私たちは形づくり始めているのかもしれません。
博士課程という「問いと格闘する時間」の中で、AIとどう付き合っていくか。この問いそのものが、今の自分にとっての重要な研究テーマでもあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ちなみに、後半はAIに文章の叩き台を作成してもらっているのですが、気づきましたか?
入澤
2025.06.01
こんにちは。山内研究室M2の李佳誠です。
今回は、「大学院生活M1の時間の使い方」について、自分の体験をもとに綴ってみたいと思います。
大学院に進学すると、学部時代とは異なり、時間の使い方に対してより強い自己管理能力が求められます。研究や授業に加え、就職活動やアルバイト、健康管理といった課題もあり、限られた時間をどう使うかによって、日々の充実度や学びの深さが大きく左右されると感じています。
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授業と研究は日ごとに分けて取り組む
M1では、主に大学の授業の履修と文献レビューを中心とした研究活動に時間を使っています。私の場合、授業と研究の効率を高めるために、「授業を受ける日」と「研究に集中する日」とを明確に分けて過ごすようにしています。
授業日には、2限から4限まで隙間なく授業を詰め込み、移動や空き時間のロスを最小限に抑えるよう心がけています。そして、授業の後は無理に研究を詰め込まず、身体を休める時間やリフレッシュの時間として活用します。たとえば、ジムに行って筋トレをするなど、体力の維持・向上のための活動を取り入れています。
健康管理は意外と見落とされがちですが、大学院生にとっては極めて重要な課題だと実感しています。心身の状態が安定していなければ、研究のパフォーマンスにも影響が出ますし、長期的に持続可能な学習・生活リズムを築くうえでも、体調管理は欠かせません。
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授業はM1のうちに取り切るのがオススメ
私は、授業の単位はM1のうちにすべて取得することを意識して履修計画を立てました。というのも、M2になると、研究が本格化するだけでなく、就職活動や進学準備などの課外タスクが一気に増えることが予想されるからです。
M1の段階で授業を集中して履修しておくことで、M2では研究やキャリアに集中でき、スケジュールにも精神的にも余裕を持つことができます。私自身、先輩方のアドバイスを参考にしながら、早い段階でこの方針を決め、実践してきました。
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研究日は朝から夕方まで、文献レビューを軸に
授業がない「研究日」には、朝9時から夕方6時ごろまでを研究にあてています。特にM1の段階では、文献レビューが研究活動の中心となります。私の場合、研究日は以下の4つの段階に分けて作業を進めています。
1. 文献の方向性決定
2. 文献探索
3. 文献読解
4. 文献整理
最初のステップである「文献の方向性決定」では、自分の関心だけでなく、これまでの研究発表でいただいたコメントや、ファシリテーターからのフィードバックを参考にして、一日のテーマや観点を設定します。この段階がしっかりしていないと、文献探索に無駄が出てしまうので、地味ですが非常に重要なプロセスです。
次に文献探索では、大学の図書館や学術データベースを活用して、キーワードを頼りに関連資料を収集します。その後の読解フェーズでは、抽象的な概念や理論的背景を理解するために、時間をかけてじっくり読み込みます。
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文献整理の失敗から学んだこと
文献整理については、私自身、最初はあまり意識せずに進めていました。その結果、読んだことを忘れて同じ文献を何度も読んでしまったり、どの観点で読んだかを記録しておらず、必要な文献をすぐに見つけられなかったりといった問題に直面しました。
この経験を通して、現在では、文献ごとに要約・キーワード・評価・引用箇所などを整理したノートやデータベースを作成し、レビューの効率と質を高める工夫をしています。文献整理は、研究の「地図」をつくるような作業です。時間はかかりますが、長期的に見ると極めて重要なステップだと実感しています。
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最後に:時間の使い方を通して、自分を知る
大学院での時間の使い方は、単に「忙しさをどう乗り切るか」だけでなく、自分の価値観や研究観と向き合う営みでもあると感じています。「何に時間をかけるか」「どの時間帯に集中できるか」「余白をどう使うか」などを考えることで、自然と自分のスタイルが見えてきます。
M1の一年は、自分自身のリズムをつくるための大事な準備期間です。これから大学院に進学する方、あるいは研究生活に悩んでいる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
2025.05.10
こんにちは、山内研M2の山﨑聡一郎です。
入学してから早くも1年が経ちましたが、今回は「大学院生活での時間の使い方」をテーマに、社会人大学院生として複数の仕事と研究を両立している私の日常をご紹介したいと思います。
劇団四季との両立失敗?談
私が東大院は大学院2つ目だという話はこれまでの記事で繰り返し述べてきましたが、実は前の大学院に所属していた頃も、劇団四季での出演と両立しながら大学院生をしていました。当時は研究というものへの習熟度が低かったこともあり、修了に3年を要してしまいました。稽古と公演のスケジュールに追われながら、限られた時間で研究を進めていくのは思っていたよりも大変だったのです。でも、そんな失敗経験があったからこそ、今は幾分うまく時間を使えているのではないかと感じています。
前の大学院では合唱サークルにも入っていて、大学生の延長のような気分でした。今は会社を経営していることもあってサークルには入っておらず、ゼミと授業に集中しています。ただ、その会社で合唱団運営をやっているので、結局やっていることは変わらない気もします。
アウトプットからインプットへ
前の大学院を修了してからは、講演をしたり本を書いたりというアウトプットをすることが続いていました。その中でこども家庭庁ができるなど子供を取り巻く環境が変わり、いじめ問題についても改めてインプットをしながら、新しい解決策を提示していきたいという思いが募りました。
正直なところ、10冊以上の書籍を執筆したことでアウトプットをし尽くしてしまった感覚もありました。子どもを取り巻く状況に最新の知見を提供して貢献し続けるには、自分自身がもっとインプットをしつつ新たな知見を生み出さなければならないと感じたのです。そんな思いから、もう一度大学院に行くことを決意しました。
5年間で変わった研究環境
前回の大学院生活から5年間で大きく変わったなと思うのは、AIの発達です。論文を生成AIに要約してもらったり、まだ発見できていない先行研究を収集してもらったり。その分従来よりも世界中の、それこそ日本語と英語以外の言語で書かれた文献も調査する必要性が高まっているので、楽になったかというと微妙ではありますが、研究の充実度は確実に高まっています。
ただ、整理すべき文献の絶対量は飛躍的に増加しているので、情報処理能力や整理力は従来より必要になったと感じます。
もう一つの大きな変化は、オンライン授業が相当に増えてきたことです。もちろん対面でしか履修できない授業も少なくはありませんが、対面が前提だった頃に比べれば大きな変化です。出張していても、遠方に旅行していても授業が受けられるのは社会人大学院生としては画期的です。
普段の私のスケジュール
普段のスケジュールは、朝10~12時までを授業がある日は仕事に、仕事がメインの日は研究を進めています。日中は授業・ゼミが中心で、授業・ゼミがない日は仕事で演劇・演奏会の稽古が入ったり、運営している学習塾の授業が入ったりで夜まで過ごします。
会社経営者は労働者ではないので、毎日トータルでは10時間くらい働きます。そう言うとブラック感がありますが、途中で30分くらいの昼寝も欠かさず、自由度は高いです。仕事の日も2時間は研究時間を確保しており、これを週7日続けています。完全にオフの日は月に2日あるかないか。休日なしで大丈夫かと言われることもありますが、仕事も研究も私にとっては趣味的な側面があるので、それぞれがそれぞれの息抜きになっています。
通学日は週2日程度ですが、予定がない日は大学に行くとモチベーションが高まって研究が捗るのでキャンパスに行きます。東京大学の雰囲気は研究のモチベーション向上にとても良いですね。
ただ、余暇の時間と筋トレの時間は別腹です。日中の1~2時間くらいはジムに行って筋トレ。舞台に立つ仕事なのでボディメイクは仕事の内です。ボイストレーニングや次回出演に向けた自主練習もやります。日付が変わったらゲームしたり、晩酌したりといった余暇の時間を死守しています。起床は10時、就寝は深夜3時という生活なので、一般的な社会人とはズレがあるものの、何気に7時間睡眠は確保しています。
改めて考える「文武両道」
まだ就職していないフルタイムの大学院生は、私が仕事をしている時間もみっちり授業と研究に使えます。修士課程は履修すべき授業が多いので正直その方が余裕が持てて良いと思います。ただ、私は飽きっぽい性格なので、フルタイム大学院生ができた頃もなかなかそういう訳にはいきませんでした。今の生活の方が性に合っていると思います。一つのことに集中することが得意な人も、複数のことを同時進行で進めたい人もいると思うので、ここは個々人の適性だと思います。
ただ、いずれにしても大学院は自らの学びたいことがあって来る場所だというのは改めて思います。研究が好きなら社会人でも両立は何とかなる。仕事も大変だし研究も大変だけど、「好き」で乗り越える。山内研の場合はフィードバックが的確で作業課題がいつも明瞭なので、「やるべきこと」で悩むことは自分の場合はありません。
社会人大学院生をはじめて改めて思い起こすのは、「文武両道」の重要性を繰り返し説かれた高校時代のことです。先生や先輩から、「部活だけをやってて部活が強いのは当たり前だ。俺たちは部活も勉強もできるから評価されるのであって、片方しかできないのは駄目だ。」「文武両道とは文武両立とは違う。両立はうまく折り合いをつけて両方を良い感じにする妥協的な考え方だ。両道は、両方を極めること。」と言われてきました。このような考え方は誰にでも当てはまるわけでは無いと思いますが、私自身にとっては都合の良い考え方だなと思います。
仕事と研究の両方を極めて、両方で成果を出す。何なら、それぞれで相乗効果を発揮することを目指して、引き続き仕事と研究の両方に取り組んでいきたいと思います。
社会人として大学院に進学することを検討している方へ。確かに時間のやりくりは大変です。でも、研究への情熱があれば、きっと道は開けます。山内研には、さまざまな背景を持つ仲間がいます。そして、一人ひとりの状況に寄り添ってくれる研究指導体制があります。「もう一度学びたい」という思いがあるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。きっと充実した研究生活が待っていると思います。
そうだ、5月22日には研究室入試説明会も開催します。ぜひ大学院生活に対する疑問や不安があれば、気軽に相談してくださいね!
【お知らせ】大学院夏期入試研究室説明会
2025.04.22
皆さんこんにちは,山内研M2の松谷です.
新学期が始まりました,新しい生活が始まり慌ただしく日々が過ぎていきますね.
今回は,来年度の入試説明会もそろそろ行われ出す時期ということで,山内研究室ではどんな研究ができるのかを紹介しようと思います.
山内研については過去の先輩方が色々とまとめてくださっています.全体像を知りたいという方にはこちらのまとめ記事を参照いただければと思います.
【5月11日入試説明会に行く前に!】山内研の魅力とは!? - Ylab 東京大学 山内研究室
今回は,具体的にどんなテーマでの研究がされてきたのかに焦点を絞ってご紹介します!
「学び」をテーマに集まっている,と言っても学校の中に限りません.読書,音楽,仕事,余暇,ICT,演劇…などなど,学びの場や方法は多様です.
そこで今回は,2016年以降に先輩たちが取り組んできた修士論文のテーマをもとに,どんな学びを扱ってきたのかざっくりと4つのカテゴリに分類して紹介してみます!
*大まかに分類したため,他の切り口でもっと違う分け方もあるかもしれません.気になる方はぜひ研究室に足を運んでみてください.
■ 学習支援・教材開発・教育デザイン
学びを促すシステムや授業,教材のデザイン・開発を通じて,学びの可能性を広げる研究テーマ
・プログラミング学習におけるTinkeringの支援〜建設的試行錯誤を促すシステムの開発〜
・文字式におけるプロセプト的思考の獲得を支援するゲーム教材の開発と評価~数学苦手者を対象として~
・科学に対する個人的レリバンスを向上させるための教材開発と評価
・探究学習の課題設定を支援する授業の開発と評価
・アカデミックライティングの構造的統合化を支援するシステムの開発と評価
・大学生の研究室選択を支援するシステムの開発と評価
・タブレット端末向けアプリケーションを用いた幼児の模倣と音づくりの支援
■ 学びの経験・学習過程の質的理解
実際の学びの現場に入り込み,そこにある感情や動機,他者との関係を描き出すような研究テーマ
・テクノロジークラブにおける学習とIT技術者の関わりのエスノグラフィー
・アマチュア・オーケストラ団員たちの興味の深まり――余暇における追求と学習環境
・成人を対象とした読書活動におけるフロー体験に関する研究
・読書経験の共有を通した興味探索の支援に関する研究
・グラフィックファシリテーションが対話に及ぼす効果に関する記述的研究
・デザイン系産学連携プロジェクトにおける学生の経験と学習成果に関する研究
・応用演劇におけるファシリテーションの熟達化に関する研究―プログラム実施時の思考に着目して―
■ 教育実践プログラム・ワークショップの評価
実際に実践された教育プログラムやワークショップの設計やその効果を評価する研究テーマ
・中学生を対象とした正課外活動における社会情動的スキルの向上に関する評価ーUWC ISAK Japanのサマースクールを対象としてー
・鑑賞と表現を架橋する音楽ワークショップの評価研究
・異文化間感受性を高める学習プログラムのデザイン −生徒の傍観者的態度に着目した事前学習の検討−
・証言的対話に基づいたアライの教育プログラムの開発
・価値創造教育がアントレプレナー的態度に与える影響
■ 社会的・心理的プロセスの理解
人が何かに向かう時の内面(モチベーション,レジリエンス,感受性など)や他者との関係性を探る研究テーマ
・大学進学を果たした不登校経験者の学習活動に関する探索的研究
・自己評価と他者評価の調整過程に関する探索的研究
・若年労働者のレジリエンスの発揮に寄与する他者からの働きかけに関する研究
・EFLでの会話を促進する事前学習に関する研究
・教室外活動と日本語学習意欲に関する考察ー台湾における日本語学習者に着目してー
・ICTを用いた英語個別学習指導に関するデザイン研究:学習意欲に着目して
■ 最後に・・・
今回は,過去の先輩方の修士論文のテーマをまとめてみました.分類するのが難しい程,それぞれのテーマは多様で,切り口も方法も異なります.学際的に学びを取り扱うことができることを少しでも感じてもらえたら幸いです.他のブログ記事や,これから投稿される記事でも研究室の様子を覗くことができると思います.
補足:今回はテーマから分類しましたが,研究室では「学習を加速する人工物」,「学習を支える共同体」,「創発的な学習活動」,「学習を誘発する空間」という切り口で各研究テーマをまとめてポスターにしています.今年度の更新バージョンは入試説明会で掲載される予定です.ぜひ気になった方は足を運んでみてくださいね!
【参考】
2024 - 東京大学大学院 情報学環・学際情報学府
こちらに学際情報学府の過去の論文テーマは公開されています.公開情報から今回の記事をまとめました.
2025.04.08
皆さま、こんにちは。M2の李佳誠です。
研究計画書の修正作業に追われ、少し報告が遅れてしまいましたが、今回は静岡県静岡市で実施された春の合同研究会についてご報告いたします。
これまでのブログでもご紹介しているとおり、山内研究室では毎年、夏と春に研究会を実施しています。夏の研修では学習科学の古典理論に焦点を当てたプログラムが中心となっているのに対し、春の研修では、修士課程修了予定の先輩方から、研究の進め方やキャリア形成に関する経験を共有していただくことが主な目的となっています。
【1日目】
今回は、同期の山﨑さんのご紹介により、静岡県立大学の国保先生のゼミを訪問する機会をいただきました。
国保先生は経営学をご専門とされており、ゼミでは「産学連携」を主要なテーマとして研究されています。
静岡県立大学にて、国保ゼミと山内ゼミによる合同ゼミを開催し、経営学と教育工学の両視点から、産学連携の事例や課題について活発な意見交換を行いました。
まず、国保ゼミの皆さまからは、経営学や組織マネジメントの視点から、学部3・4年生が取り組んだ静岡県内の企業・団体との産学連携プロジェクトについてご紹介いただきました。また、ゼミ運営の工夫や、進路選択、研究手法に関するお話なども伺うことができ、大変刺激を受けました。
続いて、山内ゼミの先輩方からは、教育工学の立場から、山内研究室がこれまで連携してきたGoogle、SCSK株式会社、マイナビとの産学連携の事例をご紹介いただきました。産学連携上での注意点や、研究者にとってのメリットなど、具体的な経験をもとに貴重な示唆をいただきました。
【2日目】
研究会2日目の前半では、修士課程を修了される先輩方の研究成果をもとに、学習環境研究における多様な研究手法(質的分析・量的分析など)に関する講演とディスカッションが行われました。さまざまな方法論への理解を深めるとともに、自身の研究への視野も広がりました。
また、先輩方がアカデミックキャリアについてどのように考えているのか、今後の進路や人生設計についても共有してくださり、学者としての役割や使命、研究を続けることの意義について改めて考える機会となりました。
合同ゼミや講演に快くご協力いただいた訪問先の皆さまのおかげで、非常に充実した2日間を過ごすことができました。普段ではなかなか得がたい貴重な経験を通して、自分自身を見つめ直す良いきっかけにもなりました。
改めまして、訪問先の皆さまに心より感謝申し上げます。