2024.12.20

研究と社会実装を考える(M1山﨑聡一郎)

M1の山﨑聡一郎です。
今春のブログで触れたとおり、私は2つの大学で学び、社会人を経て3つ目の大学として東京大学に入りました。様々な研究環境を経験する中で、研究と向き合う哲学のようなものにもいくつか触れてきました。
それぞれが意義深いものだなと感じる一方、それらには一見すると矛盾のようなものも含まれているように感じ、自分の中で今ひとつ折り合いをつけられずにいました。

東京大学に入学して半年、様々な学生や先生、そして学びに触れる中で、自分の中で「なるほど」と思えるフレームワークに出会えたので、今更と感じる人もいるかも知れませんが、この記事でご紹介したいと思います。



異なる研究文化との出会いと葛藤


いくつかの大学に身を置く中で、私が直面した最も大きな課題のひとつは、異なる研究文化との出会いでした。
最初の大学では、研究に対する考え方が非常に実践的でした。例えば、入学直後の授業では「社会が抱える問題を見つけ、それを解決するための知識や技術を逆算して習得する」という哲学が強調されていました。この経験は、研究の意義を常に現実と結びつける重要性を教えてくれました。私の最初の研究が法教育副教材「こども六法」と法教育教材「こども六法すごろく」の開発に向かったのは、すぐに社会実装できるプロダクトを形にすることを何よりも重視していたからに他なりません。当時の私は、研究は社会実装による社会還元を前提とするものだと考えていたのです。

しかし、次の大学院で出会った研究文化は、まったく異なるものでした。そこでは、「研究の意義は先行研究に付加する知見の積み重ねそのものであり、社会実装は必ずしも研究者の責任ではない」という考え方が主流でした。最初はこの哲学に戸惑いましたが、徐々に先行研究を深く掘り下げ、その中から新たな課題を見つけることの重要性を実感しました。これにより、研究の多面性を理解し始めましたが、一方で異なる哲学を持つ環境に身を置くことで、内心で矛盾を感じる場面も多くありました。



学問の意義に関する考察


昨今の社会では学問、ひいては大学の意義について議論が活発化しています。大学は企業に就職してから役に立つ人材を育成するべきだ、のような主張を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。国家予算の使途を検討するに当たっても「選択と集中」というキーワードがしきりに取り上げられ、まるで役に立つ研究と役に立たない研究とが予めわかっているかのようです。いや、そういった議論をする人たちにとっては、例えば「ロケットを打ち上げる宇宙工学は役に立つが、宇宙の謎を解き明かす天文学は役に立たない」のように、社会実装との距離を鑑みてその意義を判定しようとしているのかも知れません。しかし言うまでもなく、この二つは切り離せないものです。

宇宙工学の進歩は天文学の知見なしには成し得ません。ロケットが向かう宇宙空間の特性を理解するには、天文学的な研究が必要不可欠です。人間の発達段階や精神・心理の性質を理解しなければ子どもの年齢・学齢に応じた適切なカリキュラムを設計することはできませんし、画像生成を支援する技術としてのGPUが仮想通貨のマイニングやAIの運用で注目を浴びているように、特定の研究成果や技術が予期しなかった発見や時代の潮流によって、当初の想定とは全く異なる形態や程度の脚光を浴びることもあります。このように、役に立つ学問とそうでない学問の境界線を引くことは、極めて難しいのです。



研究の分類と自己分析


東京大学で学ぶ中で、研究には3つの型があるという提言を知りました。それは、ボーア型(基礎研究)、パスツール型(基礎と応用の融合)、エジソン型(応用研究)です。この提言は、ドナルド・ストークスが提唱したQuadrantモデル(『Pasteur’s Quadrant: Basic Science and Technological Innovation』1997年Brookings Inst. Pr.)に基づいており、研究の性質と目的を基準に分類されています。

振り返ってみると、私の学部時代の研究はエジソン型に近く、実用的な社会実装を目指すものでした。実際に、現在世に出ている私の著書は、学部時代の研究の延長にあるものが殆どです。一方、前の大学院ではボーア型の基礎研究に近い性質の研究をしていたと感じています。その研究では、いじめに直面した生徒の援助要請行動の促進要因と阻害要因、ザックリといえば「子どもはいじめに直面したとき、どういう経験を重ねていればSOSが出しやすくなるのか」ということを調査したのですが、「だから先生はこういう取組をしましょう」のような提言までが研究で完結していたわけではありません。

現在の東京大学での研究は、まだ模索中ではありますが、エジソン型か、場合によってはパスツール型に向かうのかなと感じています。この分類それ自体が研究を後押ししてくれている訳ではないかも知れませんが、自分の研究スタイルを客観的に捉え、今まで感じていたモヤモヤを整理することができました。



東京大学での学びと多様性


翻って学際情報学府での学びを思い返すと、多様な研究背景を持つ学生や研究者との交流を通じて、自分の研究を多角的に見つめ直す貴重な機会を得たと感じています。以前は、自分と同じテーマを追う仲間がいないことに孤独を感じていましたが、今では、異なるテーマに取り組む人々が多くいるからこそ刺激を受け、学びを得ています。
東京大学という環境は、自分の研究を深めるだけでなく、学際的な視点を得て新たな可能性を見つける場でもあります。この環境を最大限に活用し、多様な視点を取り入れながら、研究が社会にどのような影響を与えるかを模索し続けたいと考えています。


Donald E. Stokes “Pasteur’s Quadrant: Basic Science and Technological Innovation” (1997, Brookings Inst. Pr.)
高田仁『「パスツール型」研究者と大学発ベンチャーの関係性に関する考察』研究 技術 計画, 2020, 35巻, 3号, pp305-315

2024.12.12

大学院生活における自己調整学習について -M1段階-(M1李佳誠)

皆さん、こんにちは。山内研究室M1の李佳誠です。気づけば、M1として過ごす時間も残りわずかとなりました。本日は、M1段階において大学院生活を送る上で、どのように自分の自己調整学習を促進するかについて、自分の視点からお話ししたいと思います。

自己調整学習とは、学習者が自分自身の学習目標を達成するために、認知・感情・行動を体系的かつ自発的に方向づけ、維持していく過程のことです(Zimmerman&Schunk, 2011)。簡単に言えば、先生や親から求められて勉強するのではなく、自分で目標を設定し、計画を立てて学習に取り組むことを指します。大学院生活では、学部時代と比べて、自己調整学習の能力がより一層求められると感じています。たとえば、学部時代に比べて授業の数が少なくなり、自由な時間が増えることが挙げられます。この自由な時間をどう活用するかが非常に重要です。遊びに流されることなく、自律的に自分の修士研究に取り組む必要があります。しかしながら、すべての人がこの自由な時間を効率的かつ自律的に活用できるとは限らず、自己調整学習がうまく機能しないケースも少なくありません。その結果、修士課程を順調に修了できない場合も見られます。以下、M1段階において、どのように自己調整学習を促進するかについての経験を皆さんと共有したいと思います。

1. ファシリテーターとの学習計画作り
まず、ファシリテーターとともに学習計画を立てることの重要性についてお話しします。山内研究室にはファシリテーター制度があり、博士課程の先輩がM1の勉強や研究活動をサポートしてくださいます。私の場合、ゼミ発表の後にファシリテーターと話し合い、次の1か月間の学習計画を相談しています。この際、非常に細かい計画を作るわけではなく、1か月の中で取り組むべき主な内容や方向性を確認します。ファシリテーターは具体的なアドバイスをくださるだけでなく、必要に応じて計画を修正してくださり、大変心強い存在です。さらに、ゼミ発表の1週間前には、1か月間の成果をファシリテーターと確認し、最後の1週間で何を重点的に学ぶべきかを決定します。これにより、自分が何をやるべきかが明確になり、目標に向けた安心感やモチベーションが高まるのを感じています。

2. 学習場所の選択
そして、自分に相応しい学習の場所で勉強することです。教室の広さや照明などの環境的および地理的要因は、学習成果を高める重要な要素として特定されています(Yar & Shaheedzooy, 2023)。このような物理的な要因のみならず、雰囲気という感覚的要因も存在していると考えています。例えば、自分の場合では、家では「休憩」の雰囲気が強く、家で休むことが多いです。一方、学校では「勉強」の雰囲気が強く、ここで勉強すれば、より効率的に勉強できると感じています。したがって、勉強する前に、場所の属性をきちんと考え、自分にとって一番「勉強」の雰囲気が強い場所を選んだ方が良いと考えています。

3. メリハリをつけた学習
最後に、学習にメリハリをつけることです。M1段階では、毎月1回ゼミで研究発表が求められます。発表の準備には、1か月間の研究成果をまとめ、資料を作成する必要があります。最初の2~3週間を無計画に過ごし、最後の1週間で集中して資料を作成する方法をとる人もいますが、私はこの方法をお勧めしません。なぜなら、短期間で焦って資料を作成すると質が低くなり、発表時に十分なフィードバックを得られないからです。また、M1段階では、単に勉強するだけでなく、「熟考」する時間も必要です。たとえば、学んだ内容が自分の研究目的にどう関連するのか、新規性のある課題は何かを深く考えることが求められます。慌ただしく作成した資料では、この「熟考」が不十分となり、結果的に貴重な機会を浪費してしまうこともあります。

そのため、メリハリをつけて計画的に取り組むことが大切だと考えます。私の場合のスケジュールは次のようになります。
1. 最初の1週間:研究の方向性を明確にし、文献リストを作成する。
2. 2~3週間目:文献を読みながら、発表資料を徐々に作成する。
3. 4週間目:ファシリテーターと相談しながら、資料を修正する。

このようなスケジュールで取り組むことで、焦ることなく、質の高い発表資料を作成することができます。

以上、ファシリテーターとの計画作り、学習場所の選択、そしてメリハリをつけた学習についてお話ししました。これらの取り組みは、自己調整学習を実践する上で非常に有効だと感じています。皆さんが充実したM1生活を送れるよう、心から祈っております。


ZIMMERMAN, B. J. and SCHUNK, D. H. (2011) Self-Regulated Learning and Performance:
An Introduction and an. Overview. In ZIMMERMAN, B. J. and SCHUNK, D. H. (Eds.). Handbook of Self-Regulation of Learning and Performance. Routledge, New York(塚野州一訳(2014) 自己調整学習:序論と概観.塚野州一,伊藤崇逹監訳 自己 調整学習ハンドブック.北大路書房,京都,pp.1-10).

2024.11.07

大学院は大変?私の研究生活を支えている3つ(D3 岩澤)

先日、ある学部生の後輩から「大学院で研究したいけど、孤独で大変そう。やっていけるか心配です」と相談を受けました。
 
大学院に進学を決めた当時の私は、そうした不安を特に意識していませんでしたが、大学院での学びも5年目を迎えた今の私は、「まあ、そうだね」と思わず共感する部分もあります。
 
世間では、「大学院はずっと学生気分のまま好きなことだけ学べていいね」と思われがちですが、実際には、院生の4割が研究の過程でメンタルヘルスの問題を抱えているというデータもあるらしいです(Evans et al., 2018)。一般の人に比べて高い割合で「大変」な側面を抱えている可能性があります。自分の経験や周りを見ても、大変な時期を経験している人は少なくありません。
 
それでも私は、「楽しいよ、本当に興味を持っていることをテーマにできたら。あとは、自分なりの研究スタイルで乗り越えていくしかないかな」と答えました。
 
この記事では、私が乗り越えるために工夫していることを少しご紹介したいと思います。
 
 
1. 自分の特性を知る

大学院には本当に多様なタイプの人がいます。

ロジックとセンスでどんどん研究を進める人、24時間論文をニヤニヤしながら読み続けていそうな人、現場の実践と観察の視点が抜群におもしろい人、ずっと喋って思考を深めるのが得意な人、天才的な文章で論を展開する人…。
   
私の場合は、論文を読むのも好きですし、現場での実践も楽しんでいます。一方で、うまく論を組み立てられない時や、執筆をしなければならないフェーズでは、しんどくなってしまいます(うまくやってる得意な人と比べて、「もう無理」と思ったことは何度もあります)。
  
なので、得意な現場での活動(私の場合は学校での授業など)は、どんな時期でも必ず持つようにしていました。執筆に追われていても、そうした「得意」の瞬間を作っておくと、気持ちが切り替わり、モチベーションを保つことができるかなと思います。
  
 
2. 自分を甘やかす「オフ」を作る
 
研究がどうしてもうまくいかないときや、何度も壁にぶつかると、「オンとオフの切り替え」を意識して過ごすようにしています。私にとっての「オフ」は、まったく研究のことを考えない時間です。
 
例えば、私は海に入るのが好きで、海の中で数分間、文字も言葉もない世界に沈むと、不思議とリフレッシュできます。これはサウナで「整う」感覚に似ているかもしれません。戻ってくると思考がクリアになって、また新たな気持ちで「研究、やるかあ」と机に向かえるようになります。
 
たくさん寝る。美味しいものを食べる。映画を見る。なんでもいいと思います。
ギリギリになる前にリセットしておくことが大事かなと思っています。
  
 
3. 人と話す・人の研究に関わる

大学院生活では、孤独になりがちだと言われますが、山内研は比較的話すのが好きな人が多いと思います。「研究のディスカッションしよう」と誰かを誘えば、すぐに乗ってきてくれます。応援しあったり、相談できると、乗り越えられる課題もたくさんなるなと感じています。

また、自分の研究が行き詰まるときに、他の人の研究を手伝ったり、相談に乗ったりすることも、良い刺激になります。山内研にはファシリテーター制度があり、私も修士課程の後輩のファシリテーターをやっていて思うのですが、他の人の研究を見ていると、なぜか「自分も頑張ろう」という気持ちが湧いてきます。
 
実際、チュータリングプログラムで高校生を支援する活動に参加した大学院生の82%がウェルネスやメンタルヘルスに改善が見られたという研究もあるそうです (Hermanstyne et al., 2022)。
 

もし大学院進学に不安を感じている方がいたら、「これはぜひ追求したいな」と思える研究テーマを見つけ、今の環境でストレスを乗り越えるための自分なりのスタイルを探してみるといいかもしれません。いろんな先輩の、大学院の過ごし方を聞いてみるのも、参考になると思います。

D3 岩澤直美


(この記事は、研究で感じるストレスを乗り越える個人的な工夫を紹介したもので、メンタルヘルスの治療法を示すものではありません。深刻な症状を感じている方は、医療機関を受診されてください。)

Evans, T.M, Bira, L., Gastelum, J.B., Weiss, L.T., & Vanderford, N.L. (2018). Evidence for a mental health crisis in graduate education. Nature Biotechnology. 36(3). 283-285.

Hermanstyne, T.O., Johnson, L., Wylie, K.M., Skeath, J.B. (2022) Helping others enhances graduate student wellness and mental health. Nat Biotechnol 40, 618–619.

2024.10.16

ワークショップの会場について

皆様、こんにちは。M2の入澤です。
秋学期も始まり、いよいよ修論提出まで3ヶ月を切りました。修論研究もラストスパート!と思ってやり抜きたいと思います。

さて、今回は山内研周辺の人ならば関わる方が多いワークショップについて。特に、ワークショップの会場について書きたいと思います。なぜ、このテーマでブログを執筆するかと言うと、修論研究の一環として夏休みの間にワークショップを行っており、良い会場があることのありがたみを痛感したからです・・・!

私の研究では以下のリンク先にあるようなワークショップを実施しました。夏休みの間に9回、合計40名以上の大学生を対象に行っています。

ダイバーシティワークショップ:多様性の交差路での「代話」①
ダイバーシティワークショップ:多様性の交差路での「代話」②


参加者募集、ワークショップのプログラムの開発、毎回の資料の印刷などの準備、実施・データの収集、参加者への謝金の対応などなど・・・本当に大変だったのですが、とても価値ある実践を参加者に届けることができたのではないかと手前味噌ですが思っております。また、開発したワークショップは事前事後で測定指標で有意差がちゃんと出ており、効果を示すことができたこともありがたい経験でした。

さて、そんなワークショップですが、参加者に脳に汗をかくような経験をしてもらうことが大切です。そして、その経験を作るためにはワークショップの会場で非日常を演出することが肝要です。また、ワークショップの会場には、多様な活動を可能にする空間としての柔軟性も求められます。例えば、私の実践の場合だと、ビデオレターを作成したり、3グループに別れて別々に動画を見たりと様々なメディアを活用する活動を行う予定で、それができる会場の柔軟性が必要でした。

ですが、そんな都合の良い会場は中々ありません〜!あったとしても利用料が高額で研究で使うには厳しい・・ということも多いです。ただ、私は運良くこちらの会場を使わせていただきました。

東京大学情報学環オープンスタジオ

▼オープンスタジオのホームページの概要情報は以下です
「東京大学情報学環オープンスタジオ」は,中山隼雄氏のご寄附によって2017年4月に竣工いたしました。東京大学における<工房・広場>をイメージした拠点として,ワークショップや展覧会など,社会に開かれた創発的な研究教育活動に資する場を提供しています。
 当スタジオでは,中山隼雄氏および中山隼雄科学技術文化財団からご寄附をいただき,「人間と遊び」をキーワードにした「中山未来ファクトリー」プロジェクトに取り組んでいます。

こちらのスタジオにはプロジェクターが投影できる場所が3箇所もあり、活動を行いやすい勾玉型のテーブルやホワイトボードになっている壁などが設置され、本当にワークショップが行いやすい空間になっています。

正直、自分のワークショップの活動はかなり複雑な動きが必要だったため、会場の都合で何かを妥協しないといけなくなると嫌だな・・・と思っておりました。ただ、上記のような設備に助けられ、無事に納得のいくワークショップを行うことができました!

今回の経験から、実践者として使い勝手の良い会場の候補をいくつか持っていることって大切だなと痛感しました。自分なりに他にもないか探してみたいと思います。

2024.10.12

【社会人向け】社会人大学院生の過ごし方(D6中野生子)

皆さん、こんにちは。D6の中野です。
社会人博士課程院生の生活も6年目(修士から山内研にお世話になっているので通算8年目 恐)になりました。週5フルタイムで働きながら、長期履修制度(社会人学生の場合は、3年分の学費をMAX6年で支払う制度を使うことができます)を使って博士課程の院生をしています。昼間はがっつり働いて、夜と週末は研究者として社会情動的スキルの研究をすすめています。仕事は、外資系IT企業で、2019年末より文部科学省が推し進めるGIGAスクール構想の実現に向けて、教育現場にテクノロジーを広める活動をしています!

私の研究についてもちらっとご紹介。
テーマ:社会情動的スキル
研究内容:学習者の個人特性が異なることで育成される社会情動的スキルに違いが生じるのか、個人特性が異なる学習者間の相互作用によって社会情動的スキルが育成される協働活動にはどのような特徴があるのか、社会情動的スキルの学習環境の在り様を考察する。

今は、博士論文の柱の一つになる、2本目の論文を学会投稿し、そして落ちて、再投稿し、、、のようなフェーズで四苦八苦しているのですが(山内研究室のゼミでは、査読対応過程も共有し、みんなで議論していくので、私の不採録の経験も後輩たちの糧になっている、、、はずです笑)、そんな私の社会人と研究者の両立生活をご紹介できればと思います。

基本的には、週5で働き、平日夜や週末に研究しているのですが、ときには土日に仕事のイベント対応が入ったり、国内海外の出張が入ったりするので、「いかに素早く仕事モードから研究モードに切り替えられるか」が仕事と両立させるポイントになってます。仕事で使う脳みそと、研究で使う脳みそが違うなと感じており、修士の時はその切り替えに最低1時間はかかったりして、まとまった研究時間を確保するのが大変でした。最近はその切り替えにも慣れ、うまく時間を使えるようになったなと感じています。エネルギー有り余ってる人間ではないので、週末ずっと研究しているわけではなく、仕事も研究もしないプライベートの時間もがっつり確保しています。

直近の査読対応と仕事をどんな風に両立させたかというと、スケジュール的にはこんな感じでした。研究スケジュールは上段に下線文字で、下段は仕事の状況や両立の感想等を記載しています。


2024年4月初旬:投稿
  GIGAスクール構想第二期が発表され、蜂の巣をつついたような状態の忙しさになる。チームも、3月から毎月1人のペースで人が増えて、バタバタ。
2024年5月中旬:1回目の査読結果返答(4週間以内に再投稿する必要あり)
  査読対応時期が韓国出張と重なり、夜な夜なホテルで論文執筆(せっかくの韓国なのに…)
2024年6月初旬:再投稿
  しばし平穏が訪れる
2024年7月中旬:2回目の査読結果返答(4週間以内に再投稿する必要あり)
 査読対応時期がオーストラリア出張と重なり、深夜にファシリテーターとオンライン相談しながら、夜な夜なホテルで論文執筆(せっかくのオーストラリアなのに…)
2024年8月中旬:再投稿
  姪っ子が産まれて、可愛すぎてうかれる
2024年9月中旬:査読結果
  不採録通知をいただき、奈落の底に突き落とされる(この半年の苦労が…)

書いてみたら、結構ハードな期間を切り取ってしまった感はありますが、山内研には社会人大学院生も多く、様々な分野で活躍するメンバー、社会人から学部あがりの学生まで年齢もさまざまで、こういったメンバーと一緒に教育について語れることが、大学院に所属している1番の価値だなと感じています。

研究室に興味のある方はぜひ、東京大学大学院学際情報学府山内研究室の冬季入試説明会(10月31日16時30分〜)にご参加ください!
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2024/10/post-45.html


【中野生子(Seiko NAKANO)】

2024.06.24

2023年度 春の合宿研究会 レポート

皆様こんにちは、D1の田中です。

春先バタバタして投稿が遅れてしまいましたが、今回は2024年3月に愛知県長久手市〜瀬戸市方面にて実施した春の合宿研究会についてご紹介しようと思います。

これまでのブログでもご紹介のとおり、山内研では夏と春に合宿研究会を実施しています。
夏季は学習科学の古典理論を中心としたプログラムであるのに対し、春季は学習環境研究の多様な方法論やキャリアのあり方について扱うプログラムとなっています。

【1日目】

研究会1日目は愛知淑徳大学 長久手キャンパスにて、山内研のOBOGであり愛知淑徳大学ご勤務の佐藤朝美先生吉川遼先生をお尋ねし、お二人のこれまでの研究スタイルやキャリアについてご講演いただきました。
学際研究であるがゆえの、自分の研究を大流の中に位置付けることの難しさや悩みを共有しつつ、自分達が研究をする上でのスタンスについて、いつもより大きな視点から振り返る機会になりました。

講演後は、愛知淑徳大学 人間情報学部の新施設(VR・メタバース機器、シミュレータルームなど)を見学させていただきました。

【2日目】

研究会2日目前半は、学習環境研究における多様な研究方法や分析方法(質的分析、量的分析など)に焦点を当てた講演とディスカッションを行い、様々な研究法への理解を深めました。

その後、愛知県瀬戸市の瀬戸SOLAN小学校に移動し、「個人探求」の時間を見学させていただきました。
木のあたたかみを感じる広々とした校舎内(3Dで探検できます!)で、子どもたちは思い思いのスペースで自分の進めている個人探求の進捗を発表していました。
山内研メンバーと佐藤先生、吉川先生はそれぞれ自由行動で、子どもたちの発表を聞いたり、議論に混ざったりしました。
当日の様子は瀬戸SOLAN小学校の探求レポートからもご覧いただけます。

放課後には、SOLAN小学校の先生方や保護者の方々とのディスカッションに山内研メンバーも参加させていただき、今後の個人探求について、見学した内容を踏まえての議論を行いました。


講演や見学に快く応じてくださった訪問先の方々のおかげで、大変充実した2日間となりました。
1日目は学際研究に携わる研究者の先輩である先生方に、2日目は探求に取り組む子どもたちと、子どもたちを支える先生方や保護者の方々と、実際にお会いしてお話をするという、普段得難い経験をさせていただく中で、自分を省みる良い機会となりました。
訪問先の皆様、大変お世話になりました!

2024.06.10

【社会人必見】修士二つ目に向けて山内研に飛び込んでみて(M1山﨑聡一郎)

はじめまして、山内研M1の山﨑聡一郎です。
私は「法教育がいじめ被害者の援助要請を誘発する可能性」というテーマで研究活動を行っています。

実は大学学部を卒業した後、別大学の社会学研究科で2019年に修士号を取得し、その後在野研究者として研究活動を行いながら、「こども六法(弘文堂)」等の児童書を執筆していました。
前の大学院を修了したタイミングで就職するわけではなく、自分の会社を立ち上げて経営しているという意味では、私が「社会人」と呼べるのかというのは議論がありそうですが、今回は私と同様の「社会人」として学際情報学府の受験を志している方や、「既に修士号を持っている」けれども山内研に参加しようかと考えている方に向けて参考になったらいいなと思い、この記事を書きました。

【修士二つ目ってどうなの?】
実は私自身、大学学部を卒業する2015年度に学際情報学府を受験し、不合格となっています。当時から「法教育を通じたいじめ問題解決」というテーマで研究活動を行っていたのですが、当時はまだまだ学術研究とは何たるかを深くは理解しておらず、実践上の関心だけが強かったように感じます。一方でこのタイミングで別大学院の修士課程に進学する縁があり、そこで学術研究というものを改めて叩き込まれた、という形でした。

その後、大学院を修了した後は、学校教育を対象とした研究をしたいと考えていたことから、とにかくフィールドとなる学校を開拓していこうと考え、一旦大学院という組織を離れて執筆活動や講演活動を通じ、学校との繋がりを増やしていきました。一方で、在野研究者として学会の分科会等で定期的に発表していたものの、誰かに研究を急かされるわけでもなく、また大学組織が一括契約しているような膨大なデータベースが活用できるわけでもなく、研究の進行は困難を極めていきました。そんな中で2022年頃から、再び大学院に所属して研究活動に打ち込み、博士号を取得したいと考えるようになりました。

最終的に私が山内研を志望するようになったのは、もちろん当初から学際情報学府で学ぶということに2015年当時から関心があったということもあるのですが、何といっても自分が志している研究テーマに近い領域で研究している仲間たちと研究ができること、更に、自分に近い背景や境遇を持つ人たちが多く山内研に所属していた実績があることが決め手でした。

先に博士号取得を目指していると書いたものの、私は修士1年として入学しました。東京大学大学院学際情報学府は原則として修士博士一貫教育とされており、博士課程から編入するのは不可能ではないものの、高いハードルがあります。私自身、そこまで研究能力に自信があったわけではないので、このことを説明会で聞いたときに修士課程で入ろうと思ったのでした。
ただ、既に修士号を持っているのに改めて修士課程に入ることには正直迷いもありました。ダブルマスターという呼称は聞かなくはないものの、日本では一般的でないどころか、かなり珍しいでしょう。一方で、このブログを遡っていくと、既に修士号を持ちながら山内研に修士課程から入ったという方もいらっしゃいました。この存在は私自身大変励みになりましたし、博士を目指して長期目線で、じっくりと腰を据えて研究していこうと決意するきっかけになりました。

【山内研と私】カリキュラム,情報化,つながり(りん)
自分の研究に影響を与えた書籍の紹介(M1入澤充)

実際に入学してみると、改めて社会人として修士課程の授業を受けて課題をこなしていくのは楽ではありませんが、刺激に満ちた楽しい日々です。授業内容そのものも刺激的ですし、自身が大学生をやっていた頃とは大きく様変わりした授業の態様は、学びが一層開かれてきているという時代の進歩を感じることができ、ワクワクします。

また、山内研の研究指導は既にブログにあるファシリテーター制度を始め、研究発表の進め方も輪読の進め方も非常に丁寧で、自分がやるべき作業課題が常に明瞭です。修士研究は大変だ、という点には違いありませんが、モチベーションや進捗を強力にバックアップする体制は盤石で、同時に今なお改善を志し続けているという点も含めて、さすが学習環境デザインの研究室だと常々感じる研究生活です。

【Ylabブログを読み倒せ!】
学際情報学府に合格をいただいた後、実際に入学を迷っていたときに相談に乗ってくださったのは、在野時代に書籍を執筆した出版社の、担当編集者の方でした。この方、大学学部&サークルの先輩だったのですが、実は山内研の卒業生でもありました。世間は狭すぎる・・・

その先輩から社会人大学院生として山内研で修士号を取得したまた別の先輩をご紹介頂き、その先輩にも沢山の相談に乗っていただきました。
もちろん、完全に自身の境遇と同一と言うことはないので、不安が完全に消え去ったかというとそうではありませんでしたが、「取りあえず進学してみよう!」と思い切るには十分でした。そして、結果的には進学を決めたという決断は、正解だったなと感じています。

入学後、更に山内研に所属している先輩方、そしてかつて所属していた卒業生の方々のことを調べたり聞いたりしてみると、そのバラエティ豊かさには驚かされます。
私はミュージカル俳優としても活動していますが、先輩の中にも芸術家・自由業の方が複数いらっしゃることを、入学後に知ることになりました。恐らく、どのような境遇で山内研を目指している方であっても、きっと一人は自身の境遇と似ている人が山内研にはいるのでは無いかと思います。

学際情報学府は学部を持たない大学院なので、「学部時代と環境が変わってしまう」ことへの懸念がある方もいらっしゃるでしょう。だからこそ、自分が研究室になじめるか、そこで充実した研究生活を送る未来が想像できるかは大切だと思います。

入試の公平性を期すという観点から、山内先生と直接お話をする機会はどうしても限られてきますが、研究室の雰囲気はもちろん、自身と似た境遇で山内研での研究生活を乗り越えた先輩がいるかを、現役のゼミ生から聞いてみたり、ブログを遡って調べてみたりするのは、「山内研でしっかり研究するぞ! 自分でもできるぞ!」という自信とモチベーションを得る上では非常に有意義ではないかと思います。ぜひ、Ylabブログを読み倒してみてほしいと思いますし、入試説明会などでゼミ生と話す機会があれば、その際には自身の状況や懸念などをどしどしぶつけてみてくださいね!

2024.06.04

『外国人留学生として山内研で勉強するのはどのような感じですか?!』

初めまして、山内研究室のM1李佳誠(リ カセイ)です!
今回は、7年ぶりに山内研究室に合格した外国人留学生の視点から、山内研究室のM0制度やファシリテーター制度、日常の大学院生活などについて話したいと思います!


「7年ぶりの外国人留学生」
今年、私は外国人留学生として山内研究室に入りました。以前にも数名の外国人留学生の先輩方がここで勉強していたことがありました。山内先生は外国人留学生を指導する経験が豊富であり、山内研究室で勉強することは非常に心強いと感じています。 外国人留学生が山内研究室に入るためには、二つの方法があります。
一つ目は、日本語で授業を受ける「文化・人間情報学コース」の一般入試です。この方法で出願する場合には、「英語の標準試験の成績」、「10ページ以上の研究成果」、「研究計画書」、「日本語の標準試験の成績(外国人のみ)」といった書類を提出する必要があります。これらの書類はどれも非常に重要ですが、優先順位をつけるとすれば、「10ページ以上の研究成果」≧「研究計画書」>「英語の標準試験の成績」≧「日本語の標準試験の成績(外国人のみ)」という順になります。
二つ目は、英語で授業を受ける「ITASIA(アジア情報社会コース)」の一般入試です。この方法の出願については、ホームページをご参照ください。


「早めに大学院生活を体験する」
私は夏入試で山内研究室に入りました。合格後、大学院に入学するまでに半年間の猶予がありました。山内研究室では、この半年間を活用し、合格者がM0として研究室の各活動に参加することができます。例えば、毎週のゼミ、春の合宿研究会、飲み会などです。この制度のおかげで、大学院生活にスムーズに慣れることができ、研究室の先輩たちとも深いつながりを築くことができます。他の研究室の留学生に聞いてみると、この「M0制度」がないため、山内研究室のことを羨ましく思っていると言われました(笑)。

山内研特有の「M0制度」については、以下のページをご参照ください。
【山内研の活動】M0生活


「一人で戦うのではない!」
外国人留学生として、日本語能力の問題から研究室の先輩や先生とトラブルが生じることや、授業についていけないことを心配していました。しかし、山内研に入った後は、そのような心配はすべてなくなりました。なぜなら、研究室の先輩や同期が積極的にサポートしてくれるからです。
例えば、ゼミでの研究発表に初めて参加したとき、研究をどのように始めればいいのか、何を勉強すれば良いのか、発表内容が良いか悪いかなどの疑問を抱えていました。これらの疑問を考えれば考えるほど、学業によるストレスを感じ、モチベーションが下がっていました。しかし、このとき、研究室の先輩や同期が悩みを聞いてくれ、丁寧にアドバイスをくれました。また、ファシリテーターが研究発表の前に一緒に発表内容を確認してくれ、研究の方向性や問題点などを指摘してくれました。このようにして、無事に発表を行うことができました。

山内研特有の「ファシリテーター制度」については、以下のページをご参照ください。
【山内研の日々】ファシリテーター制度とは?
【山内研の秘密】研究ファシリテーター制度
【夏休みの過ごし方】ファシリテータとの積極的な研究相談


今回は外国人留学生の視点から、山内研究室での実体験をお話ししました。これからの大学院生活が楽しみです!

2024.04.21

【5月11日入試説明会に行く前に!】山内研の魅力とは!?

山内研M2の入澤です。
今回は数年ぶりの対面開催となる東京大学大学院学際情報学府の夏季入試説明会が5月11日に迫っているということで、山内研の魅力をお伝えする記事を執筆いたしました!
学府の入試説明会では15:30から行われる「各研究室のブース展示と研究紹介」に山内先生と山内研の院生も参加します。ぜひ今回の記事を予習に役立ててください〜!

さて、山内研の魅力は過去に様々な人がブログ記事にしてきました。
そこで今回は過去ブログをまとめる「まとめ記事」としてお伝えしますね。

■ 山内研ってどんな研究室
まずはざっくりと概要を知れる過去のブログ記事を紹介していきたいと思います。特に最初に紹介する以下の記事は「学習」と「学際」という二つのキーワードで山内研を説明していて、読んでいて私も「なるほど!」と思いました。
【教えて!山内研究室】研究室のモットーって?

以下の記事は山内研で得られるサポートについて簡単にまとめています。実際のところ研究室のメンバーも学習環境デザイン、教育工学、学習科学などの分野を学部で研究した人は少数で、ほとんどが大学院で学び始めています。それでも研究を追求できる仕組みが山内研にはあります。
【教えて!山内研究室】どんなサポートを受けられるの?

実際に、修士課程で入学してどのような生活になるのかなぁと気になっている人も多いと思います。以下の記事は入学後の生活について紹介しています。山内研は社会人学生の割合も高い研究室ですが、そんな社会人学生へのインタビュー記事もあるので、学生だけでなく受験を検討している社会人の皆さんもぜひ読んでみてくださいね。なお、過去のブログ記事には他にもたくさん山内研の日常をまとめたものがあったのですが、その中から選んでみました。もっと気になる方はぜひ過去のブログ記事を調べてみてください!
【山内研院生の過ごし方】Part1
【山内研院生の過ごし方】Part2
【教えて!山内研究室】山内研に入るには
※上のブログはM1の間の研究の進め方についてまとめています。タイトルと内容が少しあっていないので注意!

あと、山内研は院生が研究で自由に使える研究室があるのですが、そこで時間を過ごせることも魅力です。
【私の学び場】山内研究室2

■ 山内研のゼミ活動
さて、実際の山内研の活動を見ていきましょう。
山内研では毎週木曜日の13:00~16:00でゼミを行っています。
ゼミの概要・様子については以下の記事に詳しいのでご覧ください。凝縮された学びの時間を毎週楽しんでいます!
【教えて!山内研究室】山内研のゼミってどんなの?

山内研のゼミは研究発表と文献発表によって構成されます。
研究発表については、2012年の秋学期のブログシリーズで【研究発表のこだわり】について研究室のメンバーが執筆しています。そこからいくつか研究発表のイメージを掴みやすい記事を以下に紹介します!
山内研では学期中3~4回発表の機会がありますが、それに向けてそれぞれが懸命に準備し、研究を進めていることがわかりますね。
【研究発表のこだわり】自分のための研究発表
【研究発表のこだわり】建設的なコメントをもらうために

文献発表については、以下のブログ記事をご確認ください。様々なバックグラウンドの学生が集う山内研ですが、文献発表とグループ討論の時間で全員の共通基盤を築いています。
【山内研の日々】文献発表とグループ討論とは?
【文献内容とグループディスカッション紹介】

■ 山内研の学びを支える仕組み①:研究ファシリテーター制度
続いては、山内研のメンバーの学びを支える仕組みについてです。まずは研究ファシリテーター制度について。それぞれのメンバーに研究室OBOG・助教・博士課程の院生のどなたかがファシリテーターについてくれる制度です。自分の研究を追求するパートナーがいてくれる・・・私も日々この制度の恩恵に与っています!詳しくは以下のブログをご覧ください。
秋学期のブログシリーズ予告編:山内研のファシリテーター制度って?
【山内研の日々】ファシリテーター制度とは?
【山内研の秘密】研究ファシリテーター制度
【山内研の活動】ファシリテーター制度
【夏休みの過ごし方】ファシリテータとの積極的な研究相談

■ 山内研の学びを支える仕組み②:合宿
山内研では夏と春の年間二回の合宿を行っています。普段と違う場所で研究室のメンバーと凝縮した学びの時間を共有する貴重な機会となっています。以下の記事でその概要を知ることができます。まずは【教えて!山内研究室】合宿で何をするの?という記事をご覧ください。過去のブログ記事には夏合宿や春合宿の詳細なレポートもあるので、そちらも合わせてご確認いただくと雰囲気が掴めると思います!
【教えて!山内研究室】合宿で何をするの?
【山内研の秘密】ゼミ合宿
【山内研の活動】合宿
【山内研夏合宿密着レポート】
【夏の特別編】山内研夏合宿レポート
【2016年、山内研ではこんなことがあったよ】夏合宿in島根雲南市
【山内研の日々】夏合宿の思い出
ylab春合宿
2022夏 合宿研究会 活動報告(学者レビュー会)
2022夏 合宿研究会 活動報告(キャリアに関する学習セッション)

■ 山内研の学びを支える仕組み③:M0
山内研では合格後、秋学期からゼミに参加できるM0という制度もあります。入学前にゼミの雰囲気・リズムを掴み人間関係を構築できるという嬉しい制度です。私も入学前にM0として参加することでM1の4月からの研究をスムーズに始めることができました。
【山内研の活動】M0生活

■ 自分なんかが受験していいのかな?って思う人に向けて・・・
学部の時は全然違う分野だった、社会人として働いているから忙しい、語学に不安がある・・・人によって悩みはそれぞれだと思います。そんな人に向けた過去のブログ記事を紹介します。
【教えて!山内研】山内研に入るには(M2林)
【教えて!山内研】山内研に入るには(M1中野)
【教えて!山内研】山内研に入るための勉強は?(M2根本)

■ 最後に・・・
大学院進学は人生の重大なターニングポイントですよね。でも入ってからの情報はあまりなく、進路について悩むのは当然だと思います。私も受験前は結構悩みました。特に私の場合は自分の研究テーマが「アライ(マイノリティに連帯するマジョリティ)の学び」なので、自分の研究テーマに合致した研究室がなくて困った経験があります。そんな私ですが、山内研の「学際的に学習を扱う」というあり方に救われたなぁとよく思っています。周りの研究室のメンバーもそれぞれ学際領域の様々な研究を展開しており、分野は違いますが「学習」という軸で繋がった仲間と出会えたように思っています。学びを支える仕組みも充実しており、思う存分研究できるのが山内研の魅力です。ぜひ気になった方は説明会にお越しください!
【5月11日開催!】学際情報学府 夏季入試説明会

2024.03.01

【突撃!隣のファシリテーター④:山本良太さん】

D2の岩澤直美です。

山内研究室では、博士課程でもファシリテーターの方にたくさんお世話になります。私も、研究発表の前後はもちろん、学会発表や投稿論文、そして博士論文の全体像や進路についても、相談したり頼ったりしながら研究に励んでいます。<ファシリテーター制度とは?

私は昔から「迷惑じゃないかな」と心配してしまい、あまり人に頼ることが上手ではありませんでした。そんな私が、素直な研究の状態や気持ちを共有しながら先輩たちに頼れるようになったのは、ファシリテーター制度と山内研のコミュニティのおかげだと思っています。

今回は、私のファシリテーターである山本良太さんにインタビューをしてみました。

岩澤:山本さん、よろしくお願いします。改めてですが、山本さんの出身と研究内容、山内研に来てくださった背景について、少し教えてください。

山本さん(以下 敬称略):関西大学総合情報学研究科の出身で、博士課程では「新しいコミュニティの創出を通じた学習」について興味を持ち、活動理論に基づく海外での社会貢献活動の分析を行っていました。山内研究室の研究プロジェクトで、反転授業プラットフォームを使った学習促進の研究(論文)に携わる機会を得たタイミングで、ある意味の「修行」だと思って上京しました。今は、大阪教育大学で特任准教授をしています。


 
Q1. ファシリテーターってなんですか?

岩澤:山内研究室の共同研究に複数関わりながら、多くの修士や博士学生のファシリテーターを担当されてきたと思います。山本さんはこの「ファシリテーター」の役割や立ち位置をどのように捉えていますか?

山本:ファシリテーターって、スポーツ観戦でいう「ファン」のような立場で応援することかなって思います。素直に「面白い」とか「うーん」と微妙な反応を示したりとか。でも、結局プレイヤーは自分で練習してプレイをして、前に進んでいく必要があるのですが、ファンの意見も参考にする。さらに、山内研という一種のファンコミュニティの中でみんなでサポートしあっているものかなと思っています。

岩澤:なるほど!確かに、そうですね。ファシリテーターとは1対1でご相談をさせていただく機会は多いですが、それが全てではなく、ゼミのコミュニティの中でお互いをサポートしあう文化を感じます。

山本:みんな研究分野や内容は違うし、自分の経験の範囲内でしか応援できないので、他のサポーターの力も借りているコミュニティの「ピース」の一つとして、自分を位置付けています。


 
Q2. ファシリテーターとして意識してきたことについて

岩澤:山本さんがファシリテーターとして、特に意識していたことはありますか?

山本:RQの設定や質的分析などを進める際、学生が自分の研究におけるレンズの使い方やデータの解釈方法を見つけられるよう支援してきました。「なんでそういう解釈をしたん?」などと問いかけながら、別の解釈の可能性を提示してみたり。悩みながらも独自の視点で研究を進められるようにサポートすることを心がけています。

岩澤:独自の解釈や視点を見つけるのって難しいなと感じます。私のような初心者にとっては、提供された解釈例に固執してしまうこともあると思うんです。山本さんのアイデアに引っ張られすぎないようにするために、意識してる伝え方はありますか?

山本:「この解釈は一例に過ぎない」ということを明確に伝えるために、ある意味その事例のアイデアに"無責任"であることも示すようにしています。「知らんけど」「ほんまにそうなん」と投げかけて、改めて考え直してもらったり。

岩澤:確かに、言ってますね(笑)。私もそんなサポートを受けながら、自分の研究に対する理解が深まったと感じます。ありがとうございます。

山本:新しいアイデアや解釈の種は、対話の中で生まれるものだと思うんです。その対話の中で出た一つの事例を「道具」として、本人なりの新しいものを創っていけるといいなと思ってます。あとは、自分の研究者としての経験を踏まえた感想はかなり正直にはっきりいうようにしています。「めっちゃおもろいやん」と褒めたりとか。

岩澤:確かに。たまに、山本さんに方向性をお伝えした時に褒めてもらうと「あ、研究こっちの方向で間違ってないんだ」と、すごく安心します!「それは、まあ微妙やな」と言われたこともたくさんありますが。

山本:それはほんまに、フェーズや内容に限らず、率直な意見として伝えるようにしてます。研究の軸足やポイントって正解はないけど、これから研究をするという段階では、自分1人で判断するのって難しいから。その研究の価値を一緒に創っていけたらと思ってます。自分もそうされたら嬉しいしね。

岩澤:嬉しいです〜(切実)
 


Q3. どうやって頼ったらいいですか?

岩澤:山内研の環境は、本当に恵まれていると改めて感じさせられます。最近は、私もファシリテーターや、先輩、同期や後輩にもたくさん頼るようになりましたが、それは「自分では乗り越えられない!」という壁にたくさんぶつかるようになったからだと思います。でも、これまでの私のように、どれくらい頼っていいかわからないって思う人も少なくないと思うんです。

山本:もう大人だし、研究者として成長する過程としても、自分から積極的にサポートを求めることも大事だと思います。それに、そもそも大学院にいるような人って、「議論を嫌いなわけがない」と思うんです。研究に関する相談って、その探究の方向性を「一緒に議論する場」だから、それを楽しまない人って山内研にはいないんじゃないかな。

岩澤:確かに!ゼミ前後でなんとなく相談しあってる時間も楽しいですし。でも研究が進まずネガティブになると「議論になるようなリソースを揃えなきゃ相談できない」ってハードル上がってしまうこともあって…。

山本:リソースってなんでもいいと思うんです。たくさんレビューしてきたならそれでもいいし、実践現場があるなら、その時の感じたこととやりたいことを扱ってもいいし。そこから次の探究課題を見つける議論の素材って、みんな十分持ってるんだと自分は思ってます。「ファン」としてのファシリテーターなので、どんな内容や状態でも、対話の中で相手の視点や感情を知れるのって嬉しいですよね。

岩澤:ゼミ中の指摘ばかりに目を向けると自己肯定感が下がりますが、私もゼミコミュニティーを「ファン」として捉えられると、少し乗り越えられる気がします!

山本:大学院で学んでいると、自信がボキボキ折られるじゃないですか。でも、人によって得意なところって違っていて。文章が上手い人もいれば、実践が得意な人もいる、面白い観点で分析をできる人もいるーーその人の「武器」を一緒に見つけていけるのは、ファシリテーターとしても楽しいことかなって思います。

岩澤:本当に「すごい人」に囲まれて落ち込むことばかりですが、私も自分なりの武器を見つけていきたいと思います。

 
 
Q4. コミュニティと学習のおもしろさを教えてください

岩澤:ファシリテーターとしての楽しさをたくさん教えていただきました。最後に、山本さんにとっての「学習」のおもしろさを教えてください。

山本:一見、みんな同じような行為をしているように見えるけど、その実態が実は多様なことにおもしろさを見出しています。同じ組織や集団内に、多様な経験を持っている人が集まった時の「掛け算のパフォーマンス」として発揮できる環境作りに関心を持っています。フィールドワークで見えてくる答えが、自分の現場を作る時の参考になっているように思いますし、論文を通じてそれが他の人の参考にもなってくるといいなと思います。自分の研究は、自分が一番面白いと思いながらやってると思います。

岩澤:それぞれの現場で、文化や歴史もある中で、効果的な介入方法を提案するのは難しいですよね。山本さんは今も新しい現場を作っていくこともあると思いますが、周りに頼ることもありますか?

山本:他の教員や、研究者仲間に相談することはたくさんあります。自分から積極的にサポートを求めながら前に進んでいく必要があるという意味では、院生と同じだと思いますし、それを可能にしてくれるのがコミュニティの魅力だと思います。

岩澤:ありがとうございました。改めて、山内研のファシリテーター制度の足場掛けが重要な役割を果たしていることと、山本さんや周りの人に引き続き頼らせていただけるのだという自信を持てました。引き続き、よろしくお願いいたします。


山内研のsupportiveなコミュニティにもう少し甘えながら、私自身も、その中でできることを返していきたいと思いました。がんばります!

ーー
D2 岩澤直美

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