2020.05.29
山内研究室では2020年4月より世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、STEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています(プレスリリースはこちら)。
このたび「研究プロジェクトの中間成果をみなさまにお伝えしたい」「このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい」という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催することになり、5月28日に第1回を開催いたしました。
会では研究プロジェクトでこれまで進めてきた「アメリカのSTEAM教育」に関するレビュー成果をご紹介したほか、50名を超える参加者のみなさまのグループディスカッションを交えながら質疑応答を行いました。実践方法や評価方法などについて活発な議論が交わされ、大変刺激にあふれる会となりました。参加いただいたみなさまありがとうございました。
当日発表したスライドと質疑応答の内容は下記にて公開しておりますのでご覧ください。
STEAM夜話 Vol.2は「韓国・中国・台湾のSTEAM教育」をテーマに開催予定です。また告知をさせていただきますのでご関心のある方はぜひお申し込みください。
スライドはこちらからもご覧いただけます。
2020.05.29
山内研究室が所属する大学院学際情報学府の夏季入試説明会が6月6日(土)13:30-14:50に開催されます。入試の概要について説明されますので、受験をお考えの方はぜひご参加ください。
詳しい情報、お申し込みは下記からお願いします。
https://iii-admission2021.peatix.com/
2020.05.27
こんにちは。今年度から山内研に所属しております、M1の倉持裕太と申します。
学部時代は比較教育学をフィールドに、教育政策の国際比較などを中心に研究を行っていましたが、その研究の過程で「反転授業」に出会い、より深く研究したいと思い、山内研にお世話になることになりました。
とは言いつつ、現在は、タイトルにもある通り、社会人を対象とした経験学習について研究をしています。
学部時代の長期インターン経験、大学院入学までの社会人経験の影響もあり、入学までに興味関心が大きく変わってしまい。。。色々とご迷惑をおかけしながら、無理を言って研究テーマを変更させてもらいました。
さて、研究テーマについてですが、今後取り組んでいきたい関心事は
①「若手人材が業務経験からどのようなプロセスを経て学びを得ているのか」
②「学びを得るプロセスの中でどのような支援が必要なのか」
といったことです。
①、②を明らかにしていく上でキーワードとしているのが、「一皮むけた経験(Quantum leap experience)」と呼ばれるものです。具体的には、プロジェクトの参加、異動など、仕事人生における大きなイベントのことを指します。
今後、「一皮むけた経験」をした際に、当事者はその経験をどのように学びに変えて行くのかといったことを解明し、且つそのプロセスの中で、どのような支援が必要なのかを検討していきたいと思っています。
特に今は②に関心があります。①については、先行研究を見ていく中である程度明らかになってきていることがわかった一方で、②については、提言はなされているものの、組織に介入して支援策の実験を行ったりする例というのは、ホワイトカラーを対象にした研究ではあまり見られません。
その支援策について、教育工学の研究方法やアイディアを活用し、これまでとは別の視点から切り込むことで、新規性のある研究をしていけたらいいな〜と考えているところで、今ブログを書いています。
研究を進めていく中でまた変わっていくと思いますが、少しずつ前進していけたらと思います。
上記テーマに取り組む個人的な背景としては、私も人生の中で「一皮むけた経験」に遭遇したことがあるのですが、一皮むけきれなかった過去があります。一皮むけるための方略、または他者からの支援について検討することにより、これから社会に出ていく人の道標になるような研究にしていきたいと思っています。
4月に新しいテーマへ変更し、0からのスタートで読まなきゃいけない文献が山積みですが、テーマ変更を受け入れてくださった研究室のみなさんに感謝しながら、一歩ずつ取り組んでいければと思います。
M1 倉持裕太
2020.05.26
皆さん、こんにちは。D2の中野です。
社会人学生も4年目に突入しました。仕事では、2019年末より文部科学省が推し進めるGIGAスクール構想の実現に向けて、教育現場にテクノロジーを広める活動をしつつ、夜と週末は研究者として社会情動的スキルの研究をすすめています。
理解ある職場と、社会人大学院生をあたたかく受け入れてくれる研究室のおかげで、二足のわらじ生活もだんだん板についてきました(笑)博士課程は長期履修(社会人大学院生等向け制度で、博士課程については3年分の学費で最長6年かけて博士号取得を目指すことが可能)を活用し、5年かけて博士号の取得を目指しています。フルタイム学生と比較すると研究のスピード感がどうしても遅くなってしまいますが、仕事をしながら研究できるというのはかなり魅力的な制度です。このような制度があるおかげで、情報学環にも働きながら修士号や博士号取得を目指す社会人大学院生が少なくありません。
さて、私の研究テーマですが、過去に何度かBlogで紹介したように、「社会情動的スキル」を対象としています。日本ではSEL(Social Emotional Learning、社会性と情動の学習)はまだまだ馴染みがない方も多いと思いますが、欧米ではここ30年近く社会情動的スキルやSELに関する研究がなされており、アジアでもシンガポールやオーストラリアは教育省が国の教育政策に取り入れるほど重要なコンピテンシーとして注目されています。
博士課程では、修士課程で行った研究と、博士課程で行う研究の2つを軸にして博士論文を執筆します。
修士課程で行った、UWC ISAK Japanのサマースクールを研究対象とした論文が、先日、日本教育工学会(JSET)に採録されました。13日間の短期宿泊型の学校外学習で社会情動的スキルが変化すること、その変化が個人特性と関係していることを実証的に明らかにした研究です。ありがたいことに、JSET論文誌の2020年4月のアクセスランキングにランクインしたようです。改めて、研究に協力くださったISAKや参加者の皆さま、研究を支えてくださったYlabの皆さまに感謝です。
博士研究では、当初、プログラムの開発研究を実施予定でした。様々な先行研究を読むにつれて、エビデンスベースドのSELの開発ももちろん重要ですが、エビデンスベースドのSELの効果に関するメカニズムまでは明らかになっていない(河本 2017)という課題や、また実践者の違いによって効果が異なる(DURLAK 2016)ため、実践者側の要素も明らかにする必要があるという課題にアプローチすることが、有効なSELを開発・実践する知見になると考え、プログラム(修士研究を軸に肉付け)と教師の支援(博士研究)の軸で、今後のSEL開発の前提となる知見を生み出すための調査研究としてすすめることにしました。加えて、プログラムの経験と成果について,参加者の個人特性の影響を扱った研究が必要である(HURD and DEUTSCH 2017)という指摘から、両研究を「個人特性」という切り口で分析していこうと思っています。
最後に個人の研究とは別に、前回Blogでもご紹介した、MITメディアラボとの共同プロジェクト(Scratchを使ったクリエイティブラーニングの発想を生かした授業のあり方に関する研究)の研究成果を発表しました。クリエイティブラーニングの発想を生かしながら、日本の小学校で実行可能なプログラミングを取り入れた授業のあり方とそのデザイン原則について、こちらで詳細をご紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください!
【中野生子(Seiko NAKANO)】
2020.05.20
こんにちは。この4月に入学いたしました、M1の岩澤直美と申します。私は「児童の異文化間能力を高める教育プログラムの開発」に関する研究を行いたいと考えています。
私自身は日本語とチェコのハーフとして生まれ、日本、ハンガリー、ドイツで育ちました。様々な地域の人々や国際学校でのクラスメイトとの出会いの中で、異文化間の交流が円滑に行われるケースと、そうではないケースを目の当たりにし、「円滑でリスペクトのある異文化間交流はどのようにして実現できるのか」に興味を持つようになりました。
学部の卒論では「児童の異文化感受性レベル ―6枚の写真を使ったインタビュー調査― 」という題で、小学生に対してセミフォーマル・インタビューによる調査を行いました。異文化感受性とは「異文化や、様々な背景を考慮する必要のある状況の捉え方」(Bennett, 1986)で、グローバル化・多様化する社会において重要な要素の1つである言われています。調査の結果は、8割以上の児童は異文化感受性レベルが低く、自文化中心主義であるというものでした。
異文化間の関係性構築を円滑なものにするため、そして偏見や差別を逓減するためには、異文化感受性をはじめとする異文化間能力が必要です。PISAでも「グローバル・コンピテンシー」として調査がされるようになりました。
異文化間能力には様々な要素が必要だと言われていますが、大きく分けて、①態度 ②知識と理解 ③スキル ④価値観、が挙げられます。(OECD, 2016)
修士課程ではこれらの能力がどのように育成できるのかを検討するため、教育プログラムの開発研究を行いたいと考えています。ゼミではおよそ5週間に1回、研究計画について発表を行います。初回発表では、異文化間教育学会においてどのような研究がされてきたのか、異文化間研究とは何か、という枠組みに関してまとめました。これからどのような対象、能力、状況に絞っていくのかを決め、調査を進めていく予定です。そして、「最終的に学習者がどのような状態になっていることが理想なのか」を明確にし、具体的な介入方法を検討していきたいと思います。
M1 岩澤直美
2020.05.16
こんにちは、D1の井坪です。
昨年度、「EFLでの会話を促進する事前学習に関する研究」という題で修士論文を提出し、今年度より博士課程に進学いたしました。今年度は修士論文の成果を投稿できる形にまとめつつ、博士課程受験時に提出した博士論文全体の計画を見直し、進めていこうと思います。
私は、「英語学習者のコミュニケーション能力の育成を促す会話の支援に関する研究」を行いたいと考えています。
グローバル化に伴い、より国際的な社会が築かれようとしている中、外国語でのコミュニケーション能力は一部の業種や職種だけではなく、生涯にわたる様々な場面で必要となることが想定されます(文部科学省 2018)。
その育成方法に関しては、認知的アプローチや社会文化的アプローチを背景とした、会話に参加することでコミュニケーション能力が育まれるという考え方が存在していますが、そこに対する支援はまだ十分とは言えません。例えば、①学習者は会話参加に困難を感じているという問題点や(小林 2006)、②意味交渉に繋がる活動やタスクについての検討を行っている論文は数多く存在しているものの、見解の相違がみられるなど、まだ確立されていない部分も多いという問題点が挙げられます。
学習者のコミュニケーション能力の育成において、学習環境デザインの観点からは、英語学習者がいかにコミュニケーションに参加するのを促すか、そしてその中でいかにコミュニケーション能力の育成につながるやり取りをすることを促すか、という2点が検討されるべきであると考え、修士研究で前者、博士研究で後者を扱いたいと考えています。
先日のゼミでは、コミュニケーション能力の育成というゴールが、2つの研究を包括した大きな目標として適切なのかに関して様々なご意見を頂戴し、現在見直している最中です。ゴール(学習目標)の設定と、そのゴールに応じた評価方法の選択は非常に重要なところだと思いますので、慎重に検討していきたいと思います。
【井坪葉奈子】