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2020.08.28

【開催報告】STEAM教育に関する公開研究会「STEAM夜話 Vol.2 韓国と中国のSTEAM教育」

山内研究室では2020年4月より世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、STEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています(プレスリリースはこちら)。


当プロジェクトでは「研究プロジェクトの中間成果をみなさまにお伝えしたい」「このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい」という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。「アメリカのSTEAM教育」をテーマにした第1回の資料はこちらからご覧になれます。


このたび「中国と韓国のSTEAM教育」をテーマに「STEAM夜話 Vol.2」(8月26日)を開催しました。アメリカで誕生したSTEAM教育という概念が、韓国や中国の研究者・教育実践者にどのように受容され「ローカライズ」されていったのかを、論文や報告書のレビューをもとに発表しました。


また今回は韓国・晋州教育大学の孔泳泰先生にゲストとして参加いただき、韓国におけるSTEAM教育の現状をうかがいしました。参加者のみなさまとのディスカッション・質疑応答からも孔先生への質問がたくさん飛び交い、大変刺激にあふれる会となりました。参加いただいたみなさまありがとうございました。


当日発表したスライドと質疑応答の内容は下記にて公開しておりますのでご覧ください。


STEAM夜話 Vol.3は「日本のSTEAM教育」をテーマに開催予定です。また告知をいたしますのでご関心のある方はぜひお申し込みください。



スライドはこちらからもご覧いただけます。

2020.08.07

【お知らせ】STEAM教育に関する研究会「STEAM夜話 Vol. 2 」開催

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東京大学大学院 情報学環 山内研究室では、世界140ヶ国以上でSTEAM教育ソリューションを提供する Makeblock Co., Ltd. からご支援いただたき、2020年4月1日よりSTEAM教育に関する研究プロジェクトを進めています。
https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/news/#a1373194)
 
研究プロジェクトでは、中間成果をみなさまにお伝えしたい、このプロジェクトを通してSTEAM教育に関心のある教育関係者のみなさまの輪を広げたい、という思いから「STEAM夜話」という公開研究会を開催しております。

初回となるSTEAM夜話Vol.1では「アメリカのSTEAM教育」をテーマに、アメリカにおけるSTEAM教育の2つの源流について紹介しました。初回の内容はこちらでご覧になれます(https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/ylab/2020/05/steamsteam-vol1.html)。


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このたび第2回となる「STEAM夜話 Vol.2」を開催することとなりました。

「STEAM夜話 Vol.2」では「韓国と中国のSTEAM教育」に関するレビュー成果をご紹介します。

2006年にアメリカで提唱されたSTEAM教育は、キム・ジンス教授を介して早くから韓国に紹介され、2011年からは本格的に実践されています。中国でもプログラミング言語Scratchを用いた情報教育に関する研究グループによって2013年ごろから紹介が進み、2016年にはメイカー教育に並んで国家的な政策目標に据えられています。

韓国と中国がいかにSTEAM教育を受容し「ローカライズ」していったのかは、日本においてSTEAM教育を実践していくうえでも示唆に富むのではないかと考えられます。


また、今回は韓国・晋州教育大学の孔泳泰先生をゲストにお招きします。孔先生は理科教育の立場からSTEAM教育を実践されており、日本科学教育学会での発表実績もお持ちです。

会の後半ではZoomのブレイクアウトルーム機能を活用し、研究プロジェクトメンバーやゲスト、参加者のみなさまが交流する時間を設けますので、孔先生に最近の韓国STEAM教育事情をうがかえればと考えております。


「夜話」という言葉には「夜に談話すること」と「気軽に聞ける話」という意味があります。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けオンラインでの開催になりますが、お仕事を終えた後、お酒などのドリンクを用意して肩肘張らずに参加いただければ幸いです。


開催日時などを確認いただき、リンク先のフォームから申し込みください。お申し込みお待ちしています。

https://forms.gle/oheWexF6QE3nhPz37


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日時:8月26日(水)18時~19時30分

場所:Zoomを利用したオンライン開催(アクセス方法を追ってご案内いたします)

対象:STEAM教育に関心のある教育関係者(教職員、研究者など)

定員:50名

参加費:無料

内容:
・韓国と中国のSTEAM教育に関するレビュー成果の報告
(報告者:杉山昂平, 東京大学大学院 情報学環 特任研究員)

・参加者のみなさまとの交流会
(ゲスト:孔泳泰, 晋州教育大学)
(コーディネーター:山内祐平, 東京大学大学院 情報学環 教授)

問い合わせ先:iiiylabcontact [atmark] gmail.com

2020.08.01

【問題解決と生産的失敗】文献とディスカッション内容の紹介(M1 岩澤直美)

M1の岩澤直美です。
今回はゼミで扱っている文献とディスカッションの内容を紹介したいと思います。
 
毎週ゼミでは文献担当者がInternational Handbook of the Learning Sciencesから1つの章を選び、レジュメを作り、解説を行います。その後、小グループに分かれてのディスカッションを通して理解を深める活動を行なっています。

私がはじめに担当した章は「第21章:Learning Through Problem Solving」でした。伝達モデル(Transmission model)では、学習直後は暗記ができていることを確認できていたとしても、その後、学習内容を実践の場で転用/応用することが難しいと言われています。問題解決型のアプローチでは、既有知識と新規の課題の関連性の発見や、学習内容が広く適応可能であることを理解を促進することが可能です。さらに、①学習者は総合的な概念理解をしながら問題解決能力と自己調整学習能力を磨くことができること、②学習者のモチベーション維持がしやすいこと、などが利点としてあげられます。

以下は、問題解決型のアプローチとして共通点の多い「問題基盤型学習(Problem Based Learning, 以下 PBL)」と「生産的失敗(Productive Failure)」について紹介します。

■「生産的成功」と「生産的失敗」について
「生産的成功(Productive Success)」は、PBLを通して、既有の知識や技術を使いながら問題解決の成功体験を得るためのデザインです。これを行うには適切な足場かけ(認知負担を低減)とファシリテーション(学習プロセスのガイド)が重要です。(Ertmer & Glazewski, in press; Hmelo-Silver & Barrows, 2008) 一方、 「生産的失敗」は、新しい概念を学ぶためのプロセスで、学習者は未習得知識が求められる問題解決に挑みます。当然短期的には失敗しますが、認知的失敗を情報として捉え、長期的には失敗の確率を減らすことが可能になります。このプロセスにおいても、ファシリテーターの継続的な支援が求められます。

■PBLと「生産的失敗」のプロセスと特徴
PBLにおいても、「生産的失敗」においても、学習者は問題解決を行う中で新たな知識を習得します。ここで学習した知識は、類似問題解決を行う際に活用できるようになります。(Transfer-appropriate processing theory) PBLでは、Direct instruction(直接指導)と比べ基本的な知識習得は劣る(Vernon and Blake, 1993)との指摘もありますが、知識応用能力に関しては高い学習効果が認められています。(Gijbels, Dochy, Van den Bossche, & Segers, 2005)

「生産的失敗」の学習プロセスにおいては、①矛盾と以前の知識との違いに気づき、②誤った解決法と正しい解決法の比較・対照を通して新たな学習内容の特徴を学習、がポイントになります。現段階では、中等教育から高等教育レベルの数学や理科を扱う実践研究が多い傾向にあります。新たな問題を出す際、問題に取り組む前に指示(認知的サポート)をもらう生徒よりも、指示を受けずに解を出す生徒の方が、概念理解が促進されたという結果が出ています。(Kapur, 2014; Loibl, Roll, & Rummel, 2016

■PBLと「生産的失敗」のデザイン
PBLも、「生産的失敗」も共同学習から始まりますが、違いは問題解決授業のデザイン及び全体を通した支援方法にあります。PBLは図1のように、①不良定義問題(Ill-structured problem)に取り組む、②小グループで問題について議論し、解を提案する、③指導者はガイドとして探求を支援するための足場かけを提供する、④振り返り&評価を活動の一部として導入しSelf-regulated learning(自己調整学習)を促進する(Savery, 2015)のような構成となっています。ここで重要なのは、複雑で不良定義な問題で、かつ学習者に関連する内容(モチベーションを保つため)に取り組むことと、十分なフィードバックがあることです。

図1 PBLのサイクル(p.212)


「生産的失敗」の構成は図2のように、共同作業などを通して ①既有知識の活性化と差別化をし、関連する既有知識を活用及び外化、②解法を比較して重要な特徴に気づく、③重要な特徴の解説を受け、④問題の特徴をよく考えて知識の定着と構築を行う、というものです。

図2 生産的失敗の構成要素(p.214)


■授業内ディスカッション
本章における議題は「表21.2(本投稿では図2)を参考にして、Productive Failureの事例を考えよ」というものでした。3グループに分かれ、20分程度で検討し、その後10分ほどで全体で共有するという流れです。グループディスカッションではもちろん議題通り事例を検討しますが、その過程で行われる知識構築や軌道修正でPBLと生産的失敗の理論への理解を深めていきます。例えば「地図を見ずに迷ってしまった経験から、地図の読み方を学習し、迷わず歩けるになった」という実体験の事例に対して、これは経験学習に近いものなので、生産的失敗のように「仕掛ける人」がいないと当てはまらないのではないか、との指摘がされました。

その前提を踏まえ、「インドネシアの牛乳に対する安全性・安心感を高める」という課題の事例において、学習者が既有の知識をふまえ「日本と同じように生産者の顔を表示する」を提案したところ、その解法がインドネシアでは望ましくない(失敗だった)ケースが紹介されました。この事例において、ファシリテーターが問題点とインドネシアの状況を指摘及び情報提供を行い、学習者はより適切な解法を提案することができたのだそうです。その他にも、統計を学ぶ授業において、同じデータセットを渡されて各自が相関分析をするという事例も挙げられました。それぞれが既有の知識に基づいて分析を試み、その多様な方法と結果を比較しながら、外れ値の扱いについてなどの違いがあることに気がつくよう、<重要な特徴への教師による注目促進>が行われるものでした。これを踏まえ、再度分析した結果を提出させることで、失敗からの再構築が行われた、という事例です。

「生産的失敗」は比較的新たな試みとして研究が進められていますが、うまく実践ができないと「失敗体験」として学習者のモチベーションや自信の低下などにつながってしまう可能性もあります。今回のディスカッションでは新たな事例の検討よりも、各自が経験してきた事例の分析が中心に行われました。今後様々な学習環境を観察・経験・実践する際、「何がおきているのか」をより深く理解するために、自分の引き出しのなかに理論に関する知識を持っておくことは重要だと感じました。


感染拡大も収まらないまま梅雨があけ、徐々に暑くなってきました。ゼミは夏休み期間中で、各自が論文のレビューや調査を進めています。来学期の授業がどのような形式で実施が可能なのか不明瞭ですが、引き続きブログを更新していきたいと思います。

M1 岩澤直美

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